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清洲城攻略そして悲しみ

次の年1555年春、兼ねてからの計略により叔父の信光が信友に合力をしたと見せかけ、信友をうちとり兄上は清洲城にはいる。信光が那古屋城に、守山城には父上の弟信次が入り私も清洲城下に館を構えることとなる

そしてその年の七月事件は起こった。信次が家臣を連れて川狩りをしていたところ1人の若者が馬に乗って通りかかった。

若者が馬から下りないという無礼に怒って弓で射殺して近づいて見てみると、その若者は兄上の弟・織田秀孝であり遺体を見て驚愕した信次はそのまま逃亡した。


兄上は、一人で歩いていたのが悪いと言うことで罪を問うことも攻めだてる事もしなかったが、末森城主の信行兄が勝手に守山城に攻め入り城下を焼いていると聞き、兄上は信行に止めるように急ぎ伝えるため信盛(佐久間)を使者にすると説得に向かわせた。事態は鎮静化をみたが結局信次が逃げ出し城主不在となってしまい代わりに信時が入った。


清洲の城からお呼びがかかり広間ではなく新設された茶室に呼び出される。

兄上は上機嫌で茶をたてると私の前に器を置くと、

「小十郎、ここで茶をたて配下の者に武功だけではないと伝えるつもりだ。」

兄上は粗雑なだけの家臣に苛立っており教養を身につけさせると言うことで茶とその品を使う事を考えているようなので、

「そうですね、これから京や堺等の癖のある者たちと渡り合うには必要なことでしょう。私も堺では茶の湯に呼ばれましたから。」

そう言うと頷き本題に入る。


「今日呼んだのは清洲の城下町を再編するにあたりどの様にしていくかと言うことだ。小十郎何かあるか申してみよ。」

そう言われ、

「那古屋で試しましたが勝手気ままに店を構えさせるより職種により区画を設け、職人を集めれば効率よく発展させて行けると思います。」

そう言うと兄上も考えていたことなのか、

「那古屋での信照伸したことを入れながら清洲でも行う奉行には村井貞勝に任せる。次に岩倉の攻略と、裏切り者の山口をそれぞれ滅ぼす。」


山口教継は今川に寝返ると、こちらが清洲に対応している間に小高城と沓掛城を寝返らせてしまい今の兄上の怒りの原因であり、

「山口は後ろに今川がおりますればまずは岩倉の織田でしょうか、しかしながらこの土地の発展と、新規に雇いいれた直属の常備軍の訓練と鉄砲の教練が必要になりますればしばらくは我慢をお願いします。」

そう言われその時期ではないと兄上も感じてくれたのか

「わかった、まずは一年は中を固め岩倉を落とすことにする、他にはあるか」

「原田の考案により雨などでも鉄砲を使いやすくはしました、しかし根本的には難しいそうです、そして佐々と共に試しで行ったのですが硝石がようやくとれるようになり、少量ですが供給できるようになりました。」


そう言うと嬉しそうに、

「これからもこきつかいうたた寝ができるために力をかせちごよ」

そう言うと考え深げに茶室から出ていった。


そして翌年1556年またもやいきなりの事件、那古屋城主の叔父信光が家臣に殺されると言うことが起こり、兄上は直ちに家老の佐渡守(林)をそのあとにいれ落ち着かせる。

 そして一番の問題と思われること、斎藤道三と義龍の争いが激化しており元々国を奪った道三に美濃の豪族はなびかず追い詰められていく、長良川沿いに追い詰められたと聞くと兄上が、


「道三の援軍に出る。」


それだけ言うと直属の馬廻りと兵を率いて出る。重臣たちも慌てて兵を集めるが間に合うはずも無く数百を率いて長良川へと向かった。


「斉藤道三殿討ち死に、首を取られた由にございます。」

もうすぐと言うところで知らせきて兄上はその場に止まる。無言で美濃の方向を見つめていると、

「信長殿とお見受けした。斉藤道三家臣長織嘉信ともうす。書状を届けに参った。」

兄上はうなづくと書状を受け取り私に投げてよこし、

「戻るぞ」

そう言うと馬を返した。書状には簡単な挨拶と美濃一国を譲ると言うことだけがかかれておりそれをそのまま兄上の正室濃姫に渡すと泣くこともせず口を結び感謝をされた。


そしてこれにより更なる問題が噴出してしまう。

岩倉の織田信賢と長兄の信広が、斉藤義龍と呼応して反乱起こし兄上の回りは謀反が広がっていってしまう、

「信照、兄である信広が義龍とくんだようだ。義龍を迎撃に出たときに兄に入ってもらっているがそれを逆手に取ると言うことらしい。その方は兵を伏せて奇襲をかけよ」

「大兄もですかこのような義龍からの戯言を真に受けるとは、すぐに兵を伏せましょう。」

「われらは義龍が出てきたのですぐにたつ」

そう言うと兵を率いて兄上は迎撃に出た。


私も兵を率いて城の南側にある林へと入る。ここの前にある街道を通り信弘は清洲の後詰にはいる。

兄上が美濃へ向かったと知らせを受けた信広が通過をする。

物見を出していたようで何時もと違い清洲の門は閉じて城下町も店はすべて閉じておりそれを聞いた信広は陣を張り腰をすえる。


私は配下の鉄砲隊に攻撃を指示してその横から切り込ませる。信広勢は大混乱をしてちりじりに逃げ始め私は兄信広をあえて逃しながら追撃をする。清洲からすぐ近くの自領に戻る兄を私はわざとゆっくり進む。


体勢を立て直した信広は何度かこちらに向かってきたがそのたびに鉄砲で撃ち払い敗走させとうとう館を囲んだ。

「使者を立て降伏を呼びかけよ」

わたしは包囲したまま使者を送る。なかなか煮え切らない性格の兄に時間を与え様子を見ることにして昼夜を問わず3日程待機をしていると義龍を追っ払った兄上が数人の供回りを連れてくる。


「降伏はまだか」

何時もと違い少しあきれたように言う兄上に、

「煮え切らないのが兄信広ですから」

「鉄砲を撃ちたて降伏を迫れ」

それだけ言うと清洲へと引き返していった。


私は矢盾を前面に並べ館に近づき鉄砲を撃ち込ませる。門の木枠ははじけとび悲鳴が上がりしばらくすると降伏をようやく申し出てきた。

「信照降伏する。信長にとりなしてくれ」

気弱そうな本来臆病な兄の姿を見て、

「すぐに清洲へ兄上がお待ちになっております。」

そう言い清洲へと帰還した。


「今回のこと義龍の口車に乗せられ弓引いたこと謝罪する。どうかゆるしてくれないか」

青い顔をした信広はたたみにおでこをすりつけ謝る。

「今回のこと赦免いたす、今後は一族の長老としての働きをお願いする。」

珍しく感情を表に出さない兄上に私は眉を上げ信広が出て行くと、

「親兄弟で殺しあえば家は滅ぶ」

「それでは信行はどうなさいます。」

「佐渡や権六に踊らされている。負ければ信広のようにおとなしくなれば良いが」

信行の家老たる二人に対する怒りはあったが血を分けた兄弟の処遇にはなかなか判断ができない信長と言う一面に歴史だと残虐非道だが兄弟にはやさしいいい兄貴なんだなと思っていると、


「にやけている場合か、今回のことにより周辺がざわついている丹羽などにも動揺を抑えさせているがすぐに動き義龍や信行に付け入る隙を与えるな」

「布団で寝てないので今夜だけでもだめでしょうか兄上」

「そんなに寝たいのなら馬に乗り京へと日帰りで向かうことになるが」

わざととはいえ怒った表情の兄上に私は慌てて、

「いえ、すぐに後始末をしてきます。」

そう言って兄上の前から逃げた。


私も尾張の色々なところに鎮圧に向かう年になり戦いの経験を色々得られたが、最後の最後に規模の大きな謀反兄末森城主信行の謀反でした。


ただちに知らせを受けた兄上から呼ばれ、清洲の大広間に向かい顔を出すと。

「小十郎ご苦労、聞いたと思うが信行が佐渡(林佐渡守)秀貞とその弟や権六(柴田勝家)に担がれ謀反を起こした。そこで庄内川の南に砦を築き信行の行動を押さえよ与力は足軽二百五十、鉄砲を五十与える、頼むぞ」

そう言われ急ぎ頷くと、

「兄上がこられるまで押さえ込みましょう。」


そう伝い直ちに出陣の準備を行う。

今の兵力は足軽二百と鉄砲を百なので与力とあわせて四百五十に鉄砲百五十であり、それを鷲尾と兼松、そして新たに雇いいれた宇部と百地と共に庄内川と矢田川の合流する地点に木材などの材料を運び込み周辺の農民を動員して二日ほどで簡易ながらも砦を建てることができた。


しばらくすると南より五百ほどの林美作守の軍勢が迫って来ていると知らせを受け、先制するため矢田川を渡り土手の手前に伏せさせ鉄砲隊には物陰に伏せさせると私だけ見える位置で立ち上がり来るのを待った。


林勢が到着すると林美作守自らが出てきて、

「信照殿とお見受けいたす。主家に歯向かうのは誠に残念だが我らはうつけにはついていけませぬ。信照殿もこちらについて信行様の力になってはいただけませんでしょうか。」

そう言われ私は淡々と、

「貴様たちは自分の利のために織田家に謀反をおこした、そこにどのような意味もない。おとなしく降るなら赦すが違うのならその汚い面を撃ち取ってくれよう。」

おさない私にそう言われるとは思っていなかった美作守は怒りながら、

「なんと言う言いぐさ、うつけの近くにはうつけしかおられないのですな。手始めにあやつを討ち取りうつけ者の兄弟の首をあげようぞ。」

そう言うと林美作守は足軽と長槍を突撃させてくる。


私は後ろで控えている鷲尾に、

「敵は来たがまだだぞ、構えてもう少し待て。」

そう言いながら飛んで来る矢を脇差で次々と打ち落としながら林勢が近づくのを待った。


ようやく目印の石を越えた瞬間に、

「今だ。」

そう言うと鷲尾が、

「立て、構え、撃て」

後ろから轟音と共に百五十丁の鉄砲が一斉に放たれる。

林美作守の前衛は倒れそれを乗り越えながら迫ってきたが、鷲尾は鉄砲隊にもう一度攻撃させるために、

「もう一度撃てるぞ装填、構え」

その声を聞きながら鷲尾のそばにいる旗本に旗をふらせ、砦の左右に伏せていた兼松隊と宇部隊に挟み込むように突撃させた。

鉄砲隊は準備が出来たらしく鷲尾のこえと共に再度鉄砲を撃つ。

林勢は直前で撃たれ、さらに左右からの挟撃により混乱するのと共に退却を始めたのでさらに突撃させる。


しばらくして矢田川まで追撃した兼松と宇部が帰陣し百地が物見から帰ってきて報告を受けると、林勢は末森城に退却し近くには居ないということを聞かされると私は、目の前に横たわる林美作守の兵を片付けてその場で休息を取らせた。


数日後に天候の悪化で暴風になると、川向こうからこちらに援軍が出せないと考えた柴田と林美作守がここを落とすために出陣してきたのを百地から知らされ、直ぐに兄上に援軍を求めるために使者をおくる。

柴田と美作守など三倍ほどの敵に囲まれ近づく敵を鉄砲で撃ち返しにらみ合いを続けていると、兄上が庄内川の下流を暴風雨のなか渡り陣を構えたと連絡をもらう。


柴田と林美作守は気がつくとあわてて下流の兄上に向かい軍を進め稲生で激突する。

戦いが始まって直ぐに兄上の軍は兵力差もあり、徐々に柴田の軍に押され始めており、私は兼松と宇部を率い庄内川沿いに西へ向かい柴田勢の横に突撃を行う。

その時兄上の声が響き渡り、それにより動揺した柴田勢は敗走をはじめ、兄上の軍と共に林美作守に襲いかかると、見事に兄上が林美作守の首をとり歓声をあげる。


ようやく合流すると兄上から

「小十郎よくやった、わしは末森城にいく、そちは那古屋を攻めよ」


私は直ちに手勢を率いて林佐渡の那古屋城下に到着し、領民が居ないのを確認して火を放ち歓声をあげて正門に鉄砲を繰り返し撃ち込んでいく。

さすがに自分の手勢だけでは落とせないが昼夜と休まず攻撃を行っていると正室である土田御前からの使者が来た。

「直ちに攻めるのをやめられよ土田御前からの命である。」

私は兄上からの命令があれば兵を引くことを伝えると使者は戻っていった。

土田御前のとりなしにより兵を引きあげる事になり、兄上からの命令が届いたのを確認して清洲へと兵を引いた。


翌年も岩倉城の信賢と組み信行が謀反を企ててると知らされたので、急遽兄上に清洲の茶室に呼ばれる。

「信行がまた起こそうとしているらしい、済まぬが末森に向かいわしが病気で危ういと知らせてくれ」

そう言われお人好しの信行兄なら清洲へ見舞いに来るなと思い、

「わかりました辛いことですが根元は取り除かないといつまでも乱れたままです。」

そう言うと兄上も厳しい顔をして、

「わしは今から床に伏せる」

そう伝い出ていった。

兄上の怒りと哀しみを見ると信行への複雑な思いが溢れてきて、重臣におだてられた甘い考えの信行に怒りと哀れみの感情がわきでてくる。


私はそのまま末森城に向かい、信行と土田御前に会うと、

「兄上が危篤です。かなり重病であり兄上の亡き後信行に任せたいと言われ使者として会いに来ました。」

そう言うと土田御前は驚き信行は、

「兄はそんなに悪いのか、最後の最後に兄弟の情が出たと言うことか。」

そう言いながら準備をしていると柴田や佐渡が信行に目通りを願い、

「これは信長の策略であり、いけば命はありませんぞ」

そう言いながら私をにらんだが、人の良い信行は、

「兄を疑っても仕方がない、わざわざ小十郎を使者にたてるくらいだからな、留守は頼むぞ。」

そう言うと私と共に清洲にお見舞いに赴いた。


兄上は一週間ほど前から食事をおさえていたらしく布団の中で目を閉じている。

どうやら信行もこの事を家中の者から聞いていたらしく安心した顔で部屋に入ると座った。


「信行か」

兄上は目を閉じたまま言うと、

「兄上が重い病と聞き参りました。顔が痩せておられますが臓の病でしょうか」

信行は兄上が死ぬという事を感じているのか淡々と話をする。

「うむ、親父と同じなのかもな、今後どうする」

「よろしければあとをつぎ美濃の義龍と同盟を結ぶことができ、今川とも講和をすれば安泰にございます」

「誠にそうか」

「今でさえ上下に挟まれておりますれば家中での争いをしている事自体家を滅ぼすことにも繋がります」

「信照はどう思う」

兄上が後ろに控えている私にふるので、

「信行兄の考えは大甘です。今川は北と東は武田と北条との同盟を組手出しはできず南は海です。必然的に尾張を落として上洛を狙うでしょう」

信行はムッとした顔で、

「三河の例があるだろう、友好的に結び上洛を後押しすれば良いだけではないか」

「あれは太原雪斎がいて織田と言う敵がいてそれと相対するには取り込んだ方が良いと言うことでしょう。斉藤と今川は織田ほど不和ではないならば織田を滅ぼした方があと腐れないと今川なら考えるでしょう」

「そんなことはあるまい、今川もそこまでするとは考えられない」

信行は私を睨み付けた。


不意に兄上が起き上がり、

「信行その方の人の良さは罪でしかない、幼き信照でさえ考えておると言うのに家中の権力争いをおこし、あまつさえ佐渡や権六の口車に乗り行動を起こす主体性のなさ、慈悲である自害せよ」

何時もより痩せて精悍な兄上は信行を見つめ、信行は驚きとどこか悟ったような顔になると、

「私では織田を潰すと言うことでしょうか」

「それは結果でしかないが自分が思うて行動できずにおるのにどうすれば家さえ守れよう」

信行は目を閉じしばらくじっとしていて時間だけが過ぎていくが兄上は静かに見守っている。

しばらくするとゆっくり目を開けた信行は、

「わかりました、家臣達にはお慈悲を」

それだけ言うと立ち上がり私が城の奥へと導き、そこにはすでに白い布を敷いて脇差しを置いて準備をしていた。


城の誰にも知られないように介錯は慶次郎に頼んでおり部屋の横で静かに座っている。

信行は白い布の上に座り、

「準備だけは良い様だな小十郎、すまないが身なりを整えたい」

私は頷き慶次郎に目配せをすると音もなく立ち上がり信行の後ろに回り髷を結い直し、口をゆすぎ顔を洗う。

水を1滴もこぼしもせずに支度を済ませると、

「介錯頼む」

そう言って信行は脇差しを握るとお腹へ突き立てる。

「ぐっ」

少しだけ声を出したがそのまま横に、さらに縦に突き立てると、

「頼む」

そう呟いた瞬間、慶次郎は私の長船を降り下ろした。


降り下ろしたが首が飛ばず首は繋がっている。慶次郎は静かに見守っており私も黙って見守っているとゆっくりとずれて膝の上にそのまま落ちた。

目を閉じて涼しげな顔であり眠っているようでしばらく時がたつのを忘れ、始めての経験だが何故か美しいと感じている自分がおり不思議な感覚であった。


慶次郎がいつの間にか座って唱えており私は兄上に報告をと思いながらふらつきながら立ち上がり報告に向かう。

すれ違う者達は驚いた顔をしながら横に避けていく、私は兄上の元へつくと襖を開けずに、

「終わりましてございます」

その瞬間に襖が勢いよく開き私の横を兄上があるいていく、私は急いで後ろ姿を追っていくが兄上はどんどん先に行き奥の間へ入っていった。


「愚かな弟よ、なぜ兄を頼らなかった」

信長の兄弟などに対する思いやりは外から見ても信じられない位の深いもので、家臣に対する冷徹なものとは真逆であり、改めて私は信長の弟であったことを誇りに思った。


「あとを頼む」

それだけ言うと何処かへ行ってしまい、慶次郎に手伝ってもらい遺骸を布団へと寝かした。


信行が自害したと言うことは瞬く間に城内へ国へと広がり、その事を聞いた土田御前は清洲へ急ぎ来て信行の亡骸に対面すると半狂乱となり、

「その方弟を自ら命をとろうとは鬼か羅刹か、あの優しい信行をゆるさぬ。小十郎も許さぬぞ、側室の子がなんと言う不義を」

そう私も一緒になじられ侍女が奥へとつれていくまで続いた。


さすがに兄上もこたえたのかめずらしくため息をつくと、

「ちご後は頼むぞ。」

そう言われ兄上の後ろ姿を見送ると、信行の亡骸は織田の菩提寺に運び荼毘にふした。



数日後大広間には佐渡と権六が座っており信行に続き死罪を言い渡されるのかと並ぶ重臣たちは座っている。


兄上が入ってきて上座に座り、

「佐渡、まだやりたりないか」

「いえ」

「権六はどうだ」

「いえ、この首差出ますぞ」

権六は腹をすえたのかはっきりとした口調で答える。

「信照どう思う」

「死罪が妥当と思われますがお任せします。」

信行兄からは家臣の免責を頼まれたが私にはこの原因を作った二人には怒りでしかなくそっけなく答える。


兄上はしばらく考え、

「佐渡、権六赦免する。今までどおり仕えよ」

それだけ言うと兄は立ち上がり出て行ってしまい残された二人と重臣は動揺して話しこみ退散しようとした私の前に来て、

「殿はどうお考えなのでしょうか、弟の信行様と謀反を起こしたわれわれを赦免するとは」

私は少し考え、

「そう言われたのだからそれでよい」

私は許されたと言う言葉は使わずに大広間から退出した。


私的には納得はいかないが兄上が言われたことなので誓紙を交わして兄上の重臣として復帰を果たした。

末森城を兄上は嫌い、城主を置くことをせずそのまま廃城となったと言うことだった。

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