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農民から太閤の終焉

「今回は渡らなくて良いぞ、お前がいけば活躍の機会を取られると皆が言うのでな」

名護屋城の大広間で秀吉に挨拶をする。

「まだまだ若いものには負けぬと言いたいところですが確かに年相応に疲れている気がしますな」

そう言いながら笑うと秀吉も笑う、

「わしが渡るときに横に付いていてくれれば良いぞ安心できるからのう」

今日は朝から上機嫌なのか昔のようによいしょをしてくれており苦笑しながら礼を言って下がった。


「ようやく終わるのか」

家康が茶をたてながら呟く、

「終わりますがこれからです」

「そうだな、ところで今回は渡らなくていいと言うことだが」

「これ以上仲を悪くなる必要が無いと思います」

三成の専横は目に余るものがあり私に介入させぬようにしており遠征前から清正との仲は最悪だし小西も現地でもめていると知らせてきている。

「そうだな、太閤が亡くなった後の事を意識して行動をするからその方は側で三成に時々で良い圧力をかけてくれ」

私が再度の出兵による徳川の出撃はないと断言をしたので家康は亡くなった後の先手を取るために私に秀吉の近くでと言うことで承知した。


「忠実よ、今回は容赦なく明まで攻め上るぞ」

属国と使者からの言葉を聞きプライドを傷つけられ押さえのきかないじじいは怒っており奉行である三成達も別室で政務にはげんでいる。

「そうですな、太閤殿下に二度と軽口を叩けないように加藤や小西に攻め続けるように伝えれば彼らも奮い立ちましょうぞ」

こうなればあおるだけあおる。

頭の血管が切れてくれればラッキーと思いながら、

「渡海の準備を怠りなきよう重々三成に伝えい」

使者の嘘が三成から出ているのを重々承知の秀吉は三成にきつく当たるようになっている。

「わかりました。滞りなくさせましょう」


こうして海の向こうでの戦いは再開される。

日本式の城郭を構築して先ずは兵糧などを運び込む準備を行いはじめている。

三成ら奉行衆もさすがという能力で商人から購入して集めた兵糧を送り出す。

「だから兵糧を買うための資金に高利の利息をもう少し下げてくださいとお願いを申し上げているのです」

何処の西国大名かわからないが国の兵糧と資金が乏しくなり秀吉にお願いをしていたが貸す金からは利息を取ると言うことだがさほど高いとは言えないのだが、

「その方達は占領して領地を貰える算段をしておろう、そこからと言うので良いではないか」

「前回の失敗もあり財政は破綻寸前にございます。今回渡る兵糧さえなく無理と」

「それは太閤殿下に対する叛意と受け取って良いのか」

「いえいえ、ただ利息を」

本来ならば間に入って何とかと言いたいが三成に対する悪意を増やすためあえて聞き流していると兄である忠勝の義弟で奉行の正家が後ろから来て、

「忠実殿、この様なところで」

「弱腰の大名の泣き言を聞いていただけ、今回の戦い勝利するためにも奉行衆はしっかり戦地を監督してくれ」

正家は嬉しそうに少年のような顔で頷き騒がしい奉行の部屋に入っていった。


「また争いか、ここは戦地ではないぞ、たかが水で取り合いをしおって」

名護屋城の問題点は水場が少なくここに集結している兵の飲み水は足りずに目に見える水場の争いが絶えない、

「予想以上に少なく、築城に時言われたこと現実となりましたな」

出征前の官兵衛(黒田)が大大名の争いの仲裁をしており私はたまたま居合わせる。

「薦めたのも私ですから、しかしここまで足りぬとはぬかりました」

知っててわざとなのだが当然徳川の屋敷と隣接する自分の屋敷内に涌き出る泉を確保しており仲の良い大名には内緒でと言うことだが、それ以外は水争いを頻繁に起こして仲が悪くなるのを見ているだけだった。

「そんな泣き言で太閤殿下に申し訳がたたぬと思わぬかその方らさっさと館にもどれ」

秀吉の名前を出して強引に解散させようとする三成に諸大名は反発をつのらせていく、

「三成殿良いところにであわせた、水が足りぬというなら上水を引けばよかろう、その方の力なら楽にと思われるが」

私がいるのがわかり他では見せない嫌悪感を出しながら、

「戦地に関係ない事とこの様な者達のためにいちいち手間をとるわけにいきませぬ」

ものには言い方が有ろうと、それが正しいとしても周囲の反感を買えば正しくはなくなると言うことが相変わらずわからぬ三成に心で笑いながら、

「だが皆困っておる。その方は城の水を使えるから問題はあるまい再考してくれぬか皆のために頼む」

わざとらしく頭を下げる私に三成は、

「忠実殿であろうと無理を太閤殿下に言うことは許されませぬぞ、今は大事の前の小事良いですな」

これで私がこの土地を推薦したとしれわたっても三成めがと言うことになると思いつつ城に戻る三成をあわれと思って見送った。


「隆景(小早川)殿が亡くなられたと」

遠征してしばらくすると秀秋の義父であり秀吉の信頼のおける男で秀秋がミスをしてもうまくとりなしており三成でさえ手を出せずにいたが、亡くなったとしたら自分の政権を磐石とするため秀吉の血族である者を今のうちにと言うことだった。

「金吾が総大将の重責にありながら蔚山で失敗して味方を危険におとしいれたと報告がありました」

三成は動く、秀吉に呼ばれ同席をしたがこれ程早くと呆れながら三成の報告に秀吉は怒る。

「遠征の大将を任せたのに使えぬやつめ、すぐに呼び戻せ」

この頃には秀吉は私を呼ぶが私にあ意見を求めずに報告を鵜呑みにしており感情に任せ命令を下す。

「金吾め、わしの言うことが聞けぬというか」

使者を送るが秀秋は帰国せず何度も送り出しようやく帰国をして秀吉から越前への転封を一方的に命じられた。

「忠実殿、なぜ有りもしないことで」

秀秋は控えの間に下がり私に涙を流しながら訴える。

「三成のやることだ、蜂須賀も黒田も蔚山で有りもしないことで言われたわ」

「しかし太閤殿下にもう一度ど訴えまする」

私は秀秋を落ち着かせ、

「五大老に話をして近いうちに嫌疑を晴らしましょう、それまではどうか自重してください」

関ヶ原での重要な一人でありこの若者の行動で勝利が得られるとわかっているので丁寧に伝え落ち着かせて戻した。


渡海した諸大名は勝利を重ねた知らせを受けていると秀吉から久しぶりの呼び出しを受ける。

「醍醐で花見をする。まこと共に加われ良いな」

これが終わればこの男の命も尽きる。

「わかりましてございます」

「わしももう長くない、だが御拾いは未だ小さすぎる。もし叛意がだれかしらにあれば、なれば忠実よ後見となってくれ淀も喜ぶ」

老害でしかないこの男のわずかな望みを打ち砕く最後まで猫を被る事に決めているので頭を下げ、

「もったいないお言葉、しかしながら三成殿を筆頭に奉行衆がおられるではないですか」

秀吉は首をふり、

「三成は人望がない、わしの亡き後に家康を押さえる事など出来ようか」

このじじいは私が誰に仕えているのかも忘れているのかボケているのか、

「家康殿も従臣されているではないですか、心配しすぎと思いますが気になるのでしたら後見の話お受けいたしましょう」

そう言うと涙ぐみ私の手をとり何度も「御拾いをたのむぞ」と念を押した。


醍醐での花見がおこなわれる。

北政所や淀そして御拾いや各大名の奥方にまざり私とまこも出席する。

華やかに始まるが北政所の後に杯を受けるのに京極の娘と淀が争い始めるのを北政所の親友のまつ(利家の妻)がとりなして花見は続く、

「忠実様も罪におけませんね、こんなに若く綺麗な奥方を」

桶狭間の浪人で参加した利家を信長にとりなした縁でまつとは時々手紙をやり取りしていたが最近はご無沙汰をしていたので横に座るとつねらる。

「まつさまですね、お初にお目にかかりますまこともうします」

歴史上の人物に会えてまこも嬉しく話しかけ花が咲く、

「こちらこそ、私も好きだったんですよ小十郎様の頃から」

小娘のように言われて私は思わず赤くなりまこも喜びながら、

「利家殿もまつさまがおられたからと小十郎様から聞いております」

お互い話が弾んでいるとまつが私に、

「ところ慶次郎を知りませんか最近ふらっと顔も出さずなんです」

慶次郎の話を出されて少しだけつまりながら、

「相変わらず公家の所へ出入りして和歌を歌ってすごしておりますよ」

あの時から会っておらず、気まずいので余計になのだが、

「そうですか、たまにはと伝えてくださいね」

そう言われてまこが元気よく伝えますと言い北政所へ挨拶に挨拶にうかがう、


「まこちゃんよく来てくれたわ、ごめんなさいね家の人が使い回して、あれ飲んで調子が良いの」

普段と違いまこが挨拶すると嬉しそうに手をとり女子会かと言う華やかさで、

「ねね様もお加減がよく嬉しく思います。そうそうこんな色のどうでしょうか」」

「あら良い色合いね、でも私には歌舞伎過ぎない」

慶次郎の召し物をもっと落ち着いた柄で織り上げたのをねねも嬉しそうにしており今度お持ちしますと言い話を弾ませる。

まつも戻ってきて10代の小娘たちかと言うくらいにはしゃいで喜びそれに驚きながら他の女性達は羨ましそうに次第に3人を中心に輪になって話に引き込まれていき熱気を帯びていく、


「忠実何をしておる」

不意に呼ばれ、

「未だ幼く背伸びをしていた頃を思い出す。接待役をおおせつかり初めてあったあの時の女房達の姿が思い出される」

「台所取り仕切り始めた頃のあれにそれからも助けられたな、まこは幸せか」

秀吉は昔を懐かしむ優しい顔に戻っており真ん中の3人を見つめている。

「誰かみたいに数だけ揃えればでないのでな、それにそばにいてくれる女房に惚れられたからな」

「わしとは違うと言うか、確かにねねに惚れてだがないがしろにした覚えは」

「長浜城主になった頃に釘を刺されたではないか」

信長と長浜に滞在していた頃の頃を思い出す。

「女房としてないがしろにした覚えはないぞ」

少し怒ったように言うので、

「女としてはどうかな母親にはなれなかったが女としては見ることを忘れたはずだ、これを見ればわかろう」

結婚をして妻として意識して女というのを忘れてしまう夫の方にも問題があると目の前の光景から言うとその横に誰かが来る。


「みろ、こんな爺になっても夫婦で惚けている見本がいるではないか、なあ叉左」

利家(前田)が驚いて立ち尽くすのを笑いながら言うと、

「いやなにまつにも困った事で、年相応と言うのがあろうと伝えておるのですが」

「まこに劣らずの色気たたん叉左がたったかのう」

今年に入り秀吉と共に急に衰えた利家にふると、

「小十郎殿も冗談はやめてくだされ、誰が古女房に今更」

そう言うので輪をかき分けながら3人の元へ向かうとまこにウインクをしてまつとねねを抱き上げると2人は喜び声をあげ頬をそめながら、

「まこの前ですよ小十郎殿、いたずらすぎます」

「使い物ならん旦那の代わりに一槍ごちそうを」

利家を見ながら言うと、

「おちょくるのを言い加減にしろ小十郎」

そう言いながらまつの手を引いて行き、秀吉は笑いながらねねを呼ぶと少しはにかみながらねねも秀吉と行ってしまった。


「ふられてしまいましたね爺」

懐かしい声が聞こえ振り替えると変わらぬ甲斐姫がおりまこも再会を喜ぶ、

「元気でしておったか」

「はい、御拾い様も産まれて楽しいですよ」

何時でも元気が良い甲斐姫にまこは母親の様な顔で、

「何かあれば頼りなさい、このままと言うわけにはいかない時もあるのですからね」

そう言うと甲斐姫は嬉しそうに頷きまこは元々渡すつもりだったのか何かを渡していた。

「そういえば長親は」

叔父である私以上に寝て暮らしたい男の事を聞かれて笑いながら、

「相変わらず戦いには首を出さず領内を好き勝手に歩き回っておるぞ」

「そうか、手紙を出したいがなかなか、元気だと伝えてくれ爺」

忍城の頃の戦いの話に花を咲かせながら迫り来る事を少しだけ忘れて過ごせた。



「太閤殿下が倒れられたか」

夏の暑さに体力を削られ弱っていた秀吉が倒れて呼ばれた。

「忠実か、御拾いを頼むぞ、このとおりじゃ」

この頃には秀吉も自分の命がつき様としているのを自覚しており必死に未だ幼子の息子の事を心配する。

「お任せくだされ太閤殿下、忠実お側にいる限りはです」

秀吉は自分が亡くなれば家康が牙をむくのを心配しており現実となれば虎の前に子犬を置くようなもので一瞬でと言うことになるのを自覚していた。

「それでは大老と奉行に誓紙を貰えば良いでしょう」

そんなのはくその役にもたたないのをわかっていて薦め判断能力もすでにない秀吉は同意して三成を呼び実行させる。

三成は私が秀吉につきっきりが気にくわないが表立っては何も言えず、その間に私は淀殿の相談相手になり色々行わせていた。


意識不明になり持ち直す秀吉がまた私を枕元に呼ぶと珍しく意識がはっきりした様子で、

「小十郎殿、前から聞こうとしていたが先の事わかっているように思うのだが」

私の否定しない顔を見て確信にかわる秀吉は、

「これから豊臣家はどうなる」

すがるように聞かれたので、

「御拾いの母である淀と、本当の父である大野、そして三成が潰します」

目を大きく開き話を続けろと無言で促してくるので、

「秀吉殿もわかっておられたから名護屋から戻って大阪の女房坊主を粛清したのでしょう。漏れぬように」

そう言うと目を閉じ手をふり下がった。


数日のち再度呼び出される。

「忠実頼む御拾いを生き延びさせてくれ豊臣家を頼む、このとおりじゃ」

この老人は前の話をすっかり忘れたのか動かない体ですがるようにお願いをして来る。

「関白にすれば高家、無下にする事もあるまい」

「関白にはなれましょう、ですが命は」

秀吉は驚き目を充血させ顔を赤くしてにらんでくる。

「お前が関白豊臣秀次を死に追いやった前例をつくったではないか、忘れたのか」

私に言われた瞬間、秀吉の顔色は青くそして白くなり泣いて秀次の事を言い訳して意識を失った。

後ろに控えていた秀吉の女房と家臣は驚き私に聞いてきたので、

「先の関白の件、心に深い傷をおっておられておる」

そう言うと皆思いだし黙ってしまったので退出した。


「そうか」

私からの報告を聞いて一言だけ言うと家康は何時ものように黙りこむ、

「これからは利家との争いですが長くは持ちませぬ、ここは引いて時を待つのが良いかと」

体調を崩して立つのもやっとの利家は秀吉の隣接する部屋で朋友であった男の最後を看取っている。

秀吉が亡くなれば家康が動くと認識しており家康も亡くなった後、禁止されている大名同士の婚姻等を積極的に行おうとこの場で正信と共に話し合った。


翌日、

御殿医が秀吉の脈をとりしばらくすると伝え悲しみが広がる。

家康の待ちに待った瞬間だが利家も未だ健在だが大きな一歩を踏み出した。



「撤退を早急に亡くなられた事を隠して行うように」

大老である家康と利家が三成ら奉行に命令をして朝鮮からの撤兵を行うようにする。

この間も清正(加藤)と行長(小西)の揉め事が起こったりと呆れながら撤退を確認する。

「先ずは蜂須賀家政殿の謹慎についてですが、目付の報告は偽りであり戦ったと現地から引き上げてきた者達から確認が取れました」

私は虚偽を行うとわかっていたので秀吉配下の目付達に小太郎の配下を数人ずつつけて調べていたのを大老と奉行を集めて話をする。

「虚偽をした目付は前戦からの兵力を減らした罪は大きいかと、おとり潰しを」

三成は自分の配下の処分に異を唱えたが、

「それでは加藤殿等の抜けたあと戦った者達に示しがつきませぬ」

私は強弁に言うと利家が三成に忠実の言う通りと言い決まった。

「そして秀秋殿の事」

秀秋(小早川)を読んでもらい緊張した青年が座る。

隆景が亡くなった事もあるがどうやら朝鮮との補給の拠点である博多を直轄にしたかった三成の意向もあったと聞き、

「蔚山の戦いに参加していなかった秀秋殿の処分、その方の意向と聞いておるが博多を直轄にしたいがためと聞いたが、処分の理由を今一度聞きたい」

「直ぐに確認をいたします」

三成が言うのを、

「その方が太閤殿下に伝えたのは私も聞いていた。直ぐに答えよ」

金吾を味方に引き入れる手はずの一つを行う、三成は口を結び何も答えれずにおり他の者が何かを言い出すのをにらみ黙らせながら、

「秀秋殿の所領復帰とお詫びとして隣接する三成が管理する領地をと言うのでいかがでしょうか」

そう言って秀秋の旧領復帰が決まった。

「忠実殿、ありがとうございます。あの時我慢と言われようやく報われました」

素直な若さに好感をもちながら、

「しっかり頼むぞ、博多は約束通り不入の地として手出し無用に」

そう約束させ終わった。


「叔父上、やりすぎとお聞きしましたが」

淀殿から呼ばれて三成をこっぴどくしたと聞いたらしい、

「これも豊臣家のためにございます。血のつながりが大切ですからな」

実際は血のつながりはない御拾いに嫌悪感をいだきながら業火に焼かれる姿を重ねていった。

「それと利家殿が大坂に入り御拾い様の後見を実質取り仕切りますので特に何もない限りはお役ごめんとさせていただきます」

代わりに家康が伏見に入るので京で暮らすつもりで大坂での暮らしを断った。


「感謝いたす」

清正もようやく帰還してきて蜂須賀や小早川等の事を聞いて礼を言ってくる。

「三成の専横を許すなよ、それは豊臣家のためにはならんぞ」

釘を指しながら入れ替わり挨拶に来る帰還し大名と会いようやく京へ戻った。


「毛虫がなぜおる」

家に入ると利照(前田)が帰還してきておりなぜか横に成実(伊達)が折り目をただして座っておりまこは嬉しそうにしている。

「義父上、成実殿は出奔され高野山に行かれたと手紙でやり取りしていたので誘ってしまいました」

慶次郎に似てきてあっけらかんと言うのに思わず笑いながら、

「そうか、客人としてもてなそう」

「ありがとうございます。上杉やら何やらに仕官を薦められた時に利照殿に誘われまして」

出奔したのは知識として知っていて関ヶ原直前に復帰したのを思い出して、

「まあ好きなだけいても良いぞ、利照よ新しい本宅のを好きに使って良いぞ、そういえばあのぶっきらぼういくらと言うてきた」

成実は困った顔をして、

「5万」

「しみったれてるな、まあ良い小十郎に話しはしておく、あの龍に何かあれば知らせる」

5万なら悪くはない、秀秋の家臣は散り散りで再編しなければならないが10万くらいでねじ込めもするが実直で真面目な成実にはゆるく過ごすと言うのを体験させてやろうと思い、鴨川とは別に表上構えた館にという話になった。


「まあそんなにかしこまるな、ここに来たら身分関係なく楽しむところだ虫よ」

虫とは成実のかぶとに飾られているムカデのようなので、毛虫の様に引かぬという気概を表しており私はあえてくだけさせるためそう呼ぶ、

「じゃあ織田の爺、いくらなんでも御内義にこの様なことさせるとは」

まこが鮮やかな花魁の姿で成実にしゃくをしており成実は女房を亡くしてから独り身らしく赤くなっている。

「吉原は楽しむだ、みろ利照も楽しくしておろう」

どちらかと言うと成実に近い性格の利照も楽しんでおり成実を驚かせており意を決したのか酒を飲んだ。

「さあさあお飲みください」

小太郎もこの男が気に入ったのか大杯を渡しすすめる。

「この手は」

成実の右手は火傷の後で指がお互い癒着してしまっており杯を持ちずらそうにしており小太郎がその手を見続けるとおもむろに、

「これならお互いを切り離せるのではないでしょうか」

小太郎はこの時代にしては知識があり海の向こうの医療にも精通しており私のうろ覚えの知識も試行錯誤をしていた。

成実は驚き話を聞くと右手を出す。

「痛くないように寝かすだと、いらぬ」

そう言うので私は頷き小太郎は酒を吹きかけてメスに似たナイフで慎重に切り離していった。

「ごわごわしてるが個別に動くぞ、感謝する」

小太郎に丁寧に頭を下げると大杯に酒を注ぎ入れ嬉しそうに右手を眺めながら何杯も成実は飲み干した。

「そう言えば忠次(伊奈)からも関東の治水のことで話があると言っていたな、気晴らしに向かうか」

数日前に手紙が来ており江戸城の事も含めてと言う話でまこも含めて出掛けようかと話になると成実が、

「忠実殿、治水の件色々知りたいので一緒にいっても良いか」

唐突な申し出だが快く承諾する。

「領民の幸せは豊かにすることだ、国を納めるに必要な知識だいくらでも吸収しろ」

そう言って数日後関東へと向かった。


「しかし御内義と小太郎だけで気楽な旅ですな」

本来ならば護衛も含め最低でも数十名は連れていくのが当たり前だが身の回りの事は小太郎と配下で十分なので馬にゆられて東海道を下る。

「身軽が一番、好き勝手に動けるし楽しいぞ」

丁度途中で富士山に寄り天気も良いので軽い登山を5号目位まで登り見上げて天候が悪くなりそうなので下り箱根で湯にゆっくりとつかりながら江戸へと入った。


「全く城としては発展しない土地ですね」

成実の感想はあ的おいており幕府が開かれれば伊達も含め動員して切り開くのだが、

「何れはだからな、海に面して埋め立てれば広がるし水も上水路をつくれば良いだけだ」

そう言って測量の話や木枠の水路などの話をしながら忠次の場所へ向かった。


「ご無沙汰してすまない忠次」

日焼けして役人たちに指図している伊奈に挨拶をする。

「お久しぶりですね忠実殿、開墾準備のための用水路をつくっているところですよ」

開墾は水がないところでは当然できないので前準備として効率よく行うために用水路をつくっており尾張の時からの経験が生きている。

「開墾をするのに下準備が必要と言うことか」

農民が駆り出されて地面の掘削を行っておりそれを成実が見ながら聞いてくる。

「また新しい家臣の方ですか」

「いやいや、客人さ忠次と同じで帰るに帰れない」

そう言うと懐かしい顔をしながら、

「伊奈と申す。良ければ知っていることをお教えしますが」

「中根殿の所に世話になっている毛虫です。よろしくお願いします」

すでに察している忠次は毛虫に少しだけ笑いながらも真面目に折り目正しく挨拶をする成実を気に入り色々おしえ始めた。


私は二俣から転封した領地を見に江戸へ下り房総へと向かう、

「ここも一時的になるだろうし、三重に忠勝(本多)が移動すればまた移動になるから、息子の家忠に経験で積ませていけば良いと思ってるよ」

岩倉での生活を終えると土地に執着せず対外的な事以外は家忠に任せている。

江戸を見ながら小太郎の船で内房へと渡ろうとすると直政(井伊)の筆頭家老である木俣が自ら待っていた。

「忠実様、あの時には十分過ぎる配慮ありがとうございます」

武田崩壊後に直政の勢力が大きくなったときに新参と言っても良いので中心となる者が足りなかったので家康と相談の上、一条と山県そして土屋などの武田家旧臣を紹介して配下とした時の責任者で久しく会っていなかった。

「京に連絡を取るとこちらに来てると聞き上州から馬を飛ばして参りました」

一時期は直政の妥協の無い厳しさに家康の直臣に戻りたいと言っていたようだが腹も座っているようだ。

「それはすまぬな、用事とは」

「実はこの子、弁之介様にございます」

様とつけると言うことは、

「直政の次男か、侍女に手付け花(直政正室)が怒っておるか」

花は家康の養女であり長子として生んだ子はあるがあまり利発でないと聞いている。

「弁之介にございます」

8才ほどか直政に似て芯の強そうな子であり確か直政という名前で井伊を継いでいたのを思い出した。

「中根の爺じゃ、なかなかの挨拶これを褒美として渡そう」

私は脇差しを抜いて手渡した。

「木俣、わしが数年預かろう、父共に2代面倒を見れるのは何かの縁じゃ、任せておけ」

「ありがたき幸せにございます。何卒よろしくお願い申し上げます」

そう言うと私は成実を呼び、

「この子を立派な武将にしてくれいてくれる間だけで良いわ」

成実頷くと馬を降りて丁寧に挨拶をして未だ馬に乗れぬと聞き小太郎に手配させ江戸湾を横断した。


「父上おかえりなさい」

家忠自らで迎えてくれる。

「ずっと任せきりですまぬがこのまま頼むぞ」

報告は良いすべて任すと良い、仮暮らしの領地を弁之介の馬の練習をかねて歩き回る。

「下を見るな、前を見ておれば落ちぬ、下を見れば見たところに落ちるぞ」

成実は厳しいが弁之介は必死に食らいつき槍使いも未だ腰はふらつくが頑張っている。

「なかなかほほえましいですな親子のように」

家忠は誰に似たのか細かいことを気にするでもなく二人を見ながら私と同じ感想を言うので笑う。

「血のつながりあもだが無くても繋がり合うのもいる」

「私にとっての父は近くであっても遠くと感じます」

確かに家忠の小さい頃は信長にあっちこっちと言われて何かを教えたとかはしてなかったと思い、

「確かにすまない、あっちこっちと楽しかったからないがしろにしてしまった」

頭を下げると、

「信長の息子ですからね、仕方ないですけど孫の小十郎も元服を迎えます」

すっかりと言うか全然気にしてなかった、天竜の隠れ家にいる井伊の女傑の親戚を家康の養女として嫁としていて孫がずいぶん昔に産まれたのを今更ながらに思い出して、

「すまぬ、重ねがさね」

「しかも母上と妹たちが相次いで無くなって気落ちしていたのですから」

家忠は隠れ家の事は知っていたが嫁である桜にはさすがに知らせていない、直ぐに二人を呼んでもらい再会する。

桜は直虎によくにてきりっとした顔で美しく、孫の小十郎は家忠よりも明るそうで何より、

「久しぶりじゃな桜殿、家忠と共に中根家を守ってくれ礼を言わねばなるまい」

そう言うと嬉しそうにしているので堺からの絹糸や珍しいみあげを渡しながら、

「小十郎、爺は忙しくてかまってやれんですまなかったな」

そう言うと同じようににこにこして頭を下げるので元服様にと堺でつくらせていた鎧兜と太刀を引き出し、

「義兄である忠勝殿に烏帽子を頼み元服を、忠晴と名乗るが良い」

私はそう言いながらこの際と、

「家忠は忠実と名乗り隠居させてもらう、雪達磨と名乗る」

そう言うと家忠は笑いながら、

「父上らしい雪達磨と、呼ぶ方は大変ですよ笑いをこらえるのに」

いちを真面目なんだけどなと思いながら後日元服を済ませてしまった。


「それとまこじゃ、隠居なので今まで通り鴨川で一緒に住む」

薄化粧でも吉野太夫の美しさは隠しきれず元服前の忠晴が、

「私も美しい嫁をもらいたいです」

そう言い桜から小言をもらっていた。

「皆の者よう聞きなさい、これから数年で天下分け目の戦いとなろう、それに勝利すれば徳川の世になるが、決しておごるでないぞ」

そう言うと忠晴が、

「早く初陣を飾りたいです」

そう元気よく言うので使い古した騎馬鉄砲を与えて楽しみにしていると伝えた。

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