忠興と玉子
「海の向こうでは連戦連勝であるぞ、もう少しすれば降伏もしてこようと宗からの手紙がついたわ、そして小西は清正と共に漢城に達し更に国境へ向け進軍と言うことだ」
秀吉は名護屋城で戦勝祝いを行い利家や家康に嬉しそうに言う、
「誠に祝着至極に存じ上げます」
利家が丁寧に言うと秀吉は何度も頷く
「その方の活躍も書いておったわ、まだまだやるのう忠実よ」
「公平に評価していただき奉行衆には感謝の言葉もありませぬ」
奉行からの報告は正しいと秀吉に意識させ後日の三成と清正のいさかいの原因となる事の種をまく、
「そうか、日向(小西)がな、その方と競いあって見事な働きをしたと言うではないか」
そう言ってそれぞれに大判の金を褒美としていただいた。
「まこ様、無事に娘を出産なされました」
縁もたけなわの頃に小太郎が教えてくれる。
「さるが嫁に寄越せとでも言いかねないから黙っておこう」
「これが終わり次第戦列に戻らせていただきます。よい知らせを」
そう言うと離席して家康と話をする。
「わしは清正の肩をそれとなくもてと」
「はい、報告書はねじ曲げて伝えられるでしょうから、すでに一触即発お互いをおとしめております」
「愚かとはいえ徳川にも同じことがいつ起きてもおかしくあるまい」
「その時は両成敗で行えばよろしいかと」
そう言うといくつかの打ち合わせをして船に乗り北へではなく東へ京へと向かった。
「おお、よくまこににておる。二人とも元気で何より」
京の自宅に戻ると元気に泣いている娘とまこが待っており、
「無事生まれました。誰かさんににて元気ですよ」
そう言っておっぱいをあげると元気よく飲む、
「よう飲む、元気に育ってくれ市」
私が名前を呼ぶと嬉しく頷き、
「お市様ですね、美しく元気にですね」
「そうだ、当代きっての美人となるようにな」
そう言いながら満足したのかこちらを見ており誰かに似てると思いながら頬をなでて口の方に指を持っていく、
「いたた、いたい」
歯の無い口で私の指に噛みつき、赤ん坊がなんでこんなに痛いほど噛めるんだと悲鳴をあげながら思い出す。
「兄上か」
思わず口に出た言葉に満足したのか赤ん坊は寝てしまった。
「ほんとか、ほんとかな、いやどうしよう」
どうようしてしまいまこが不思議がるので、
「市の顔、誰かに似てると思ったが兄上の小さい頃に似ている。そしてこの癇の虫の悪さも間違いない」
私の言葉に寝ているはずの市が少しだけ目を開けて閉じる。
「信長、織田信長様ですか」
やな顔をされるかと思ったが嬉しそうに頷き、
「すごい、会ってみたかったのです。そうですか、うんうん」
嬉しそうに言うまこに、
「気に入られたみたいだね、気に入らなければ乳首を噛みきる位だから私の指のように」
見事に赤くなった指を見ながら二人でうなずき数日を過ごした。
「海の向こうはいいのですか」
まこから言われて頭をかきながら、
「雑賀の孫一と水野勝成が指揮をとっているから、何かあれば音楽を奏でてる慶次郎がいるし問題ないよ」
「さらりとすごい名前を出してますね、さすが私の旦那様」
嬉しそうに言うまこに、
「所で1つ決断をせねばならない」
私は改めて座り直すとまこも市を座布団の上にのせて日向ぼっこをさせながら私を見る。
「猿のことだ、生まれたとわかれば嫁にくれと言ってくるが、私はやだ」
こんなかわいい子をと思い、もう少しとはいえ秀吉が死ぬのは先で、私に娘が生まれれば嫁に出すにで寄越せと言い出しかねない、
「家康様の手前もあり断りきれないと」
「そうだ、家関係ないならだが、そこでだ」
私の言葉に笑顔でいるまこに、
「まこと市を逃がすか市だけ逃がし亡くなったと言うことにしたいが」
具体的には隠れ里に行って秀吉が亡くなるまでと言うことを話す。
まこはすぐに、
「私は貴方の妻です。娘はしばらくは会えなくても貴方を一人にするわけにいきません」
その言葉に私は涙もろくなりながら、
「ありがとう、養育は先妻である本多日和に任せる。お姉ちゃん達もいるから問題はあるまい」
そう言ってすぐに小太郎を呼び天竜へ向かうと伝えると察していたのかすぐに輿を準備しておりまこと市を乗せて全くゆらさずに交代をしながら走り抜けた。
「信照じゃなく今は忠実でしたね」
到着して知らせを受けた出迎えの先頭に居ないはずの人がおり思わず声もでない、
「初めましてまこと申します。日和様色々ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします」
「新しい、そうですか本人からは色々聞かなくてはなりませぬが、まあかわいい、中へ入ってけい手伝ってあげて」
「新しい女房をかあの方がおられなくてのびのびだな」
「お父さん私達の妹なんだ、可愛いな誰かに似てる」
私が意識を戻した頃には皆中へと入ってしまいこへい(信康)が心配そうに出てきて声をかけてくれた。
「えっと安土殿」
「もう安土ではなく蝶と呼んでください」
兄上の正室であり斎藤道三の娘である帰蝶様が目の前で楽しく話しており未だに混乱している。
「私が小太郎殿から蝶様が体調を崩してずっと寝込んでいると聞いて手紙を書いて来てもらったのです」
日和がすまなそうにしているのを小太郎に聞くと丁度まことの事で秀吉ともめていた頃でお伝えはしましたがと言われ思いだし頭を下げ、
「すまない、と言うかありがとう日和、兄上に顔向けできなくなるところだった」
そう言うとホッとした顔で日和も嬉しそうにしておりけいは嬉しそうに市を抱いている。
「そう言えばこう言うときに騒ぐゆいは」
静かなので聞くと、
「もう気持ち悪いげろげろ、小太郎薬」
隣の部屋からゆいが出てきて小太郎が煎じたものを飲むと、
「お父さんいらっしゃい、こんなにきついだなんてお休みなさい」
そう言うと入ってしまいこへいが頭を下げ、
「申し訳ありませぬ授かりまして」
「いやいや、めでたいなこへい、立派な父親になることだ」
「はい、無事生まれてきますようにと願っております」
「あの子は調子がよくなると歩き回ってこへい様を心配させるんですから困った娘です」
日和が言うのを笑って私は、
「母親に似てと言うことだな、しかしめでたいな」
そう言いながらほんだいにはいる。
「と言うことで市を頼む、なかなか誰かに似て癇の虫の強い娘だからな」
「そうか誰かに似ていると思ったら、性格も頷けるな忠実」
皆は誰だと私と蝶様を見るので、
「幼き頃の兄上、織田信長だよこの指を噛みきるほどの強さは」
そう言うと驚きゆいも思わず聞いていたのか部屋から出てきてけいの抱いている市をのぞきこみ、
「本当だにいにだ、父上の事怒ってます。ゆいに優しくしてくれないから」
そう言うのでおいでと抱きしめこへいに、
「いくつになっても子供じゃな、子が子を産むが苦労をかける」
そう言うとこへいも笑いながら任せてくださいと言い皆も大笑いをして過ごした。
「それでは出兵が終わるまでな」
まこにここに残って市の世話ができる期日を伝え日和によろしくと言う、
「忠実殿、元気で無事に帰ってきなされ」
蝶様も見送ってくれ礼を言うと海を渡って戻った。
「そうかそうか、無事にな」
慶次郎が滞在している村に向かい話をすると頷きながら美しい女性と祝いの歌を奏で歌う、見事な演奏と歌に戻って皆に聞かせてくれと言うと女性は嬉しそうに何処かの言葉で話し慶次郎も頷きながら、
「連れていくからな、家を頼む」
「それなら自宅を使っていいぞ、しばらくは使わないからな」
気兼ねなく使ってやると言いながら明軍の参戦を知った。
直ちに官兵衛や三成が漢城に到着して諸侯に集結を促す。
「なに、清正が北方の民族との戦いがあるため来れぬと、命令を無視するとは何事ぞ」
三成が清正が来れないと聞き怒りながら席に座り官兵衛が話す。
「明軍が参戦してきた。未だに兵はさほどではないが十数万の兵が送り込まれると言われておりどうするか意見が聞きたい」
流石は年の功であり苦労してきた官兵衛は三成に気にすることなく意見を聞いて回る。
色々意見を出しあっているが私は終始無言で聞いており聞かれても、
「官兵衛殿の言うこと誠に理にかなっておる」
そう言ってなにも言わずに進めており今年中に明へ侵攻する事は無理と言うことと、秀吉に朝鮮への渡来はとどまるようにお願いをすると言うこと、そしてこれから寒さに厳しくなり明軍の力も不明なため漢城での籠城準備をする事が決まったが、
「我らは平壌で迎え撃ちましょう」
和平も模索したい行長(小西)はそう言うと兵を率いて離脱してしまい官兵衛私に何か無いかと聞いてくるので、
「釜山から西の普城を攻めれば輸送路の安定も図れましょう」
「流石は忠実殿、砦を作り安定させたのち細川(忠興)殿を中心として2万の軍勢で向かわせましょう。その時の軍監をお願いしたい」
ここまで戦功をたてたのでと思ったが見透かされており断るわけにもいかずに出陣する。
その不満を忠興に向けようと思いながら普城到着数日前に忠興を招待した。
「利休殿が亡くなられて久しいがその方の気持ち嬉しく思っておろう」
あの日の事を思い出しながら本陣から離れた高台で野点をする。
「あの日の事、忠実殿は何故にでしょうか」
私が史実通りだと言うことで秀吉に対して強弁するわけでもなく引き渡したのを今でもと言うわけである。
「顔の傷と同じ強者が理不尽なことをする。しかしやられた方は一生忘れまい」
忠興の顔には理不尽に夫を殺された妹の怨みの傷であり不心得としか言いようがない、忠興はいきなり顔の傷を指摘され家臣もだが大名も顔の話は遠慮をしているのをわざと言うと顔が赤くなり瞬間的に刀に手がいく、しかし刀に届く前に慶次郎が音もなく進み出て脳天を鉄扇で叩いた。
「本当に短気だ、利休といい織部(古田)といい気が短いのが大成するかな」
「誰かさんみたいに一番弟子の癖にと言うわけだ」
「いずれにしろまずは縛るか」
慶次郎が手慣れたように縛り戻るときに買ってきた灘の酒を飲みながらこの土地特有の地形を楽しみながら飲んでいると忠興が目を覚ます。
「貴様、放せ」
芋虫の如く動くのを見ながら慶次郎が、
「細川とはよく動く虫だな、酒の魚にとしてはいまいちだがな」
「病死した事にしてこのままって言うのも、玉子(明智ガラシャ)は秀吉にならい私がもらおうかな自由に暮らさせてやりたいし」
そう言ったとたん罵声と殺すと叫び暴れるのを涼しく見ながら、
「だいたい私にとっては仇の娘だからな、それを今でも匿っているのを切り捨てるのも問題はあるまい」
主人の叫び声を聞いた忠興の重臣が慌ててやってきてこの惨状に驚き刀を抜き何か言ってきた松井に言う、
「信照様、しかし今更では」
「こいつは家臣や妻そして妹にやりたい放題してきたが、ならば私がやりたい放題でも構わぬはずだ、下がれ悪いようにはせぬ忠興が亡くなっても細川はどうにでもなる」
後ろで未だに叫んでいるのをほっといて家臣と話をして下がるように言い消えると振り返り、
「妹はその顔の傷で済ませてくれたが私は甘くない、安心しろ細川はお前抜きでも続くし玉子も私がもらい受ける」
「すごいな子猫がよう泣き叫ぶ弱い誰かさんと同じだな」
「そんなにひどいか、まあこの元気が続くまでゆっくりとさせてもらおう」
酒をつぎ飲みながらだんだんと声がかれ小さくなるのを気にせずに杯を重ねていく、
「だいたい人の事言えないがそれだけ恨まれてる妹の前に馬鹿面を出せるとは、まあうちの兄上はその辺は優しいからだったけどな身内に」
私が信長の事を言い始めると忠興は静かになる。
「ガラシャが大切ならあんな態度をとるな、侍女が助け船を出してくれ耐えられているのを殺害するとは恩を仇で返すとは、家臣にしても一人として必要ない者はおらぬ、何かしらの才能がある。それが出せぬのは上司たるお前の責任でそれを家臣に返すとは兄上だったら打ち首だ、信忠の家臣でよかったな」
そう言うと慶次郎が忠興に右手をこう動かせと言いその通りすると縄が解ける。
「馬鹿みたいに動かせば思う壺だ、野生の熊でさえお前より賢い」
慶次郎は座り直した忠興に杯を渡すと並々注ぎそれを飲み干す。
「これから選択を間違えれば家は消し飛ぶ、しかし光秀につかなかったお前ならただしいはんだんも出来よう、何かあれば頼るがよい」
そう伝えると忠興は、
「私は父上の重圧に苦しみました、忠実殿はどうして過ごさせていたのですか」
父藤孝は超一流の武将であり古今和歌集の口伝をされた人であり慶次郎でさえ無茶はしない、
「自分は自分、父親は父親じゃないか」
慶次郎がボソッと言い私は、
「私にもたりぬことだらけ、そこでもがきあがくこともあったが自分でしかないのだよ、兄上の威光を継ぐことは私には無理だった。確かに私が出れば織田はまとまったと思うが当主としての気力や覇気が無いからな、それを無理やりすれば海の向こうの老害になる。自分の範囲内で決断をして駄目ならにげだすだけだ」
「だな、重要なときには逃げ回っていたからな、こんなに偉そうにしているが、なあ忠実」
私は笑いながら、
「多分、下手すれば人質が殺される事もあろう、その時は助ける」
多分なんの事だかわからないだろうが忠興は頷き杯を重ねた。
普城の攻城戦あが始まる。
攻めにくい城であり中々苦戦しており忠興は普通なら怒り不甲斐ない家臣達をきってしまうのだが忍耐で我慢しながら評定で聞いてきたので、
「私の情報不足だ、すまない」
まずは謝りこれ以上損害を出す前に一度戻り再度と言うことを伝えると同意して家臣達を驚かせ忠興は撤退をあ開始した。
「味方にしたいくせにめんどくさいことをするな」
忠興の後ろ姿をあ見ながら慶次郎が笑い私は、
「豊臣と戦うには彼が必要だからな、今のうち小細工をしておくと言うわけだ」
「だな、何を目的に面倒をしていると思うが後で納得することもあるからな、楽しみにしておく」
そう言って漢城に戻ると小西のいる平壌に明軍が来襲したと知らせが来た。
「小西が援軍を言ってきた」
隆景(小早川)が書状を開き伝えたが、最初の評定通り漢城で籠城と言う話で行長に撤退を命じ途中で布陣している義統(大友)に行長と合流後に撤退を支援してくれと伝えた。
「忠実殿の言うとおり明軍は火砲を使い平壌では苦戦をしていると言うことだ、ここで食い止めてしまわねば崩壊してしまうからな、十分熟知して守りを固めるように」
重苦しい雰囲気の中で、
「申し上げます。大友勢が城を捨て漢城に撤退をしてきたと言うことです」
皆が驚き平壌が落ちて明軍がもうここまで来たのかと動揺をするので、
「未だ落ちたと言う知らせはない、義統をすぐ連れてくるように」
そう言うと臆病者で優柔不断な男に久しぶりに顔を会わせ軍監である私が聞く、
「平壌が落ちてその方の守る城に明軍が来襲したと言うことか」
小太郎の知らせにより大友軍は戦って撤退してきた様子はないと言うので質問をする。
「私の元に平壌が落城してしまったと言うのを聞いたので」
誰から聞いたかと言うとそう言う噂がありましたと言い皆は呆れてみており、
「噂だけで味方を見捨てるとは、改めて調査をするから身柄を確保」
秀吉に報告をすると改めて調査をすると連絡がある。
「信玄にしろ宗麟にしろ親を押し込めた者は家を潰すな」
直接の原因は息子にしろ下地をつくっているのは親であり、周囲の圧力に法名を名乗り誤魔化すところも似ていると考える。いずれにしろこれで大友は終わったとおもいながら官兵衛に、
「お家取り潰しでいずれ九州で反旗をかかげよう、その時はお願いします」
「その言いぐさですと波乱があると言われているようですが」
「考えていることは一緒ですな」
そう言って話を終えると、
「豊臣秀勝がおなくなりになられたと」
官兵衛はすぐに名護屋へ知らせる様にといい、
「忠実殿、指揮官が決まるまでお願いしたい」
と言われ六千の兵を配下に加えた。
「行長殿無事であったか」
平壌を捨てて退却をしたが明軍の追撃を受けたが何とか漢城へとたどり着くと無事を喜びながら、
「明軍の李如松と言うのが兵を率いて追撃をしており直ちに迎え撃つ」
秀家(宇喜多)が大将となり隆景先陣の大将となり私はそこに入る。
「隆景殿、明軍は騎兵主体だが碧蹄館では険しく狭いから相手を引き込んで退路を絶てば崩壊しよう」
そう提案して私が正面に自兵力八千を率いて迎え撃った。
鉄砲の一斉射撃で勢いを削いで迎え撃つ、十分押さえられるはずだが秀勝の配下が押し上げてしまいそこに明軍の騎兵がくさびを打ち込み連携が寸断んされる。
「最近は良い気になりすぎたと言うことか、慶次郎頼む」
朱槍を持ち慶次郎は駆け抜け、それを見た勝成も後をおい一気に押し返す。
「信一いまだ引き上げさせろ」
動きが止まった明軍に対して射撃で牽制している信一を引かせて吊られるように明軍が出てくると後方に隙間ができ隆景が見過ごさずに小早川勢に突撃を命令した。
「逃げるのはここまでだ反転、打ち捨てだ」
そう言われて慌てる。
「二千人なら一律にだけど八千だぞ、ってもう良いか」
打ち捨てと言うのは通常戦功をたてた証明は倒した敵の鼻をそぎその個数なのだが、当然それをしている間は戦いの手が止まるので一律に褒賞金を支給する前提でひたすら攻撃と言うことで、
「本陣も前進、倒れた敵の鼻を集めろ」
結構な赤字が出るかなと思いながら明軍の鼻を削いで追撃を行った。
「信一の打ち捨てに焦ったろ」
「余計なことだけは聞いてるんだな、まあ追撃も含み多少は取り返したがこの勝利は大きいよ」
平壌へ撤退していった敵はこれで和平にほんと一時的だが受け入れるだろうと思いながら帰還すると秀吉の奉行である三成や吉継が顔を出す。
「清正の件ですが」
「行長の悪口を色々言っている様だが撤退を承知しないと」
「あやつは自分が上手くいっており王子も二人捕まえたと言うことで良い気になっております」
三成も今回の清正の事には腹をたてており私から見ても大人げないと言うか私の思惑通りに事が進んでいると顔に出さずに頷き、
「簡単だ、こことをつなぐ大名を漢城まで引かせると言えば孤立するのを恐れ撤退をしてこよう」
「それで納得をするでしょうか」
「納得をしなくても期日通りに通告をすればよかろう」
これで清正と行長と三成の関係は表だって険悪になるなと思いながら今後の対応を話し合う、
「和平をとにかく結ぶために色々交渉しておりますが中々難しく、何かありませぬか」
三成もだが奉行衆もこの戦いを終わらせたい気持ちは一番であり、逆に清正達武官の戦って勝利して早く土地をもらいたいと言うのとは相反する事なので何気にあおりまくった。
「結果的に戦うことができずにと言うことで損害を最少におさえてという事ならできるが」
そう言うと三成は喜び頭を下げた。
年が明け寒さがこたえると思いながら清正が帰還して奉行衆にくってかかっており静観する。
小太郎には平壌の明軍にこちらの兵糧の場所を伝えるように言いしばらくすると襲撃があったようで燃やされてしまい漢城の大名達は明日の食事にも事欠く状況になっていた。
「ある意味効果的ですが、正家(長束)が兵糧の手配が大変になりますが皆が講和を望んでいる今こそと言うことで感謝します」
直ちに明の武将李妙松と連絡を取り合い講和を望まない朝鮮は蚊帳の外におかれようやく渡ってきた秀信(信忠の息子)に六千の兵を引き渡す。
「叔父上お久しぶりにございます。関白殿下も明への侵攻を心待ちにしておりますが」
「秀信か、一時停戦の話し合いが今行われている。一時的に引き上げることになるかもしれぬが父の名に恥じぬようにな、それと目先の利につられるな」
関ヶ原では三成の大盤振る舞いにのせられ西軍についてしまった信長を真似しようと歌舞いていいる秀信に色々話ながら過ごした。
明軍との話し合いで釜山まで撤退するとなり早めに戻る。その時に三成には、
「早急に事を運べばすべては木っ端微塵だからな」
そう伝えると真っ先に兵を率いて戻り、海をわたり名護屋へと戻った。
「忠実、残念だったな」
帰国をして市が死産したと届けを出すと鶴松を思い出したのか秀吉は優しい声をかけてくれる。
「ありがとうございます。しばらくはそばにいてやりたいと思っておりますのでよろしいでしょうか」
「わかった、わしも一度伏見に戻ろうと思っておる。ついてこい」
自分の兵は隆景に与力として勝成と信一に任せることにしており茶室に隆景に来てもらう。
「一つお聞きしたいが、私の記憶だとこの御仁は」
「雑賀の孫一と水野勝成にございますが信一と中根勝成にございます」
「そうか、さすがは中根殿はよき人材を抱えているが奉行達に知られれば」
「本人達には知らんと通せと言っておるので最悪逃げ出せば良いですし、責任は私がとります」
「わかった、ところで今回の講和は」
「話をしている同士が嘘に嘘を重ねてと言うことで」
「奉行は」
「子飼ですから、責任をもって落とせと言うところでしょうな」
「しかし西国の大名はこれ以上の負担が続けばと言うところか、私もそれに漏れぬが、徳川殿は力を蓄えると言うわけか」
さすがは隆景、このまま徳川が力を蓄えればと言うのを気にしているので、
「秀長殿や利休殿が生きていればですがいずれにせよなるようにと言うことでしょう」
「中根殿は徳川を一押しか」
あれこれ聞かれるのもと思い逆に、
「隆景殿も金吾(秀吉の甥)を受け入れ本家を守るのに手一杯ということですか、元就殿の言葉を守るのはよろしいが当主が危機感が足りぬ、亡くなった後で広家(吉川元春の息子)だけでは本家を維持するのも難しかろう」
「確かに、そこでこれを借りとして1度でよいのでお願いできませぬか」
「隆景殿に返せるなら喜んで、ただし事と次第によっては本家だけを残すことにもなるが」
そう言うと静かに頷き、
「広家も色々と苦労をかけているが、秀元と共に新しき両川としてもり立てていってほしいが、老人の独り言」
「それならば、毛利はしぶとい安心してくだされ」
笑いながら茶をたてた。




