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脇差しの思い

「徳川殿からの使者とはその方か」

小田原城の大広間で不愉快そうな氏政と氏直親子が座りその横を重臣が並んでいる。

「督姫様を父の元へお戻しください」

私は挨拶もなしに本題を切り出す。

「一方的に手切れをしてきて人質を返せと言うか」

氏政は激怒してこちらをにらむので、

「風前と言うか勝てぬ戦をいつまでも続けられるあなた方に徳川もだが先代の氏康殿も呆れている」

怪訝な顔をしながら氏政は、

「徳川殿はいざ知らず我が父のことお前に何がわかろうか」

そう言われたので懐から信玄とにらみあっていたときに託された脇差しを鞘ごと抜き前においた。


「氏康殿から北条が今川のように滅び逝くならこれを見せてくれと」

そう言うと近習が受け取り氏政に渡した。

「父上がそう言われただと、嘘だその様なこと言うはずない」

氏政は脇差しをみて落ち着かない様子で歩き回るのを静かに見ていると、

「義父は私達がもう終わりと言われたのですね」

氏直が青い顔で見るので頷くと下を向いてしばらくすると顔をあげて督姫と離縁することにした同意した。

「氏直、勝手に決めるんではない大事な人質ぞ」

氏政は顔を赤くして帰すことはならんと言うが、

「北条の当主は氏直にございます。最後ぐらいは私の思う通りにさせてください」

すでに北条の行く末に腹を決めた息子に氏政はうなだれてその場に座り込んだ。


「それでは督姫とこれは返していただきます」

心変わりをさせないため直ぐにと言いいながら、氏政から氏康の菊一文字と言う名の脇差しを取り氏直が督姫との別れをしに奥へと向かう。

氏政は下を見て落胆しており私は大広間を出て廊下から相模湾を見下ろしながら待っていると、北条の重臣である松田が近寄り小声で、

「関白殿下によしなにお願い致します」

そう言うのを軽蔑な眼差しで見ながら、

「窓口の者に頼め裏切り者が」

そう言うと顔を青くして下がっていった。


「お待たせしました」

振り向くと氏直と督姫がおり私に、

「父は氏直様を北条を助けていただけるのですか」

率直に言われ、

「関白殿下が決められること、北条は取り潰し当主は責任をとらされよう」

「それではここから動きませぬ、夫と子供をおいてなど」

双子を産んだときの日和の顔が重なり世の母親は皆同じかと懐かしく思いつつ、

「督姫様が直接お願いをすれば無下にはできますまい、それが父親と言うものです」

そう言うと決意をしたのか氏直と共に通用門へ向かい別れを惜しみながら外へと出た。


外は暗く城は静かだが包囲をしている側は明るく騒がしい、精神的に見せつけられて士気が低下しているのは秀吉の見事な策であり知ってはいるがもう小田原城に先はないと言うことを督姫の手をとりその決意の顔を見ながら徳川の本陣へと向かった。

中に入るときに私は口に指をたて騒ぐなと兵に伝えながら通り抜け本陣へと入り、そのまま近習にも無言で押し通して家康の寝所の前まできた。

「殿は起きておられる」

正信がいつの間にかそばにおりふすまを開けると家康が静かに座っており私は督姫を中に通してふすまを閉めた。

少し離れたところに正信と移動して城内の様子を話をして宿にしている宿に戻った。


翌日から風呂につかり寝ている暮らしをしている。

秀吉は家康やその他の大名に周辺の城を落とせと命令して出陣しており私の周りは少しだけ静かになった。

数日のち秀吉に命令され水軍の視察に向かう、長宗我部水軍は池と言うのを頭として大黒丸を旗艦に、加藤と脇坂が淡路水軍を率いて、そして義弟の九鬼嘉隆が鉄甲船で出陣しており徳川からは向井水軍が参戦していた。

私は伊豆を経由して海に出て向井水軍にのる。水軍のお頭である向井は無口であまりしゃべらない、元は九鬼と同じ流れを組む出と言う事だった。

「下田へ向かいます」

それだけ言うと安宅船を進ませる。

下田は北条水軍の基地がある一つだなと思い出しながら下田沖へ到着すると戦いが始まる。大砲を使いお互いが撃ち合うがそうそう当たるわけでもなく数日が過ぎた。


「加藤水軍が突入を開始しましたぞ」

砲撃が弱まった隙をついて突入をする。向井も関舟に乗り換え海面を滑るように突入を行い脇坂も長宗我部も突入を行い上陸を果たした。

下田城にとりつき戦っていると大黒丸が進み出てとどめは我らにと言うことらしいが、砲撃を開始したのは良いが味方もろとも吹き飛ばしており他の船から砲撃を停めるようにと連絡がいくが停めようとせず砲撃を続けた。

味方はそれでも頑張って下田を数刻で落として勝ちどきをあげた。


私も上陸して被害を確認し始めると騒ぎが起こった。

「貴様、陪臣(秀吉にとっての家臣の家臣)の分際で我らに物申すか」

長宗我部が騒いでおり近づくと向井がどうやら戦いについての事を詰問している。

「それは関係ない、水軍には水軍の決めごとがある」

そう言うと九鬼や加藤そして脇坂も頷く、

「わしは太閤殿下から大黒丸の力を発揮して早々に下田を落として小田原へ向かえと言う命をうけた、それの何が悪い」

「わかりました。そう言われるなら致し方ありません、今後向井水軍はそちらの水軍とは共に戦えませぬよろしいかな」

そう言うと他の水軍の将も頷き同意する。

ようは長宗我部水軍は今後他の水軍の領海に入る事を拒否されると言うことを皆から言われてようやく悟ったのか顔をワナワナふるわせている。

どうするのかと皆が思っていたので私が進み出て、

「わかった。それまでにしなさい」

私は長宗我部を見ながら、

「今回の事は水軍としてそれぞれが太閤殿下のために来ている。陪臣も関係あるまい小田原へ至急向かうがよい」

表立ってはどうのはしないがさっさと向かって謹慎をしておけと暗に伝えると何も言わずに行ってしまった。

「向井殿、よう言ってくれたわ陸の者に何がわかるかなあ」

嘉隆(九鬼)が加藤と脇坂の水軍の頭に同意を求め頷き返して話し合いは終わった。


「よう兄貴、さっきはありがとな長宗我部も素直にしたがって丸く納められたわ」

嘉隆が嬉しそうに言うのを笑顔で返し向井を呼ぶ、

「向井殿の手落ちはない、しかし揉め事をしたのも事実なのでな上様には伝えておくから後方の警戒に当たるように」

これでお互いを非公式に罰した事により秀吉の奉行衆の介入を阻止した。

向井は黙って頭を下げると清水へ戻ると関舟に乗り、私は嘉隆と共に小田原沖へと向かい秀吉の元へと嘉隆と顔を出した。


「報告は読んだ、それぞれがあろうがまあよい」

秀吉は長宗我部に泣きつかれ不機嫌を全開にしてこちらを見ている。

「今は小田原城攻めが優先と思いこうしました」

「嘉隆ようやった頼むぞ、忠実は北方隊に向かい目付をしろよいな」

これが私に対する罰と言うわけなのだが気にせず頭を下げてさがり、下総の北条の城を攻略している家康の元へと向かった。

「忠実、頼むぞ」

家康に報告すると正信と共に迎えてくれ報告をすると一言言われ正信も静かに頷く、関東への徳川の転封が内々に決められており伊豆はすでに伊奈が入り治める準備をしており私にも各地のことも含めて太閤殿下の命に従えと言うことで先ずは関東を横断して北へと向かった。



松井田城へ到着すると搦め手から攻めている利家(前田)の元へと顔を出す。

「中根殿軍監ご苦労」

久しぶりに会う利家に迎えられ戦況を聞く、敵将大道寺が強固に守っておりようやく昨日搦め手を破り曲輪を1つ占領したと、

「あれは利長殿か頑張っておられるな」

次の曲輪の攻撃には利長自らが指揮をとり行っているようで若い頃の利家を見るようでお互い年を取ったなと笑っていると景勝(上杉)と昌幸(真田)が顔を出した。


「ご苦労、関白殿下には早期に関東を押さえることを願っている。頼むぞ」

秀吉からの言葉を伝えると3人は頷きそれぞれの陣に戻っていった。

翌日からも猛攻が続き水を断ち兵糧を焼き追い詰めていく、

「大道寺はどうしても開城しないと言うか」

利家もだが景勝も敵の事を称賛しながらもここに止めておかれることに苛立ちを隠せない、

「本曲輪のみだが」

景勝も静かに言うのを幸昌もため息で見上げており損害を気にせずと言う話になったのを私が使者として会ってみようと言い松井田城に向かった。

人の焦げた臭いが充満しており人を狂わせる原因だなと思いながら曲輪を抜けて二の輪に入る。

「下がっていてくれ」

景勝の家臣に一言言い焼けて鉄砲の弾を撃ち込まれているが辛うじて支えられている門をくぐった。


「徳川家家臣中根忠実と申します」

ぼろぼろで痩せた武将が進み出て、

「北条家家臣大道寺政繁と申す。使者と言われるが降伏するつもりはない」

決意は揺るがぬと言うことだろうか、目の光は失っておらず家臣も同じと言うのが見てとれる。

「お孫さんを逃がしてまでの決意はわかっております」

そう言うと捕まったのかと落胆するが孫と引き換えにと言うのは受けるつもりがないと無言で言うので、

「真田が見つけたが農民の子供かと言うことでそのまま放免したと言っていた」

「それでは何の御用ですかな」

不安が出てきた政繁に脇差しを腰から抜いて渡す。私を見て脇差しを見て私が頷くとゆっくりと鞘から抜いて刃紋を見て鞘に納めた。

「何故これを、どうして中根殿が持たれているのか」

周りはわからなくとも使えた主の持ち物に政繁が気がつく、

「私が織田の姓を名乗っていた頃に今川の最後の当主を義父である氏康殿に届けたときに託されたのです」

「織田と言えば信照殿か、氏康公がいつぞや言っておられた。もし戦場でお目にかかったときには私だと思いながら話を聞いてやってくれと」

氏康の細かい配慮に感謝しながら政繁を黙って見ている。

「わかった開城する。家臣の命だけは助けてくれ私の首を差し出すから」

そう言われ私は頷くと開城となった。


「大道寺は殺すには惜しい、この先の城などにも精通しておる」

昌幸が開城した政繁に同情して景勝も同意する。

「わかった私の責任で赦免しよう太閤殿下にはそう報告をしてくれ忠実殿」

利家に言われ私は氏康の事を考え同意した。

上野になだれ込み次々と城を落とすと石倉城にとりかかる。しかし今までと同じように城内は年寄りや女子供でしかもこちらは大軍なので勝負は決まっており松平康国が交渉に当たり開城の手はずを整えていた。

「明日開城して引き渡すと言う話になりました」

利家と景勝そして幸昌と共に報告を聞いて戦わずに終わると言うのでホットしながら受け入れを準備する。

翌日、朝から康国が配下と共に正面の門から入ろうとしたときに事が起こった。

相手の将が何かを言いそれを否定する康国、相手は何を考えたのか脇差しで康国を刺して門を閉じろと言い始め、康国の配下は主を斬られ怒りと共に襲いかかる。

「真田よ何かあったか知らぬが兵をお互いおさめさせよ」

利家が昌幸に静める様に言うが激昂した双方はそのまま城内で戦いを始め他の兵も攻めかかり城に火がかかり城兵は全員命を失った。

康国が亡くなりその理由を聞くと勘違いにより騙されて開城してしまったとおもったらしい、

「お互いの意思の疎通不足で命を落とすとは、すまないが忠実殿には徳川殿に知らせていただきたい」

利家に頼まれ急ぎ家康と秀吉に書状を書いて小太郎に頼んだ。


翌日には上野から武蔵に入る押さえの鉢形城を攻略することになり北条では主戦派の氏康の息子で氏邦が守っていた。

「二つの川にはさまれた天然の要害、石垣も見えると言うことはかなり改修されて攻めるに難しい城だな」

利家が言うと景勝は頷き昌幸が、

「何れにしても攻めてみないことには、搦め手は」

「我らが搦め手にまわろう、景勝殿は昌幸殿と共にたのむ、氏邦と言えばあの方が亡くなられたとき一益(滝川)と戦い勝利したと、一益の話でもなかなかの武将と聞いている。気を抜くなよ」

そう言って戦いの火蓋が斬られた。


正面からは上杉勢と真田勢が共に攻めかかり、搦め手は前田勢が長子利長が指揮して攻めかかる。

車山の本陣から軍監として利家と戦況を見ていく、猛勇な上杉勢が鉄砲を撃ち込みながら牽制しており、その勢いに押されたのか北条勢の反撃は小さいので上杉の侍大将が足軽に破城槌で門を破れと命令を下す。

「まだ早いですな」

戦いが始まってまだ一刻(二時間)しかたっていないのに敵の反撃が弱いとした上杉の侍大将のうかつさに思わず口に出していってしまう。

あと少しで取り付けると言う時に塀や門の後ろに隠れていた北条勢が立ち上がり鉄砲や弓そして石等を上杉勢に叩きつけ反撃を開始した。

「さすがは上杉勢、崩壊してもおかしくないが耐えておる忠実殿」

利家も味方の戦いに声を出すが、

「じゃがあの虎口(反撃しやすい門の作り)から出てきよった」

耐えてきた上杉勢に北条勢が城から討って出て乱戦に持ち込む、一方的な攻撃に上杉勢は崩壊してしまい後ろの控えを上杉勢は投入した。

「あの様な狭い地形で混乱を増すばかりではないか、何を焦っておる」

秀吉からの書状は主戦派の氏邦の首を早く届けろと言うのと徳川勢と浅野勢を合流させると書いてあり、ここにいる武将達は援軍が来る前に攻め落とさなければと少々焦っている影響が出ており、小さなミスを続けてしまっている。

「利長も攻めあぐむか、無理はするなと言え」

利家は息子に早々に攻め落とせないと覚悟したのかそう命令した。


「失敗に気づいたようだな」

上杉勢は退きの陣太鼓が鳴らされ代わりに真田勢が門に向け攻撃を開始する。

それを見計らって北条勢は城へと引いて真田勢の鉄砲に耐えていると引いた上杉勢が再度突撃をかけた。

「もう少し広ければだが」

利家の言葉に私も頷く、真田勢の横を攻め上がるがそのすぐ横は崖であり押し出された味方が崖を落ちていき反撃を食らうとさらに逃げたのが落ちていった。

夕方になり味方は全軍引いて景勝と昌幸と利長が戻ってきて状況の説明をする。

特に有効な手だてがないまま力押しでの攻城戦を繰り返し氏邦は良く押し返した。

半月がたち入れ替わりで攻め続け北条勢の疲れを積み重ねていたがこちらの疲れも頂点に達していた。


「利家殿、氏邦は意地でもと言うことか」

家康が静かに聞くと頷き鉢形城を見て、

「北条の意地なのでしょう、積極策が問い入れられずに滅ぶと」

「そして花は散ると言うことか」

二人の武将は誰かを思い出すように城をながめ再度城攻めを行った。

「義弟よ大筒を運び入れた。車山に設置する」

義兄である忠勝(本多)が軍監の私に本陣前に設置すると言い利家に後ろに下がってもらい設置する。

「最後の最後まで降伏するとも思えませんが」

「だが味方の損害が馬鹿にならんのも事実だし我々の領地となるから長引かせたくない」

当然領民も城兵として参加はしており長引けばこれからの領地を治めるに当たっての弊害が出てくると考え大砲をと言うこと、

「この部分が井戸で兵糧庫と火薬庫です」

小太郎からの城内の簡略図を見せて場所を伝えると直ぐに砲撃を開始した。


数日間砲撃と共に攻めかかっていると小太郎から呼ばれた。

「すまぬな小十郎」

誰かと思えば義父に頼まれ前田に戻った慶次郎でありこちらに来いと首を向け、搦め手から離れた場所につれていかれると少年が一人おりこちらを睨み付けてる。

「誰だこの愛想のない小僧は隠し子か」

相変わらず馬鹿な事を言うなと言う顔で慶次郎が、

「氏邦殿の末子、庄三郎だ」

慶次郎がまた面倒を持ってきたのかと思いながら力なく座り込み、

「俺のところへ連れてくれば何とかすると思ってるのか」

「得意だろう、俺の息子のこともあるからな」

「構わんが親にも一言言ってやらんとな」

「そこはお前の口先で開城させれば良いだけだ、それと庄三郎には娘をと思っている」

その発言に慶次郎らしい子煩悩さがわかり苦笑しながら承知をして、

「庄三郎、面頬をつけて私の小姓として使えろわかったな」

そう言うと慶次郎を見て頷いた。


「小太郎、この子の口および首回りに赤い病の様な発疹を頼む、義兄には話しておかなければなるまい」

そう言って本陣へ戻り忠勝に借りている一軒家に来てもらうと庄三郎の事を話した。

「それで赤い発疹と面頬か、そうするしかあるまい上様には伝えておく」

氏邦に対する好意なのか余計な事はなにも言わず庄三郎の顔を見て出ていった。

「その方の名は伊勢庄三郎、津島の中根の商家の知り合いから小姓にと言うことだ、口は災い知り合いにあってもわしが許すまで声を出してはならぬ、よいな」

ばれれば打ち首になるのでそこを念を押して翌日本陣へと連れていった。


「浅野殿お待ちしていましたぞ」

ようやく合流して総勢5万の大軍となり落ちるのも時間の問題だが氏邦は降伏を受け入れず戦い続けている。

「あと少しで落とせるのを何故ちゅうちょしておられるか、太閤殿下がお待ちになられておるのに」

本陣に来るなり言うのを皆押し黙るので私が、

「彼の人柄に惜しいと思っているのだ皆」

「ではどうする。このままで良いと思われるのかな」

秀吉の親戚であり豊臣政権では無視できない力を持っているので返事に困ると、

「忠実殿すまないが今回も使者として頼めるかな」

利家から頼まれて了解すると庄三郎を連れて鉢形城へと向かった。


「見ておけ、父の苦悩を」

焼け落ち地獄絵図の城内を歩き広間にはいる。

「徳川家家臣中根忠実と申す。降伏をすすめにまいりました」

氏邦はしっかりとした目でこちらを見つめており面頬をつけた庄三郎を見てもわざとか反応しない、

「降伏の使者ご苦労、しかしどんな者が来てもわしはかわらぬ北条一族として最後までまっとうする」

そう言われ本当に思っていると言うのがわかり頷き、脇差しを抜くと庄三郎に渡して氏邦へと持っていくように伝える。

氏邦の家臣は氏邦が手で制したので動かず脇差しを受けとると抜く、しばらく考え鞘におさめると、

「そうか、すでに父上にはわかっておられたのか、我らが自らの力におごりこうなる事を」

家臣は何の事だかわからずに氏邦を見ており氏邦はゆっくりと目を開けると、

「わしの命と引き換えに城内の者の命を頼む」

そう言って庄三郎に脇差しを返し動揺する家臣に優しく語りかけ私と二人で話したいと家臣達を下がらせた。

「政繁もこれを見てと言うことか、父上は常々領民を大切にするようにと言われたが今回の戦いでも動員して苦しませた。顔向けできない」

そう言いながら廊下の端で脇差しを抱えて待っている庄三郎を見ながら、

「そんな私でも子供は可愛い、すまぬが頼みまする」

頭を下げた氏邦に、

「お任せください、それと城から抜け出すのを手伝った友人前田慶次郎が娘を庄三郎にめとらせると」

「親として幸せはありません、妻は諦めている様ですが致し方ない私の胸にしまっておきます」

そう言うと受け入れの使者などの話をして家康の元へ戻った。

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