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一夜城

正月の年賀が終わった頃に駿府から知らせが来る。

「朝日姫が亡くなられたか」

報告を聞き家康も嫁いだ理由はどうであれ喪にふくし秀吉も妹の死を悲しみながら戦いへの準備を休まず続けている。

「参ったな、義父から今回の出兵を頼まれてしまった」

荒子の元城主である利久に書状で懇願されてしまった慶次郎が悩む、

「さんざん迷惑をかけたのと、これから家族を頼むことになるだろうから承知するしかあるまい」

「すまぬな、利照とも会いたかったがまあ良い何れだな」

そう言うと義父に返信をして旅立つ準備を始めた。


息子の利忠にも出陣の準備をするようにと書状を送りまこが手配した兄信長を彷彿させる南蛮鎧を受けとると徳川の評定が開かれた。

「我らが先鋒として沼津に到着しだい陣をしく、直政よ忠実と共に任せる」

東海道を進むことになり箱根峠の手前にある山中城を秀次を主将としてその一軍で徳川が加わることとなっており、小太郎に情報を確認させ山中城は改築中だが夏ごろに完成と言うことをそのまま伝える。

「この程度の城なら多勢に無勢一気に落とせると思いますが」

直政はすでにやる気をみなぎらせており榊原も同意する。

「前哨戦ですから秀次殿の性格なら派手に総攻めでと言うことになりましょう」

正信(本多)が言い最後に家康が、

「勝つのは揺るぎないが損害を最小限にとどめるように」

こうして先鋒となった直政と私そして他の将と共に東海道を下り兵を合流させ沼津へと入った。


先ずは本隊が来たときのために陣の場所を決めていき、関白と秀次そして家康の場所を整地させていると小太郎が中山城の兵が偵察にこちらへ降りてきてると伝えてきた。

「利照、直政ついてこい」

私が言うと二人は何か察した様で馬に乗ると私の後をついてくる。

御殿場方面に大きく回り込みながら途中小太郎が南に俺その後をついて林を抜けたところに十騎程の北条勢が沼津の作業を見ておりそこを奇襲した。


一番最初に気がついた馬上の武将に槍を突き入れ落馬させる。その横を利照と直政が通り抜け槍で攻撃を仕掛け討ちとる。

北条はあわてて逃げ出そうとするが利照と直政の前に倒されてしまった。

「幸先吉」

直政が満足そうに討ち取った北条の兵士を馬上から見る。

「小太郎、将は本陣へ兵はこのまま始末をよろしく」

そう言って主が居なくなった馬をつれて戻った。

「向井殿がお着きです」

北条の水軍から我々を守ってくれる徳川の水軍が沖に停泊して頭である向井が挨拶に来る。

「向井殿、海は任せますぞもうしばらくすれば関白も京を出発する」

「そうですか、北条は最近港にこもり近づけば城からの砲撃をしてきます」

「戦いが始まるまでは自重と言うことだろう、それと九鬼は良いが長宗我部は癖があるからな味方とはいえ注意しろ」

「命令を遂行するだけです」

この頭は人懐っこい顔をしているが飄々とした言い方をするので好かれるか嫌われるかなのだが、本人はそんなことをきにする様子もなく私から手みあげの灘の酒樽を担ぐと安宅船へと戻っていった。


京を華やかに秀吉の本隊が出陣したと知らせを受けそれをわざと流す、兵力も正確に20万と噂で流すと小田原では蜂の巣を突っついた状態になり、野戦を主張する北条氏邦が籠城と言う消極策に怒り鉢谷城へと戻ったと報告を受けた。

「義父上、今回の北条は籠城となったようですがどの様に考えておられますか」

直政も興味があるのか家臣の報告を切り上げ横に座る。


「勝利を得たいなら野戦だろうと思う、織田で言う桶狭間だ」

「しかし20万の大軍ですよ」

利忠が言うので、

「桶狭間も二万五千に対して織田は三千、籠城して勝とうと思った時点で敗けでしかない」

「奥州の大名が援軍に来るなら、伊達等が」

「最上や佐竹が牽制するから出せても一万、使いようによってだが北条が消極策なのでたいした戦いはできぬ、一時の勝利を得てもな」

「じゃあどうする」

「箱根の山にこもり地の理をえて誘い込み出血させ焦れた敵から順に釣り上げ殲滅する」

「中山城等がありますが」

利忠がその方向を見上げながら言うので、

「二、三千に10万、前に城を見たが良い造りだがただそれだけ、うんかの如く来る敵に一日も持たないと考えるのが自然だろう」

「北条が籠城を選んだ理由は」

直政が聞いてくる、

「25万の兵糧だろう、1年や2年総構えの小田原城相手に補給が続かず撤退すると考えているだろう」

「九州征伐を北条は知らぬのか」

「知ってはいる。だが謙信や信玄を退けたと言う自信がかえってその現実を忘れさせてくれてるのだろう」

「ですが氏直は話によるとそこまで愚かではないと聞いております」

利忠が食い下がるので、

「信長もそうだが秀吉もそう、信玄や上杉とは違うと言うことだわかるか」

3人に聞くが答えは出てこない、

「銭の力を知っている。確かに自領で収穫できる兵糧は限りがあるが銭を使えば敵方のさえ奪える。秀吉が行った鳥取の生殺しが良い例だ、商人に鳥取城内の兵糧さえも高値で買わせ餓死させたのだからな」

「それでは直政殿のような猛将が活躍する前に決着がつくと」

「信玄もだが良将は戦う前に勝ちを8割方決め不確定要素を無くしたと言うことだ、その後を確実にするのが直政の武勇であり、三方ヶ原も長篠でも戦う前に決着はついていた。戦いは必然の結果の勝利だ」

利忠はショックを受けながら次々と合流してくる大軍を見つめていた。


「きたな、その方に秀次の側で跳ね返らないように見守ってほしい、本来なら大納言秀長が副将だが体調が悪く大事をとらせておる」

「わかりました軍監としてでよろしいでしょうか」

「いや、それでは秀次もやりにくかろう、そこでこれを身につけ面頬を身につけよ、秀次は呼び出しておるから急がんと間に合わんぞ」

よりにもよってこれを身につけろと呆気にとられているのを秀吉は嬉しそうに喜び小姓に私を着替えさせよと命じさせる。すべて脱がされると鎧をつけていき最後に低い鳥帽子と面頬を付けさせられ秀吉は大きく頷くので、

「藤吉郎よさっさと平らげお前の天下を見せよ、つまらなければどうなるかわかっておろうな」

私が淡々と通る声で言うと目を細目て嬉しそうにしている。

「関白になんと言う口の聞き方、そこへなおれ首を打ち捨ててやろうぞ」

どうやら秀次がタイミングよく入ってきたらしく私の無礼な言葉に反応したらしい、

「首を跳ねられたいか小僧」

目でにらむと顔を引きつらせがらも、

「関白の甥である権中納言豊臣秀次である」

そう言った瞬間太刀を居合い抜きで秀次の首筋に当てた。

「ひーっ」

顔を真っ青にしてガクガクする秀次に秀吉が、

「良いか信長殿だ、失礼の無いようにな」

相違って笑い私は刀を納め、

「中山城を落とすぞ」

そう言うとあわてて走り去り秀吉と共に笑った。

「頼むぞ」

一礼をして後を追う。

逃げ足は早いが小太郎に案内させ先に秀次の陣屋に入って待っていると息を切らして入ってきて私を見ると崩れ落ちた。

「秀次様、いかがなさいましたか」

秀次の家老で一柳があわてて起こすと、

「直ぐに山中城を落とすぞ、我らの強さを北条に知らしめてやるわ」

一柳もなにかを察したのか頷くと東海道を箱根へと向かった。


「殿は承知か、西の丸を攻めると言うことか」

すでに秀次と家康は作戦を決めていたが秀次の跳ねっ返りに秀吉がお灸を据えると言うので私の出番と言うことで家康も承知していると言うことだった。

東海道を登ると目の前に街道を取り込んだ山中城が見え、手前の曲輪は秀次勢が、左奥が西の丸で徳川勢が配置についた。

熊と呼ばれ秀吉の覚えめでたい一柳が左翼で右翼が中村そして中軍が山内が配置についていると秀吉が嬉しそうにあがってきた。

「中納言(秀次)どうかな、一氏よどう見るか」

子飼の武将ばかりで気心は知れている仲なので気さくに話す。

「このような小城直ぐに落とします」

「どちらを優先して攻めるかでしょう」

一捻りでというのだが大雑把で秀吉も少しだけ微笑みながらも、

「熊に落とさせれば分断と他の場所もわかろう任せる」

そう言って見渡せる場所に秀次をつれて移動した。


「中納言、初戦をどう飾るか見させてもらうぞ」

そう言うと余裕の観戦をするつもりで小姓をよび茶を出させる。

私は秀次の後をついて行き一氏や一柳等の意見を聞き秀次の決定を見守った。

「北条はどのくらいの兵を籠城させているのかこのような小城に」

秀次が呟くので横から、

「四百程、間宮と言う老将と本丸には北条氏勝」

そう言うと驚きながらも周りに家臣がいる手前威厳を保ちつつ、

「たったそれだけか、しかしよう調べておるな」

秀次は感心しているがそれ以上は何もしない、本来なら情報を前戦指揮官に知らせるべきなのだが、

「おお、あそこに立つのは誰か」

城の前の高台に豊臣方の武将が立つのを秀次が嬉しそうに聞くと小姓が、

「あれは中村一氏殿が家臣、渡辺勘兵衛にございます」

そう言われ短い期間だが自分の家臣だった了をみて嬉しくなる。

その瞬間北条から鉄砲の一斉射撃がおこり秀次が、

「北条め我らの勇将を倒させるな攻めよ」

そう言うと合図が鳴り響き一斉に中山城へと取りついた。


小城にうんかの如く兵がとりつく、L字形のの内側から攻めている。本来なら二方向からの鉄砲の十字砲火でかなりの損害を出すはずだが敵が多すぎて意味をなさず次々と曲輪へと侵入していく、徳川勢も三の丸にとりつつあり鉄砲も散発的になり始めている。

「おおっ、ごらんくだされ味方が縦堀を飛び越えて隣の曲輪に取り付きましたぞ」

了も無事に先頭で飛び越えてその後を数人が続いており興奮して味方の歓声が沸き上がり続けと向かった。


次の曲輪に取り付き侵入しようとするが鉄砲での反撃が一気に激しくなり足止めを食らう、

「一柳殿があれに」

その側面を先陣を切って登り始め一気に決着がと思った瞬間、鉄砲の轟音に一柳が動きを止めその場に倒れた。

「一柳を助けよ」

秀次が叫び伝令が向かう、しかし絶え間ない弾の雨に雑兵も倒れ身動きが取れなかった。

「小太郎」

私がてを伸ばすと遠当てが手渡され構える。

北条方は混乱した一柳の兵にここぞとばかりに攻撃を繰り返し、指揮をとっている武将が壁の上に現れて狙いを指示しておりそれに狙いを付け引き金を絞った。

轟音と煙と共に武将は吹き飛び統一した攻撃ができずに弱まると了が登り詰め向こうへと消えた。

「すごい、すごいですなさすが信長殿」

秀次が私を指差し名前を連呼する。南蛮鎧に頬面の私をみて信長と秀次が連呼したので周りの小姓は不思議がり老将は驚きと戸惑いと畏怖で力が抜けたのかへたりこんでいる。

遠当てを小太郎に渡すと曲輪へ周りに関係なくゆっくりと近づき一柳の元へと向かう、すでに命の炎は最後を迎えており何かを呟いている。

「秀吉様、ここで先にいくことお許しください、秀次様の事よろしくお願いしますぞ」

そう言うと炎は消え私は熊のような巨体を担ぎ上げると秀次の元でなく秀吉の元へと向かった。


「熊よ、わしをおいて先にいくとは、その若さで死ぬとはなぜじゃ」

秀吉は珍しく取り乱しており美濃の頃からの武辺の家臣であり甥の為に家老としてつかわせたのだが、

「中村家家臣渡辺勘兵衛、中山城を落としたり」

城には中村の旗が立ち攻城戦は終わった。

秀吉は数日無言で過ごしており、中山城を自分が落としたと空気が読めず騒ごうとする秀次に拳骨をおとして気絶させ秀吉の前から下がった。


そのまま街道を登り箱根に到着すると眼下に巨大な総構えの城が広がっていた。

「あれが謙信や信玄をも退けた小田原城か、大きいが大坂と違って美しくないなそう思わんか信長殿」

「攻めるとしたらかなりの損害が出ますがどうお考えですかな」

「20万で総攻めすればすぐ落ちよう」

「そして大勢の家臣や武将が亡くなります。そこまで落とすほどの価値がありますかな」

「落とせば逆らうものはおらず天下泰平ではないか、多少の犠牲気にすることもあるまい」

「そう思っていれば自分の命も軽んじ死を迎えることになる。秀吉を見よそれを肌で感じておるのがわからんか愚か者」

そう言うと秀次は言い訳を始めるが無視をして陣屋を荻窪口におくと秀吉の元へと向かった。


「信長殿、この城を落とすにはどうすれば良いのかな」

秀吉に誘われ今と変わらぬ箱根湯本での温泉につかる。

面頬は外せないが温泉は老体に入った体にはよく利くようで体の凝りがとれていくようで意識を保ちながら、

「戦意をそぐ、秀吉が得意の事をすれば」

「女房を呼び寄せ賑やかにするということか、他にないか」

「墨俣をすればよろしいかと」

「墨俣か、懐かしいのう。その方の鉄砲に助けられたわな、あれでようやく家中としての足掛かりを作ることができたからな、それで具体的にどうする」

「小田原から丸見えの山の上に一夜で城を建てれば」

「見えている所に1日でか、面白いな官兵衛(黒田)を呼べ」

すぐに官兵衛が顔をだし具体的な話をする。

「城完成後に周囲の木を伐採すれば良いと、それでは北条が驚くような石垣造りの城を建てましょうぞ」

そう言って官兵衛は準備をしに下がる。

「北条の田舎侍が驚く顔みたいのう」

秀吉は大名に妻子を呼び寄せるように言うと共に海上から九鬼を筆頭にした安宅船で砲撃を城内へ撃ち込ませた。


私は中根に戻ると家康のもとへ顔を出す、

「忠実ご苦労、直政と利忠が小田原城内へ攻めこんだようだ」

嬉しそうな家康に、

「井伊の名もさらに知れ渡りましょう。それで御用とは」

「氏直の元へ出向き督姫の様子を見てきてくれ」

家康の娘で氏直の正室となったのだが今回の事で板挟みで苦しんでいると言うことだった。

「私も用事があるので使者として出向きます」

家康が頷き私は小田原城内へと向かった。

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