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孤独と補佐役

勲功は博多で行っていたが私は先に建てられた聚楽台へもどり家康に報告した。

「ようやくもどりましてございます」

書院で正信と三人で話をする。

「ご苦労、殿下からも加分のお褒めを頂いたが、積極的な戦闘は避けるように」

「申し訳ありませぬ、関白に恩を売るのにちょうど良いと思いまして、自重致します」

徳川が秀吉の下で兵を消耗する愚かな行為は厳に慎むようにと言われていたので再度釘を刺されるがどちらかと言うと私が命を落としてしまうことを恐れて心配してくれたことであり感謝と謝罪で頭を下げる。

「どうであったか」

今回の事を聞かれ、島津兄弟の事や薩摩の事を話す。

「バテレンについてですが、やはり人身売買や強制的にキリスト教へ入信させたり、神社仏閣を破壊したりと傍若無人で関白も博多からバテレンを追い出すそうです」

そう言うと家康よりも一向衆信徒である正信の目が光る。

「殿下はいずれは禁止にすべきと言うことになるかな」

私は少し考え否定する。

「寛容さが売のお人ですから最後が甘いと言うことでしょう」

「忠実は何を信仰しておる」

唐突に言われ、

「何処にも、強いて言うなら兄を崇めています」

そう言うと納得して、

「いずれは話すことになろう」

そう言って話を終えた。


「忠実、九州征伐において大友への援軍や島津での使者誠に充分な働きをした。大判を10枚使わす」

秀吉が戻ってくると私は呼ばれ緒大名の前で恩賞を貰う。

領地はいらないと伝えているので金でと言うことを先に話していたのでそう言われ自分の顔ほどの大判をいただく、

「九州討伐も終わり残すは関東と奥羽、惣無事令を出すことにしている。皆の者戦いの世は終るぞ心せよ、そして忠実よ10月に北野天満宮で野点を行う、茶頭達と準備をすますように申し付ける」

こないだのを根に持ってるなと思いながら平伏して了承した。


「野点はどのくらいの規模をと考えられている御様子ですかな殿下は」

利休、宗久、宗及の3人を呼んで茶室でお茶をいただきながら北野の件を話する。

「実務は玄以(前田)が行う、要は京の人間に出てこいと言うことだ、排他的だからな」

新しくいせいしゃとなった秀吉に京が挨拶に来いと言うことでありかんばしくない結果になると予想する。

「難しいですな、関白の御意向でも動くとは思えませんが」

宗久が考え込む、

「客寄せで全てが金でできている茶室を公開して度肝を抜くらしいですが結果は」

宗及も不味い顔をする。

「我らは関白殿下と共に茶の席をもうけ来ていただいた人々を楽しませればよろしいかと思います」

利休が言うので納得する。

「忠実殿はどうされますか、前回のように」

「三成を困らせるのもあきましたしさあどうしましょうか」

そう言いながらあることをして特別に作らせたお茶を準備しておりそれを使うだけで良いかと思いながら、

「ちょっとだけいたずらしたお茶を皆様に当日御賞味いたしたいと思います」

後年に発見される物を苦味をおさえ旨味を増やす玉露製法を最初で最後この時代に振る舞おうと思い伝えた。

「それは楽しみにしましょう。当日早朝にお伺いさせていただきます」

そう言って下準備などを話し合い秀吉に報告をした。


「そうか、大々的に京にふれまわり行う茶に興味の有るものであれば代品でもよい参加せよと伝え、上下の身分もなくだ」

玄以と共に秀吉から言われ玄以は気合いをいれており私には、

「前回は佐吉がおちょくられた様だが何かするつもりのようだな」

玄以から見れば私の行動に釘を指してると思われなくもないが秀吉も人々にあっと驚く事をするのが好きなので私は笑い、

「驚くような事を考えております」

そう言うと元気は驚き秀吉は口許だけ笑った。


茶がメインだがどうするか考える。服装かテーブルと椅子を使うか等も考えていると三成の訪問を受けた。

「どの様なことをするかお聞かせ願いたい」

玄以に聞かされて居ても立ってもいられない様子で本題にいきなりはいる。

「お茶をだし客をもてなすだけ」

「その方法と服装等ですよ、あまりな振る舞いを行えばいかに中根殿とはいえ関白殿下の怒りを買うことになりかねませぬ、それを防ぐことが臣下の役目にございます」

道理は通っているが杓子定規に気に食わず、

「あれはだめこれはだめと言うなら余計な事をしたいな関白殿下の注目を浴びるような、そう怒りでもいいがそれは本題で取っておけば良いか」

三成は厳しい顔をして、

「それならば中根殿を拘束しなければなりませぬ」

「それは良い、怒りを買うのは佐吉と言うことか」

手段を選んではおけないとはいえ実施役の私を拘束すればどうなるかは目に見えている。

「兄上のを着てとも考えたがその方に免じてやめる。姿ではなく茶で当日驚かせよう」

「よろしくお願いします」

相変わらず堅いなと思いながら仕事に忠実な三成を見送った。


「これ使えないか」

兄上が好んできていた衣服であり、腰に虎皮をまいており始めてみる者達は驚いていたのを目の前のごとく思い出す。

外は藍染で袖を脱ぐと中は桜色に染めていたり紅にしてみたりと色々お洒落で、着なくなるとめざとくもらい受け部屋に飾っており、

「せっかくやったのに飾っているとは、おかしなやつだな」

兄上にも言われたが、

「もう少し年を取ってからにしたいかなと、年遅れでかぶくと言うことでしょうか」

そう言うと大笑いしていた兄上を思い出した。

「これは着ないのですか」

いつの間にかまこが部屋に入ってきて話しかけてくる。

「信長公の着ていたものだすごいと思わないか」

兄上である前に織田信長でありまこも嬉しそうに、

「飛ばされてきて泣きそうなほど大変な事ばかりでしたがそれが吹き飛ぶ位の衝撃です。あのお願いをしても良いでしょうか」

「なんなりと」

そう言って笑うとこれを着てみたいと言うので承知すると侍女をび私は隣の間で待つことにした。


ここまで本能寺の変から何とかやって来たがこれからは北条討伐や関東転封などもあり戦国ではもうそろそろ老衰で亡くなる同年代の話を聞いているので何時まで生きられるのやらと思いつつ13年後の関ヶ原は現地で参加をしたいと考えていると、


「人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり

一度生を享け、滅せぬもののあるべきか

これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ」


兄上の代名詞である敦盛を襖が開かれ兄上と錯覚するほどの鋭さで舞うと美しく微笑み胸の中へと飛び込んできた。

「どうでしたか、心臓の鼓動が高鳴って止まらないのです」

顔を上気させたまこを抱きしめ、

「兄上の鋭さと美しさを見せてもらった。習ったことがあるのか」

「はい、織田信長と言えばですからね」

そう言われ嬉しくて抱きしめた状態で部屋の中でぐるぐる回り目が回って抱いたまま尻餅をついた。


「茶会でまこもでて三成を焦らせろ、私がすると五月蝿いからな」

「はい、でも女性がよろしいのでしょうか」

まこも少しだけ心配するので、

「関白も誰でもと言ってるから問題なし、私の隣に場所をおき面頬を外すな」

「わかりました。無言で茶をたてましょう」

そう言って二人で大笑いしながら準備を行った。



茶会当日、朝から皆が並ぶ場所から少し離れた少しこんもり高くなっている場所に二畳ずつの場所をつくる。

まこには始まる頃にと伝え二人分のを小太郎と準備をしていると三成がやって来た。

「中根殿、奇抜でないと言うことはわかった」

三成が私に言いながら隣のスペースが気になって致し方ないらしく、

「隣は何方が」

「誰でもない気にせず茶をたてよと関白殿下の仰せに異議を申すと言うのかな」

そう言われれば言い返せない三成に、

「と言ってもお役目なのだからな、わしの一族だ出てみたいと言うてな」

そう言って手をふりようはないとジェスチャーして準備に入った。


「お着きの様ですよ」

小太郎に言われるとかごからおりてきたまこが素顔を見せずに座った。

「忠実殿」

3茶頭が始まる前に約束通り来てくれまこを見ると一瞬止まり、

「信長公、いや」

驚いている茶頭を座らせ玉露で茶をたてる。

座れば緊張の糸がはりつめ特に利休は抜き身の刃をかまえている威圧感を自然とだし刺激が強すぎたかと思いながら茶を出した。

それぞれ茶をいただくと宗久が、

「この茶は宇治ですがこの甘味と苦味が無い、製法いや茶が違うのでしょうか」

「これは秘でございます。誰にも明かさず墓に持っていきますれば」

そう言うとそれ以上は聞いてこず移動していただき三人は戻っていった


始まった様で松の道の脇に人々が集い茶をたてており徐々にだが賑わい始めている。

「小太郎茶をたてよう」

そう言うと音もなく座り私のたてた茶を美味しそうにいただき、まこの方へも移動していただいている。

「こんなお茶があるとはあの中のどの工程がなのか」

目ざとくしていたが理由は教えていないためそれでしばらく考え込んでいた。


ようやく一般の人々も私たちに気づき信長公がいると騒ぎになる。

おっかなびっくり遠巻きに見てはだれも座るものがおらずさらに騒ぎが大きくなるとようやく秀吉が現れた。

「信長公いや違う、忠実どういうことだ」

さすがは側に仕えて居ただけはある。すぐに見抜き私をにらむ、

「三成にも申しましたが我が一族に連なる者、関白殿下の御意向により誰でも茶をたてて良いと言われましたので」

そう言うと秀吉に対してまこが茶をたてはじめ私が促すと秀吉が座って茶を飲んだ、

「これはこれ程の茶は初めて利休が楽しみと言っていたが宇治は間違いないが、忠実」

と言いかけた秀吉は笑い、

「そうか吉野かこの茶もだがやられたわ」

そう言うと行ってしまった。

客は多いが見るところ京の人々はさほど参加している様子もなく秀吉の思惑がやはり外れたので不機嫌となっており、玄以が後ろにくっついて青い顔をしていた。


「いただけるかな」

主君である家康が人混みから現れまこの前に座る。徳川家康と言うことでまこも緊張を隠せずにいながら茶をたてさしだす、

「良い茶だな、そして懐かしいな忠実よ、あの頃を思い出すわ」

その出で立ちに遠い日を思い出して懐かしそうにしており、

「はい、我妻に趣向でこのような格好をさせております。よろしければ見ていただきたく思いますが」

そう言うと私は小鼓を持ち小太郎が笛をかまえる。

まこがスッと立ち上がり敦盛を舞い私は小鼓を打つ、その美しさと力強い舞は周囲の者を虜にしており終わってからも物音ひとつなく静まり返っていた。


「殿」

静けさを打ち破ったのは大名、加賀100万石の前田利家であり泣きそうな顔をしている。

「又佐か、公衆の面前で騒がしいわ黙って座れ」

本来ならば陪臣である私が大名に言えば良いとは言えぬがそれどころでもないと言うこと、

「信照様」

利家が思わず叫ぶので、

「信照も信長もおらぬ、わかっていよう」

それでもなおすがり付くような目をするので再度座るように言うとようやく従った。


「兄上の衣装があったからな私が着ようかと思ったが妻に着せて舞をさせると思った以上に兄上を思い出させてくれたからな、余興としてしたまで動揺させてすまない」

そう言うと利家は泣きそうになりながら、

「尾張のあの頃に戻ったようにございます。あの頃は何でも出きると思いあの後ろを必死についていったものでございます」

私がたてたお茶を飲みながら考え深げにつぶやく、

「皆がそれぞれを精一杯生きてきたのだからな、情けない顔をしていると兄上に笑われるぞ」

そう言うと横にいる家康が、

「我らも年を取りここまで来たが50年とは一瞬でしたな」

利家は何度も頷き、

「まさしく下天、されど我々は統一を成し遂げ殿に少しでも近づければと考えます」

そう言うと力強く立ち上がり人混みへ消えていった。

「明日もと言いたいところだが忠実よその方を見ていると明日以降取り止めになるように思ったが」

家康の鋭さに笑顔で、

「関白は京の民衆に自らを受け入れさせる布石としてこの茶会を執り行いましたが」

「そうか、京は難しいからな」

そう言うと他の所へと出向いていった。

予想通り明日からのは中止となり新しく聚楽第に出来る館がまだ出来上がったおらず遊廓に寄せていたのでそちらに戻った。


「感謝するよ、まこには」

帰りつくと礼を言う、

「徳川家康や前田利家、お松さまに会いたいですね」

興奮冷めやらぬ様子でまこは話しており私もその日は皆を集め大いに飲み明かした。

「そう言えば後誰に会いたい」

酒で火照った体を夜風に当てながら寄り添うまこに聞く、

「真田幸村、伊達政宗、片倉景綱、直江兼続、宮本武蔵」

「でも、忠実様の側にいつでも居られることが一番ですから、おまけです」

そう言うとほっぺにキスマークをつけてくれ嬉しそうに夜空を見上げた。


数日後秀吉に呼び出される。

「茶会でのあれの作り方教えよ」

玉露の事なのだが、

「あれはたまたまにございます。茶頭からもお願いがありましたがこれに有るのみでほざいます」

「偶然か、宇治の者にも聞いたが製法は変わらなかったと」

収穫の前に布をかけたのは気がついてないらしくホッとしながら献上した。

「それとな、一つたのみがある」

頼みと言っても断れないのだが、

「ねねが体調不良で寝込んでいる。医者もいるが芳しくない」

変と言えば変だが久しぶりにと思い了承して大坂へまこを連れて向かった。


「北政所、ねねさまに会えるなんて楽しみですね、何も言わなくていいですどんな人か楽しみなので」

今回は船に乗りゆるりと進む、少し肌寒いが日向ぼっこをしながらで昼には到着した。


「信照様お久しぶりです。うちのひとも偉くなりまして私も北政所と呼ばれ少々窮屈ですね」

相変わらず昔の名で呼ぶねねに苦笑しながらまこを紹介する。

「中根忠実の妻まこにございます。お会いできるのを楽しみにしておりました」

「まあまあうわさはうちのひとから聞いてますよ、もし手を出そうとして来たら足げにしてくださいな」

そう言って三人で大笑いしたところで本題に入る。

「気にしすぎですよ心配事があるとこうなるだけですから」

お腹の調子が悪く便秘らしい、

「お寺に(ヨーグルト)があるからそれを取り寄せれば」

まこがそう言ってくれねねに後日改めてと言い京を巡りようやく手に入れた。


「これが酪ですか」

困惑するのは当たり前でこの時代に牛乳さえ飲むと言う習慣は無く躊躇している。

「美味しいですよ」

まこは嬉しそうに食べており私も懐かしくと思いながら食べたが酸味が強いながらも美味しい、

「あら、痛んでいるわけではありませんね」

「はい、天竺のむこうから伝わっておりますお腹の調子を調えるものです」

まこが説明と作り方を書いたのを渡しながら言う、

「それと有効な運動を、女子会するから」

そう言われてねねに挨拶をして下がった。


「お久しぶりにございます」

声をかけられ振り向くと秀吉の弟秀長が丁寧に挨拶をして来る。

秀長に誘われ二人だけで茶室に移動すると、

「秀長殿か、久しぶりですなお忙しそうで」

顔色を見ると疲れと体調の悪さが出ている。

「忠実殿には兄上に格別の配慮をいただきありがとうございます」

「天下の大納言ではないか、気にすることはないですよそれよりも体調はまだまだ良いとは言えないようす、豊臣の為しっかり体調を整えた方がよろしいですぞ」

「そうも言ってられません」

そう明るく言うが長くは無いなと思いながら、

「豊臣の良識は秀長殿ではないですか、秀次殿も小牧から必死になられ京での評価も上々ですし、討伐でも秀長殿の代役を勤められたではないですか」

歴史に書かれている殺生関白や人の道に外れたことはせず、和歌や茶の湯もそれなりであり利休の評価も高い、

「兄上は孤独には耐えられませぬ、裏方の私がいるから耐えているのであって秀次では」

こんな顔をするのは初めてであり心労が体おも蝕んでいると言うことであろう、

「棟梁となれば孤独に耐えられなければならないし、自制心も必要だが秀長殿がになっているが自覚がなければな」

「信照殿としてならばお聞きになると思いますが」

私は悲しそうに首をふり、

「秀長殿がおられなければ信長と言う存在も越えたと考え始め滅亡へと進めよう」

秀長の人柄は好きであり兄以上の苦労人であり居なくなればと言うのは本人も自覚がある分だけ救いようがないと言うこと、

「私の命が尽きるとき兄上に私の命日に信照様の言葉を一つ聞いてくれるように頼みたいのですが、ご迷惑は承知しておりまする」

恥も外聞もなく泣きながら頼むが、

「棟梁は今も昔も孤独です。兄上である信長公もそうであったように、権力をつかめばさらに疑心暗鬼にもなりましょう。私はそれが耐えられずに織田の名を捨てたのですからあきらめてください」

絶望を顔から消そうとしながら秀長は、

「それでも兄ですから、この身をていしていきます」

結果が予想できてしまう不幸を背負いながら茶室から出ていった。



「そうか、長くはないと言うか」

家康と正信が同席して3名で話をする。

何時も私が一方的に話し二人は沈黙して考えをまとめていく、正信の記憶力は大したもので矛盾やおかしいところは終わった後に聞いてくる。

「数年持つか、秀長が亡くなれば止めるものがおらぬと言うことか」

「はい、関東そして奥州の征伐が終わり安定を向かえるはずですが」

ゆっくりと二人を見て、

「信長公の想いを果たすため外征に赴くと考えます」

二人の顔色は見事に変わらず頭の中だけが目まぐるしく回転しているようだ、

「明天竺へ向かう、その手始めに隣国を攻めると思います」

「かの国相手なら十分勝利できましょう。しかしその後ろの明と、かの国の住民の一斉蜂起、明なら60万は動員できると聞いておりますれば成功は万一にも」

途方もないことを言っているはずだが二人は何も言わない、

「そしてここが逆転の機会かと存じます。外征に参加した大名は軒並み人的金銭的にも回復できないほどの損害を出しましょう、そしてここからがお許しがあれば私だけ外征に参加し豊臣家に大きな傷を残したいと思います」

二人が沈黙したままなので続ける。

「いくつか局地的な勝利は得ますが領地は手に入らず恩賞の問題になるでしょう。現地で武功を上げ当然恩賞をもらえると思っているのに対して秀吉の周囲を固める文官は、結果領地を得られなければ与えられるものがあるわけではないので当然拒否をして険悪になりましょう」

それだけ言うと二人は頷いた。

「わかった我らは最後まで残り、もめた場合に最後に双方のとりなしをせよということだな」

家康は頷き正信が、

「しかし会った頃から変わらない、知っている言うに話しそれが大まかに当たる。私でなければ頭がおかしいと思われても致し方ないのだがな」

何時ものように心配をしてくれるので、

「これを言えるのはお二人しかいません、それではもう一つ当たれば驚くことを」

「殿」

「任せる」

そう言われて、

「これは徳川の重大な事です」

正信は目を閉じ家康は目尻を細める。

「秀吉にそう遠くない時期に配置がえを言われるでしょう」

衝撃的なことであり普通の武将なら大騒ぎをするがさすがこの二人はおくびにいも出さぬ、

「替えの領地はと言われるでしょうが婿殿の領地にございます」

「しかし北条は氏規を使者として上洛させたばかりだが」

家康の今川に人質となっていた駿河で同じ人質だった氏規が関白に挨拶と献上を行っており悪い雰囲気ではない、

「しかし氏政、氏直親子が上洛しない限りはおみとめにならないのも事実です」

関白は喜びはしたが二人がいつ上洛するのかと言うことをしきりに聞かれているのも聞いており氏規が近いうちにと答えてはいる。

「口実は」

正信が言うので、

「いくらでも、そう秀吉配下の大名の城をとればでしょう。具体的には狸親父」

「真田か、上州に城を持っていたな」

家康が苦々しそうな顔をして言う、

「信州越後へ抜ける道を押さえてますからな、それを餌でつれば小田原は動きませぬが現地の愚かな将が動きましょう」

「そうなれば北条とは手切れとなるな」

あっさりと言う家康はさらに、

「何れにせよ言われれば拒否はできまい、それで」

「関東八州の中心を何処におくかと言うことでしょう」

私は家康を見てから、

「小田原は西過ぎますし、鎌倉は手狭、川越は内陸ですし結城や厩橋も」

「で、何処なのだ」

「武藏の国の豊嶋郡にある江戸城、太田道灌が南関東の抑えとして築いた城にございます」

「正信知っておるか」

そう聞くと少し考え、

「さして発展しておらず北条も重要視しておらにはず」

私は頷き、

「その通り、修繕もされておらず周辺に住むのも数百でしかないその理由は、海に面しており周辺は水捌けが悪いのと水に塩が含んでいると言うことです」

「北条が重要視しないのも頷ける。水が無ければ町としては致命的だ」

水がないところに都市はできないと言うのは自明の理であり発展をしないのは当然なことを言うので、

「水は内陸から上水路を掘ればよろしいかと、周辺は台地でありそれを崩して海を埋め立てれば一から都市設計が出来ると言うものです」

「都市とは以前言っていた城下町の事だな」

正信がフォローをいれてくれる。

「それさえ解決できれば大きな川もあり水運で北関東ともやり取りができ、港も内湾のため荒れることも少ないでしょう、さらに京から離れることにより影響も最小限にできると考えます」

家康は少し考えてから、

「わかった、伊奈と共に内々に入り土台を作れ、その様子だと手はずはしている様だな」

打ち合わせが終わり私は一礼をして下がった。



「小太郎、東海道を下る案内を頼む」

遊廓の屋根で寝転がっているはずなので呼ぶと顔を出して身軽におりてくる。

「江戸に向かって周辺の調べ事をするので手配を頼む、内密でな」

何か言うかと思ったが頷いて半刻後にと言ってきえる。百地を呼び旅の準備を頼むと実家である商家中根へと書状を書き送った。

大坂へまこと共に下り五百石船に乗ると駿府へと海路で向かう、天候は穏やかであり夫婦水入らずですごしながら船旅を楽しむ、

「東京を一から造るって」

まこが変な顔をする。

「東京と言えばビルが乱立するところを思い浮かべるが、行けばわかるよこんなところがって」

「そう言えば東京に住んでたって言ったけど」

「23区に先祖様から住んでたからね、無論徳川に仕えていたみたいだけどね」

「確か北条討伐があって朝鮮に出兵して関ヶ原、1600年だからあと12年か見てみたいな」

「その目で見たいね」

「姫武者としてそばにいることを希望します」

そう笑いながら言われ頷いた。

富士が見えてきてまこが歌い始め、

「あーたまを雲の上にだあし~」

懐かしさのあまり一緒に歌う。何曲も歌いながら胸を熱して雪化粧の富士を見ながら清水の港へ入りそのまま駿府へと入った。


「殿の命ならばすぐにも向かいましょう」

忠次(伊奈)は何時ものように淡々と言うが情にあつくその為に何度も徳川を出奔していたが才能を惜しまれ帰参している。

出奔中は私の領地を全権任せ治水を試したりと色々してくれ大いに安かったのだが、今回も行き先を知らされず清水から東へと向かった。


左側が三浦右側が館山城であり江戸湾へと入る。三浦の水軍が御用改めを行ったが小太郎(風魔)が揃えた書類で通行が許され品川沖に停泊した。

「ここが品川、東京タワーはどこ」

いきなりボケをかまし他の者が首をかしげ私は慌てるがまこは嬉しそうに、

「始めての汽車はここを通って新橋と横浜間を結んだんだよね」

そんな事をいい始め他の者は汽車とはたわーとはと話をしている。

ここに品川館と言って道灌が住んでいた建物がありそこが我々の宿となった。


「野原が東京なんて受けるぅシロカネーゼがいない」

一人で言って一人で受けているまこを見ながら忠次と話す。

「ここは江戸城の外れ品川、江戸城を中心に町作りをと考えている」

何時もの突拍子もない話にはなれている忠次も驚き、

「ここは殿の娘婿であられる北条氏直の治める地ですが密約でも結ばれたのですか」

北条に今更加担をしてと言うことだが手をふり、

「違う、殿と正信だけには話をしておるが私の責任で話すが漏らすな」

そう言うといつの間にか忠次の後ろには百地が控えておりそれに気がついた忠次は緊張をして頷く、

「と言ったものの柄ではないからもういいよ百地、忠次よ殿からは私の指示で動くようにと書いてあったと思う」

忠次は頷く、

「しかし事はかなりと言うか空前絶後の事で全体を把握しなければ動きにくいはず、なれば徳川300年の栄華の基礎となる」

雲をつかむ様な話だが忠次は一心に聞いてる。

「端的に言えば徳川幕府をこの地で開く、その為の城や城下町、旗本屋敷、大名屋敷、商家、倉等が立ち並び関東一円から水運を利用して海からは他の大名の領地から品物が送り込まれ100万人が住む規模で考えている」

小太郎が用意してくれた江戸城を中心とした地図の写しに、

「城はこう巨大に、普請は臣下となった大名にさせればいい、言うことを聞かなければ取り潰すとこれは正信の仕事だけどね」

そう言いながら大きな今ある江戸城と比にならない丸を書き、

「この辺りの海もすぐそばの台地を削り埋め立ていく、問題は水だけど安定した頃に川か池から水を引いて上水路を造る」

「この川は水運として整備をすれば良いだろう、そして明日から現地を歩き回る。」

そう言っていると食事の準備ができたと言ってくるので場所を移動する。


酒をのみ始めながら奥州の大名について話す。

「徳川に尻尾をふっている最上、屋台骨がぐらついている芦名、北の端で遠吠えをしている南部、そして無謀な伊達、私の評価だが伊達政宗と言う小僧は中々の覇気を持っていると言うことだ、信長を尊敬してあのようになりたいともうしている」

「関白の惣無事令を無視して戦っておると聞いておりますが」

忠次も最上からの情報で聞いているようで興味があるようだ、

「佐竹との決戦でも数倍の敵を押し返したそうだし、今は母親の里である最上ともめているようでしきりに最上から言ってきているようだがな」

子供の頃見ていた大河ドラマの俳優の顔を思い出しながら話を続ける。

「10年早ければ馳せ参じて所狭しと一緒に暴れまわったが、ここまで天下が定まってしまっておれば箱の中で暴れる龍でしかない」

「井の中の蛙ですか」

「でも独眼竜ですから」

まこが唐突に言うので笑いながら頷く、

「若く自分に不可能はないと言う龍に肩入れしたくはなる。上の者にとってもいつ噛みつかれるかと言う緊張感も持てるしな」

「佐竹義重は」

「個では強いが戦いは程々強いが後手にまわる。優位な戦いでも勝利せず三流だ、秀吉に泣きついて命脈保つ能無し」

「嫌いなのですね」

まこが笑う、

「芦名は」

「家内をまとめられずあれだけの領地を生かしきれない無能、遠くないうちに滅ぶ」

「南部、領地は広いが養父のせいで一族は反目しあい何もできずにいる。謀略と力による平定ができずに終わるだろう」

「これって信長公と比べてて言うことですよね」

まこが見透かしたようにいい皆が笑う、

「兄上がいなければここまで急速に天下統一荷はならなかっただろうからね」

「近くで見られていた信長公の感想と他者とは何が違っていたのでしょうか」

忠次が聞いてくる。

「自分の感想だけど、努力すれば誰隔てなく接するし一族には優しい、人の気持ちを汲んで欲しかったけどそうなれば急速な拡大は無理だったと思う」

「他者との違いはお金は自由に流通するようにすれば集まる。具体的には私的な関をもうけ金を徴収すれば品物も高くなり売買されない、税がかからなければ人々は集まり繁栄する。目の前のことに踊らされなかったと言うこと、そして権力を自分に集中させ農民を戦いから切り離したこと、自分の城を移動して配下にも同じようにさせる。火を付けまわったのが懐かしい」

「その様なことまで」

「他のところでは豪族が強く自由に兵を差し向けられないし農閑期以外の兵の動員は国力の低下に繋がるからね、その代わり弱かったけど尾張の兵はだから長槍や鉄砲などの集団戦を推し進めたということ、絶えず自ら変化を求めていたと言うこと」

「織田が衰退していきますがよろしいのでしょうか」

忠次が最後に聞いてくる。

「信雄が継いではいるが兄上で織田は終わったのだと思う、後は名誉として残ればいい私的には」

そう言って夜がふけていった。

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