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秀吉と信長

「この騒ぎは何事じゃ」

造成中の庭の間から信雄の家臣で今は秀吉の家臣になった京所司代である前田玄以がやって来た。


「玄以か、秀吉になびいたのは先見の明があるな」

私自らが出ると縁側に座る。

「信照いや忠実殿、これはいかがいたした。この様な狼藉許されませんぞ」

気押されたのを跳ね返して言うので、

「所司代にも出していた吉野太夫の身請けを秀吉の家臣があろうことか刀を抜き血で汚した」

私は利照の頬の傷を指さしさらに、

「我らは晴れの舞台を汚されたのでここで戦って討ち死にしようと思っている。玄以にはその後のかたずけを頼む」

そう言うと玄以は驚き、

「お待ちくだされ、はやってはなりませぬぞ、直ぐに確認をしますので」

そう言って誰も近寄らせるなと家臣に命令して行ってしまった。


「関白秀吉はどうでるでしょうか」

利照が聞くので、

「関係ない、攻めてくるなら鉛の弾を食らわすだけ、最期の時は火をかけて京を灰塵とかすだけだ、豪勢であろう」

そう言うと皆笑いながら準備を行った。


食料や酒なども運ばれ、何故か婚姻の祝いの席がもうけられており小太郎と百地に吉野と二人上座に座らされる。

「すまんな吉野、新婚生活がこんなになり」

そう言うと吉野は嬉しそうに、

「こうして会えたのですし、私の名前は紡績まこと、まこと呼んでください」

「そうか、私は名前を忘れてしもうた。信長につけられた小十郎と呼んでくれ」

「はい小十郎さん」

そう言うと周りの人々はおめでとうと言い、禿や新造はまこの周りに集まり、

「綺麗です。私もお嫁にいきたい」

口々に言いながら祝杯をあげていると、

「関白殿下の居城で何をしているのか」

顔を上げると三成が一人で来たらしく百地が苦笑していた。


「それを答えるには祝い酒を飲め、ただし杯はこれだ」

私の手には50cmの金杯があり差し出す、三成はしばらく見ていたが私の事をよく知っているので諦めたように杯を受けとり、新造が両脇から灘の酒を並々と注いだ。


三成は杯に口をつけると飲み始める。飲み干せるのかと周りは静かに見守り三成は杯をさらに傾け飲んでいく、

「お~っ、飲み干したぞ」

その瞬間皆は大喜びで三成を褒め称えた。


「それで忠実殿」

「身請けを邪魔され血で汚された、関白の家臣にも死人が出た。収まりつくわけなかろう、なればこそ京を枕に討ち死にと言うことだ」

三成は顔を赤くして、

「こちらにも無礼な事をしたのはわかっています。公正に取り調べを致しますので納めてくださいませぬか」

「いやできぬ、徳川の家臣と名乗ってしまったのでな、無しとはできまい」

私は手をふって退席を促す、

「最後に、こちらからは手を出させませぬゆえ自暴自棄になりませぬようお願いします」

「ああ、今日からしばらくは結婚の祝いだからな仕掛けられなければどうするつもりもない」

そう伝えると三成は戻っていった。



「関白の軍勢が2万、周囲を囲み終わりました」

百地が知らせてくる。

「こっちは何人いるんだ」

「我らが小太郎殿の兵を合わせて120人、吉原から住民が1500人老若男女すべてが来ていると言っても過言ではありませぬ」

私はまこの横で嬉しそうに酒を飲んでいる郎斎に、

「すまぬ、我らに付き合わせてしまい」

そう言うと首を横にふり、

「なんの、吉野太夫の晴れ姿を邪魔されたのです。これを許せば吉原は存続できませぬ、安心してくだされ皆楽しそうにしておりますからな」

そう言うと皆は口々にお祝いをのべていった。


翌日、包囲している関白の軍勢から武将が出てくる。

「京を不安にさせる賊徒どもよ、われの威光にひれ伏し大人しく首を差し出せ」

威勢は良いのだが私は鉄砲を構えると空に飛んでいる鴨に狙いをつけて引き金を絞kつた。

発砲音で悲鳴を上げ逃げていく秀次に、

「祝いじゃ、鴨鍋にして食べればよかろう、攻めるなら鴨と同じになるがな」

そう言って笑うと秀次は私と認識したのか再び出てくることは無かった。


流石にこの異常な状況が内裏にも伝わったのか京を火の海にするのかと関白に伝えられたらしく包囲の輪を広げて不慮の事故が起こらないように関白の軍勢は引いて、いつまで続くのかと終わらない包囲に対して祝いの席を毎日続けており、これの資金は全て関白から出ているという皮肉な結果に大いに楽しんでいた。



「いつまで続けるつもりじゃ」

庭から農民の格好をした小男が入ってきて声をかける。

「利照、皆を後ろに移動させてくれ」

そう言って私だけが残って立ち上がり椅子をすすめた。

「玄以も火の海を怖れた公家と内裏から言われ泣きそうだぞ、三成は報告が終わるなり二日酔いで寝込むし、秀次にいたっては馬から落ちてしまうしだいだからな」

「結婚の祝いありがとうございます」

無視して言うと笑いながら小男が手拭いを外すとそこには関白となった秀吉がいた、

「こんな格好で関白が現れれば大いに驚くはずなのに相変わらずつまらぬ男よのう」

「関白殿下からのお誉めの言葉、有りがたく頂戴いたします。所で祝いの品は」

「さんざん使いまくりおって、三成が呆れておったぞ、そして本題じゃどうしたい」

殺気のこもった声で本題に入る。


「思い上がった人の思い上がった家臣に未々平和はいつでも砂上の楼閣と認識していただきたいだけです」

「主人が最高の位をいただいたのじゃ家臣たちにもその恩恵を端っこでも与えて上げたいというのが親心ではないか」

秀吉は不満そうに言うので、

「それは良いでしょう、しかし所詮は人です。やられればやり返す1個の男と男、それを見せつけたかったと言いたいところですが成り行きで収まりがつかないということです」

「相変わらず尻尾をつかませぬなまあ良い、最初に首を跳ねたその方の義息子の首を出せば不問といたすどうじゃ」

普通、妥協点としてはこの騒ぎをこれで納めると言うことで悪くはないと考えるが、

「お互い円満に終らせれば関白の名も上がりましょう、もしなにか提案するなら火の海とする所存」

「わしを脅すか、そちのその言葉は何時でも本気だったな、家康殿との和議もある。わかった今回は何もなかったと言うことじゃ」

そう言って立ち上がろうとするので手を叩くとまこが酒を持ち秀吉に渡してなみなみ注ぎ私のも同じようにした。


「その方が吉野太夫か美しいのう、どうじゃわしの所へこぬか」

エロじじいと言いたくなるのを我慢していると、

「関白殿下、愛する人は小十郎様だけにございます」

そう率直に言われた秀吉は毒気を抜かれたように私を見て笑うと、

「よかろう、あとで祝いの品を届けようぞ、さて帰るとするかな」

そう言うと手拭いをかぶって出ていった。


翌日鉄砲などは集めて百地に内密に搬出させ、替わりにきらびやかな衣装を集めるとそれぞれに着飾る。

10人以上で担ぐ大きな輿に吉野太夫を乗せ左右に私と利照が紺色の装束に身を包み待っていると、

「待たせたかな、よし景気良く行こうぞ」

その前にしつらえた平台に太鼓持ちにふんした関白秀吉が乗ると輿が持ち上がり聚楽台を出た。


笛や太鼓を奏でながら京の大通りを着飾った人々が練り歩く、人々は驚きながらも直ぐに悦び声をかける。

吉野太夫が現れるとうっとりとするが、その前の太鼓持ちにふんしているのが秀吉とわかると驚く、

「それではわしの母である大政所を朝日のご機嫌うかがいと称して送り込めば家康は上洛すると言うのだな」

「そこまでされればいやとは言えないでしょう、そして明日の吉野太夫の最後を賑やかに京の町を練り歩きたく許可を」

「そうだな、京の不安を取り除くにはまたとない機会だ。ただしわしも参加させろ、そうだな太鼓持ちはどうじゃ」

秀吉は嬉しそうに言う、

「それでは大きな輿を作らせそこでと言うことに」

昨日の帰り際に秀吉と今日の簡単な打ち合わせと、きらびやかな服を準備してくれる約束が果たされ大通りを進む、


「徳川家家臣仲根忠実にございます。お騒がせしましたがこの通り関白様ともども宜しくお願いします。今回知っての通り吉野太夫を身請けする幸せを射止めました。京の平和と繁栄を祝い最期のお披露目とさせていただきます」

そう言うと私を信長の弟と気が付いたのか悦びさらには吉野と結び付き秀吉との関係が良好とわかるとさらに興奮が上がる。


秀吉は得意気にこちらを見るので、お前じゃなく吉野だよと心で思いながら笑顔で返した。

内裏へ向かう大通りを曲がるとそこには町民や商人だけではなく、武士や公家なども館の壁越しにやぐらを組んで見つめていた。


不意に音楽がかわりあの操り人形の様な動きになるテンポにかわる。

先代の総名主である郎斎は驚き小太郎を見ると笑いながギクシャクと踊りだし郎斎は輿に飛んで上がってくると泣きながら、

「一族の秘術を、やめてくだされ止められないです傀儡まわしの音楽を聞くと」

郎斎は悲鳴を上げ何度も小太郎を見るが笑顔でギクシャクと踊り続けた。


自分も気がつけば郎斎の真似をして踊りはじめ、泣き叫ぶ理由がわかった。奏でる音色が耳に入るかぎり止まらず流れる汗を拭きたくても踊り続ける。

喉が乾き「水」と叫んでも飲めずにいると吉野が振り返り水を含むと口移しに私に与えてくれた。

怨みと羨望の眼差しが周囲からささったが、これは私の役得とおもい受け入れた。


秀吉も「水だ」そう言うと吉野は振り返り観客も私も唾を飲み込み見守る。吉野は瓢箪を持ち秀吉の顔に近づいた。


もう少しというところでいつの間にかもう片方の手には小降りの茶碗が現れ瓢箪を高く持ち上げ滝のように水を茶碗に入れると笑顔で秀吉に飲ませた。

観客はそれを見て大笑いころげ秀吉は不満そうな顔をしたが次の瞬間、吉野が頬にキスをした。

不意をつかれた秀吉は顔を赤くして吉野は中央に戻り手をふる。秀吉の頬には紅のキスマークがくっきりみてとれどや顔で観客を沸かせた。


内裏に到着すると門が開かれておりその前に到着をすると波をうったように静まり返り平伏した。

門の向こうにいる御方に頭を下げると秀吉が、

「関白豊臣秀吉にございます。ここ数日京を騒がしたことお詫び申し上げたく参上つかまつりました。お詫びとして京の平和と安寧を祈願し吉野太夫とともに踊りましてございます」

そう言うと門の向こうから、

「関白御苦労、一日も早く戦いが無くなることを朕はねがう」

そう言葉で伝えられ終了した。


「忠実よわしのもとに来ぬか、数正もきたからのう」

終わった後に秀吉から誘われるが、

「誠に有りがたいですがこちらでは兄上との思い出があまりにも多く」

秀吉は少し考え、

「そうか信長殿の近くはか、まあよいその代わりに茶会などを開くときには顔をだせい、吉野もつれてな」

エロじじいと思いながらも、

「わが殿のお許しが出れば如何様にも」

そう言うと迎えに来た清正と共に戻っていった。


吉野と暮らすのに吉原とはいかないので鴨川沿いに館を建てることにした。河に面している方向は壁がなく夏場は夕涼みが出来るように考え吉野に見せると悦び、

「ありがとうございます。涼しいですよね、でも危なくないんですか」

塀がないと言うのはこちらでは危ないのだが、

「大丈夫、まことの世話をいてくれる老夫婦、忍者だからね」

そう言うと驚いて、

「あの猿飛サスケとか霧がくれ才蔵とか、すごい忍者はいるんだ」

まこの反応に笑いながら目の前にいる小男が風魔小太郎と心で言いながら、

「その二人も会えたよ、真田の幸村本当の名前は信繁だけど」

「いいな、信長とか森蘭丸とか前田慶次、漫画で見たのと雰囲気がうんうん」


「ところで生まれは昭和かな平成」

「昭和だよ、小十郎も」

「昭和だよベビーブームで」

「私はその後、高校生で気がついたら武士の娘で、元々三好の家臣だったの」

「織田が入ってきてかな」

「その前に松永久秀に暗殺されて京に逃げたんだけど母親も死んでしまって拾われたのが郎斎さんで、生きるには花魁にと思ったの」

「そうなんだ、私を気づいたのはいつなんだい」

「京の馬揃えかな、あんなカラフルなのは歴史であったかなって、それと前田慶次と吉原で暮らしてたときに絵を色々描いてたでしょ、下手な絵をそれがこの世界の書き方じゃなかったから」

「下手は認めるけど、そうはっきり言わなくても」

すねるて横になると膝枕をしてくれ、

「だって小学生でもあそこまでは、でもそのお陰で気がついたから」

そう言いながら両手で挟み込んで私の顔に近づき笑顔で頷いた。


「京なら危険がないから徳川の関東転封して、そう多分義兄の忠勝についていくことになるかな付け家老でそしたら千葉そして三重に移るからそれまでは京暮らしかな」

そう言うと、

「それはいや、離れたくないし外を歩き回りたい、だって吉原があった島原しか行ったこと無かったから」

「連れていきたいけど多分九州の島津征伐に同行しろと言われる。危険なところにはつれていきたくない」

まこはほっぺをふくらませ、

「危険なら小十郎も一緒でしょ、慶次との話で接近戦は苦手と言っておりましたし」

「いや、男だし」

「ついていきます何処までも、それに秀吉のお膝元にいれば何を言われるか」

そう言われ白旗を上げるしかなかった。


「あとな義兄にまこのことを話さないといけないから頭いたいな」

「トンボ切りにスパッとやられないかしら」

人の不幸をそんなに簡単に言うなと思いながらも、

「大政所が浜松に娘に面会しに行くだろうからその時にかな」

そう言うとまこは嬉しそうにトンボ切りやしかの角の兜や本多忠勝に会えると嬉しそうにいていた。



夏も終わりに秀吉から呼び出される。

「わしの母である大政所を朝日のご機嫌うかがいさせる。忠実もついていってやれ」

ようやく徳川家との話がまとまったかと思い、

「わかりました。大政所様と共に朝日様の元へ向かいます」

翌日秀吉みずから母親の手をとり輿へと連れていくと不安な母親に、

「母ちゃん安心してくれ護衛にはあの信長公の弟が付いてくれるからな」

そう言って私を手招きして近寄る。

「ほんにまあ信長様の弟様が、ありがたやありがたや」

秀吉の老婆は手を合わせ拝み苦笑させる。

「忠実、これで上洛しなかったときはどうなるかわかっているのだろうな」

秀吉が他の者から見えない状況で目を細め恫喝する。

「関白にここまでしていただいたのですから、吉報をお待ちください」

「待っておるぞ、上洛の暁には豊臣と官位をやる」

そう言って送り出した。


「藤吉郎はほんに幸せだね」

大政所の話し相手をしながら進む、

「あれ~女だったのかよう、馬に乗っててわからなかったよう」

私と一緒に乗っているまこに驚きながらさらに吉野太夫と聞いて驚く、

「藤吉郎も早く子供ができたらねえ、孫が見たいんだよ」

そんなことを話ながら浜松へ到着して娘の朝日姫と会うことができた。


「ここまで引き出せば上洛せねばならないな」

家康は秀吉の考えにさらに注意深くなっており私に今後のことを聞かれ、

「上洛して先ずは徳川家に臣下の礼を取らせそのお礼に豊臣姓と官位を与えると、殿だけでなく主だった家臣にも、そして四国征伐の暁には九州惣無事令を発布し島津を攻めるつもりでしょう」

「そして関東と奥州か」

統一が現実味を帯びてくることに恐怖なのか何なのか家康は考えにふけった。


翌日、浜松城内の一室、

「殿から報告がきたがその方が吉野太夫か」

まこは嬉しそうに、

「まことと申します。縁あって忠実様に身請けをしていただきました。世間知らずですがどうぞよろしくお願い申し上げます」

忠勝の反応はというと特になく、

「義兄上、何かあれば、そう頬に一発入れるとかは、本気でされれば死んでしまいますが」

そう言うと忠勝は珍しくため息をついて、

「日和の手紙にも書いてあったわ、家を出て信照様と一緒になれたことが一番の幸せで、もし命を落として信照様に後添えが出来たとしても兄上は祝福を、ただし会わせてくれと、墓参りをしろと言う事だな」

九州の討伐がおわってからかと思い話した。



珍しく正信が顔を出す。

「忠実殿、殿は了承しているとはいえ他の臣下の者が騒いでおる」

「忠告ありがたい、父親の様に心配をして足りないことを教えてくれるのは昔から正信だけだからな」

「忠告を聞き入れてくださりありがたい」

官僚としている場合には薄給にせよ、同僚から妬まれどんな事になるかと言われていたので、

「まあ殿はご存知だけれども鉱山からと貿易でかなり利益をあげてるからね」

正信がふすまを見たので、

「屋敷の中なら忍に結界をはらせているから大丈夫」

「そうとはわかっているならいくつかたずねたき事があります」

正信が折り目をただすので私もならう、

「九州征伐の後にどうするのか」

「関東と奥州ですが、徳川の同盟国である北条がということでしょう」

正信は動かず静かに聞いている。

「徳川を関白が敵にまわすわけはないと言うことですが、上田です」

内心はピンと来ただろうが正信は微動だにしない、

「あの真田の狸が持ち物の沼田の名胡桃城を北条は欲しがっており、真田も関白に大名として認められる手見上げとして盛んに工作している」

「龍虎を小田原城で退けた自信があるから当然盗れるものはで名胡桃城を奪い口実になると」

「忍びとは恐ろしいな、この様な事を簡単に調べられるとは、我らの周りにも当然いると言うことかな、他の勢力や味方のが」

そう言われて笑いながら、

「そしてここがこの情報の重要な事で、その跡地に徳川を」

そう言うと正信は頭をフル回転させているのかしばらく黙りやがて、

「断ればか、おりを見て殿と話しておく」

そう言うと立ち上がって行ってしまった。



「出発」

家康は重臣を連れて上洛を開始する。

「忠実殿あれはよかったのかな」

康政(榊原)が出発前に大政所の泊まっている館の周囲を本多重次が柴を積み上げ、家康もしもの時にと構えており、その恐ろしさに大政所が悲鳴を上げていると、

「関白には二度とこの様な事をなされないようにと言う戒めでよろしいと思います」

康政はため息をついて、

「重次が大変だろう、関白からにらまれるだろう」

「あからさまにやれば秀吉も手を出せまいし、重次本人はへともおもっていまい。こないだも秀康様の近習であった息子を勝手にこちらに戻したしな」

そう言ってお互い笑うと前に続いた。



大坂に入り秀吉の弟秀長の屋敷に宿泊する。まこは別に小太郎と共に京吉原に入った。

日がくれ夜になったときに百地が知らせに来る。

「あの関白はいつになっても驚かすのが好きだな」

私は利照に家康へ伝えるように言うと、庭を抜けてくる途中の秀吉を出迎えた。


「相変わらず可愛いげがないが、どうじゃ驚いておろう」

目の前には秀吉がお忍びで来ており呆れている私に家康の元へ案内させる。


「関白殿下、自らのお越し痛み入ります」

知らせてはいたが家康はわざとなのか驚きながら出迎えると嬉しそうに頷く秀吉が、

「近くまで来たのでな家康殿に会いたくなってしまってきたわ」

その白々しさにイラつく私は茶をたて始める。

顔に出さないようにしながらお茶をたてて秀吉に差し出すと飲み家康も飲むと切り出した。


「家康殿、豊臣秀吉のお願いにございます。明日大坂城での会見で従臣をしていただけないであろうか」

秀吉が平伏すると家康は驚きながら近づき秀吉を起こす、

「そんなことをされなくても関白ではありませぬか殿下」

秀吉は家康にすがるように、

「いやいや家康殿がただ挨拶をされ戻ってしまわれれば戦乱の世へ戻ってしまう、どうかどうか関白のためとは言わない民のためお願い申す」

演技とはいえここまでできる秀吉に家康もついに、

「わかりました従臣をいたしましょう。殿下の家臣となります」

そう言うとうそ泣きで家康の手をとり何度も感謝を伝えており、私は気にすることもなくお茶をたてると自分で飲んでいた。


ようやく落ち着いた秀吉は私を見て、

「相変わらず憎たらしいのう、そうそう家康殿よ忠実を九州征伐の目附として行かせたいが如何かな」

そう言うと家康は、

「関白の命とあれば、忠実よ頼むぞ」

秀吉は嬉しそうに頷き城へと戻るために立ち上がり私に送るようにと家康は言った。


「忠実よ、これで大きな山を越えたぞ」

前を進む秀吉が歩きながら言ってくれる。

私は大きく深呼吸をして声を整えると

「サルよようやった。だが気を抜く出ないぞ」

兄上の声の物真似をして言うと驚きこちらを向く、

「信長様は誉めてくださるか、思いをついで日の本を統一しますぞ」

秀吉は叫ぶ、

「人が集まれば色々な思惑が出てくるが全てをくもうとするなよ、何時かは破綻する」

「そうですが藤吉郎は頼る者を袖にできませぬ、見ていてくだされ」

そう言うと秀吉は一筋の涙が流れた。


「今のは」

「権六や佐渡相手におちょくるときに真似た兄上の声さ、でも言った内容は兄上の考えと思ってくれてもいいかも」

「忠実いや信照殿、関白になったが子ができん側室も沢山いるのに懐妊の兆しさえない、これは戦いで敗れた者たちの怨念と言うのもおる」

「簡単ですよ、藤吉郎を越えて恨まれている男は子が多数いましたから、こればかりは天からの授かり物」

「そうだな上様にはお子がおられた、そうだおられたぞ」

秀吉は頷く、

「だが未だ産まれてくる我が子を豊臣家を安寧に導くには信照殿が昔言っておられたが、一門は弟の秀長、甥の秀次と秀勝がおるがこれからどうなるか」

実子が居ない分不安は隠せないのも事実であり聞いてくるので、

「秀長殿は体調を崩されているようでまかり間違って不在となれば秀次の指導的立場の者がおらず相談もできない状態になれば厳しいと言わざる終えませぬ」

秀吉は頷き、

「しかし有馬温泉に行った後は元気になったと聞くが」

「関白を補佐すると言うことがどれだけ負担を与えるか豊臣家の外交は秀長殿が一手に引き受けておりますから」

「そうじゃな長宗我部も下った、大友から願い出ている島津を成敗せねばならぬからな、代わりなら佐吉がおる。そつなくやるからな」

「三成は真っ直ぐ過ぎます」

「じゃが佐吉の言っている事はもっともじゃ、軍法にも違反はしておらぬ」

「そうですが三成を好きか嫌いか分かれすぎますよ、このまま取り次ぎをさせていれば最悪も考えた方が」

そこまで言うと秀吉は手を上げて話を止め、

「忠実もうよい、迎えの来たようだしな」

そう言うと秀吉は行ってしまった。


翌日、家康と家臣は大坂城に入城した。

大広間では左右に豊臣に従臣をした大名が並び見ている。


「徳川殿ようこられた」

上座の秀吉に家康は平伏して、

「徳川家康、関白豊臣秀吉に従臣をしに参りました」

そう言うと他の大名は驚きさすがは関白殿下と驚く、

「なになに、徳川殿とは義兄弟ではないか、そんなかしこまらんでもよいぞ」

昨日の今日で調子よくいう秀吉に家康は、

「ありがたき幸せにございます。それでは殿下の陣羽織をいただきとうございます」

「陣羽織とな」

「豊臣家に反旗をひるがえす者あれば関白殿下の代わりに成敗しましょうぞ、大坂城で見守りくだされ」

家康が言うと秀吉は立ち上がり自ら陣羽織を家康にわたし、

「さすがは家康殿、小牧での采配見事頼りにさせてもらうぞ」

そう言って会見は無事終わり後日京に移動すると家康だけでなく家臣にも豊臣の姓と官位を与え、私も右近衛権少将を与えられてしまい困りながら九州へと向かった。

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