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昌幸と兄弟

「しばらくは秀吉の天下となるな」

清洲から浜松そして駿府へと家康が戻ってきた。

「信雄は粘りがありませんからな、それにしても殿に相談なく秀吉と和議を結ぶとは、わが甥の不始末申し訳ありませぬ」

「忠実が悪いわけではない、しかし包囲網に参加していた大名は各個撃破になりましょう」

信雄が秀吉と和議を結んだため家康は大義名分を失ったので兵を撤退させるしかなく、秀吉は一番の厄介ごとが無くなり天下統一へと進み始める。

雑賀衆や長宗我部等はいずれ討伐軍を出されてと言うことで秀吉の高笑いが聞こえてきそうだった。


「申し上げます富山の佐々成政殿が来られました」

雪が残る所をわざわざと家康が通すと薄汚れた成政が大広間へ来ると崩れ落ちるようにすわった。

「徳川殿にお願いに参った。サルめとの戦いを継続してくだされ」

成政は必死に頼み込むが家康は、

「元々この戦いは信雄殿に頼まれてなのでな、信雄殿が秀吉と和議を結んだから戦う必要が無くなったまでだ。なので佐々殿も和議を結ぶなりした方がよい」

「そうですがこのままではサルめに天下を取られてしまいますぞ」

熱血漢な成政は畳を叩き力説する。

忠勝や直政や康政等の武将は成政の言葉に共感しており家康に手助けをと訴えている。

数正等の文官は勢力を拡大中の秀吉と積極的にやりあわず信濃や甲斐の支配の確立をと意見を言う。


家康が、

「正信どう思うか」

「戦って勝利したからと言って我らは徳川にございます」

家康は頷いたが武将たちは何を言っておると言う顔をしている。

「勝って羽柴を倒したいのなら織田の者を立てなければ旧臣達は羽柴から離れられない、信雄がいれば話はかわるが織田に戻るだけ」

そう言われて黙り混んでいたが康政(榊原)が私を見て、

「織田なら信照殿がいるではないか」

そう言いい正信を呆れさせ義兄を怒らせ成政を驚かせた。


「信照様、家康殿の庇護を受けていたと聞いてはおりましたが信照殿がおればサルめにひとあわふかせられましょう」

兄上に接していた頃のように嬉しそうに近寄り手を取ってくる。しかしこの目は私でなく後ろにいる織田信長の幻影を見ているようでありため息をつかせ、

「成政、いくら兄上が懐かしかろうが織田の世に戻るわけではない、信雄は弟を殺し三法師は秀吉の元で傀儡となりつつある。何より私は織田を兄上が居ないと言うことだけで落胆して徳川公に頼み中根の姓を継いで家臣として生きていこうと思っている」

そう言うと成政はショックを受けて何も言えない、

「今は秀吉に勢いがあるがそれも何れは破綻する」

「それは」

それを聞いて成政だけでなく家康の家臣も身を乗り出す。

「後継ぎ、秀吉には子供が居ない、この10年子が生まれなければ織田と同じように崩壊してくであろうと」

「10年とは」

「3才の子が跡目を継いでも余程重臣がしっかりしていなければ機能はしない、秀吉には譜代の家臣はおらずここが自他共に認めている急所である、徳川家は譜代もおり息子も沢山いる。時間がたてばたつほど優位になる。ただし家康殿の長寿にかかっておるから、なれば今は地固めをするのが良いかと後は秀吉の出方を待とうと言う事でしょう」

そう言うと成政は肩を落として富山へと戻り徳川としては秀吉の出方を待つことになった。


忠勝をつれて日和のお墓参りへ向かう、

「忠実、康政の件はすまなかった。何とかしたいと言う気持ちで先走ってしまい本人も謝罪をしたいと言っておった」

「驚きましたが、秀吉と事を構えるには確かに私を担げばですが気にしてはおりませぬ」

「感謝をする」

そう言って二俣城へ入りそのまま日和と双子の墓へと向かう。

「しかし日和の手紙にも書いてあったが流行り病が広がるのを防ぐために、妹を誉めてやりたい」

それを横で聞きながら心の中で何度も謝った。


しばらくすると秀吉から和議の使者が来てやり取りが始まる。

使者は滝川雄利であり一益の娘婿であり、信雄の家臣で秀吉との講話の使者として結ばせ、今回の徳川への使者に指名され浜松へとやって来たようだった。


駿府の工事を進めていると家康に浜松にと呼び出される。

「康政と共に講話の使者として上洛をし於義伊(秀康)を養子として一緒に連れていってくれ」

家康はこの次男を苦手としており本来は信康亡き後継ぐはずだが覇気が強く武将からは将来を期待されていたが、逆に家康から遠ざけられている原因となっていた。

「なかなか面白き人選でしょう。康政殿は秀吉からその首10万石と名指しされ、煙たい目の上のたんこぶのである私とは、後は秀吉が殿の上洛を言ってきますがのらりくらりでよろしいでしょうか」

「従臣を早々するつもりはないのでな」

「それでは正信と話し合ってから向かいます」


別室で静かに待っている正信が私が来ると不意に立ち上がり付いてこいと馬に乗る。

海岸まで出ると馬を並べた。

「秀吉の事は任せる」

家康と話をしているので家康と同じ考えが出来る正信はその一言で済ますと本題にはいる。

「忠勝の悲しみ尋常ではないが本当は生きておるのではと考えておる。それと信康様の事も」

見透かす様に私を見つめる。正信の洞察力ならとは思っていたが、

「生きておれば義兄も喜びますが」

少しだけ考え、

「徳川家が一番に考える。それに間違いないな」

「兄上と同じように家康に使える。嘘はつかない」

それを言うと城へと戻っていった。


翌日、

「わしは父上に嫌われておるのか、人質であり養子で他家へ行かされる」

於義伊(秀康)は浜松の城を振り返りながら怒っている。

康政と近習がなだめながら吹きすさむ寒い風に何を感じているのか何度も振り返る。

「義父上、父上から手紙が来ましたが雪が降り始めたと」

利照は慶次郎並の体格があり実の息子よりも似ていると言ってよい、北陸は雪に閉ざされれば大変と言うことを知らせてきた様だった。


於義伊は見えなくなり当たるものがなくなり同年代の近習に不満をいい、近江に入った所で爆発した。

「康政、この感情をどうすればよい父に嫌われ兄上の仲介でようやく父上におめどうり出来たが、兄上は父上に切腹させられ以来顔を合わそうとせずこれだ」

10才程だが体格も大きく苦労してきたとわかる。

康政は武将だが自分の武勇ではなく指揮能力が高いので力で来る於義伊に閉口しながら私に助けを求めてきた。


「於義伊様、自分だけが不幸で不幸せと思っておらぬか」

そう言うと私をにらみ、

「違うと言うのか、私以上に不幸な男がおるのか」

叫びながら近づいて襟首を掴もうとするのを利照が横から叩き落として襟首を捕まえこちらへ引き寄せると、

「私の父は叔父に殺され私も逃げるしかなく家族にはいまだに会えてない」

「父親を、家族には何故会えないのですか」

「私が生きてるとしれば殺しに来るかもしれない、残った家族に迷惑をかけるかもしれないからだ、だがそれを不幸とは思わない、私も殺されそうになった時に義父に助けられ養父にも会えたからな」

「それはわかりました。でもこの感情をどうしたらいいのか、どうしたらいいのですか」

そう於義伊が聞くと利照は自分のほほを叩き、

「おもいっきり殴れ、全てをぶつけるように。その代わりお前も殴る」

おいおい無茶なことを言うと止めようとしたが於義伊は嬉しそうに頷いて同意した。


見上げる形の利照に於義伊は進み出ると右手で殴る。私でも耐えられるかと言う重々しい打撃だが利照は嬉しそうにほほを撫でると於義伊が頷き頷くと利照が拳を固め吹き飛ばすがよろけながらも耐えた。

利照は嬉しそうに顔を出して殴られ殴り返し於義伊が先に尻をついた。

「嬉しい利照ありがとう」

於義伊が頭を下げる。

「まあそんなところだ」

そう言って同じように座ると嬉しそうに頷いた。


百地を呼び手当てを頼む、

「なかなかでしたな、3日は大人しくしていただかないと」

そう言いながら薬をぬり冷やしていき於義伊が、

「ありがとう忠実殿、わしは甘えがあったしわしだけではないのだな」

「なるようにしかならないですが、腐らずひとかどの武将として名をあげてください」

「そうする、それと利照を私の近習として一緒に居てくれぬかな」

利照は首をふり、

「仕えたいと思える人物にならねば、私は今は義父上に付いていきます」

丁寧に頭を下げると於義伊は、

「そうだな、ふさわしい君主として精進していく」

そう言って嬉しそうに大阪へと向かった。



「おおっ、於義伊じゃったなよう来たよう来た、その方は徳川殿との掛け橋じゃからな、もう少ししたらわしの秀を与え秀康と名乗るがよい、それで家康殿はいつ上洛するのかな」

秀吉は於義伊を歓迎していたが一番の事を聞いてくるので私ではなく康政が、

「殿は上洛する予定はございません」

きっぱり言うと眉をひそめる秀吉は、

「その方が康政か、小牧では色々あったが和議を結べばその方の志天晴れである。その方を小平太と呼んでもよいかな良いな、そして徳川殿は小平太殿のような武将を持っていて羨ましい。その功を賞して従五位下・式部大輔の官位を贈ろうぞ」

何時もの人たらしが出て康政は平伏して礼を言う。


「その方は何しに来た」

秀吉は私を見て素っ気なく言ってくるので、

「康政殿の補佐でございます。特にやることはないと存じますが」

「相変わらず憎たらしい口をきくのう、秀次が言っておったわ悪魔の様な者だと」

秀吉は目以外は笑っているので、

「悪魔の弟ですから、まあ手抜きをしますけど首を持ってくれば宜しかったですかな」

そう言いながら秀次を見ると震え上がり泣くのをこらえるのが精一杯であり、

「秀次だらしがない、このようなやからのこと気にするでないぞ」

そう言うと三成に秀次を連れていかせ下がらせた。


「さて徳川殿はどうすれば上洛するかな」

従臣させたい秀吉はいきなり本題にはいる。

「信雄は尻尾をふりましたが負けた覚えがないので上洛しろと言われてもどうなんでしょうか」

「どうじゃ秀次を養子に差し出しても良いが」

「三河武士は頑固で豪傑が揃うております。まあ体験なされたのでおわかりと思いますが、無理でしょう秀次殿では」

「それでは信雄の娘ではどうじゃ」

「降伏する前なら価値もありましょうが」

私が講和を結ぶ気が無いとわかり秀吉はきつい顔で、

「その方は何をしに来たのだ」

「なにと言われましても、殿から人質をたくされお連れしに来ただけです」

これ以上話せば怒りで何かをしなければならないと秀吉は思ったのか手をふって下がれと合図をしてきた。


あてがわれた部屋に戻ると康政が、

「あの様な対応では危険かと考えますが」

「まあ、康政殿は気に入られたのでどうのは無いでしょう、私は目の上のたんこぶですから秀吉がいきなり殺すと言うことは主家殺しとなりますから早々無いとはいたいですが、このまま京へと向かいます」

そう言って馬ではなく船に乗り利照と百地を連れて京吉原の揚屋へと入った。


「ここが養父が住んでいた吉原なのですか、綺麗ですね」

夕方であり三味線の音が響き渡り気分を高揚させる。

揚屋の2階から行き交う人々を見下ろし話をしていると馴染みの女郎と知らぬ新顔が座敷へと入って挨拶してきた。

「小十郎様お帰りなさいんす。このおかたはだりんす」

「慶次郎の息子だ、よろしくやってくれ」

そう言って久しぶりに酒をのみ踊り騒ぐ、翌日もゆるりとしていると三成がやって来た。

「中根殿、勝手に大坂から移動しないでいただきたい」

真面目に言ってくる三成にめんどくささを感じ、

「私の仕事は終わった。講話の話は残った者で事足りよう、さて駿府へ帰るとするか」

そう言って止めようとする三成を笑いながら馬に乗り東海道を下った。


「そうか秀吉はどうしても上洛しろと言うことか」

駿府に戻ると家臣の前で家康に報告をする。

「見せつけたいと言うことでしょう、どんな手を出してくるか面白そうですがこちらはのらりくらりでよろしいかと」

家康は頷き、

「わかった。帰ってのところすまんが直政(井伊)と共に上田に向かい撤収の手助けをせよ」

「真田の狸に苦戦していると言うことですな、上杉を後ろ楯に秀吉に近づきましょう、早めに手を引くのが良いでしょうな」

「沼田を引き渡せと言ったが手のひらを返したので元忠(鳥居)に向かわせたが手痛い反撃を受けている」

そう言って直政を主将として上田に向かった。


「忠実殿、真田と言う豪族に手を焼くとはどの様な事でしょうか」

直政が甲斐に入るときに聞いてくる、

「元は直政殿が家臣と同じ信玄公の戦いを直接知る一人であり築城なども納めておろう、目の前の事に釣られれば何度も同じ様な苦汁を浴びせられるであろう」

「忠実殿ならどうされますか」

武田の旧臣を召し抱えてから一段と親離れできた事により好奇心の塊になっており、直虎も喜んでいるであろうと思いながら、

「包囲して長期戦に持ち込むか支城もふくめ、上杉とは秀吉を使い停戦か直接戦いをするのは避けて長期戦とすれば自然とかなと、積極的にやれば術中にはまると考える」

「消極的過ぎると思われますが、私でも難しいと」

「地の利が圧倒的、真田も忍を抱えているため我らも調べようがなく、間道や獣道さえ未だに調べられてない」

「真田の庭には近づくなと言うことですか」

血気にはやる若者が家康の教育と実際の現場を繰返し経験させる事により徳川四天王と後日呼ばれる下地が出来上がるのかと今更ながらに感心をして元忠と合流した。


小諸城広間、

「全く真田の戦いは腹ただしいですな、もう少しもう少しと餌を出され食らいつくところに挟み撃ちをくらい、殿からお預かりした大切な兵を損ねてしまった。」

元忠は悔しそうに言うので、

「結局は大軍と思っての慢心、小牧の秀吉と同じ功名につられ敵地に入り込み過ぎて殲滅させられたと、指揮の統一をはかっていれば危険と気づいた時に引くこともできここまでの損害を出しはしなかったでしょう」

元忠と武将はうなだれ指示を待つと直政が、

「殿からの命により撤退をせよ、大久保忠世に跡を任せよと言うお達しだ」

そう言うと準備ができ次第撤退をすることを元忠は言って翌日には駿府へと戻った。


直政が政務を行い私の所へ顔を出す。

「威力偵察に出ようと思うが忠実殿来てくれぬか」

家康からは不用意に戦うなと言われているので直政は私に目付けとして役割を頼んでくる。

「引けと言えば引くこと、深追いは許さん」

そう言うと直政は頷き赤備えを連れて上田に向かう、

「真田は出てくるか」

「新しいそれも赤備えを破れば手みあげにもなろうかと」

「その様だ、みろ出てきおったぞ」

上田城の正門が開かれ数百の兵が出てきて展開する。

井伊勢は千曲川を越えた所で停止すると真田から将が進み出た。


「徳川殿自らかと思うたが武田の残りかすを貰い赤備えと形だけ整えた若造か」

「おうよ、北条にそして徳川に今度は上杉に節操なくのりかえるタヌキはお前か」

「タヌキとは徳川殿の事か、辛くも勝ちを拾ったが息子を養子に出すとはな芸がないのう」

そう笑いはじめると直政は顔を赤くする。私は馬をおりると百地に鉄砲を持ってこさせた。

まだ言い合いは続いているが真田の一方的な言いぐさに直政は飛び出しそうで、

「自重せよ、負けるぞ」

そう言うと我慢しているがどうなるかと思いながら台を設置して鉄砲をのせる。南蛮の物を堺で探してもらってようやく購入できたもので銃身は3mもある。

火薬と弾を込め火縄に火をつけて構える。

「少し遠いけどまあ良いか」

そう呟きジリジリと動き始めた直政の横から昌幸と思われる将に向かって引きがねを絞った。


発砲音は普通よりうるさく響く、狙いは胸だが少しだけ上向きになったらしく兜に命中したのか昌幸が吹き飛ぶ、

「直政撤退を、後ろからも真田勢が近づいておると」

そう言われ驚きながらもすぐに撤退を開始して私は利照についてこいと言い、鉄砲を百地に任せると後方の真田へと向かった。


川の中程まで来ると向こうから5五百騎程を率いて若武者がやって来ると、

「我は徳川が家臣前田利照、よき相手とお見受けした御相伴にあずかろう」

そう言って打ちかかる。

「真田家長子信幸、相手になろうぞ」

そう言って槍で突きあう、私は馬上筒を構えいつの間にか横にいる百地が鉄砲を構えており動こうとするものを牽制した。


武力では利照が上だが義父である慶次郎の悪いところが出たのか楽しみ始めている。

あまりここに残るのは不味いので、

「利照引くぞ、それと信幸と申したな」

そう言うと打ち合いをやめて利照が横に戻ってくる。

「そなたの父昌幸はわしの鉄砲で胆を冷やしたようだぞ、そして伝えておけ調子にのるのは良いが徳川に逆らえば何れは窮地となろう、そうそう良いことは続かぬとな、わしは中根忠実じゃまた会おうぞ」

そう言って小諸へと撤退した。


「義父上は真田をよく知ってるような口ぶりでしたが」

帰りに利照が聞くので、

「知っていると言えば知ってる知らぬと言えば知らぬ、だが徳川はあの狸に苦しめられよう、そうさせないために釘をさしてみたがどうなることやらな」

そう言って笑いながら小諸に戻り他の豪族の様子を確認するため直政と別れると利照と百地を連れて信濃を旅をすることにした。


徳川と上杉そして真田に挟まれた場所なので徳川に表向きは従臣しているが裏では違う、よほどの粗が無ければこちらもどうと言うわけではなく見廻りを続けていると百地が馬を止めた。


「木上に忍2、そして丘の上に騎馬に乗った1名が」

そう言うと利照が前に進み出て、

「我らは徳川が家臣中根忠実とその従者である。隠れておらず正々堂々と出てこい」

そう言うと丘の上から馬を走らせこちらへ来る。木の下を通過するといつの間にか両側に忍が姿を表し目の前で止まった。


「卑怯者呼ばわりするな、お前だって話している最中に鉄砲を射ち父上を殺そうとしたくせに」

そう言われこれがあのと思い、

「次男坊はたしか上杉に人質として送られたはずだが」

そう言うとしまったという顔をして利照に槍を突き入れてきた。

信幸もなかなかと思うが打ち合いはじめると信繁は冷静に打ち合いこれが幸村と言われる男かと思いながら横にいる忍びに、

「その方が猿飛佐助かな、そしてもう一人が霧隠才蔵か」

そう言うと驚き鋭い殺気を放つので、

「上杉に人質が居なくなるとわかると不味かろう、主を連れて帰ればなにもする気はないぞ」

そう言うと忍びはお互い顔を見合わせ考え込んでしまってる。


信繁は槍を、利照は十文字槍をお互い何十も打ち合い勝負はつかず私は止めさせた。

「利照と打ち合うとは中々だが、武器がそれではな」

利照の十文字槍は堺でも有数の鍛冶屋の一級品であり、田舎の豪族が手に入れられるような代物ではなく信繁の槍の穂先は歯こぼれを起こしてしまい信繁もそれを見て顔をしかめる。

「なかなか楽しかったぞ兄弟でな、受けとれ」

利照は笑顔で自分の持っていた十文字槍を信繁に投げると驚き受けとった。

「礼は言わん」

そう言うときびすを返し、忍び二人もその後をおって消えていった。


「義父上嬉しそうですね」

「お前もな」

そう言って笑いながら小諸にそして駿府へと戻った。

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