小牧長久手と家族
1584年
勝家が自害しその後は、信雄が信孝を自害に追い込み、一益(滝川)を蟄居に追い込み秀吉は着々と勢力を伸ばしていった。
1584年明けになると問題が発生した。問題児の信雄が秀吉からの年賀にこいとの命令を蹴り、徳川に応援を依頼してきた。
使者は義息子の信隆であり、私も評定に呼ばれる。
家康が、
「遠路はるばるよくきた、信雄殿はお元気かな」
信隆は折り目をただし平伏すると、
「主人の信雄は元気にしています、今回は徳川殿のお力をお借りしたく、なにとぞよろしくお願いします」
顔色も変えず淡々と家康は、
「そうか、しかし柴田も倒し強大になっている秀吉と事を構えるのは得策ではないと思うがのう信隆殿」
「そうでしょうか、徳川家もいずれぶつかることにもなりますでしょうし、織田を助け秀吉と戦うという大義名分がつきます、それだけでは足りませんでしょうか」
いちを及第点の答えに家康は、
「忠次(酒井)はどう思う」
忠次ははっきりとした声で、
「ここで一度叩いておきませんと、羽柴の欲はとどまることを知りませんと思います」
家康は頷き、
「他になにかあるか」
慎重派の数正が、
「現状、すでに大国となり戦うことは良いこととは思いません、ここは信雄も説得して和平を結ぶのがよろしいかと」
そう言うと忠勝が、
「そんな弱気で家が保てるか、ここは攻め上がり秀吉の心胆を寒からしめ徳川の意地を見せましょうぞ」
他の重臣もそれに同意し、秀吉の外交窓口に立っている数正だけ青い顔をして座っており家康が、
「皆の意見わかった、信隆殿われら徳川は信雄殿に加勢しますぞ」
再度平伏すると、
「ありがとうございます、主人の信雄もお喜びになられることでしょう」
私のほうに笑顔を見せ、急ぎ清州へ戻って行った。
直ちに動員の指示が家康から出され、私も去年の勲功で合計五千貫の領地をいただいたので、変則的だか騎馬鉄砲三百引き連れて酒井の与力として尾張へ出発した。
途中、信雄の与力である池田恒興が秀吉に寝返り犬山城へ入った。
それを聞きつけ、家康は酒井に先行し池田に備えるように指示して私も向う。
小牧山城へ入ると、そこに百地が森勢四千ほどが羽黒に突出しておる事を知らせにきて直ちに、忠次へと知らせた。
「忠次殿、羽黒に森が出てきており孤立しています、今なら容易に殲滅できますぞ」
忠次は嬉しそうに、
「中根殿には自分の家の庭のようなものでしょうな、わかりました作戦はいかがいたしましょう」
私は少し考え、
「正面から奥平殿の三千が進み、私は西側を大きく迂回してそのまま真横から突撃し、酒井殿はすぐ横に並行している街道がありますそこを北上し背後を脅かすようにすれば、森勢は崩れるでしょう」
「わかりました、奥平と打ち合わせしてすぐに出ましょうぞ」
準備を済ませると、私は騎兵の足を生かし大きく迂回して羽黒の横に出るところまでくる。
しばらくすると奥平が到着したらしく歓声が起こり私たちも突撃を開始した。
森勢の横をつく状態で直前で左に曲がりながら停止すると、馬上から鉄砲の一斉射を食らわすと、そのまま突撃を開始した。
私の突撃と酒井勢が背後に回り込もうとしているのを見て森勢は迎撃に向かわせたので私はその前に出ると、
「信照である。織田に刃向かう不忠者の長可とその一党許さぬ」
そう言うとこちらへ迎撃に来た兵は逃げ出し始め総崩れとなる。
犬山城下まで追撃し大いに破ると町の外側を放火しつつ小牧山へ戻った。
長期の陣構えになろうと言う予測で柵と堀を何重にもめぐらし、その間我々は、土地勘があるので、少数で出かけては襲いすぐに引き返しをくりかえし、秀吉勢を悩ませる。
どうやら秀吉が到着したのを活発な動きをはじめた相手側の行動から判断し、情報収集を服部と共に百地が行った。
一週間ほどたつと百地や服部からの情報により秀吉陣営は騒がしくなり、どうやら森が先ほどの敗戦の償いのために、兵力で勝る秀吉勢が直接三河に侵攻するという情報がもたらされた。
徳川本陣では急ぎ評定が開かれると、まず私が情報の報告をするところから始まり
どう対処をするかの話になった。
こちらは向こうに比べ兵は少なく、どのようにやりくりし迎撃するかが問題になったが家康は、
「直接三河を狙うなどと二度と思わないほどに、敵を殲滅する」
家康は直接自分の領土を狙われた怒りはかなり大きく小牧山は最小限の兵でと言うことになった。
信雄は、
「しかしこちらは兵力が少ない、どのように戦えばいいのか、ここをあければ攻められ清州が危険になってしまう、叔父上どうしたらいいか」
私はいきなり振られ、家康の顔を見ると頷いたので、
「それでは、情報によると先方は池田勢でその後に森、堀、そして総大将が羽柴の一門の信吉(秀次)と言う青二才なので、すぐには迎撃せずそのまま白山林まで進めさせ、榊原殿を主将とし丹羽・水野など土地勘があるものをつけ後ろから追わせていけば秀次など物の数ではありますまい。さらに織田徳川本隊は一万ほどで東海道を下り、色金山あたりに布陣すれば丁度横に出ることができ、破ることがたやすいでしょう。ただし堀秀政はかなりの戦上手、不利と悟ればすぐに撤退を開始します、それはほっておいて、残りを殲滅することを考えてください」
家康は、
「わかった、小牧山城は忠に任せる秀吉は陽動を仕掛けてくると思うが頼むぞ」
最小限度の兵を小牧山に残して別働隊は私を含め母の夫であった水野信元の弟である忠重や榊原で先発する。
「久しぶりよ、中根の姓をつぎ忠実と名乗ったと、あんなことになりお互いこんなことになるとはな、まあサルの首を取って穂先にかかげ四条河原にかかげようぞ」
いつになっても元気な忠重と横には息子の勝成がおり、
「お久しぶりです。慶次郎殿はおられぬ様だが」
慶次郎のかぶき者に憧れており、ある意味徹底しているので、
「勝成、何時までもそんな格好と振る舞いをするな、抜け駆けが戦場の花とうそぶき困ったののです」
忠重はきつい顔で睨み付けるが勝成は反発するだけで言うことを聞かないと言い親子喧嘩が絶えないと言うことだった。
「慶次郎は義父と妻子を連れて北陸へ旅立ったわ」
そう言うと寂しい顔をしたが直ぐにうそぶき行ってしまった。
「白山林にて羽柴信吉(秀次)の軍勢は休息をとってる模様、岩崎城は攻城が開始されました」
次々と百地の配下から情報が伝えられる。
「信吉は気を抜いているようだ、榊原殿は側面へ忠重殿は皆を率いて後ろにまわりこんでください、私は半刻後正面から突破して混乱を引き起こさせましょう」
そう言うと榊原が、
「中根殿は騎馬300、危険ではないかな」
「こちらは混乱させるだけですので、逆に榊原殿の方へと尾張へと逃げ出そうとするでしょうから気を抜けばですが」
「確かにな、それでは後程」
そう言って先行していき、私も信吉の正面に回り込んだ。
「炮烙玉を投げ込み火をつけよ、立ち止まらず裏切りが出たと叫べ」
利忠や家忠を振り返り伝えると百地が、
「こちら側の敵はすべて沈黙させました」
そう言うと私の馬の手綱を持って空も白み始めた中、秀次の陣に到着すると突撃を開始した。
炮烙玉が爆発して炎上する。寝ぼけて起き上がる秀次の兵を突き倒して本陣へと向かう。
鎧を脱いでいるものもおり、秀次の愚かな考えに呆れながら木下祐久にあった。
「久しいのう、しかし祐久にあるまじき醜態だ、兄上も呆れられてるであろう」
有能な代官として各地を走り回った祐久は苦渋の顔を浮かべ、
「目付けといえども無能を正すことができませなんだ、あの世で信長様に合わせる顔もない」
そう言うと目を閉じて立ち上がったので馬上から備前長船を抜くと首を取った。
そのままさらに進むと鎧を着ていない秀次が逃げているのが見えて立ちふさがる。
「信吉殿か、敵地に入りこの醜態さぞや秀吉殿の怒りを買おう」
「忠実殿か、後生ですお助けください」
信吉はひれ伏すとしょんべんを漏らしたようで震えている。
「秀吉殿に伝えい、貸しだとな。利忠よ信吉殿を秀吉の将に引き渡せ」
そう言って任せると本陣にあった金品を強奪して榊原と合流を果たした。
榊原に、
「小牧山の義兄が気になるのでこのまま離れますがお願いします」
「確かに秀吉が出てくれば面倒ですからな」
そう言って別れると急ぎ小牧山へと向かう途中で忠勝に合流した。
「忠実よ勝った様だな、秀吉にも伝われば援軍を出してこよう、そこを攻撃する」
奇襲がかけやすい森が片方に広がる場所に私は馬から降りた鉄砲隊を伏せさせる。
秀吉は斥候を繰り出してきたが百地が襲い知らせないようにしていると急ぐ秀吉勢が現れた。
先頭が通りすぎると兄上が騎馬を率いて正面から突撃を開始して、秀吉勢が左右に展開しようとしたときに側面から鉄砲を撃ちかけた。
混乱を起こした中に忠勝が突入して切り開き、こちらは鉄砲を切れ目なく撃ち込むと隠してあった馬に乗り込み暴れまわる忠勝に合流して小牧山へと戻った。
翌日、家康が戻ってくる頃にようやく家康が不在とわかったのか攻めてきたが戻ってきてるとわかると撤退を開始する。
「さて斬り込むぞ、忠実と直政(井伊)ついてこい」
直政の兵は全て赤備えと変わっており突撃を開始する。
「防げ、敵は小数だ押し返せ」
「あれは、武田の赤備えだぞ逃げろ」
「信玄がよみがえったのか」
直政の赤備えの効果は抜群でありその色を見ただけで秀吉勢が混乱して逃げ惑う。
半刻ほど暴れまわると忠勝が、
「撤退する。直政ついてこい」
そう言って損害らしい損害を出さずに小牧山へと戻った。
それからは大軍を動かさず私の得意なゲリラ戦法で嫌がらせを続けていると、
秀吉は尾張の北西部の城を攻め、援軍をとこちらに来たが兵力を分散させず降伏するようにと命令を出した。
「秀吉が岐阜に戻ったか」
知らせを受けた家康は忠次に小牧山を任せると清洲へと戻り様子を見ていると秀吉は大阪へ戻ったと言う知らせを受け信雄が桑名へと一度戻りたいと言い更に、
「叔父上に相談したい事があり護衛を兼ねて桑名に来てもらえないか」
今更な話で家康も呆れていたが、信雄の重臣はこの戦いが始まる前に秀吉に通じていたと首をはねており相談できる者がいないと言うことで家康はうなづかざるおえなかった。
「叔父上、我らはどうなっていくのでしょうか」
信雄と馬に乗り込み桑名へと進む、
「我らとは」
「織田にございます。サルの台頭を許してしまいこのような状況になっておりますが」
この甥は自分がしでかしたことの結果だと認識もせず言ってくるので、
「その方は秀吉とどうしたい、賤ヶ岳では秀吉の味方をしたが今回は敵対をしている。もし権六と手を組み信孝と共に兵をあげれば勝って織田の力を取り戻せていたかもしれないが、信孝を排除して織田の力を弱めていると言う自覚はないのか」
顔をひきつらせる信雄はあわてて、
「あれはサルが提案してきた事で私がどうと言うわけでは有りませんでした」
「秀吉にしてみれば織田の力をそぐ絶好の機会で、その方が喜んで手を下すと考えたからのう、結果はこのとおり」
「それではどうすれば良かったと言うのだ」
信雄は重圧に耐えられないのか叫ぶので、
「大人しく言われたことに従い生きていくか、戦いに破れて一族全てが斬首されるか」
「勝と言う選択はないのですか、負けるのが前提ですか」
「いまの現状は昔公方が信玄や一向衆や三好、浅井と朝倉等を使い包囲網をひいたのと同じ状態だが徳川以外は小粒すぎる。ましてや秀吉は兄上の戦法を一番熟知しておる。機動力で各個撃破していけば勝のは厳しくなる」
「しかし家康殿もおられるから敗けはしないのでは」
「今は未だ秀吉も外敵が多いから下手にでてくるときにとも考えるが安易に動けばかなり危険と言うことだ徳川も」
そう言うと落胆して桑名へと到着した。
「申し上げます。滝川一益が海上から上陸して蟹江の城を奪い、大野城の山口様から援軍をとの事です」
清洲と桑名の中間地点であり分断されてしまう恐怖があり信雄は小さく悲鳴をあげてしまう。
「直ぐに大野城へ援軍を出しましょう。上手くすれば一益に勝てるでしょう」
一度は隠居した一益だが、秀吉に頼まれてだろうと思いながら、街道を移動すれば百地が知らせるはずだがそのような報告がないので百地に確認をとると、
「九鬼の水軍にと思われます」
それを聞いて嘉隆が出てきているのかと思いながら真夜中に桑名を出発した。
「どうやら大野城は持ちこたえてくれているようだな」
蟹江城と下市場城と前田城と大野城は4つでお互い連携しており大野城が落ちれば少々厄介なことになってしまうので思わず口に出してしまう。
「信雄殿、歓声をあげて一気に一益に突撃すれば驚き撤退するであろう」
時間は夜から空が白みはじめる眠い時間であるので直ぐに突撃を開始した。
鉄砲を撃ち込み槍に持ちかえ陣を切り裂く、
滝川勢と九鬼勢が奇襲で混乱しており蟹江方面へと逃げ始めた。
「さすがは一益、逃げるのも素早いな」
信雄の指示の遅さにため息はつくが言っても仕方がないので大野城へと入城した。
「父上間一髪でしたね」
家忠は興奮しておりこの戦いの重要さがわかっているようで利照が、
「さすがはか滝川、成功していれば徳川も窮地に陥ったところですが、なぜ成功しなかったのでしょうか」
私は少し考え、
「引退したことが敗因であろう、わかるかな二人とも」
そう言うと家忠と利照は考え込んで色々と言うが答えは出ず私が、
「信玄公が人は石垣と言うていただろう、引退をして家臣は散り散りになり頭数は揃えたが現場の信頼できる武将がおらず考えは素晴らしいが行動がついていけなかったと言うことだ」
二人は頷き、良い部下はどうしたら得られるかと熱く話し合っていた。
お昼になり家康が2万の兵を率いて応援に来てくれた。
「忠実、良く大野城を押さえてくれた。これで岐阜から秀吉が出てきていれば我々は窮地に陥っていたからな」
そう言って皆の前で称賛してくれた。
すぐさま残りの3城を包囲する。
「先ずは下市場城を落とす」
家康の声で戦いが始まり昼過ぎには城主である前田が倒され城が落ちた。
前田城も攻城が開始され私の率いる鉄砲で門周辺を制圧して門を直政が破り城内へと突入した。
直政と旧武田家家臣は大分連携がとれ、若いこの主君の猛勇さに惚れ込んでいるようで撃ち破った。
最後に残った蟹江城を包囲する。
低地にありそばの蟹江川から水を引いて堀としており城内には井戸があるため長期戦になれば面倒になると言うことで忠次を主将で南にある表門を攻めさせた。
「堀が二重にしてあり底は泥で渡るのは不可能であり一益(滝川)は戦上手で蟹江はよく知っておりますのでかなり難しいかと」
本陣から忠次勢が矢楯を並べ鉄砲で撃ちかけ怯んだ隙に門へと侍大将が兵を率いて突撃をして門を破壊しようと近寄った瞬間に投石と鉄砲で反撃をしていく、決して忠次は弱くもなく士気も高く指示も的確だが一益が一枚上手であり更に二日忠次は攻めたが撃ち破れなかった。
「康政(榊原)よ忠次に替わり攻め立てよ」
家康が連日の連戦で疲れが出ていた忠次の替わりに榊原を表門に向かわせる。
その夜も翌朝も榊原は攻め立てるがいま一歩及ばず失敗をしていると百地からの知らせを聞いた。
「秀吉が近江に移動しました」
一件何てことはない情報だが家康の元へと急ぎ報告をする。
「正信(本多)どう考えるか」
家康のところには正信が顔を出しており私の報告を聞いて、
「忠実殿と同じと伊勢には二日後、そこから4日で他の方面から同時に侵入をしてきましょう」
「忠実、急ぎ一益と開城の交渉を行え、裏切り者の前田は信雄が許さぬと言っておる」
それだけ聞くと急ぎ蟹江城へと向かった。
「忠実様、お久しぶりにございます」
一益は出迎えてくれ疲れてはいるが丁寧に挨拶してくれる。
「一益久しぶりだな、ここいらで開城しても秀吉は認めて約束を果たしてくれよう」
「知っておいでなのですか」
一益は私の憶測に驚くので、
「秀吉は織田の旧重臣は回りにおいておきたいからな、支持されていると周りに見せるために、そのために一万石位は安いはずだ」
「そうでしょうか、忠実様が言うのならそうでしょうが、和議の内容は」
「無血開城と言いたいが裏切り者の前田は許さぬと信雄のご意向だ」
しばらく考えた一益は、
「わかりました、船に乗り出たときにでお願いします」
細かい事は明日取り決め大筋で合意をして家康へと報告押した。
二日後に先ずは一益が乗った船が出る。
頭を下げ礼を言うと伊勢湾に出て南下していった。
続いて前田家宗家である長定が家族と共に出てきたので、
「長定よ、主君である信雄を裏切り何処へ行く、それを許すことはできぬ」
私は川原に出ると鉄砲隊を並べ呼び掛ける。
「信照殿か、許さぬとは無血開城ではないのか和議でそうと決まったはずだが」
「裏切り者にその人数にはいるわけあるまい」
そう言うと鉄砲を放たせた。
船に乗っていた前田一族は倒れていく、
「約束を破るとは兄弟揃って地獄へ行くであろう」
長定は叫びこちらをにらむので、
「安心しろその方の行く先地獄は兄上が魔王となりお前が来るのを待って地獄で罪を後悔させるからな」
そう言って再度発砲させ沈黙した。
この勝利により徳川侮りがたしと秀吉に印象づけたと考え清洲へと戻った。
私は岩倉が秀吉勢に襲われていると聞き家康に許可を得ると木曽川沿いを北上し、土地勘は確実な岩倉城の北側に回り込んだ、
「信隆殿と鷲尾殿が来られました」
包囲の中抜け穴でこちらへやって来ると嬉しそうに二人は頭を下げる。
「よう頑張ったな、明朝百地が敵陣に爆薬を仕掛けた。それを合図に外と内から挟み撃ちにしようぞ」
「義父上、一時はどうなることやらと思いましたがこれで守りきれそうです」
そう言うと鷲尾と共に城へ戻っていった。
東の空が白み始めた頃に次々と爆発が起きて騎馬300で突撃を開始する。爆発した火は飛び散り火が燃え広がる。
「裏切り者が出たぞ、中に入られているぞ」
槍で武将を倒しながら言いまわると同士討ちも始まりとどめに信隆が門から出撃して秀吉勢に襲いかかり敗走させた。
敗戦を聞いた秀吉は私がいると知ってかこちらへとやって来ることになり、家康も援軍依頼を受け岩倉へと入った。
「楽田城へと秀吉は入りました」
報告を受けにらみ合いとなったが私は勝手知ったる土地なので連日夜襲をかけに出掛けていると直政(井伊)と勝成(水野)が顔を出して、
「城にこもるのは合わん、御相伴預かりたい」
そう言われ苦笑しながら忠次経由で家康に了解を得ると出発した。
「敗走する忠実殿を追いかけてきた秀吉勢を二人で挟み撃ちにすると言うことですか」
連日の夜襲で秀吉も対応が早くなってきており、それを逆手にとると言うことでさらに、
「二人が襲っている間に二手に分けて利照と家忠と私とで間道を通り敵の後ろに回り次の主力を襲い帰陣する」
細かいことを伝えると別れる。
獣道を通り楽田城の周辺に出て炮烙玉を投げ入れながら暴れまわり撤退を開始する。
「性懲りもなく夜襲をしに来たぞ返り討ちにしてやれ」
予想道理に秀吉勢は追撃をして来ており私は松明もつけずに知った道を進む、
後ろでは大騒ぎで追ってきており二人がいる場所を通りすぎると悲鳴が上がり二手に別れ間道から楽田城に向け進むと百地が現れ主力も出てきたと知らせてくれ馬からおりると街道沿いに伏せた。
目の前を通過し始め半分が通過したときに百地が配下の炮烙玉が投げ入れられ爆発した。
それを合図に先ずは松明を持つ兵に向け鉄砲を放つ、倒されて松明をその仲間が拾う度に狙撃をして真っ暗闇で混乱している秀吉勢を倒し続け、援軍が出てくるまで続いた。
「退却の合図を」
百地が花火をあげ夜空に花が咲くと撤退を開始した。
「楽しかったぞ忠実殿、秀吉め慌てたであろうが明るいところで名乗り切り込みたいものよなあ直政」
勝成が嬉しそうにして合流してきており直政は真面目な顔で、
「忠実殿のやり方は奇襲に始まり奇襲で終わりましたが、どうも府に落ちません」
「小数の戦いだ、井伊の赤備えは戦場の花なので堂々と正面から敵を分断すべきだ、それぞれの立場を考えよ」
直政は少し考えまた質問をしてきてそれに答えながら岩倉へと戻った。
夏が過ぎようとする頃、秀吉は私がわざとらしく挑発しているのに気がつき岐阜へと撤退してしまった。
「忠実よ、領地に戻ることを許す。ただし何かあればすぐに駆けつけるように」
領地である天竜川と二俣川の間にある二俣城で、先代の中根が城を構えていたが武田に攻められ逃げたが連絡がうまくいかず家康に援軍を出させてしまい大敗させたと言うことで、大久保忠世が城主だが信州の城にかかわり殆ど居ないのを家康から命じられ城主となった。
「天竜川に縁があるな」
城に到着すると日和とゆいとけいが迎えてくれる。
「お父様、お兄様、利照おかえり」
双子は元気に出迎え領内を走り回ったらしく顔は黒くなり色々報告してくる。
久しぶりに風呂に入り極楽と呟きながら皆での食事となった。
「ゆいとけい、いずれと言うかもう嫁に出さなければならないが相手はどうなのか日和」
双子はどよんとした顔になり日和は呆れるように、
「話を聞き会いに行って軟弱者か頑固者と言っては戻ってきております」
「だってひょろっとしたのだとか、外に出るなとかおしとやかに、子供を生めば良いと、結婚相手が父上ばらいいのに」
ゆいが大きな声で言うと日和が、
「何をにやにやしておられますか、大事な娘が行き遅れでなく行けないと言う事にもなりかねないのに父娘揃って何を考えているのですか」
日和から怒られ謝り倒しながら思いついた。
日和と双子を手招きしてひそひそ話を始める。
「母親みたいに外で色々したいと言うなら出来なくもない、ただし秘密にしなければならない、もし明るみになれば一族は死に徳川も多数の死者がでる。私や日和には気軽に会いには行けぬ、そう死に人の住みかだ」
そう言うとけいは当然ながら不安な顔をしたがゆいは好奇心一杯になったらしく今から行こうと興奮し始めたので夜中に出掛けることを伝え、家忠と利照そして百地を呼んで秘密理に出発の準備をさせた。
星空の中で上流へと向かうしばらくして支流に入り斜面を上がった所が開けており、前と変わらず3軒ほどの家がならび畑が広がっていた。
「久しぶりだなこへい(信康)元気そうで何より」
黒く日焼けして松明の明かりの中で嬉しそうにしており、
「今日はまた大勢で、何かあるのですか」
そう言って家へと招待してくれた。
「嫁である日和と長子である家忠、双子の娘でゆいとけい、前田慶次郎の次男で利照だ」
「こちらは農民でこへい殿、昔は信康と呼ばれていた」
そう言うと驚きさらに、
「そしてその横は武田勝頼公の次男、勝千代だがのぶと呼んでおる」
武田の名前が出てゆいは興奮を隠せず嬉しそうに頷く、
「そして利照は私の姉上である市の方の子供で浅井長政公の息子だ」
皆の驚きは最高潮に達しており私は、
「内緒でここまでするのが大変だったから内密に」
そう言うと、
「大変なのは百地のじいちゃんだよね」
実も蓋もない事をゆいが言ってくれ百地が頷いて皆が笑う。
ため息をついて座り直すと、
「それで今回の要件だが、信康殿、勝千代殿、娘のゆいとけいを貰ってはくださらぬか、誰に似たのか部屋でチマチマ針仕事より外で働くのが好きと言い嫁の貰い手もないからな」
そう言って笑うとゆいとけいが、
「だって徳川の家臣は頑固でつまらないけど信康様と勝千代様なら良いよね」
そう言って顔を見合せ嬉しそうにしていると信康が、
「ここに来て嫁を頂けるとは幸せにございます。勝千代と共に御礼申し上げます」
そこには農民こへいではなく、かつて徳川の御曹司であった松平信康がおり丁寧に礼を言ってくれた。
「ふつつかな娘ですが末長くよろしくお願いします」
日和が丁寧に頭を下げるとゆいとけいもならって信康と勝千代に頭を下げた。
「それとここからが重要だ、ゆいとけいは徳川に病死として報告をする。なのでこの里からは出ることはまかにならん、家忠その様に正信に書面で報告をするように、そして日和は義兄忠勝殿に疫病による病死として手紙を書いてくれ、でもおさまらんだろうな」
可愛い姪が二人とも亡くなれば直接二俣城に来ると思うが、今は秀吉とにらみあっているため清洲を動けないのが好都合だった
「この下流の二俣城の城主となったのでここへは来やすいが昼間は無理だからな」
そう言うと日和が、
「それならいっそ私も流行り病で看病の末亡くなったとすれば良いのではありませぬか、そうすればここに娘たちとおれますし」
軽く言ってくれるが義兄の事を考えると躊躇するが女性で決めてしまった。
「兄上にはたどたどしい字で手紙を書いて三日後に亡くなったとしてください、城の東側に古い使われていない寺があるので娘を運び込んだとして10日で二人が、その3日後に私が亡くなり病を蔓延させないため火葬したと言うことにしてください」
そう日和が言うと息子である家忠は顔をひきつらせ、利照は大笑いで盛大に葬儀をしましょうと頷いた。
一旦城に戻るため準備していた船に乗り朝方には城へ戻る。
家忠と領内を見回るために出掛けていると城から知らせが来て、
「ゆい様とけい様、流行り病にかかった様子で他の者にうつしてはと奥方様が言われ近くの使われていない諏訪神社に移られ看病すると数人の者と入りましてございます」
手はず通り百地の配下で医者と数人の下女を向かわせ家忠に城を任せて諏訪神社に顔を出す。
ゆいは布団で大人しくしているの我慢できないようだが、あそこに行くためにと我慢しており日和が笑うのをこらえていた。
10日の朝方、知らせで双子の娘が相次いで亡くなり日和も倒れたと聞き諏訪神社へ急いで向かう。
到着するとうそ泣きだが日和が大きな声で悲しんでおり意識を失ったと報告を受け、私は百地が準備していた他の遺体が入っていた棺桶を河原に運び火葬をして遺骨をもって諏訪神社に戻った。
3日後、
「これを兄上にお渡しください。先に旅立ちますが女遊びは程ほどに家忠を困らせないでくださいね」
「義兄の事が一番心配だがなるようにしかならない、私も徳川が天下を取り平穏な日々に戻ったときに日和のもとへ向かうよ」
日和は嬉しそうにしながらも、
「前々から聞こうと思っていましたが小十郎様は先の事が解っているような口ぶりですね」
私は笑いながら、
「わかっている大まかだけど」
「それでは信長様が亡くなるのも」
「知っていた。遠回しに兄上には警告していたがな」
「それでは防げたのに何故ですか」
「この先の徳川が開く幕府は300年続くがその結果は悪くない、もし兄上を助ければ別の結果になるがそれが良いとは断言できないので、流れのなかで生きていっている」
「それでは信康様や勝千代さまは」
「亡くなっているはずだが習った限りでは、だが昔の事は物語でしかないから書いた人の主観で書かれているのでなかなか真実が伝わらない事も多い、なんせ信照である私は歴史では愚鈍で引きこもりとしか伝わっておらぬ」
「引きこもりは当たっておりますね、でも切れ者で優しい旦那様ですから」
「何れにしても秀吉が天下を一度は統一するが亡くなれば徳川の世となる。20年後には一緒に暮らせると考えておる。それまで達者で暮らせ」
日和を抱き寄せてキスをすると嬉しそうにして夜にゆいとけいをつれて旅だった。
同じように火葬にして正信経由で家康に知らせ、義兄忠勝にも手紙を送った。
葬儀を終え大きな石塔を大きいのと寄り添うように小さいのを二つ建てて墓とした。
「いや面倒にならなければよいが」
家忠と利照を前に忠勝からの手紙を見せる。
そこには姪が亡くなったことと日和も亡くなった事への驚きと悲しみがつづられており秀吉との戦いが終わり次第向かうとかかれていた、
家康からは異父弟である土井利勝が弔問の使者として現れ、
「奥方様と姪が次々と亡くなるとは兄上も気を確かに、何かあれば私に言ってください」
真面目な弟を騙してしまうのは気が引けてしまい、息子の家忠を家康の側近として行かせることを伝えしばらくは体調を整えるのと領内の整備に力を入れると伝える。
部屋に隠りながら領内の木を駿府に運び屋敷を立てさせ、駿府の河の工事を伊奈から報告を受けたので確認に向かうことにした。




