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高野山と根来寺そして伊賀

1581年


安土城下の館、

馬揃えが無事に終わり、疲れが出たのか高熱で倒れてしまい、一ヶ月程寝込んでしまう。

起きられるようにはなったが、まだ調子がでずずるずるとしてすごしていると、何度か兄上から医者も来たりしていたが熱が下がらずにおり、岩倉からも日和がやって来て看病をしてくれていた。


「もうやだ、もう動かない、もうはなさない」

自分でも笑いたくなるほどだだっ子になり日和の腰に手を回してひざの間に顔をうずめて寝ている。

日和は嬉しそうに頭を撫でてくれ、

「兄上が心配されて来ていただいた医者も、年相応の疲れがたまったと申しております」


「年相応って、まだまだ髪も黒いしシワもないし」

「そうですね、ほんとにかわりませんね、私は少しですけど」

「いや何時までも綺麗だし柔らかいしもう離れられない」

そんなこんなで身の周りの世話をしてくれ誰が来ても面会謝絶で通した。


その間に兄上は、高野山と根来寺が荒木の残党を匿い、それを詰問する使者を出したが皆、高野山で殺されてしまった。

兄上は怒りただちに使者を殺害するのに加担した高野聖を捕まえ即刻殺害したが高野山の寺は民衆に一揆を起こさせ反抗する。

兄上は一門の織田信張を向かわせ高野山を包囲させた。

根来寺にも攻めるという話があり、津田の師匠に急ぎ書状をだして、どうしようも無い時は私に連絡をくれるようにお願いをした。


兄上に来る報告書を頼んで持ってきてもらい確認をすると、信張は数に任せて正面から攻め蹴散らしたが、その夜に夜襲を受け鉄砲を撃ち込まれ負傷者が出た。しかし手をゆるめずに川沿いの村を焼き払い高野山を包囲して火をかけると脅しをかけ高野聖を多数捕縛して京で打ち首にして、根来寺は堀秀政が攻めて寺に残っていた数百人を捕らえたと知らせてくれた。


そうこうしていると、対毛利の報告に来た秀吉が私の館にやって来くる。

面会謝絶で通していたが秀吉がどうしてもと粘り通した。

「信照殿、お加減はいかがですかな、大病で寝込んでおられるときいてお見舞いに参りました。」

そう心配した顔で私をのぞきこんでくるので、

「秀吉殿お見舞いありがとうございます、毛利相手になかなかのご活躍、嬉しく思いますぞ」

そう言うと嬉しく頷き、わざわざ会いに来た本題を話始めた。

一歩下がると大きく平伏して頭を床につける。

「信照殿お願いがあります、家臣の渡辺了殿を我が家臣に加えさせてくださいませんか」

そのいつもの姿に苦笑しながら家臣の名前が出たことに驚きながら、

「いきなりとは、しかしなぜ渡辺了を」


頭をあげずに毎度のごとくの仕草に勝家などは白々しいと言うがなかなか笑わせてくれる。

「本願寺での前田殿と信照殿の突撃を見て、そして渡辺了殿に助けられたのです。その恩もあり二千貫で召し抱えたくまかりこしました。」


しばらく考えたが本人に聞くのが一番だろうと思い護衛をしてくれてるので館にいると思い、

「わかった、本人の意思を確認するとしよう、渡辺を呼んでくれ」


しばらくすると、本人が現れ秀吉をちらっと見て頭を下げる。

「殿お呼びでしょうか」

「知っていると思うが羽柴秀吉殿だ、そちに話があるということだ」


頭をあげた秀吉が体を渡辺に向け、

「天王寺砦では助けていただきありがとうございます。つきましては私の家臣になってくださらんか、二千貫で召し抱えたい」

率直にそして高禄を提示され驚きながらも私をみて、

「殿はいかがお考えでしょう」


筋を通してくれる渡辺に笑顔で、

「渡辺がいいと思うなら気持ちよく送り出す、秀吉どのは評価をしてくださっている」

しばらく黙りこみ私の顔を真っ直ぐみて、


「殿には返しきれないほどの恩義をうけました、しかしながら私は新たなところで腕試しをしてみたいです。」

折り目をただして平伏する渡辺に、

「わかった、秀吉殿渡辺了をよろしくお願いします。」

そう言うと大袈裟に頭を下げ、

「信照殿、渡辺殿ありがとうございまする」


「また、秀吉殿の人たらしにやられたわ、毛利での活躍を願いますぞ」

こうして秀吉は、渡辺了をつれ播磨へ戻っていった。



そうしてまだ布団から起きずごろごろとしていると兄上の名代として蒲生氏郷がやって来た。

兄上の娘婿で秀才切れ者だが真面目すぎる性格に苦手ながら暇をもて余していたので、起き上がらず日和の腰に手を回してひざの間に顔をうずめて対応する。

「信照様、体調はよろしいのでしょうか」

そんなことを気にする素振りもなく丁寧に挨拶しており何かしてやろうかと思いながら、


「大分よくなったけれど、力がでないもう少し体力を着けてからだなと伝えてくれ」

手をヒラヒラさせながらおならをする。

「わかりました、それでは伊賀攻めはまだ無理でしょうか、私も一軍を率いて攻めるのですが」

見透かしているのか気にせず出兵を伝えてきたので、


「伊賀は近いが今回は大人しくしていよう、蒲生殿も攻められるとは、功をたてることを期待しますよ」

固すぎる娘婿に兄上の使者を出した意地悪が見えてきてしまいながら信雄が前回失敗した二の舞は防ぎたいと言うこともあるらしく、

「ありがとうございます、伊賀攻めの注意点はありますか」

そう言って助言を求められた。


「過去の戦いでは、河原などや、木の上から闇にまぎれ将を攻撃をし、混乱に陥れ大敗したようで、普通の敵とは思わない方がいいと思う。」


「その時は一万もいなかったですが、今回は五万近く動員されますのでその心配はないと思いますが」

忍の怖さ、正規戦を仕掛けてこない戦いの怖さをどう伝えるか悩みながら、

「忍びの者を侮ると危険です、おきおつけなさい」

そう言うしかなく氏郷は折り目をただして、

「わかりました、では失礼いたします」


私は、蒲生の受け答えが気になり伊賀攻めはだれが行うのか確認をすると、一益(滝川)がいることに気がつき、安土にいるなら会いたいと伝える。

その間に百地を呼ぶと無理はしなくて良いからと有ることを頼んだ。


二日後に一益が来てくれ、

「信照殿、至急の呼び出しいかがいたしましたか」

新参の武将の中では戦と情報が出来る。なので重臣まで上り詰めるじとができ兄上もかっている。

「一益すまん、今度の伊賀攻めで懸念していることがあるのだが、兄上の娘婿の蒲生殿だ」


一益は少しだけ眉を動かし傷跡が残る顔を近づける。

「今回は一軍を任されるということですが、どのような」

「一益は、忍者の怖さを知っておろう、特に暗闇からの奇襲などが」

深く頷き、

「はい、信雄様もそれで破れていますから」


「蒲生殿も侮っている、援軍を出さないと首を切られ大敗しかねないぞ」

「わかりました、特に注意をし何かあればすぐ向かえに行けるようにいたします」

「ご足労だが頼む」


そうして伊賀攻めが始まった

蒲生は夜間に奇襲を受けかなりの損害をだしたが一益の援軍によりどうにか戦い抜いたらしい

信雄が今回は雪辱を晴らし伊賀を平定し兄上もいたく喜んでいたらしく伊賀の領地の加増をみとめた。


それと高野山と根来寺を攻め終えた信張から根来衆の捕虜を三百五十人ほどいるがどうするかと言われ、交渉の材料にと言うことで捕虜を移送してもらい礼(奴隷代金)として、五百貫を渡す。

根来衆は正信(本多)に書状をだし雑賀とともに徳川に召し抱えてくれと頼み、正信からは了承し向かえに参上すると言うことであった。


ようやく体調も戻り、体力をつけるために遠乗りをしたりしていると、正信が根来衆を引き取りにやって来たので、

「信照殿、今回の事ありがとうございます。殿もお喜びになられており、根来衆のことお任せくだされ」

「ありがとうございます、そう言えばつい最近高天神城を落とされたと、おめでとうございます」

氏郷以上に折り目をただして座る相変わらずの正信を嬉しく思い、

「ありがとうございます、これで武田に攻める準備が出来ました。武田が援軍を出さなかったことによる動揺はかなりのものでしょう」


「そうですね、これで家臣の離反を誘発させ、一気に崩壊する可能性がでてきたな、と言うことは来年はには攻めこむ事になるだろう」

正信は頷き、根来衆をつれ浜松へ戻っていった。


次の日、兄上に会うために京へ向かい本能寺へはいると、


「兄上、心配をおかけしました」

兄上は嬉しそうにお茶をたててくれ、

「信照、寝て過ごす願いが叶ってよかったな、これで気兼ねなくこきつかうことができる」

兄上は笑いながらむかえてくれた。


「そう言えば、家康殿が高天神城をおとしたことにより、これで調略もすすみますな」

目を細め考えながらの兄上は、

「勝頼からも同盟を結びたいと来ているが今更だな、こちらに遠慮したのか援軍を出さなかったらしい」

つまらなそうに勝頼の事を言うので、

「自滅ですね、武田攻めは木曽を寝返らせれば直ぐにでも行えますな」


同じことを考えていたのか、

「道筋ができしだい奇妙丸(信忠)に攻めさせ1年以内には終わらせることができるだろう、その時は信照頼むぞ」

笑いながらこき使うと宣言してくるので笑顔で頷き、

「兄上以外は2・3年はかかると考えておりますからね」


「信照はどう考えておる」

「崩壊は早いと、今回の高天神のこともありますし、朝倉の時のように一族からも裏切りが出て案外早いかと、信忠殿も気合いが入っておりますし兄上が来る前に終わるかもですね」


「久しぶりに聞いた信照の思惑か、良かろう楽しみにしておくぞ」

こうして、武田攻めに向け準備をはじめるのであった。


その夜に氏郷が訪ねてくる。

「実はお聞きになりたいことが」

そう言いながら押し花を差しだいてくる。


「伊賀攻めで敵地に入った初日、朝起きると胸のところにユリの花ががおかれておりまして、信照様の庭に咲いていたなと思いながら来ました。」

私は大きく笑い、

「我が百地が敵の忍でなくてよかった、兄上に怒られるところだった」

そう言うと驚き、

「やはりでしたか、直ぐに家臣には警戒を密にさせ数人の忍を切りふせることが出来ました。」

頭を下げユリの押し花を差し出してくるので、


「娘婿が無事でよかった、ユリも役目を無事に終えてよかった」

そう言って和紙に包んで返した。

「しかしお見舞いの時に露骨に色々なされ何でかと思いましたが心配していただいたのですね」

「そうよ、ただしおならは日和に怒られたわ、兄上の娘婿殿に失礼すぎますと」

そう笑い酒を持ってくるように言いながら、

「追い詰められたものが何をするかわからんと言うことを肝に命じよ、長島の戦いしかり、三河の一向一揆しかり」

酒を酌み交わしながら色々と話した。


「そう言えば四国の長宗我部は一条を放逐したと、織田との関係を切ると言うことかな」

報告書で読んだ中で気になることを氏郷に聞く、

「元々一条氏を国主、長宗我部をその家臣として組み入れるつもりでしたから上様も討伐を信孝様に任せるつもりのようです」

「そして上様は、三好に阿波半国を任せ他の豪族も支配下におき長宗我部には阿波半国のみで後は返すようにと伝えました。」


「毛利と組むなこれは、秀吉も辛いだろう」

氏郷は難しい顔をして、

「三木を倒したが毛利との対決、上様も期待しておられる分羽柴殿も難しく上様と信忠様の出陣を願い出ております。」

「氏郷にも秀吉から後押しを願い出たか、細かき心配りよ」

「信照様の所にもでしょうか」

「いや、言ってこないよ言わないからねそう知っているから」

そう言うと不思議な顔で氏郷は見つめ、

「上様の言っておられたこととはそう言うことであったのですね」

そう言うと一礼をして部屋を出ていった。


月を見ながら武田を終わらせた後の事を改めて考えながら本能寺の夜に思いを更けた。


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