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こへい

夏になり九鬼の鉄鋼船が九隻も完成し、堺に回送しながら武装を準備し、嘉隆殿の船に同乗し向かった


途中雑賀で、迎撃に出てきた雑賀衆の船を沈め、堺に到着した

兄上が待っており、満々の笑みで降りてきた私と嘉隆を迎えた


「見事だ、小十郎、嘉隆ここまでのでき、褒美をつかわす」

そう言ってそれぞれに黄金を十枚ずつもらうと、船に乗ると中を見学して毛利との戦いに出る私たちを見送った。


翌日、石山本願寺の沖に西方向に船首を向けていまや遅しと待ちわびていると、報告通り昼過ぎに毛利の船が表れこちらに向けて風上から進んできたので九鬼が嬉しそうに、


「小十郎殿、気合いが入りますな必ず勝ちましょうぞ」


「嘉隆殿、私もこの大鉄砲で楽しみます」

そう言いながら一抱えもある拳ほどの弾を装填して見下ろす。

「ようし、火縄をつけよ、狙うは敵の指揮船だ」

そう嘉隆が毛利の軍船の中にいる安宅船を指差して、毛利の船の中に入り込んだ、毛利は周りを大小何百と言う船で囲み攻撃を仕掛けてきた。


私は舷側から下を狙い、敵の船の武将や火薬がつまったカメを狙い撃ちまくり、火薬が入っていれば爆発し燃え上がった。


しかし毛利側が風上なので巧みに近づいて鉄砲を撃ち込んできたり爆発するカメを投げつけてきたりしてくる。

しかし船が大きいのと鉄で張り巡らせている船には有効ではなくことごとくを跳ね返していく、やがて風が我々の背中から吹き始め風下になった毛利水軍はこちらに近寄ることも出来ず次々と鉄砲の餌食になり沈んでいく。


毛利水軍は突入を諦めたのかそれから二刻程で終了し、指揮官の乗る安宅船等をほとんど沈め、兵糧は少なからず運び込まれたが、圧勝であった。


嘉隆はそのまま石山本願寺沖に鉄甲船を戻して、自分は小早川船で堺に戻った。


兄上は結果を喜び、これで石山の本願寺は実質孤立させることが出来て、早期に殲滅できると喜んだ。

私は京経由で岩倉に戻り、相変わらず芳しくない信康に対する工作に苛立ちながら数正に書簡を送り強弁に押さえつけることも考えるようにと伝えた。

特に私に対して兄上からも信忠からも出兵の命令は無かったので内政を積極的に行い、越前等の鉱山の開発も積極的に行った。


夏になりそして秋になり、涼しくなり始めた頃に対本願寺の一手の大将である荒木村重謀反と、たまたま安土にいて兄上とお茶を楽しんでいるときに知らせが来た。

兄上はその事が信じられず、しばらく小姓をにらみつけると、


「光秀、松井友閑に説得させよ、村重め秀吉の副将の立場で何をしておるか」


そう言って兄上は、そのまま出てしまい、私は兄上から対毛利の大将である秀吉からの懇願により荒木を与力としたばかりであり、根本的なところで本願寺と毛利に対する戦略を変更しなければなrなくなった。

すぐに岩倉に兵の準備をさせないとと思っていると岩倉から知らせが来る。


百地から石川殿からの使者がきて、岡崎に家康殿がいきなり来て信康を大浜城に移したとのしらせを受けたと言うことだった。

私は慌てて岩倉城へ戻ると百地にあることを手配して、慶次郎をつれ大浜城へ向かった。


急ぎ向かったが信康はすでに堀江城に移動されていたので直ぐに向かう事にしたが、堀江城へ到着し二俣城主大久保忠世が表れ、家康殿の許可がないと会わせられないと言い張り、仕方がなく浜松に戻り酒井殿に家康の許可を頂き、堀江城へ戻ったが二俣城へ移送されてしまいさらに追いかける。


ようやく二俣城へ到着し大久保に面会の許可をもらうと一室に閉じ込められ見張られている信康に面会した。

私の顔を見た信康は少し元気を取り戻したようで、


「叔父上、こんな理不尽がまかり通っていいのでしょうか、城を追い出され家臣からはなされ、見張られ自由を奪われている。」


そう言われここまできて今更配慮もないかと思い、


「それは信康殿の立場であり、家康殿の立場もある。信康の父親は徳川を存続させるのはこれしかないということだ、それを受け入れることができるかできないか、できなければさらに惨めになるだけだ。」

信康は怒り、

「叔父上も父上と同じようなことを言いなさる、なぜだ」


「それが上に立つ者の責任であり物の考え方だ」


「上に立つ、私にはそれがないと言うことでしょうか」

顔を赤くして信康が詰め寄る。

「それがないと言うかその言動で自分も周りも死ぬ責任が無い、家を存続させる覇気がない、信康殿に当主が変わった瞬間、私は織田家のため滅ぼす迅速にかつ確実に、それだけ織田家には危険な考え方だ」


「叔父上が私を滅ぼすと、そう簡単に滅ぼされない三河武士がいれば、私がいれば皆ついてきてくれる歴然とした独立して対等の立場としてやっていけます。」


そう言われもうどうしようもないところまで来ていると私は改めて認識した。


「わかった、大久保殿すまないが二の丸の広場を借りる。」

そう横で蒼白な顔の大久保に言い、

「信照殿何を」


「黙っておれ大久保殿、この責任はわたしがとる。」


慶次郎を呼び信康をつれて、前もって準備させていた馬と朱槍と鎧を運ばせ向かった。

広場へ到着し信康に、


「今から慶次郎と槍合わせをしてもらう、勝てることができるなら、赦免を家康殿と兄上に言おう、負ければなにも言わず言う通りにしてもらう。」


信康は顔を赤くして目を見張ったが静かに頷く、お互い準備をし、広場の端と端に別れる。

少しの間お互いが見つめ、おもむろに信康が走り出した。

慶次郎は直ぐに動かず信康を見つめた後に、耳が痛くなるほどの怒号と共に走り始め、お互いが槍を構え交差した瞬間、一方が吹っ飛んだ。


慶次郎は反転して信康に


「もう、おしまいか」


そう言われ信康はよろよろと立ち上がり、馬に跨がりなおすと向き直った。

それから何度も吹き飛ばされ、ボロボロになるまで繰り返す。

大久保からの抗議を睨み付けて黙らせ、いつ終わると知れ無い二人を見守る。

とうとう信康が起きずにいて、慶次郎が馬から降りて二人で信康のところへいった。


「叔父上、悔しいです自分にも全てにも、いまさらもうどうしようもないですよね」


「これから名もなく人知れず暮らしていく覚悟があるか」


そう言われ信康は目を見開き私の目を覗きこむように見てしばらく考えたのち、


「できます」

そう言われ肩の荷が少しだけおりた気がしながら、

「わかった、任せろ」

そう言って大久保に治療のために部屋に戻させ、酒と食事を頼むと言い部屋に戻った。

大久保には席をはずす様に言い、慶次郎に見張りをするように言うと私は信康に、


「はじめにもう一度言う、武士でもなく、松平信康でもなく、誰も知らないものになる、もし破るのなら艪と櫂及ぶ限り殺しにいく。」


もしばれれば国が混乱すること間違いない決断なので念をおしていく。


「わかりました、松平信康の名は今日で捨てます」


「よし、今夜に入れ替わる、百地が代わりのものを手配しているし、この顔なら明日腫れて一週間は腫れは引くまい」


そう言うか言わぬかの時に百地が闇に紛れ入ってくる。


「準備はできておりいつでもつれてこれます。」


「明日の番に連れてきて、入れ替わりでここの上流にある隠れ家にお連れしろ」


頷くと百地は闇に溶け込んでいった。


信康とご飯抜きでお酒だけを飲みあかしてその日は就寝した。


翌日顔を腫らせた信康に大久保と服部がきて、明日斬首をなったことを知らせると信康は、


「よろしく頼む」


そう言うと静かに目をつぶり

服部は泣きそうになりながら下がった。


その夜、百地が一人の男を連れてきて、信康に背格好がよくにておりからだ全体を信康のように腫らせ言葉がでないようにした男を連れて来ると、私に引き渡して代わりに信康を連れて闇の中に消えていった。


朝になり、服部が白装束に白い前かくしをした信康を斬首する部屋につれていき座らせる。

私も見届役として大久保の隣へ座ると服部が太刀を構える。

この名も無き男の最後を見届けるため見つめていたがいっこうにふり下ろされず、服部を見ると涙が止まらず執行出来ないと言うことになり、介添人を天方道綱にかわってもらい執行した。


後は大久保に任せ、私は岐阜へ戻ると大久保に言うと城を出る。

一旦東海道を西へ向かいそれから川を北上していき、川の源流に近い山間に三軒ほどの家がたち並び、武田との戦いでは諜報戦の最前線で使っていた隠れ家に夜遅く到着した。

中にはいると百地と草がおり、信康はお風呂から上がってきたところで、私は信康に、


「こへい、新しい名前だ、ここにいる富吉が生活の手伝いをし、草が他の家に住み周りを警戒する。ここで新しい生活を始めるのだ」

そう言うと憑き物が取れたような穏やかな顔で、

「ありがとうございます、こへいはここで新たに生活していきます。」


「会うことはないかもしれないが、体だけは大事にしろ」


翌朝、川を下り岩倉城への帰途についた。

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