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新しきもの

京から戻ってくると兄上に呼び出され茶室に向かう、顔を会わせるなり兄上には何が欲しいかと言われ、戦功として越前若狭の大野郡と南条郡にある山の試掘と生産の代官を置くことをお願いし笑いながら了承してくれた。

関で代官をしていた関を呼び出すと、

「ご苦労、鉱山によりわが家も潤っている、感謝する」

少しだけシワが増えた関は嬉しそうに平伏すると、

「ありがとうございます。毎日が楽しいですぞ自由の民(上無し)との暮らしは、明るく楽しく」

しがらみのない生活を考えると良いなと考えてしまう自分がおりそれを想像しているとあわてて現実に戻り、「それはよかった。ところで新たなる試掘を頼みたい、土地は越前と若狭了解は出ている。」


採掘予定の場所の地図をわたすと、

「わかりました、一族で増えたものに技術を教え増えたので、そのものたちに依頼しましょう。」

「頼む、酒も用意させた運ばせるから振る舞ってほしい」

灘の酒を準備させるように指示して、

「心使いありがとうございます。それでは」

そう言って灘の酒を土産に関へと戻っていった。


入れ替わりに古渡が内政の報告に来ると、

「信照様、報告でございます。領地の治水及び灌漑も終わり開墾を行っております。伊那殿がおられなくなって効率は落ちてしまい申し訳ありません。」

しょげている古渡に

「いやいや、伊那がすごかったのであって、しっかり仕事をこなしている古渡には感謝している。」

ほっとした古渡は、

「そう言っていただくと、有り難いです。そして本題ですが百地殿の草が岩村城と信濃、飛騨から流民が長篠の後に増えまして受け入れております。しかしかなり流れてきており、開墾も追い付いて行きません。」

直ぐに水田や畑が出来るわけでもなく増え続ける流民が一時生活所で生活を余儀なくされ食費もばかにならない、

「難しいね、鉄砲鍛治や各工房での希望者はあるのではないか」


「受け入れる希望は工房はありますが、敷地を拡張しないといけません、城の東にある真言宗の寺を、北側の森の中に移築すればかなりの工房が作れますが、一度断られています。」

古渡は悩ましい顔をしてシワを深くする。

「わかった、それについては私から住職に話をしよう」

少し離れるが広くて良いところに土地を準備すれば移ってくれるだろうと楽天的に考えた。

「よろしくお願いします」

「それと二の丸拡張と館の増設が終わりました、何時でも使えます。」

待ちに待った館ができたのでほっとすると早速呼び寄せようと思い、

「そうか、お市姉さまに移っていただくか、それもすまぬが岐阜とやり取りして決めてくれ」

真言宗の総本山に根回しをお願いし、移築をスムーズに行う準備をして、市姉さまに移る準備ができたとしらせた。


それと正信(本多)からようやく合議奉行が起動に乗ったと

これは正信が行っている、外交、法治、農業、商工を八人の家臣に任せ月毎に交代で行い、大きなものや判断に迷う事は評議をおこないそれでも決められないことは、私に決裁がきて疑問がなければ即決をしている。

十六人の候補がおり正信に実務を教えられながら、論詰で仕事をしていたが、はっきり言って正信の試しは生易しいものではなく一人また一人と辞めていき半数しか残らなかった。

そしてこの役職は役職手当として二百五十貫とし兵役は問わないことする。


「正信ご苦労、まだひよっこだが鍛えられたこと無駄ではないと思う、正信が徳川に帰参するまでよろしく頼む」

嬉しくもつまらなくもなく淡々と正信は頷き、

「信照殿、及第点は与えられるほ鍛えましたがまだまだでございます。」

自分でさえ全然正信の考えに追い付かないからこそ家臣を鍛えてもらう。

「これからも頼むぞ、できれば骨をうずめてほしいが家康殿の元で活きるとおもう」

武将から嫌われてると自覚しているがその事は顔にも出さず正信は一礼して下がっていった。


翌日から久しぶりに作業に出る。

いつものように兵と共に泥だらけになりながら開墾を始めていると合議奉行一人の宮城が慌ててやってきて、

「殿、自らこのようなことをなされずともわれらがします」

慌てて止めに来るので、

「昔からしていたからな、趣味だ趣味あまり気にするな、気にせず進めてくれ」

「わかりましたが怪我だけはおきおつけください」

こうして兵の錬成と開墾を繰り返し民を受け入れていく準備を行った。



夏になり、お市姉さまが岐阜から3人娘を連れて移動してきた。

相変わらず美しいお市姉さま、

「信照、お世話になります」

4人は並び座る。

「時間がかかり申し訳ありません、何かあれば古渡に申し付けてください」

日和も子供達を連れて座り挨拶をする。

「日和殿にもお世話になります。我が娘達共々よろしくお願いします」

「お姉様、どうぞ気にせず色々言ってください」

日和は嬉しそうに深々と挨拶をするとお市姉さまは嬉しく頷いた。

挨拶も終わり日和に案内され幼い三人の娘と侍女をつれ二の丸の館に入った。


慶次郎には後日顔を会わせたとき、

「新九郎はどうしている、姉上が岩倉に入ったのでそうそう城に連れてくるわけにもいかなくなったが」

そんなことも気にしているのかと言う顔で、

「毎日山へ馬を飛ばし連れて行っているがよう泣くぞ、泣くが最後までやり遂げる。父親に似て猛将に育つだろう」

そう言って笑いながら慶次郎は明日にでもこい、体がなまってるだろうと言う誘いを受け了承した。


日の出前に正門を出て町を抜けていくと慶次郎とその前に座っている新九郎が眠い目をこすっている。

慶次郎がそのまま馬を飛ばし、川をわたり野を駆け抜けると山の麓へ到着して馬を繋ぎ止めると鉄砲を担いで山道へと入っていく、

「新九郎、今日は叔父上がきておる。へたばったら尻でも蹴飛ばしてやれ」

慶次郎は私を見て新九郎に言う。

「はい父上、信照叔父様よろしくお願いします」

元気よく礼儀正しく挨拶をしてくれ玉の汗をかきながら結構な早い歩みで山を上っていき、私も新九郎の手前疲れたと言えずに登りきり山頂で朝食をとることにした。


「慶次郎、もしや本当の父親母親の事を話しているのか」

先程の発言に疑問を抱き聞くと、

「当たり前だ、新九郎もいっぱしの男。はっきりと伝えているし、この事はわしと信照にしか話せないと言うこともな」

横の新九郎もしんみょうに聞いており慶次郎は気にすることなく、

「新九郎、叔父上に何か頼み事があると」

新九郎は緊張して私に向きなおすと頭を深々さげ、

「1度だけ、母上と姉さま妹にあいとうございます。顔だけでも拝顔したくお願いします」

「わかった、遠くから見るだけだ」

新九郎は再度頭をさげて礼を言った。


山を下りながら獲物を見つけるとまだ扱うには難しい鉄砲を慶次郎から受け取ろうとしたので、

「新九郎、叔父上からこれをやろう」

そう言って慶次郎が渡そうとしている3匁の鉄砲の半分しかない馬上筒を与えた。

新九郎は父である慶次郎を見て頷いたので両手でしっかり受けとると、一通り素早く確認して私から弾の袋と火薬の入った入れ物を受けとり素早く装填して皿に火薬を入れて火縄をつけた。


素早く斜面を下り雉が地面を掘り返している場所に近づくとかまえて発射した。

弾は胸に見事に当たり新九郎は子供とは思えない素早さで雉を枝に吊るして弾を取るのと血抜きをしせみせた。

慶次郎と共に降りると、

「新九郎見事だ、初めての物は当たりづらいと言う教えを忘れずに少し下を狙って命中させたな」

新九郎は嬉しそうに返事をして、

「よろしければこれは叔父様に」

私は笑顔で、

「新九郎の初めての獲物、ありがたくいただきお市姉さまと夕飯にでも食べようぞ」

新九郎は大喜びで次も私がと先頭にたち昼過ぎまで数羽の雉をとり城へと戻った。


「明日、搦め手より奥へ続く庭を通り抜け私の書斎に父上と入れ、庭で茶会を行うのでその時に見ればよかろう」

私はそのまま城に入り雉を夕飯にと渡して騒がしい二の丸の館に顔を出す。

「お市姉さま、今晩は雉をとってきたのでそれを夕食にします。それと明日よろしければ中庭で茶会を行い家臣を紹介いたします」

「信照はよくしてくれますね、明日は喜んでお誘いにのりましょう」

私は礼を言って下がり、子供達はお手玉等を行い楽しい時間を過ごした。


翌日朝から気持ちによい晴天で、敷物を庭に敷いて日傘を広げていく、

鷲尾や古渡の重臣が次々と着席していきお市姉さまが子供達と日和を連れて座った。


私は茶をたて始め皆が飲んでいき一巡したのち、

「皆のもの毎日ご苦労、今日は姉上であるお市の方が二の丸に入られたので紹介したい」

城代である鷲尾や中根の爺等を順番に紹介をしていく。一言二言話をしていくと書斎の方で息をのむ声が聞こえ、間が悪くお市姉さまに気がつかれたらしく、

「信照、他にいる様ですが、確かあそこは書斎では」

もう城の中を教えたのかと日和を見て、

「言い忘れておりました。前田慶次郎利益が悪さをして罰として掃除をさせているのです。なあ慶次郎」

書斎に向け呼ぶと、

「野暮なことをさせて、後で酒を飲ませろ」

そう返してきてお市姉さまにはごまかすことができ、家臣も慶次郎が掃除とあり得ない事に目を丸くし笑いをこらえた。

その後は珍しい果物やお菓子をふるまい楽しい時間を過ごすことができた。


終わった後台所により酒を一樽担いで書斎に入ると、慶次郎は寝転び、新九郎は正座してうつむいてる。

私は樽から酒を酌むと慶次郎に差し出すと飲み干してしまった。

「母上が近くにいるのに何も出来ない、こんなことがどうしてですか叔父上様」

淡々と言われてしまったが、

「新九郎が生きているとわかれば必ず殺される。それほどその方の父の裏切り行為が許されないと言うことだし、何よりその方を逃がすためこちらの事情とはいえ同年輩の子供の首を差し出したのだからな、母上に二度も同じ苦しみを与えることは赦さん誰が何を言おうと、もしこれ以上言うなら何処かに押し込めなければなるまい」

私の威圧に新九郎は顔色を失い、

「わかりました。私には母上や姉妹がいないと思うしかないと言うことですね、父上が言われた通り」

横で酒を飲み干し新九郎を見ていた慶次郎を見つめると、慶次郎が頭をかき立ち上がる。

私はとっさに、

「慶次郎!」

「新九郎の気持ち受け取った。悪いようにはせん」

そう言うと新九郎を脇に抱えあげ音もなく飛び出すと夕闇の中二の丸へと消えていった。


忍者のでとはいえ素早い動きに唖然となりながら私は見送るしかなく、万一の時は兄上に首を差し出さなければ許されまいと、そうなればお市姉さまにさぞかし恨まれるだろうと思いながら塀を越えて消えていった慶次郎達を見送るしかなかった。



しばらくすると二の丸で小さな騒ぎがおこり、しばらくすると城代である鷲尾が私の元へ来ると、

「申し上げます。幽霊が化けて出たと二の丸で大騒ぎに御座います」

「どんな幽霊だ」

鷲尾は少し困った顔で、

「小谷城から一緒に来た乳母からは首を切られた嫡男の幽霊と」

「首を切られたならわかるまい、狐か何かに化かされたのであろう。お市姉さまは何と」

「涙を流して手を合わせ無言に御座います」

私は黙って飲み残した酒を一気に飲み干すと察したのか出ていった。

翌日からしばらく書斎から出ずに今までの事を考えながら過ごす。歴史を知っているはずだがあえて必要以上の介入により変更するのを避けてきたつもりだか、何気に影響が出ているのかと悩み、最小限に何とかと思うに至りながら数日を過ごした。


そうこうしていると兄上が珍しく本丸の館に来るとお市姉さまが入ったことを気にしながら、

「本願寺との戦いに毛利が出張ってきよっった。九鬼の船を沈め兵糧を運び込みおって小十郎何かないか」

これは鉄甲船のことかと思い、

「ようは鉄砲も弾き、燃えない船を造れば良いと思いますが」

面白い事を相変わらず聞けるのが楽しい兄上は嬉しそうに、

「ほう、どのようにする」

「琵琶湖に浮かべている兵輸送用の船を規模を拡大し、横には鉄の板を打ち付け鉄砲や焙烙玉を防ぎ上から大鉄砲や大砲で沈めてしまえばいいかと、九鬼でも十分作れると思います」

簡単に紙に書くと兄上はそれをつかんで、

「よし九鬼に作らせるが、鉄の板は信照の処で作れ、そのぐらいは対応できるであろう」

「はいただし、鉄は海につけるとかなり腐食してしまうのですぐダメになってしまいます、半年ぐらいかもしれません」

気にすることもなく

「毛利の水軍を撃滅できればそれでよい、それと謙信が上洛してくるかもしれん」


とうとう難問が上洛を始めたと言われ、

「権六では抑えきれないでしょう、武田との戦い以上のむずかしさがありますし、長篠の手は使えないでしょう」

「戦術を縦横無尽に変えてくる謙信ならでは、罠には入ってこぬか」

「即陣代えを行い両翼外側からまわりこむか、別の侵入路を考えましょう」

「そうか、来年までの課題とする」

そう言うと何か言いたげだが安土へ戻るといい奥の濃姫と日和と子供たちに会い楽しむと帰って行った。

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