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ねねと秀吉、越前坊主踊り

浜松から岐阜へ戻り、ゆっくり出来ると思い布団に潜り込むと玄関から騒ぎがおきたが直ぐに収まり、静かで極楽極楽と思い寝ていると、襖が開く音と子供達の笑い声が聞こえてくる。

今は寝かせてと布団へ潜り込み丸くなると、上から重いものが腹の上に勢いつけて乗っかってきて笑い声が、

私はあまりの痛みに涙を流しながら目をあけると・・・・・


なんと兄上が平八郎とまきを抱いて、にやけた顔で見下ろしており、

「小十郎、可愛い我が子をおいて寝ているとは、呆れてなにも言えん」

「兄上、こないだの戦いで知恵を使いきりまして、貯めているところでございます、後生です、寝かせてください、子供たちと」

「平八郎、父はどうやら寝たいと言うが一緒に寝たいか」

「にに(兄上)、平八郎は父と一緒に寝たいですが、できれば父とににとで遊びたいです」

「まき、父と一緒に寝たいか遊びたいか」

「ににと父と遊びたい」

そうして二人で抱かれている兄上の顔に抱きつく


「と言うことだ、小十郎わしと遊ぶために越前へいくぞ、その前に今日は二人と遊んでやれ、いいな」

笑いながら子供たちを下ろし、二人が私に抱きつくと、後ろで笑いながらゆいとけいを抱いている日和に

「と言うことだ、日和、明日からまた借りるぞ」

「はい、寝ているより戦う方が凛々しいですから使ってください」

そう言って皆で笑うと玄関へ見送っていった。


寝るタイミング失い、子供たちと日和につれられ、岐阜の城下町を一日つれ回され、翌日には一路越前へ向かう。


越前は朝倉討伐の後、兄上から越前を任されていた桂田長俊を一向宗が殺して越前を奪った、しかし一向宗の内部分裂を起こしており、一向衆は桂田長俊を殺すのに協力した富田長繁も殺害し、越前を一向一揆の持ちたる上無し(支配されず支配せず)の国とした。本願寺顕如の命で国主として下間頼照が派遣されるが、桂田と富田以上の悪政を敷いたため、反発をまねき一揆の内部分裂が進んでおり(上無しなので上から押さえつけることについて反抗していた)、そこにつけこんでの今回の兄上の出兵である。


「さて、今回の攻めるについて何かあるか」

じと目で私を見ながら、眠い目を擦りながら、

「兄上」

「なんだ小十郎、まだ目が覚めてないならもう一度しようかのう」

「つつしんでご辞退させて頂きます」

兄上は笑いながら

「それで何かあるか」


「しばらく越前の手前で待機し、下間と一向衆とのいさかいを増長させ、下間孤立させれば楽に勝てると思いますが」


「成り行きとは芸がないのう、他には」


「越前には裏切った朝倉景健がおります。今回織田勢が越前に入れば、また下間を裏切り、手見上げを持ち許しを乞いに来ると思います。そうすれば越前も加賀も権力争いを始め綺麗に坊主を掃除出来ると思います」


「あまり積極的ではないが坊主を掃除できるのが気に入った、しばらくは長浜に留まり坊主たちが踊り狂うのを見よう」


長浜城で秀吉が渾身の接待を行っており翌日目が覚めて兄上と縁側でゆっくり話していると秀吉の妻であるねねが挨拶に来た。

「信長様お久しぶりにございます。信照さまも」

明るく朗らかなねねに兄上は嬉しく、

「久しぶりだな、元気そうで何より長浜もよくおさめておるな」

「ありがとうございます足軽頭から城主になるなど信長様のお陰にございます」

「うむ、どころでどうした何かあったか」

兄上に聞かれ恐る恐る、

「実は藤吉郎が最近色々なところに女をこさえており困っております」

「そうか、信照知っておるか」

聞かれてしまい嘘も言えないので、

「最近城主となり気を大きくしたのか側室をいきなりつれてきて困らせていると、跡継ぎが必要なのでその点は汲み取りますが、秀吉についてはただの女好きだと思います」


兄上の目元がピクピクしており、

「ねねよ跡継ぎがほしいと言うことも汲み取ってやれ、もし調子に乗っているなら改めて言ってこい」

ねねは嬉しそうに、

「ありがとうございます。たしかに跡継ぎは重要ですね、わかりました」

「わしから秀吉には釘を指しておく、いまどこにおる」

「領内の見廻りで夕方には戻ってきます」

兄は頷き、

「わかった。信照よ秀吉が戻り次第連れてこい」

兄上は嬉そうに私に指示した。

その後はねねとしばらく話して越前の報告を受けていると秀吉が帰城した。


私は直ぐに迎えにいくと秀吉が私を見つけて走ってくる。

「信照様お出迎えご苦労様でございます。私に何か用事でのありましょうか」

貫禄をつけるためつけ髭をした秀吉に私はこれから起こる不幸とは裏腹に笑顔で、

「兄上がおよびでございます。日頃見廻りなどで領内を納めている秀吉殿に感謝を言うつもりなのではないでしょうか」

そう言って兄上の前につれてきた。


秀吉が平伏して、

「サルめをお呼びとはどの様なことでしょうか」

声はうわずんでおり嬉しさを隠しきれないでいるようであった。兄上は、

「見廻りご苦労、聞いたところによると目敏く色々見てまわってるようだな」

「はい、上様から拝領した領地に不備があれば申し訳がたちませぬ」

秀吉は元気良く返答をする。

「ほーう、その中にねねがいるのに女にうつつを抜かす為に探していると言うのも入っておるのか」

兄上はそう言いながら手を横に出すと近習が太刀を差し出し握った。


赤から青、白に顔色が変わっていく秀吉は、

「滅相もございません、そんなことはございませぬ」

後ろへ下がる秀吉に太刀を持ってゆっくりせまりながら、

「可愛いねねを悲しませるとは」

逃げ場がない後ろは壁で慌ててこちらへ走ってくると、

「信照様お助けを、お願いでございます」

私の後ろに隠れて手を合わせ祈る

「信照の後ろに逃げるか、どう思う信照」

「秀吉、ねねどのをないがしろにするつもりは無かったと言うことだな」

「はい、その通りにございます」

後ろで叫んでいる。

「今まで以上に大切にするか」

「します。幸せにします」

「と言うことでよろしいでしょうか兄上」

兄上は笑いながら、

「ねねには何かあれば直接言ってこいと伝えているからな」

そう言って出ていってしまい秀吉は久しぶりの直接の怒りに力が抜け、

「何がなんだかわかりませぬ」

ぐちゃぐちゃの顔で私に言うので、

「跡継ぎの為には必要だが正室のねね殿をないがしろにすることは許さんと言うことです。家を留守の時に守ってくれるのはねね殿であり、その影響は秀吉の働きにも影響します」

秀吉は平伏して、

「必ずやねねを幸せにします」

「お願いしますよ、兄上の雷は怖いですから」

兄上の冗談は冗談でない本気に秀吉に同情しながら越前へ向かった。



越前に入ると本来なら数万の一向衆との戦いが待っているはずだったが、坊主である下間と一向衆の門徒との関係は決裂し城には数千ほどの坊主と一分の土豪しか残ってなかった。

兄上は金ヶ崎まで進ませ一気に落とそうかと言う時にで朝倉景健が下間の首を手見上に降伏してきた。


「下間の大将首でございます」

兄上は片肘をつき黙って見つめており、周りの重臣も裏切りを繰り返した男に嫌悪感を出して見つめていた。

「信長様が必ずや討伐にこられると思い一向衆にまぎれこみ時を待っておりました」

景健は思いの外兄上の反応が鈍いので慌てて、

「それと主だった城には我に同調するものがおり合図と共に火をつけ混乱をおこし門を開け放つ手はずにございます」

兄上はゆっくりと立ち上がり、

「我が軍勢で城を落とせぬと言うことか」

激しい怒りである青筋をたてて目元をひくつかせている。重臣達は怒りの度合いに気がついており顔を青くしていた。

「滅相もございませぬ、織田の軍勢なら一向衆など一蹴できます。我らが手伝わなくても」

この男は自らを不要といったのを気がついていないのか、

「勝頼との戦いでは強右衛門と言う忠義の義士がいたがその方は真逆の畜生にも劣るやつよのう」

景健はもう精気を抜かれた顔で崩れ落ち兄上は斬首を命じた。


越前へ侵入すると本来なら一向衆、門徒との果てしない戦いになるはずだがそんなことはなく越前と加賀の城を一気に包囲し坊主を掃除する。


朝倉が建てた城や御寺を権六が先頭で切り崩していく、僧兵のみで農民や武士の門徒は下間やその配下の僧の横暴と不正に怒り加わろうとしなかったので次々と容易に落ちていった。


権六が捕らえた坊主を本陣に引き出すと次々に、

「退去するので見逃してくれ」

「城の銭や兵糧等を差し出す」

「越前や加賀の織田の支配を受け入れる」

「仏の罰が必ずくだろうぞ」

「畜生め必ずや地獄に落としてくれようぞ」

命乞いや文句等を並べ立て首を打たれていった。本願寺から派遣されていた七里と数人の坊主は御ノ房という加賀の拠点に籠っており抵抗を続けている。


評定で兄上は、

「残るはあそこに籠る坊主のみとなったがいかがいたすか」

「今までと違い鉄砲を揃えておりこちらの損害も馬鹿になりませぬ」

権六が発言する。

「権六、損害を出さずに落とせ」

そう言うと兄上は立ち上がり何か用事があるのか出ていってしまう。

「損害を出さずにどうすればいいのか」

権六を含め重臣は考え始めるが良い案がでない。


「信照様何かあればお願いしたい」

権六は私に向きなおすと頭を下げたので、

「今回の戦いで長島の門徒と違うことに気がつきませんか」

権六は考えているが出てこず代わりに信盛(佐久間)が、

「長島ではイナゴの如く門徒が現れて攻撃してきましたが今回は城を落としても坊主しかいないと言ってもおかしくなりませぬがそれが何か」

「一枚岩ではないということです。門徒と坊主、坊主の中でも土着の坊主と本願寺から派遣されてきた七里を中心とする坊主との確執があるということです」

信盛は少し考えたが、

「それでも損害を出さずにと言うのは」

「そうですね一言手紙を送れば良いのです。降伏の件は了解した。明後日金銀を持って退去を認めると」

「それだけで」

「もう城は残っておらず援軍も厳しい、そして自分の知らないところで交渉が決まればどうする」

これでもわからないのかと思っていると、

「機先を制して自分達以外のものを排除しようとするのですね」

末席から秀吉が発言して皆頷ずいた。


「ありも逃さぬように囲め、私は文を書いて送り込む」

評定をお開きにした後手紙を書いて百地に託した。


翌日から城の僧兵の数が減り注意散漫になっているようで報告が次々と来る。兄上はと言うと周囲を見てまわっておりどうやら謙信との決戦場所を探しているようだった。


そして真夜中に城から火の手が上がり喧騒が起きておりこちらも緊張が走る。火の手は最初は小さかったが誰も消す者がいないのか全体に広がっており焼け出された坊主が門の外に逃げてくる。

こちらは遠巻きに見ているとあっという間に紅蓮の炎をあげていた。


焼け出された後もどうやら二つに別れた坊主はにらみ合いをしておりそれぞれの坊主の使者がやって来た。


「名代の信照だ、用向きを聞こう」

そう言うとお互い罵り合いながら降伏を求めてくる。私はかしげながら、

「どちらが我々と話をしていた相手なのか、誰かわかるか」

坊主はお互いこちらですと叫び、重臣達はそんな交渉が無かったと知っているので笑いをこらえていた。


「焼け落ちてしまって家財を持ってはいけないと思うが織田が安全な場所まで送りましょう。さあどちらなのでしょうか、明日返答をお願いします」

私が真面目くさって言うのをなんとか笑いをこらえ坊主がそれぞれ立ち去った瞬間に大笑いを始め笑い転げていた。


「信照様も人が悪い、ああ言われれば助かるために相手を潰さなければなりませぬからな」

「仲間を信頼できないないような輩はああなるだけだよ、皆も家中で争えば滅ぶと言うことを肝に命じてほしい」

ここにいる秀吉や権六はそれで身を滅ぼしているのだがその事については言えずに評定を終えた。


目の前で生き残るための争いが始まり周囲を鉄砲体で包囲してしまう。

どうやら七里が生き残り周囲を鉄砲で囲まれているのを見て、

「信長め必ず地獄へ落ちようぞ、しかしわしを解き放てば極楽への道も開かれる、どうだ」

そうどこからその自信が来るのかと思っていると、

「ふん、つまらんもう少しなにか言うと思ったが、信照どうする。」

いつのまにか兄上が戻ってきており私に聞くので、


「そうですね、帰りにどこぞの村で農民に引き渡せば恨みをかっておりますので始末してくれましょう。」

そう言うと兄上は笑い七里は、

「そんな下せんな者に引き渡そうとは」


「その方ら坊主に徳があるなら農民も喜んで迎え入れよう、自分のしたことに責任を持ちなさい。」

そう言って近くの大きな村で坊主を引き渡すと七里達は積年の恨みとばかりに消えていった。


平定後兄上は権六(柴田)に越前八郡を任せ他は与力として配下に入らせると、岐阜へ戻った。


「しかしあれだけ大騒ぎしたのに結果は呆気なかったが石山の本願寺も早々に決着をつけたい」

そう言いながら今回の戦いは終わり疲れたのでまた子供たちに乗っかられながら布団で過ごすことにした。


しばらくすると朝廷から兄上は権大納言と右近衛大将をいただき、兄上は岐阜に家臣を集めると、


「奇妙丸に家督を譲り、美濃と尾張を任せる」


そう言って、茶器だけ持って、なんとうちに来た。


「譲って居場所がないからここに住むと」


本気ですか、いじめですか、子供たちはにいにが来たとおおはしゃぎ、日和は苦笑して兄上の正室濃姫と楽しく子育てをしている。

居場所も威厳も父親も全てが露と消え私の書斎と茶室は兄上に当たり前のように使われ、結果、岩倉城に政務と言いつつ時々兄上に呼ばれいじられ濃姫に笑われ岩倉に戻るを繰り返すことになる。


岩倉では増えた領地の治水や開墾道路整備を行い、それに目をつけた兄上に尾張から岐阜は終わっていたのを京への街道を広げて整備を行い監督するように言われ重臣一同をうっぷんばらしにこきつかいながら工事を急ぎ進めていった。


ある日、拡張が終わった街道を兄上と進むと途中で止まった。

「信照、あの者に施しをせよ」

兄上の目の先には体が不自由な男が座っている。

「どの様に」

「名主を呼びこの者の面倒を見よと、金を渡してこい」

私は馬を降りて名主を呼びこの男の面倒を見よと金を渡すと琵琶湖沿いを進む、

「信照よ琵琶湖の水運を握るにあたり安土に城を建てることにする」

「それで城を譲られたのですね、早すぎますよ」

「丹羽に任せるから信照も力をかせい」


そうしてこの年も暮れていくと思いつつ、兄上は安土に城を建てると宣言して丹羽を呼びあれやこれやで年末が過ぎていくのであった。

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