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大虐殺

夏、岐阜では上機嫌な兄上が評定で、


「長島の坊主どもを壊滅させる、前回の事を踏まえ小十郎の意見も取り入れ河口は船で埋めつくし交通を遮断し兵糧攻めにする。」


兄上の不転の決意とともに三度目となる伊勢長島への出兵を宣言すると、前回では船は大湊の船を借り上げてと思ったが拒否され敗れた苦い経験から、大湊の船主には長島の一向衆に協力すれば死罪であると伝え、実際実行してしまう。

船は九鬼等を動員し六百もの船を並べる準備を行っており兵を引き連れ兄上は出発した。


岐阜から出発した兵力は七万以上で長島へと次々入ると陣を各自はり始め、

準備ができしだい上流から河口の城や砦を目指して四方八方から、手前にある小さな砦を落としつつ、逃げる一向宗はわざと殺さずに長島の城へ追いたてていった。


その翌日、九鬼引きる水軍が到着し、川を埋めつくす軍船軍船軍船、水面を埋めつくし一向衆が船で行き来できない状態でした。

私はさっそく九鬼嘉隆に会いに行くと赤銅色の義隆が出迎えてくれたので、、


「久しぶりです、嘉隆殿」


「信照殿、その節はありがとうございます、何かご用でしょうか」


「すまないが小早川(軍船で一番小さい数人が乗れる船)を六隻ほどお貸し願いたい、移動手段として」


「わかりました、水夫も必要でしょうか」


「四隻分だけお貸しください、それだけで大丈夫です。」


「わかりました、手配しお持ちします」


忙しそうにしている義隆に礼を言って陣へ戻るとすぐさま六隻と水夫が送られてきた。


信隆と鷲尾を呼び、


「信隆、嘉隆殿から船を借りてきた、これから長島の中心にいけばいくほど船が必要になる」

自分の叔父である義隆の名前が出ると少し眉をひそめながら信隆は、

「これを私が指揮をすればよろしいのでしょうか」


「そうだ、だがうちの鉄砲に船から撃たせて果たして使い物になるか」


鷲尾が


「昔試してみましたが、最初は撃てます。しかし、船の上で再装填と撃つには揺れすぎてしまいます。」

「信隆もなれてはいるがきついと思うが」

「はい、わたしも小早川ではかなり難しいです、しかし、今あるのは小早川どうするのですか」


そう聞かれ、昔本で読んだなと懐かしく思いながら、

「昔、曹操と言う明の古代の国の英雄が、船の上の生活に慣れない自分の兵のために連輪と言う技術を使い解決した。それを今回使うから資材が手配している」


そう言っていると長谷川が兵に資材を持たせやって来る。


「この板と縄と竹を使い六隻を三隻ずつ前後に並べその上に竹をわたし、さらにその上に板を並べ固定し平らな場所をつくる。機動性は高くないが今回は必要ないだろう。九鬼水軍がいるからな、それに鉄砲をのせ警戒させる。」

鷲尾が納得して頷き、

「これならたしかに安定はします。我らの水上ではこれしかないでしょう、兵は酔いにくい者を選びます。」


さっそく製作を始め一日ほどで前に竹を束ねた盾を並べ、中央に一段高くした物見台を作った連環の船を作り上げる。


「これを海で使えば即横転して沈んでしまうでしょう。波の無いここ限定ですね義父上」


そう信隆は言いながらさっそく兵をのせ訓練を始める。


兵は最初のうち少しの揺れで鉄砲を構えると船酔いをしてしまったが1週間ほどでなれてきたようで今では船の上でも楽に寝てしまえるようになり決戦まで体をならしていった。

訓練を繰り返し一向衆に備えて半月ほどすると、兄上に本陣に呼ばれたので向かう。


「小十郎、今回は一向宗も根をあげてきたわ、大鳥居城・篠橋城両城が信雄の砲撃により降伏してきたが、そのままおいたて長島に送り込んだ。これで干殺が早まったな」

そう嬉しそうに話す兄上に、

「さぞ坊主どもも悔しがっていましょう、しかし油断大敵ですぞ、彼らは信じられない力で逆襲することもありますから」

そう言うと珍しく優しい顔で兄上が、

「小十郎は一向宗に関しては慎重だのう、今回は限界ギリギリまで追い込み殲滅するから、そんな気力も無いようにしてやるわ」

そんなご機嫌に振る舞う兄上をみて危うさを感じてしまった。



更に一ヶ月で、長島と残り二の城以外はすべて陥落する。陥落時一部の城では長島城で内応するので見逃して欲しいと言う交渉が一向衆からある。


兄上は評定を開くと、

「見逃すなど言語道断ですぞ、弱っている相手を一気に殲滅してしまい残りも早々決着を」

権六が同強弁して兄上は嬉しそうにしており、その他の重臣達も同意してくる。

「佐渡はどう思う」

前回で息子を一向衆に殺された佐渡に兄上が聞く。

「息子を殺された恨みをはらしとうございます。出来れば先鋒で」

珍しく好戦的な佐渡に、

「佐渡よその恨みもうしばらく取っておくことになる。城へ逃げることを許す。以上だ」

そう言って出ていってしまう兄上に、説明を受けていない重臣達は戸惑い兄上が出ていったあと私に噛みついてきた。


「信照様、弱りきっている門徒を逃がすとは狂気の沙汰ではありませぬぞ」

権六が唾を飛ばしてくる。

「敵をわざわざ合流させる愚か者が何処におられますか、敵討ちのためにも殿に御留意させてくだされ」

狂気だの愚か者だの興奮して兄上に対してすごい言葉を使うなと思いながら、

「お二人の言う事ごもっともですが兄上はたたでは済まさんと言うことです。生ぬるい方法を兄上が取るとお思いですか」

そう言うと静まりかえりお互いの顔を見る。

「本当ですね」

佐渡が念を押すので私は頷き、

「もうしばらくすれば坊主どもが兄上の所業に恨みを言うしかないということになります」

その答えを聞くとようやく解散した。


一向衆は城から出るとおっかなびっくりで出てくる。兄上は長島への退路のみ開けてそれ以外は封鎖してしまい残らず長島城へ送ってしまった。


それから更に一ヶ月、城付近まで偵察に行くことになり嘉隆の安宅船に便乗し長島城へ近づく。

かなり近いところまで寄せたが鉄砲の反撃もなく近寄る事ができた。

捨てられた亡くなった一向衆を回収して胃のなかを調べるとガリガリに痩せた中は何もなく食べ物が尽きたと言うことを物語っていた。


私は嘉隆に、

「嘉隆殿、正に地獄ですな一向衆は、反撃する力ももはやなく食べ物は雑草もはえておらず人肉飲み食べておるらしく白骨しかない、生き地獄とはこの事を言うのであろうな」

嘉隆も、

「まったく敵とはいえ同情したくなります、ここまで近づいても反撃もなく、今なら楽に城を落とせるが殿は動かない」

根をあげるまで間だ待つつもりの兄上にため息をつきつつ、

「自業自得だとはいえ嘉隆殿、このような戦い早くなくして寝て過ごしたい」


そう言っていると、城の表門から僧侶の格好をした使者がでてきた。

「私は一向宗、僧侶の下間頼旦、織田家に降伏を願い出たい、信長の所へお連れしてくだされ」

嘉隆はこちらを見たので頷くと、

「織田家家臣九鬼嘉隆と申す。下間殿を殿の所へお連れいたそう」

そう言うと船にのせ兄上の本陣に向かった。

坊主の下間はやせ衰え義隆が水を差し出すと美味しく飲む、門徒の食事は気にはしないが自分達の食料がつきると言うことでようやく重い腰を上げたと言うことだろう。


本陣に到着後、兄上は会い下間頼旦の降伏を認めた。明日朝に大阪方面へ退去すると言うことを決めて使者は戻っていき、重臣たちは今更なんで降伏を認めたのかと兄上に訴えていたが、

「明日鉄砲を並べ退去し始めた一向宗に浴びせよ」

そう言われ、重臣一同言葉を失う。


私の予想道理になりそうなので急ぎ自陣に戻ると信隆の指揮する船に乗る。自分の鉄砲を持ち出し夜のうちに長島城の大手門が見える場所に船を止め、兄上の乗る予定の船の右手に錨を下ろし固定した。


朝、日が上ると共に長島城から立つのもやっとと言う、飢餓地獄の様相をしている一向衆が数千出てくる。

兄上が隣の船に乗り、織田一門が乗る船はさらに前鉄砲を乗せた船の横に進みその中に信成の姿も見えた。


横につけている小早川に飛び乗り信成が乗る一族の船へと向かい、

「各々がた、危険にございますればもう少し下がって観戦をしてはいかがですかな」

いちを一族の筆頭と言う私だけれども何をするわけでないので影響力はあってないようなもの庶子であり長子の兄信広が、

「信照、もう虫の息ではないか何を怖がる。大人しく布団にはいていろ」

再度説得しようと言う気力もなくなり信成に、

「お気をつけ下さい、もしもの時は船から飛び込んでこちらへ来てください」

「信照殿ありがとう。そうさせてもらうよ」

手をあげてお互いわかれ私は戻った。


私は船に乗っている古参の鉄砲隊の面々を見ながら、

「よく聞け、今からあの一向宗に右手にある鉄砲が発砲し殺しまくるだろう、しかし私の考えでは怒りに我を忘れた者が兄上の船とその左にいる一族が乗る船に突撃してくるであろう。やつらは決して止まらない、周りが倒れようが親子供が倒れようが」

三河での事を思い出したのかこちらを見て顔をひきつらせる鉄砲隊の顔を見返し、


「我々が止めなければ兄上も一族も危険であろう、鉄砲は一人三丁積んでいる、ひたすら撃ち、最後の一人が倒れるまで撃つのをやめることは許さん。私もそのつもりだ、心せよ、鬼となれ、人と思うな、準備ができしだい構えよ。」


そう言い終わると、門から目の前の浅瀬を渡り始め大阪方面へ退去し始める。

女子供が先頭に立ち周りを男どもが保護するように進む、ようやく河の半分まで渡った瞬間に門徒の近くにいる織田の鉄砲頭が声と共に手を上げるが門徒は気にする余裕もなく必死に河を渡っているとそれは始まった。


兄上の号令と共に鉄砲頭が手を下ろし鉄砲隊が女子供に狙いを定め一人残さず倒すつもりで撃ち始め、

後方にいた男たちは呆然とし、次の瞬間どこから声を出しているかわからないほどの声をしぼりだし、兄上の船を指差し河原から河へ飛び込み始める。


悲鳴と怒号、怒り悲しみ色々な感情を織田勢に向け突き進む一向衆、それを見て並んでいる鉄砲は途切れる事もなく撃ち込んでいるが、いっこうに倒れず進む力も衰えない、ひたすら兄上の船と一族が乗っている船をめざし河を横断していた。


一族は観戦しているはずが自分達が狙われていると気がついたのか慌て出しており船上で叫んでいる。


私は信隆に、

「少しずつ前にだせ、一向衆の進行方向の前にだ。」

船が動き始め射程にはいるまで待機する。徐々に動いておりようやく射程に入った瞬間私は先頭の者の胸を狙い撃った。

弾は上にそれたため頭を飛び散らせながら倒れたが後ろの悪鬼のような男は気にせず前に出ていき少しずつせまっていく。

他の船からも鉄砲で撃っていたが、動揺しており明らかに弾が上を撃ち空へ吸い込まれていく。


自分の兵はただひたすら目の前に現れる者を撃ち殺して、鉄砲が熱くなりすぎたら代えて撃ち続ける。

兄上の船に向かった一向宗は全て撃ち殺し事なきを得たが、一門の乗る船には一向衆にとりつかれ、乱戦になっており、鉄砲を撃ち込みたいが一門に当たってしまうので射てずにおり、周りから援軍が到達し駆逐されたのは昼も過ぎた頃であった。


私は兄上の船に寄せて乗り込むと、椅子に座り疲れた顔をしてる兄上に話しかける。

「兄上ご無事で何よりです。」

兄は頷き、

「小十郎、助かったあれが言っていたが狂気だな、侮りすぎたもっと力を削いでからすればよかった、見誤ったわ」

そう言いながら恐怖と言う感情を兄上は感じ顔を引きつらせた顔をしながら、座って長島城を見つめていた。


馬廻りがやってきて

「報告します、一族の信広様と、秀成様討ち死にされました」

「なに、兄上と彦七郎が亡くなったか」

「信成様討ち死に」

私は逃げなかった生真面目な信成に黙祷を捧げていると、三人の兄弟を一気に亡くし気落ちした兄上、だがそれもすぐに怒りに変わっていき、


「小十郎、残った城は弔いをかね柵で回りを囲み、降伏を願い出たい時点で火をつけ焼き殺せ」

怒りを隠すこともせず近習も驚き一歩さがってしまう怒りで私に命令する。

「わかりました、重臣たちと準備をし実行します。」


それから数日後にそれぞれが降伏したいと願い出てきたので周囲から火をつけ、中にいた一万人以上を焼き殺し、一益に領地を与え岐阜に戻っていった。


私は兄上が恐怖と言うのを自分自身で感じてしまったことにより、人間の本質たる恐怖の対象を排除しようとする意識が暴走へと繋がると思いながらどうそれを止めるかと考えながら岐阜へと戻っていった。

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