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幕府滅亡

1573年春

武田との戦いの癒えぬまま岩倉城へ帰城しており、有能な家臣である伊奈忠次は無事、徳川に帰参できた。


「今回はご苦労さま、感謝したい。皆が力をだし今ここにいることができたからね」

城代である鷲尾が進み出て、

「今回はよく生き延びたと思います、横で無茶をする殿に焦りました。まさか自らも味方に迂回を指示するとは思いませんでしたから」

私は頭をかきながら、

「味方がくれば崩壊するから必死だったよ、すまない気を付ける」


宇部は苦渋の顔で、

「慶次郎殿の突撃についていききれず損害を出してしまいました」

平伏する。

「私がもう少し後ろを気にしていれば宇部殿のせいではない」

慶次郎は隣で宇部をかばい、宇部も慶次郎に礼を言う。

「前田殿、配慮ありがとうございます」

兼松が進み出て、

「しんがりで強敵に遭遇しなかったので助かりました、長槍もあの程度ですみましたから」

確かに組織だってと言うよりは鼻をそぎ落として戦功をたてるため個別での追撃であったためだが、私の撤退を安全に行えたのは兼松のお陰だったので、

「いえいえ、兼松殿が押さえ込んでいただけたからこそ、本陣が持ちましたし」

兼松は首を横にふり、

「一番は中根信隆殿が構築してくれた柵で防げたことが大きかったと、そのままならもっと追撃で損傷を受けていたと思います」

信隆は静かに頭を下げた。


気持ちを切り替え元気に、

「今回は負け戦だったが、百貫ずつ加増します。これが私からできる感謝にかえるものです。」

鷲尾を筆頭に家臣は一斉に礼をしてくる。


「それではこれからのことについてだが、しばらくは予備の兵での再編成と言うことになるが夏までには終わらせたい。私は兄上から将軍の説得を命じられたので、そのまま京へ向かう。」

そう言って冬場からお腹が大分大きくなった日和と子供達と遊び、翌日岐阜へ向かった。

「小十郎、徳川の援軍ご苦労であった。すぐに京へ稲葉一鉄と安藤守就を与力として京で将軍を押さえろ、もし言うことを聞かなければ、将軍を支持する上京を焼いてしまえ、従臣させるか京から追い出してしまってもかまわん」

「わかりました、多分言うことは聞かないとおもいますが、対応させます。」


私は聞かないといけないと思い、

「岩村城についてはいかがでしょうか」

兄上にあえて不愉快な今回の原因の1つを聞くと、

「あの女は自分の安全のためだけに坊丸を売りおって、このことは必ず始末つける」

自分の身内の裏切りにより同盟を危うくしてさらに弟である私を危険にした事に非常に怒っているようで長政の裏切り並みの怒りだった。

「報告した通り信玄は病で床に伏せていると思われます。このまま亡くなれば誰が継ごうがちからは落ちて岩村も戻りましょう」

他人任せの言いように兄上は少し機嫌を損ねたが信玄が倒れたことに安堵しているのも事実なので黙ってお茶をもう一度たてて自分で飲み干した。



岩倉に戻り、騎兵十、鉄砲五十、長柄槍を百だけつれていき、集合場所の佐和山城に到着した。次の日に与力の二人と合流し京へ向かうと二条城へ入らず東寺に入り宿泊すると次の日に、単身二条城へ入った。



「麿は我慢ならん、譲歩に譲歩を重ね将軍の権威もなく、ないがしろにされてきた。いまさら何を言われようが変わらない」

そう何時ものようにお歯黒の顔で私をにらむ、

「それでは幕府最後の将軍として名を刻み、後生からそしりを受けられると言うことですか」

そう表情を表に出さず淡々と言うと、

「麿を殺害するのか、無礼であるぞ」

口に泡を吹きながら叫ぶので、


「殺害するつもりはありませんが、ここにいられると思わない方がよろしいかと、織田あっての将軍ですから」

立ち上がり扇子を私に投げつけると、

「うぬぬ、数々の非礼許さん覚えておれ」

そう言い出ていき、後に残った幕臣たちに私は再度、

「忠義もよかろうが、潮時というものがあると思います、身の振り方を考えたほうがよろしいでしょう。」

投げつけられた扇を拾い自分の腰に指すとそのまま東寺に戻った。


稲葉と安藤に、

「将軍との交渉は決裂した、支持者がいる上京をそれぞれ分担し朝から燃やし灰にしてしまえ」

私が簡単に言うのを一鉄(稲葉)があわてて聞き返す。

「幕府と事を構えると、そして京を焼き払えと言うことでしょうか」

簡単に言う私に対して幕府への畏敬は古い人々にはまだあると言うことだが、

「そうだ、古き象徴である幕府は命脈がつきたと言うことだ」

「しかし京を焼くのは如何かと」

「全てではない、幕府を支持する者が集まっている場所が目標である。直ちに行え」


そう伝え、村井には禁裏には黄金を献上し、明日上京に火をつけるがこちらには被害が起きないようにすると伝える。



翌日それぞれが西と東へ別れ火をつける。

「火事だ、織田の軍勢が火をつけたぞ」

人々は次々と家から飛び出し大八車に家財をのせていく、私は大通の真ん中に陣をはり指示を与えていると、

「お止めくだされ、ようやく復興してきた町を燃やすのはお止めくだされ」

町の顔役が数人人へ駆け込んできたので、

「貴殿らが支持をしてきた幕府の行いだ、恨むなら公方をうらめ」

「そんな、おやめくださいませ」

兵に止められながらも食い下がるので、

「公方が大人しくしていただけるのならすぐにやめようぞ」

そう言うとあわてて二条城へと走っていった。


「よろしいので」

村井が心配そうに聞いてくるので、

「あの将軍がそんなことで主義主張を変えるはずもない、恨まれるのは公方になるだけだ」

村井は頷き目の前で町が燃えるのを見続けた。


上京は丸一日で灰となり、翌朝将軍に会いに行く。


昨日の放火のお陰で朝から公家等が押し掛け将軍に対し大人しくしていろだの、これ以上燃やされたらどうするんだと狂乱な状態で騒ぎ立てており、直ちに朝廷に調停をお願いをすると、将軍も承諾したようで私は気にすることなく大広間へはいり座ると挨拶はせずに、。


「将軍義昭様、今後ともよろしくお願いします、京の生活の安定のためにも」

私が不意に現れて驚きながら一晩中色々な人から言われ続けたらしく疲れたようすで、

「わかっておるわ、火をつけたのは誰じゃ、覚えておれ」

「火をつけさせたのも続けさせたのもわかっておられると思います」

深々とおじきをすると早々に城を出た。


一鉄と安藤を引き連れて岐阜へ戻り茶室で何時ものように兄上に報告をすると、


「小十郎ご苦労、しばらくはおとなしくなると思うが」

「時間の問題なのは確かですね、今年中は大人しくしていただければですね」

少しだけ兄上は笑うとすぐに真面目な顔になり、

「ところで浅井、朝倉討伐を開始しする、7月を目標に動員をするぞ」


「わかりました兄上、前回の雪辱を果たしましょう。」

そう言うと怒りを押さえながら兄上は、

「そうだな、一気に滅ぼすつもりでいるから任せるぞ」


こうして岩倉へ戻ると臨月のお腹を抱えた日和が


「お帰りなさい、どうやらもうそろそろでございます。」

身重で出迎えてくれる。

「よし、一ヶ月はいるつもりだから、楽しみにしてるよ」

嬉しそうに子供達をつれ、城にいる間に生まれればいいねと話しながら、甚三郎も今年六歳、頭の回転もよく贔屓目にも落ち着いた男の子に育った


「日和、甚三郎も六歳、再来年には徳川殿に養育を頼まなければならない」

「やはり甚三郎を徳川に渡さなければなりませんか、こんなに可愛いのに」

私は日和の腰をさすりながら、

「約束をしたのだ、それまでは充分愛情を注いでくれ、そして明日からの開墾現場に私も出るから三人ともつれていこうと思う。」


「わかりました、子供達をお願いします。」


そうして次の日に、甚三郎と平八郎とまきを、私と兼松と慶次郎がそれぞれ馬にのせて兵をつれ開墾を行っているところに連れていった。


今回は小姓にあがった慶次郎の長子正虎もつれてきており、慶次郎と正虎に子供達を任せ、兵と一緒に畦道を作ったり用水路の整備を行う。

その間、慶次郎が村人とともにお囃子をして一緒に楽しく踊ったりしながら作業を応援している。


四日目のお昼に城の方から早馬がやって来て、もうすぐ生まれそうにございますと言われたので、何時ものごとく褌になり川に飛び込んで泥を落とすと、


「まき様見なさい、お父様の得意な褌で飛び込み馬に乗り城へ帰りますぞ、まき様が生まれたときにも同じようなことをされましたし、変わりませんね、お父上は」


そう笑いながらまきに説明する慶次郎は戻る準備を始めたていた。


「まき、昔も今も早く戻るためにしていることだ、もうすぐそなたらの弟か妹が生まれるぞ、甚三郎来い城へ戻るぞ」


そう言い、甚三郎を馬にのせ走り出す。城へそのまま入っていくと、門番は殿が褌いっちょに驚きポカンと見ており、新任以外は何時ものことと思いながらみている。

馬をおりそのまま奥の控えの間に行くと中根の爺が、


「おめでとうございます、女の子の双子にございます。もう少しで対面できようかと」


嬉しそうに伝えてきて、子供達はそれを聞くと慶次郎に乗っかり喜んでいる。

しばらくして皆を引き連れ見に行くと、日和の左右に大きな声で泣いている双子がいて、日和が満面の笑みを浮かべ


「今回も双子の娘にございます」

私はちかより顔をのぞきこむとゆいの方が大きくけいは一回り小さい、

「でかした日和、名前は大きい方がゆい、小さい方がけいとする。ほら妹たちだ挨拶をしてお母さんを慰労してあげなさい。」


そう伝い子供達が母親と妹たちを囲み、おっかなびっくりでさわっており、

それを見ていた慶次郎が


「愛でたい、よし正虎祝の品を捕ってくるぞ、小十郎明日には戻る」


そう言いあきれている息子を連れ出ていってしまう。


しばらくはまた夜も昼もなく大騒ぎだなとおもいながら風呂に子供達を引き連れゆっくりと入るつもりが興奮してしまい大騒ぎで乳母を呆れさせてしまう。

ちなみに慶次郎親子は翌日こやまほどの大猪を仕留め引いてきたのはさすが慶次郎と、皆が感心して、その大きさに驚いた。



それから一週間後、兄上からの動員命令が来たので兵を率いて岐阜へ向かう途中で百地が知らせに来る。

「将軍が兵をつれ槙島城へ入りました。」

ついに来たなと思いながら、

「三ヶ月しか持たなかったか、これで幕府も終わりだな」

ため息を1つはくと岐阜の兄上に伝えた。


家臣が集まり岐阜の大広間では評定が始まる。

「今回皆もしってのとおり朝倉討伐をしようとしたが、問題が発生した。小十郎話せ」

兄上から言われて立ち上がり、

「今月始めに将軍が二条城を家臣に任せ、槙島城へ入りました。これは皆が周智のとおり信玄が亡くなことを将軍は知らないと思われ、そのまま織田に対して決起したと言うことでしょう。」

兄上は面倒なことをようやく片付けられると思い頷くと、

「皆の者、二条城を攻め槙島城を落としてから朝倉討伐に向かうぞ」


それを聞いて皆が動こうとしたが佐渡(林)が進み出て、

「将軍を殺すと言うことでしょうか松永のように」

そう叫ぶ、兄上はそのまま立ち上がりながら、

「佐渡は将軍を殺したいか」

鼻で笑いながら出ていってしまい佐渡は呆然とする。


丹羽がそれを納めようと私に、

「信照様」

私は座り直し、

「将軍を殺す殺さないはどちらがよいかと言うことだ」

佐渡を含め半数以上は理解できないようで眉を潜めるので、

「あんな将軍でさえ将軍だそれを殺して汚名を受けても利はない、京から追放して新たな世を作ればいいと言うことだ」

佐渡はあわてて、

「ほんとにございますね」

汚名と言うのはよほどやなのか食い下がるので、

「私がそう考えているだけだ、兄上が殺した方が利があると思えばそうする。それに従えばよいそれがやなら浪人すればよい。織田家当主たる兄上に異議があるならいつでもよいぞ」

佐渡はひれ伏して、

「滅相もございません直ちに出立の準備を致します」

そう言って飛び出し他の者も飛び出していった。


前もって出陣の予告をしていたのですぐに兵を集結させ、総勢七万にも上る織田勢は一路京へ向かった。

何事もなく京に到着すると兄上が、

「信照よ二条城を落とせ」

私は頷き、

「半日くだされば兵を損じる事なく落としてごらんにいたしましょ」

兄上は笑い重臣たちは驚く、二条城は平城とはいえ二重の堀と万全な守りに織田が造り上げているので損害がかなり出ると武将の中で話が出ていたのを私がそう言うので驚いているようだ、虚勢をはって失敗すれば私といえども兄上からどんなお叱りを受けるのかと皆が見ていた。


私は織田勢を動員して二条城を囲み喚声をあげ威嚇する。

「すぐに開城せよ、さもなくば京を焼き払うぞ」

そう城を囲む兵に言わせると、中にいた公家等がこないだの焼き討ちの情景が思い浮かんだのか悲鳴をあげ幕臣を責め立て説得するとすぐに城が開かれた。

私は二条城へ入城するとすぐさま幕臣をとらえ兄上のもとに連れていくと、

「お前たちは公家の悲鳴には勝てないと言う者か愚かな、わしに仕えるもよし将軍と最後を共にするのもよし」

幕府の大半は兄上に仕えることに決め数人は槙島へと行った。


重臣の驚きを背に受けて兄上を先頭に槙島城へ向かう。


槙島城の目の前を流れている宇治川は水量が増しており、皆が渡るのを躊躇しており兄上の苛立ちが顔を出しはじめているので、

「私が先陣で渡りましょうか」

そう提案すると兄上は、

「信照は先ので戦功をたてた、サルその方に任す」

そう言われ秀吉は喜んで、

「必ずや将軍を連れてきます」

言うや否やすぐに川を渡り槙島城へ備えた。


それを見て皆が渡り始めると、城からようやく足軽が武将に率いられ飛び出してきたので秀吉は鉄砲を撃ち込み城へ押し返す。


川を渡り終え城の包囲が終わり、兄上からの合図とともに攻城戦が始まった。


兵力差はあまりにも大きく、鉄砲隊で繰り返し門を撃ち、大木で門を叩くと閂は折れ突入が始まり、他の部隊も次々と城へ取りつき落城は間近だが、流石に将軍を殺しては不味いのではと思っていると、兄上から降伏させよとの命があり、私が使者として本丸前まで急いだ。


「織田家臣山城守信照です。降伏の使者で参りました。目通りをお願いしたい」


しばらくすると城主の槙木島が出てこられ、


「将軍様がお会いする」


そう言われたのでそのまま一人で入っていく。

中では眼にくまを浮かべ疲れた顔の将軍がおり私をにらむと、

「織田めきたな、信玄が上洛をすれば麿は、ここまで苦戦することもないのに」

そう吐き捨てるように言うので、

「ひとつ申し上げてよろしいでしょうか」

うつむき加減でこちらを見て、

「ふん、耳が汚れるが仕方ない聞こうぞ」


「信玄は待っても来ません、春に亡くなりましたので、なのでこのような大軍でこれたのですが、知らせはなかったのですか盟主なのに」

そう嫌みのように言うと、

「なに、麿をたばかるきか、信玄が死んだなぞ信じられない、その方の嘘であろう」

目を大きく見開き私をにらむので、


「なら何ゆえ将軍様への書状が今年に入って止まっておりましょう、そして武田は甲府に引き上げております。」

そう言われ焦って義昭は、

「くっ、確かに書状がこない、ほんとのことなのか」


「三方ヶ原で敗れましたが私は今ここにいます。一月に倒れられて春に亡くなりました。武田は秘匿しようとしましたが、まあ将軍様には秘匿がうまくいきましたな」

そう自分でもやな顔で笑うと、

「なぜじゃ、神も仏もないのか、織田をのさばらせ、ここまで事を起こしたのに」

「いつまでたっても神や仏にすがって現実を見ずに実力をつけようとしない、御先祖が聞けば嘆き悲しみますぞ、何度も申し上げたでありましょう織田あっての将軍と、現実を受け入れなさいませ」

義昭は私をにらみ、

「麿は将軍ぞ天下に号令をかけるものぞ」

私は首を横にふると、

「どうでもよろしいが、降伏なさいませ、息子を人質として差し出し近畿からの退去していただこう、三好のところまで送りますぞ」

目を血走らせた義昭は、

「麿は近畿にすらいるなと」


「前に申し上げた通り、したことに対して結果があります。降伏を進めた兄上の心情をさっしください」

「・・・・・わかった、降伏する。」

「それでは武装を解除し一緒に出ていただこう。」


そうして表門から将軍と配下を連れ、息子を人質として兄上のもとへ送り

三好の城へ送り届けるように兄から指示され送り届ける。


事実上の幕府の滅亡であった。


その後は二条城に光秀を槙島には幕臣であった細川をいれ本願寺や三好に備えさせた。

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