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東美濃攻防戦

家康との同盟が無事成立し、岩倉城にようやく戻ると百地が急ぎ報告に来る。


「殿、待ちに待ったことが起こりますぞ。信清が楽田城を攻めようと準備をしています」

そう言われ、信清がようやく餌に食らいついたので、

「いい知らせだ、早速兄上にこの事を知らせて直ちに信清の城や砦を攻めてほしいと、私も直ちに出陣する。」

そう言うと百地は、

「鷲尾殿には知らせ、もう集合を終えている頃だと思いますので、殿もご準備をされて急ぎお願いをします。」

そう言って出ていったので、

「鎧をもてい」


鷲尾の姻戚の若者である近習が鎧を持って来て私に着せていく。まだ重く感じてはいるが、体にはあっておりようやく落ち着いて動けるようにもなり、十分ほどで鎧を着け終えると長船長光を身につけ集合場所に向かう。


今回は農民五百も動員し千三百五十で攻めこむことになり、

鷲尾、兼松、宇部にそれぞれが兵を三百ずつひきらせ残りを本隊とする。落とした城の防御を本隊でする事をあらかじめ決めておりすぐに出発する。

後詰は原田殿が与力で三百で入ってもらい、信清の攻める裏をかき一気に犬山以外の城を落とすことを目的として動き出した。


とにかく騎馬で信清方の城を門の入り口を押さえそのままなだれ込む。守備は攻めこむのに動員され、たいしていないのを目論んでのことである。


「楽田城の佐山殿には危なくなったら逃げてもいいと伝えてくれ」

早馬を使い知らせにむかわせ、自分も三人の隊の後を急ぐ。

敵地で伏せていた百地の草を先行させると、街道沿いの信清方の見張りを片付けながら進み、行動を開始して数刻のちには犬山城をのこしたほとんどの城を電撃的に奪い取ってしまう。


これに驚き織田信清はあわてて軍勢を引き返したが犬山に戻る頃には供回りの近習しかいない状態であり、私が犬山の近くに着陣していると知ると犬山城を捨て甲斐へ落ち延びてしまった。

急いで周辺の残党狩を行い民を落ち着かせ、戦利品を集めて岩倉へと送り抜け目なく行動をした。


兄上が後詰でやって来た頃にはすでに戦いは終わっており喜びながら犬山城へと入ってくる。

権六等は斉藤相手に負け戦が続いていたので鬱憤をはらそうと来たのだが、私が速攻で落としてしまったので藤吉郎相手に怒鳴り散らしており、サルは悲鳴をあげながら大袈裟に逃げ回っていた。


私は兄上に犬山城を引き渡し岩倉へと戻ると、伊勢屋を呼び出し戦利品で買い取れるものは金にして皆に分け与えた。



年が開けて1563年、清洲城大広間


「去年は皆ご苦労、松平家と同盟を結び、信清は甲斐へ逃げた。今年こそは美濃を取りたいものだ。そこで丹羽郡二ノ宮山に城を築きそこから美濃攻略の足掛かりにしたい。」


そう言うと家臣達は明らかに不満を隣同士でつぶやき始め、筆頭家老の林佐渡守が進み出てくる。

「お待ちください殿」

兄上は佐渡が出てきた時点で不機嫌になり、

「なんだ佐渡」


「殿、いきなり何もない山に城を築き移住せよとは家臣一同困惑しております。再度考え直しいただけませんでしょうか。」

そういった瞬間青筋を立てた兄上は、

「わしの言うことが聞けんと言うことか佐渡、その方らも同じか。」

そう言われ下を向き黙りこむ家臣、兄上の演技が本気になる前に私は


「兄上、家臣の危惧ももっともでございます、原っぱですからあそこは」

「小十郎も不満か。」

「不満と言うよりも、小牧山の辺りでも十分美濃攻めの力が発揮できます。」


助け船を出すと佐渡はそこならばと思ったのか、

「私も信照様の意見に賛成でございます。」

そう言われ少し不満な兄上だが、

「佐渡も賛成か、仕方ないその代わり佐渡その方と、佐久間、柴田などの重臣は小牧山に石垣の城を作れ急いでだぞ。」

そう言われ安堵の顔をした佐渡は、

「はは、重臣一同で早急に小牧山に城を築きます。」


兄上は頷き、

「築城の奉行は丹羽長秀に任す、半年以内で完成させるように」

そう言うと兄上はさっさと消えてしまい解散となった。私は兄上に呼ばれ、佐渡は申し訳なさそうに私が怒られると思っているので、顔をわざとひきつらせながら佐渡を見て出ていった。


私は茶室に通されると、

「小十郎うまくいったな。不満を押さえなおかつ重臣に城を築かせ清洲から移動できるとは。」

私は先程と変わって笑顔で、

「兄上が怒ったときに本気だったので焦りました。」


「小十郎を騙せるなら中々よ、ではたのしみにしているぞ。」

そう言いながら茶をたててくれ飲んだあとに家臣達の年賀を受けるため岩倉へと向かい、間違いなく本気だった兄上は上機嫌に奥へと戻っていった。


そして私は今回の信清攻めでの功で、千貫の加増と茶器を貰い、沼などの開墾で三百貫ほど田畑が増やすことができ、焼け出された被災難民を積極的に受け入れることも行う。


さらに紀一郎に頼み堺からさらに鉄砲鍛冶を呼び寄せ、丁度金の採掘が減りはじめ鉄などが増えたので、町に鍛冶屋区画を作り鉄砲の製作を始めることになった。

しばらくは沼を埋めたり治水工事を兼松と足軽そして領民を動員して行ったりと忙しく行い斉藤家に対する情報収集も積極的に進めていった。


そしてその年の夏、兄上が待ちわびていた小牧山城が完成し移動を始めたが一部の家臣は移動せず清洲に残っていたらしく、私は前よりも少し大きめの土地をもらったが、さほど大きくない家とその回りを家臣の家で囲ってしまい鷲尾から、

「この様な安普請で小さい家では困るのではないでしょうか。」

そう心配している家臣の前で言うので、

「美濃を落とせば稲葉山に館を構えることになるからこの程度でいいよ。」

そう言うと、未だに落とせる気配がないのにもうおとした気でいる私にさすがの家臣もあきれてしまっていた。


三日後小牧山城の大広間での始めての評定。兄上が上座に座り、


「見事な城を築き長秀そして重臣一同ほめてつかわす。」


上機嫌な兄上に一同を代表して佐渡が、


「ありがたき幸せにございます、これで美濃攻略を進めることができます。」

そう言うと兄上は静かな怒りと共に、

「ところで、まだ小牧山へ移らない者もいるが、来月中には移り住むよう伝えておけ、できなければさせるのみ。」

そう言うと本題である美濃攻略について、

「小十郎まずは美濃をこれからどうする」


「それにつきましては東美濃を重点的に落とします。調略を重点的にして削り取れば稲葉山も落ちると思います、まずは鵜沼・猿啄・堂洞の三城を攻めとるのがいいかと」

そう言うと兄上は同意したので私は、

「鵜沼城は調略は誰が行いたい方はおられますか。」

そうすると家臣の一番後ろで一生懸命腕をあげているのが見えて、

「それがしにお願いします。木下藤吉郎でございます。」

そう必死に声をあげていると、

「さるの分際でしゃしゃり出るとは何事だ、場所をわきまえろ」

そう言う権六に私は無性に腹が立ち、

「柴田殿、それでは木下殿の代わりに柴田殿がなされるでよろしいですかな。」

そう言うと不得意な事なのでへそを曲げ、

「わしはさるの分際でしゃしゃり出ることについていっただけのこと、するとはいっておらん。」


私はきつい声でわざと怒りながら、

「代案なりなんなりがなければ、下らないことでいちいち吠えるな権六。」

そう言うと筆頭家老の佐渡が、

「権六とは、信照殿それは言い過ぎですぞ。」

私は何時もの兄上以上に怒り、

「佐渡には攻略することについての異論があるとでも言うのかな、下らないことでいちいち評定を邪魔するな。」

そう言うと兄上が、

「佐渡、権六、信照の言うとり妙案でもない限りは進行を止めるな、わかったな。」

そう兄上からも言われてしまい佐渡と権六は、

「申し訳ございません以後きおつけます。」

私は兄上に一礼して感謝すると、

「それでは木下殿任せるぞ、大沢を寝返らせれば功は大きい。そして猿啄城は丹羽殿与力とともに攻め落としてください。堂洞は私が攻めます。兄上は後詰めでお願いします。」



夏から秋にこれからむかう季節

まずは藤吉郎が城主の大沢殿を説得しているがなかなかうまくいかず、丹羽の援軍のついでに兄上に犬山城に入ってもらい大沢に圧力かけると、ようやく大沢は降伏する。


藤吉郎が報告に来る。

「信長様、大沢殿が下りましてございます」

喜び勇んで報告に来るが兄上はそれを聞いて眉を潜めると、

「さる、大沢なんぞ我らが犬山に後詰めに来なければ降服しなかったではないか、そんなのいらん切り捨てい」

兄上が淡々と言うのを聞いて藤吉郎は驚き、

「お待ちくだされ、お願いにございます。大沢殿はサルを信用して降服してくれました。なれば再考をお願いします」

藤吉郎は畳におでこをすり付けてお願いするが兄上の顔が徐々に赤みを帯びてくるので、

「藤吉郎、兄上の通りに」

そう言うと兄上の顔色を一瞬で察すると直ぐに出ていった。


無言で怒っている兄上に、

「藤吉郎が相手を信用させようやく功をあげられたのですからご容赦を」

兄上はこちらを見て、

「結果が直ぐに出せないものをどう評価するちごよ」

「情況によってと言うのも今回ありますが、斎藤と織田の拮抗している力関係から城を明け渡すことを了承させることは藤吉郎以外はなかなかできませぬ」

そう言うとなにも言わず奥へと戻っていってしまった。


結果は大沢を藤吉郎が逃がしてしまい、それを聞いた兄上は怒っており藤吉郎は急いで兄上の前に来ると頭を地面にすり付ける。

「サルよ大沢を逃がしたとはまことか」

「申し訳ございませぬ、私を信用して降服してくれました者を切ることできず、藤吉郎の一存で逃がしてしまいました」

兄上は無言で立ち上がり近習から太刀を取ると庭へと降りていく。


重臣達は息をのみ兄上を見つめ続け、丹羽は私に何とかしてほしいと言う顔を見せたが私は首を左右にふって見つめる。

「覚悟の上と言うことだなサル、ならば成敗されても良いと言うことだな」

首筋に太刀を当てて兄上は威圧する。

「されても致し方ありませぬ、しかしご猶予を下さい次は必ずや美濃を取れるような働きをします」

兄上の怖さを浴びて顔色は真っ青だが顔をあげて藤吉郎はお願いをする。


私が進み出て、

「今回は城を降服させたと言う功績があります。それをもって許していただけませぬか兄上」

兄上は太刀を鞘に仕舞うとそのままこちらへ戻ってきて、

「サル、2度目はないぞ」

そう言うと太刀を私に放り投げ奥へと戻っていった。


藤吉郎はしょんぼりしてしまい、私は内緒で小金を包むと渡すと、

「いや、私が悪いのですから頂けません。」

そう言うので、

「人を動かせば金はかかる。今回も使って懐はかなりきついはずだ、なにも言わず受け取りなさい。」

そう言うと何度も礼を言うと受け取ってくれ、

「今回は首が飛ぶことを覚悟いたしましたが頼ってきた者を足蹴にはできません」

「それが藤吉郎の良いところ、それを兄上もわかっているから許したのですから頼みますよ」

そう言って慰めたのでした。


猿啄城は丹羽殿が一気に攻め一日と持たず陥落させてしまい、兄上は大層喜びそのまま城を与えた。

私が攻める堂洞城は、降伏してきた佐藤親子を先陣とし西から、兄上には東側にある高畑山に入ってもらい、猿啄城を落とした丹羽勢は私と合流して南と北から攻め登り始める。


城主の岸信周は激しく抵抗し、佐藤親子の損害はかなりのものになりそうだったので、鷲尾に後ろから援護の鉄砲を命令する。鷲尾は鉄砲を繰り返し撃ちこみながら少しずつ進み、佐藤親子が城内へ入ると、ようやく岸信周は自刀し城に火をかけたので落とすことができた。


兄上と共に犬山城に戻ろうとしたとき、稲葉山からの敵の援軍四千が向かってくることが百地から知らされ、しんがりを希望すると鷲尾の鉄砲隊を林に伏兵としておき、退却を始める。


「鷲尾、今回本隊は負傷兵であふれかえっており、かなり難しいことになる。兼松と連携し切り抜けよう。」


「わかりました。殿退却しながら射撃を行いたいので、足止めになるような柵を所々に作っていただけないでしょうか。」

私は了承して兼松に指示を出すと、

「最近得意となってる工作を行うのでお任せください。」

そう兼松から笑われ、鷲尾に

「わかった、交互になるように作る。」

そう伝えると兼松はただちに足軽を集めると移動して移動を困難にする柵を作りはじめ、宇部には負傷者を運ばせると、半刻ほどで斎藤勢が見えくる。


先頭の旗から斉藤龍興自ら出てきたことがわかった。


私が単騎で進み出て、

「おっとり刀で到着したのは道三の知略を全く引き継がなかった美濃の阿斗ではないか、もう城は我らに下った、大人しく尻尾を巻いて逃げるなら追撃はしないぞ」

そう言うと斉藤勢の中から龍興らしき武将が出てきて、

「尾張のおおうつけは逃げ足だけは早いらしいな、大人しく首を差し出せ」

斉藤勢は動き始め私は馬を返して鷲尾が伏せている前を通りすぎる。


私は振り返らず走り続け、後ろでは伏兵の鉄砲での一斉射の轟音が響き渡り戦いが始まった。


柵の後ろに来ると鷲尾が鉄砲を率いて退却してきて柵の後ろに伏せさせ、

「殿、無茶早めてください。おかげで助かりましたが」

鷲尾が言うのを謝る。

歓声が上がり見ると斉藤勢がいきよいよく突撃してきており、柵の直前で鉄砲の音が響くのを待っていた。


発砲の音が響き、長槍を持ち混乱している斎藤勢に与力として参戦していて直前に合流してきた慶次郎が突撃して蹴散らす。鷲尾が隊を柵からこちらへ移動をはじめたので兼松に次々と作るように指示を与え私も一緒に退却をした。


慶次郎がしんがりの最後尾に立ち、斎藤勢をいなしながら下がってきており、鷲尾は一気に下がり次の柵の後ろで待機する。追撃してきた敵を鷲尾の号令のもと鉄砲で打ち返し、慶次郎が突撃を繰り返していく。

追撃の手が止まり斉藤勢が引くと百地に周りの状況を確認させているとしばらくして百地が、


「大変でございます、もうひとつの林佐渡守がしんがりをしているところが総崩れで、このままでは信長様が危険です」


「わかった、ここは斉藤勢も手痛く被害を受けたので、佐渡の方に移動しているようだ。兼松、鉄砲五十と足軽五十でこの道のしんがりを頼む、残りの隊は私に続け。急いで川まで下がり、そこから兄上の本隊を援護する。」


急ぎ慶次郎や鷲尾を率いて走り抜け木曽川にでると、そこから川沿いに下り、兄上が退却してくるであろう道を北上してしばらく馬を走らせると兄上の本隊が下ってきた。

私を見つけると静かに怒りながら兄上は、

「小十郎、なぜその方は前から来る、しんがりはどうした」


「私の道では敵は退却しました。こちらの道から来ているとわかり、援軍としてきました。勝手な行動申し訳ありません。」

兄上は頷くと、

「そうか佐渡は崩れたか、頼むぞ小十郎。」


そう言うと兄上は横をすり抜けて犬山城へと走っていってしまう。


私は急ぎ急造の柵を作りその横の林に鉄砲隊を伏せさせる。そして左手に広がる畑のその奥にある林に長槍を潜ませた。


丹羽勢や蜂屋勢等が私がいるのに驚きながらも礼を言うと通りすぎていき、林佐渡守勢が退却してきた。すぐ後ろを斎藤勢に倒されながら混戦状態できており、このままでは私の隊も佐渡の崩壊のため一緒に崩壊する危険があった。


私の懸念を感じた鷲尾が、柵の前に飛び出し大声で、


「信照の隊である、林勢は左手の林に逃げ込みなされ。」


それを伝うと半数はそちらに移動したが、残りは斎藤勢と一緒に柵へと向かってくる。

鷲尾は、

「もう一度伝う、林勢は左手の林に逃げ込みなされ。」


それを伝うと柵の内側に戻り


「構え。」


「正面を狙え。」


「放て。」


そう力強く鉄砲の一斉射を正面に連続で撃ち続けていく。怯んだところに右手の林から兼松の長槍が突撃を開始すると鷲尾が、


「鉄砲隊後退、次の柵へ」


混乱をしている敵中にいる兼松に引きの太鼓で知らせると、ほどなく次の柵の後ろへ下がり鉄砲隊の後ろへ待機した。


百地が走りより、

「斎藤勢退却していきます。」

そう言われ、

「警戒しつつ犬山へ下がるぞ、林勢を忘れるな。」

そう言うと退却を開始した。犬山城へ帰還後林佐渡守からの提案で評定が開かれ、鷲尾をつれて出てきてくれといわれ、直ちに参上した。


兄上が、

「皆のものお疲れであった、城は落とせたもの斎藤の援軍によりかなり被害を受けた、佐渡の提案で評定を開いた、何かあるか」

そう言われ佐渡が進み出ると、

「信長様、今回信照配下の鷲尾が率いる鉄砲隊に、我が林勢は誤射されました。それについての処罰を、信長様にお願いしたいと。」


兄上は一瞬やな顔をして私を見る。

「私の鉄砲隊が林勢を撃ったことには間違いありません、あの状況でと言うことでございますか佐渡殿。」

「状況いかんではなく、味方がいるのに攻撃するとは、背中も預けられませんぞ。」

「佐渡の言う言い分が正しいと思うものは他にいるか」

そう言うと権六他、佐渡の派閥の武将が手をあげる。


兄上は少し笑った表情で、

「小十郎、皆がこう言っておるから処罰せねばなるまい」

「わかりました、鷲尾味方を撃ったことについて蟄居とする。そして私も謹慎しましょう。そして、もし味方がどのような状況であろうとも倒す危険がある場合には、静観させていただきます。攻撃が当たったしまうので。」


そう言うと兄上は頷き、

「佐渡、小十郎がそう言ってるがそれでよいな、佐渡や権六が窮地にたとうとも、援軍は出さないと言うことで。」

佐渡は慌てて、

「いや、それは困ります」

兄上は怒って立ち上がり、

「困るではない、佐渡の言う通りに小十郎はすると申しているだけではないか」


「そのまま見捨てることと今回のことは同じではありません。状況すべてにおいて同じように扱うとはおかしいでございます殿。」


「その方が状況いかんでなくともうしたはずだ、状況なら小十郎話してみよ。」

私は兄上に、

「林勢が崩れしんがりを放棄したので兄上が危険と判断し、先に回り込み柵を作り長槍を伏兵で潜ませました。そこに林勢が斎藤勢に倒されながら混戦となって来たので、発砲しては味方に当たると思い鷲尾が林へ逃げ込めと叫びました。半数は林へ向かいましたが半数はそのまま柵の方へと来たので、鷲尾がもう一度林へ逃げ込めと叫び、しばらくして敵の接近もあり発砲しました。私は鷲尾は立派に責務を果たしその責任は私にあると考えます。」


兄上は頷くと、

「うむ、鷲尾見事な指揮でしんがりを務め味方を助けた。この太刀を褒美として使わす。」

そう言うと横に控えている小姓が持っていた太刀を持って鷲尾に放り投げ見事に受け取る。

「ありがたき幸せ、織田のため信照様のために働き必ずや責務を全うします。」

兄上は嬉しそうに頷くと佐渡の方に振り返り一転怒りながら、

「佐渡、しんがりも全うせず助けてもらいながらのこの評定、今までの功と家に免じて許すが次はないと思え、他の者もよく考えてものを言えいいな。」

そう言うと兄上は出ていった。


私は慶次郎と小牧山へ戻り、鷲尾達はは兵を引き連れ岩倉城へそれぞれ戻った。

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