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美濃攻略戦前夜

清洲に戻り、館に戻る間もなく兄上に呼ばれる。

何時ものように茶室に呼ばれお茶をいただきながら、

「小十郎、岡崎はいかがであったか」

かん高い声で聞いてくる。


「松平元康は今川から離れ独立します。そしてすぐではないですが織田家との同盟を考えており家老の酒井忠次とやり取りを行い早い時期にと考えていますが問題もあります。松平の家臣は宿敵織田との同盟などとと思っている者も多いと聞いてますので調整もありますが一年ほど後で義父の水野元信に松平家に口利きをしてもらうようにします。」


すぐではないが後顧の憂いがなくなると言うことで兄上からも、

「これで美濃攻めに専念できるな。頼むぞ小十郎。」

兄上は喜んだのだが私は戻ってきて百地からの気になった報告があり、

「美濃もですが信清の動きが気になります。そのうちに義龍と組むと考えた方がいいでしょ」

兄上も頷き、

「それに関しても小十郎任す、攻めてきたら一気に犬山まで攻めこむぞ。」

茶器を返すと、

「それでは岩倉へ戻ります」

そう言って茶室を出て城下の館へと戻った。


翌日には岩倉城に入り鷲尾高久、兼松範綱、宇部伸義、百地二太幽、古渡嘉兵衛、新規に雇いいれた小野寺宗壁、長谷川従順を召集し評定を開く。


「まずは桶狭間での活躍での報奨は、鷲尾三百貫、兼松三百貫、宇部百五十貫、百地百五十貫ただし草については毎月その分の経費は渡す。小野寺、長谷川は五十貫とする、嘉兵衛は百貫とし城代とし内政を見てくれ、それとそのうちに中根の爺が津からこちらに移り住み、手伝うことになるからよろしく頼む」

そう言うと皆嬉しそうに喜び鷲尾だ代表として礼をいわれる。

「これから増やし足軽を六百、騎馬を五十、鉄砲は三百とする。鷲尾はいままで通り鉄砲を率い、兼松は足軽を宇部は騎馬を頼むぞ、百地は美濃と信清を調べてくれ、小野寺は赤尾の補佐を、長谷川は兼松の補佐をそれぞれ頼むぞ、次は信清が相手となるだろう。」

これからの方針を話し合うと嘉兵衛に、

「内政は嘉兵衛に任せる。いつしょに領内をまわり見て歩こう、何が他にあるか。」


鷲尾が私を見て、

「鷲尾の家の子供を呼び寄せ小性としてもよろしいですか。」

「そうだな、各家から出せるなら二人ずつくらい出してもらえると助かる。」

「ありがとうございます。みなと話し合って決めておきます。」


「兄上が美濃を攻めている間に我らは犬山のおさえと共に兵力の充実と堺とのやり取りで儲け、装備や給金を払わなければならない。皆の力を期待しておくぞ。」


こうして評定を済まし早速領内を見回ると、やはり攻めるときにも気になっていた沼等がある城の南側の土地の有効活用であり、兼松の足軽を動員し畦を作ったりしながら南側の開発をはじめていくように考え、領地およびその隣接する村に次男三男等に募集をかけて給金を支払い、新しく開墾した田畑を任すのと兵力の充実をはかった。


私には出陣の命令は下らなかったが、兄上の美濃攻めは何度か行われており斉藤義龍の力量により手痛い反撃を受けなかなか進んでいないようで、兄上のかんしゃくが想像でき重臣達は慌てているのだろうと思いながら自分の事に集中した。


秋に津の爺から移住の準備ができた事、忠次と合意して松平家に資金を提供した事、そしてあまりにもほっておいた日和が騒いでいるらしく困っていると手紙がきたので慌てて津へ向かった。


津の中根屋についた瞬間に、日和が飛び出してきて襟首を引き寄せられると、可愛い顔が悪鬼にみえてしまい、いままで手紙も寄越さずひどいだのなんだのと、謝り倒しようやく許してもらったのだが、本題である中根のお店をそのまま使うことになった角屋に酒井殿への紹介の手紙を渡すと共に松平家を願いする。

「小十郎様、こちらこそ城に出入りができると言う事で助かります。お礼の次第もございませぬ」

真面目な角屋に頷きよく頼んで店から出た。


今度は久しぶりに伊勢屋に顔を出すと元気のよい主人が嬉しそうに出てきて奥へと通されると、


「お久しぶりでございます信照殿、まずは先日中根殿から資金をいただき、それで明との貿易の資金とし、それを堺の今井殿に頼みました。」


「ありがとうございます伊勢屋さん、これからも織田家をお願いします。」


それだけ伝え利益などの報告を岩倉に送るように頼むと、すぐに中根屋に戻って見ると、懐かしい客が出迎えてくれる。


「久しぶりだな小十郎、何年ぶりかな」


昔と変わらぬ悪がきのような顔をした嘉隆(九鬼)がおり、


「兄貴、久しぶりですそういえば田辺の城がとられてしまったようですが無事で何よりです。」

城を落とされ気落ちしているかと思ったが以外にも元気に、

「兄の浄隆が亡くなり嫡男の九鬼澄隆をつれおめおめと生きている。そして本題だが織田家への仕官がしたいので信長殿にとりなしをお願いしたい。」


「わかりました兄上に紹介しましょう、それと九鬼澄隆はよろしければ私の小性としてそばにいさせましょう。そして小早川を何隻か都合つけますよ、兄上に了解を得てからですけど。」

嘉隆は深く頭を下げ、

「何から何までありがとう小十郎」

「大切な兄ですから気にしないでください」

「お手数だが頼む」

「では明日清洲へ戻りますのでその時に同行してください。」


嬉しそうに嘉隆は嬉しそうに宿へと戻っていった。


翌朝、爺、日和、嘉隆、澄隆そして中根屋から来る者たちを引き連れ船で津島に行き、そこからまずは清洲の館に入る。そしてその日に嘉隆と澄隆をつれ兄上に面会を求め織田家の水軍の将として九鬼を雇いいれるように頼み、澄隆は人質と言う名目の上、私の小性とすることになった。


「大分家臣が増えたようだが直属となる者を増やせよ、与力でも配下は増えるがこきつかうからな」

「兄上、なかなかこれといった者に会うのは難しいと思います。おべっかごますりや大言を言う者等が多くて疲れます」


最近城主となり仕官を希望する者が後をたたないが実際試しに雇うが武将として使い物に成らないことが多々ある。

「兄上はなんで軍師をおかないのですか、武田で言えば山本、上杉で言えば宇佐美と言う者がおりますが」

「わしについてこられる者がおろうか、佐渡や権六は論外、丹羽や滝川は才はあるが一軍の将としてはまだかける。唯一その方がわしの考えていることを理解しているがその方には別の一軍を率いて行けるように考えている。なれば軍師なんぞ必要ない、自身で決断ができないならそれまでの者よ」

いきなり誉められて私は顔が赤くなるのを自覚する。

「ただし目をはなすとすぐにこもる癖なんとかせい」

それだけ言うと私の頭に拳骨を落とし笑いながら兄上は出ていった。


館に戻り嘉隆には清洲の館を自由に使って良い事をつたえ、その日のうちに私達は岩倉城に移動する。

岩倉城に入城すると日和が、


「小十郎兄てすごい、こんなお城にも知り合いがいて顔で通れちゃうなんて。」


それを聞いた面々は苦笑しながら広間に入り一番奥の上座に私が座ると、日和が慌てて


「そんなところ勝手に座ったら城主の方に怒られてしまいます。怒られる前に早くこっちに。」


と言うと、上座に日和は上がり慌てて私の手を引っ張る。


そこに丁度良く鷲尾と嘉兵衛が入ってくると、

「信照殿、おかえりなさいませと言うか何をされておられるのですか。」

日和に引っ張られている私を見て驚きながら、

「ただいまもどりました。順番に紹介するよ。そちらから私の爺の中根、海賊の将である九鬼澄隆私の小性にな、そして妹の中根日和だ。それと中根の爺の店の者で手伝ってくれる番頭や手代の方々だ。」


鷲尾は座ると、

「お初にお目にかかります、筆頭家老の鷲尾高久にございます。信照様には非常にお世話になっております。以後お見知りおきを。」


「内政を見ています嘉兵衛にございます、中根様の知識頼りにさせていただきますればよろしくお願いします。」

そう言う二人に爺が、

「中根にございます、いつも孫の小十郎が世話になっており嬉しく思います。皆様のお役に立てるように頑張らせていただきます。そして孫娘の中根日和にございます。世間知らずでございますがどうぞよろしくお願いします。」

そう言われ鷲尾も笑いながら頭を下げた。


そうしているところに兼松等の家臣も戻ったので宴会になりましたが、

一人だけ訳がわからない日和が立ち上がると、


「小十郎兄、小十郎兄は小十郎兄ではないの、これはなんなの」

そう私の前に座って問い詰めてきたので、

「日和いままで黙っていてごめんなさい。中根の爺の孫なのは間違いないのだけれども、日和の知らない顔がある。私の本名は織田小十郎信照、織田上総介信長の弟であり、岩倉城城主なんだよ黙っていてごめんなさい。でも日和の兄貴には変わらないし中根日和であることも間違いないよ。」

そう言うと日和は驚き少し涙目になりながら、

「でも小十郎兄がこんなお殿様だと私どうしていいかわからなくなりそう。」


「日和はいままで通りでいい、それが日和らしいしみんなもこれで知ってもらえたから大丈夫だよ。」


「ほんとにいいの、家で娘でわがままで、女らしくないし。」

そう言われ笑いながら頷くと、

「家の事はおいおい教えてほしいな挨拶しないといけないし、可愛い日和ならわがままも許す。」

そう言うと今度は少しむくれながら、

「わかりましたわがまま一杯で困らせます。それと家の事はそのうち話をします。」

そう言われ私は笑顔で了解した。

こうして内政はようやく任せる環境ができたので信清をと思いながら大騒ぎしている日和を見ながら、岩倉城の夜はふけていくのであった。

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