岡崎と元康
最近、津の中根の爺が調子が悪いと言うことでお見舞いにいくことにした。
五十をこえ最近はすっかり衰えさらに去年は妻に先立たれ寂しい思いをしており私が顔を出すと弱々しいが喜んでくれる。
「爺、これなくてすまない、元気がないと聞いて会いに来たぞ。」
「小十郎殿立派になられ城主になられたとかおめでとうございます。」
そう涙を流しながら私を暖かいいつもの眼差しで見つめてくれ、
「今川にも勝てようやく一息つけたが、そのからみで今川との商いもしずらくなっておるかと思う。」
首を左右にふると、
「それは致し方ないことと思われます。」
「それでお願いがあるのだが、いま三河の松平元康が今川からの独立を考えているようだ、それを支援してもらえないかと。」
「わたしも、もう歳でなかなか厳しく、跡取りもいないため厳しいですが、七郎次郎という手代がおり才能もあるので廻船問屋の暖簾わけをし、船などを与え角屋として一人立ちさせたく思い、小十郎のお手伝いをさせるようにいたします。」
何時ものように先々をよんでくれ私を手助けしてくれる爺に
「爺よありがとう、爺は城の一室を与えるので領地の内政を手伝ってくれないか、まだまだ隠居は早いし曾孫も抱かせたいしな、まだ結婚できないけど。」
そう言うと顔に赤みが指してきた爺が、
「小十郎殿の手伝いができるとは、嬉しいかぎりでございます、のれんわけの準備ができ次第赴くようにいたします。」
「わかった、早速なんだけど見物がてら三河に行きたいけど船はあるかな。」
「速攻ですね、番頭に聞けばわかると思います。」
そう言うと番頭を呼び明日小さい船が駿河方面に行くという事を聞き同乗するむねをつたえる。
そして爺に少し出掛けてくるといい、もう一つの伊勢屋に久しぶりに顔をだした。
「伊勢屋さんご無沙汰してます、毎度稼いでいただき助かります」
「いや、こんなに織田家も小十郎殿も立派になられるとは、商人冥利につきますな」
「つきましては兄上からの手紙です。いままでのお礼をかね会いたいということで、清洲にお出掛けになってください、泊まるところはわたしの館でよければ。」
伊勢屋は喜び
「ありがたきお言葉、内容を確認し速やかに行くようにしましょう。」
「それではこれからもよろしくお願いします」
そして伊勢屋を出ると一度中根に戻り、翌朝船にのり岡崎ではなく今川領内である引馬の城下町に向かった。
商人のなりで中根を名乗り今川から発行されている通行手形を爺に準備してもらっていたので問題なく関所を通り抜け城下町へと入った。
城下町はあまり治安がよいとは言えず活気もない、やはり当主である義元が討死したことが大きく影響しており私は色々見ていると輿を中心とした今川勢が城へと向かうためか大通りを進んでくるので周りにならって頭を下げて通りすぎるのを待った。
「止まれ」
武将の声が響き私の前を通りすぎようとしていた列が止まりどうやら輿が下ろされたようで、何で止まるかなとぼやいていると、
「おいそこの小僧、御呼びだ」
呼ばれているのは私だとようやく認識して驚きながら顔をあげると、
「お前は誰だと訪ねておられる」
護衛の偉そうな武将に言われたので、
「津の商人、中根の一族にございます」
「何しに来たのだ」
すぐに返され、
「引馬城下で店を開けないかと考え見てまわっているところにございます」
武将は頷くと輿の方へ話しかけていると不意にすだれが上がり中から年のいった尼姿の女性が出てきた。
「中根と聞きましたが御主人はお元気ですか、最近駿河にもこられず体調もよくないとお聞きしましたが」
この人は誰だろうと考えたがわからず、
「爺は体調を崩しており、代わりに私に経験のためと将来店を持つなら何処が良いかを見てきなさいと言われました。季節の変わり目で少々体調を崩しましたがもう少しすれば床上げが出来ます」
女性はうなずくと、
「それはよかったです。ところで中根様には娘だけと聞いておりましたが」
「中根の一族で庶子の子が私にございます」
不思議そうに見てきて、
「そなたはよくにていると思うが一族か、中根様の孫かと思いましたが」
ばれてる、この優しい微笑みは兄上並みの腹黒さでばれている。私はヘビににらまれたカエルの心境で顔色を変えないようにして、
「よくにてると言われますが残念ながら、よく似ているので爺からは可愛がっていただいています」
微笑んでくれ、
「呼び止めてすみませんでした。私は当主氏真の婆で寿桂尼にございます。色々見て回ると言うことは駿府にもいずれはこられるのでしょう、その時は訪ねてきてください。御名前は」
「はい、ありがとうございます。中根宗久と申します。駿府に寄ったときには顔を出しますのでよろしくお願いします」
とっさの偽名を使いようやく輿は進んでいった。
「寿桂尼って義元の母親か、ばれてるかなやっぱり、爺のおかげで見逃してもらえると言うことか、借りは返さないと駿府もそのうちだな」
一人言をつぶやきながら裏の通りを抜けていくと、
「噛みやがったこの小僧俺の指を噛みやがった」
また面倒事と思いながら前を見ると幼子が男の指に噛みついてぶら下がっている。
幼子は綺麗な身なりとは言えず人さらいにしては間抜けな男たち、
「あれやれる」
私が前を指差すと後ろから風のように通り抜けた護衛の百地の配下が男達に当て身を食らわせ幼子を抱いてくる。
「一歳かな首座ったばかりかな、泣かないし当然名前もわからない、貧乏くじだ」
私に幼子を渡すと草は視界から消えてしまい途方にくれた。
「とら、とらどこいったの」
お寺の門から女性が飛び出してくる。左右を半狂乱で見て私が幼子を抱いているのを見つけ「とら、とら」
と叫びながら走りよってきたので、
「あそこの男達に連れていかれていたのを助けました」
とらと呼ばれる幼子を差し出すとしっかり抱いて力が抜けたのかうずくまった。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
そう言っている女性をこのままにはできず手助けをしながら寺の境内へと連れていった。
寺の裏に粗末な小屋がありそこに住んでいるようで中へとつれてはいる。
幸いとらと呼ばれる幼子は元気でお乳を元気良く飲み始め、
「何とお礼をいったらよろしいでしょうか息子を助けていただきありがとうございます」
私はほっとしながら、
「とらかな、無事でよかったけどこんなところにすんでいる理由を話してくれれば私に出来ることをしますよ」
母親は躊躇しているので、
「津の商人中根と申します」
「中根とは中根村のでしょうか」
頷いて、
「一族です」
母親はほっとした顔で、
「私は奥山と申します。この子は虎松と申します。父は井伊谷の当主でした直親といい今川配下の小野に暗殺され私たち親子は逃げるように谷の館から逃げてこの寺に入りました」
井伊って赤備えの直政、幼名は虎松だったかな、たしか女性の当主で直虎という人がいたなと思い、
「井伊と言う女性の方がおられましたかな」
うるおぼえで聞くと奥山は少しうつむいて、
「夫、直親の許嫁であった女性がおります」
それだと思い、
「わかりました。知らない仲ではないので手助けをさせていただきます」
私は草を呼ぶと音もなく土間へと座っており奥山を驚かせてしまう。
「驚かしてすまない、私の護衛の草の者だ、この者に身の回りの世話と護衛をさせよう、生活も援助をして機会があれば井伊谷に戻れるように取り計らうよ」
奥山は慌てて辞退しようとするので、
「これも仏が引き合わせてくれた賜物だから遠慮は無用だよ」
「見ず知らずに親子にありがとうございます」
奥山は何度も礼を言って私は岡崎へと向かった。
岡崎は、尾張に比べると貧しいながらも待ちわびた城主の帰還に町全体が喜んでいるようで、昔使えていた家臣が岡崎に集まってきていると言う事で活気にあふれている。
私はそんな中を歩いていると、薄汚れた着物を着て足を引きずりながらやって来る者が前から来ており、横に避けてやり過ごそうとすると声をかけられる。
「つかぬことをお聞きしますが、織田家者ではないでしょうか。」
そんなに小綺麗な格好をしてるわけでもないが見破られてまずいことになると思いながら
「なぜ私が織田家と言われますか。」
「今の岡崎を見に来るのは今川か織田であり、今川ならその様にしておられる言われもなく、織田であろうと思い声をかけた次第であります。」
「そうですか、確かに織田家の者でありますがこのまま役人へつき出されますか。」
「いえいえ、今川が統治していたならいざ知らず捕まえる言われもござらん。」
「わかりました実は私は織田上総介信長が弟、織田信照ともうしますお見知り置きを。」
「これは織田家の一門の方でございましたか、本多正信と申す松平家家臣鷹匠をしておりましたがこないだの戦いのおり負傷して今はお役から外れております。」
私は確か家康の懐刀と言われた男がそんな名前だったと思いながら、
「本多殿ですね、よろしければそこの茶屋でお話をいたしませんか。」
そう言うと表情は変えず、
「ありがたいお誘いなれど手持ちが少なく」
「いえいえ、誘いしましたのは私、何かの縁でしょう、茶屋ですが招待させてください」
「それでは招待をありがたくお受けいたします」
茶屋の奥の座敷でお茶と名物の団子をたのむと、本多殿に話しかける。
「単刀直入にお聞きします。岡崎から今川勢が居なくなり松平元康殿はいかがされるのでしょうか。」
「今川からの独立ということになります。今川も桶狭間での痛手に立ち直れずまず建て直しということですし、義元の後をついだ氏真は敵を打つわけでもなくこもっていると言うことで、その間にとなるでしょう。」
「そうですか、織田との同盟はどうでしょうか。」
私がそう切り出すと驚くはずだが淡々と、
「殿は織田との同盟は問題ないと思いますが、昔からの重臣が反対をすると思います。それがしは必要なこととは思いますか。」
そう言われ私は頷き、
「それではすぐとはいきませぬが私の母が水野殿に嫁いでおります。そちらからの口添えがあれば可能でしょう。」
「親戚筋の水野殿からの口添えがあれば重臣も納得しやすいと思います。」
「それと、岡崎は拝見しましたが、今川からの統治が長く貧しい。そこで、私の爺が津の回船をやっており、今度のれんわけで角屋というものが次ぎますので、それを使い国の復興を早めていけばよろしいかと、特に津の特産の木綿の栽培を行っていってはいかがでしょうか。」
そう言うと大いに興味を抱いた正信は、
「それは大変良いお話ですが私では通せません、明日酒井忠次というものを紹介しますので改めて提案してもらえないでしょうか。」
「わかりました明日改めてということでよろしくお願いします。」
お茶と団子をいただき、本多殿の家族にと団子を持たせ改めて明日ここで会うことを話別れました。
別れたあと旅籠を探し岡崎の城下町に入ったが迷い裏手の貧民の家が立ち並ぶところに入ってしまい、早めに出ようと思っていると、前からゴザから足が飛び出している人拐いに遭遇したみたいでこちらへ走って来るので私は横に避ける。
私は相手が横を通りすぎようとしたとき、脇差しで足を軽く切る。
悲鳴をあげながら担いでいた物を放り出し男は起き上がり脇差しを抜くと、
「やい、何しやがる邪魔をするとただじゃおかねえぞ」
そう言われた瞬間、脇差しで胸を薙いで男の顔に脇差しを突きつける。
男は慌ててゴザの人をそのままに立ち去っていき視界から消え去るのを見届けると縄を切り中から出てきた少し年下の女の子を助け出した。
「すまない怪我はないか、とっさであれしかできなかった。」
女の子は腕や足にできたアザをさすりながら、
「アザだらけになってしまったよ、責任とってよね。」
そう口をとがらせ抗議してきたのだが私は、
「責任と言われても」
「まずはおなかがすいたからご飯、その後でどうするか考えましょう。」
そう押しきられ、飯屋につれてかれてしまう。
よほどおなかがすいていたのか私の分も平らげ、それを見てあっけにとられてる私に、
「ごちそうさまでした、あーお腹一杯久しぶりに食べられた。ところであなたの名前は、私は日和というの。」
「私は中根小十郎ともうします。しかし見事なたべっぷりですよね、そして何があったんですか。」
「小十郎ね。実は私、家を飛び出してきたの庶子なんだけど正室の義母がいじめて来るので暮らせなくて、そしたら人さらいに騙されてしまって売り飛ばされそうになったの」
私は立ち上がりながら、
「それなら実家に送らせてもらいますよ、まだ年端もいかない女性を一人で返す訳にいかないし」
そう言うと汚れてはいるが美しい顔立ちの少女は笑顔で、
「大丈夫もう帰らないから、小十郎何かの縁です責任を取って連れていってくださいね、やでもどこまでもついていきます。」
そう言われあわてて、
「いえいえ、何が大丈夫ですか、私が悪人かもしれないし騙すかもしれませんよ」
そう一生懸命に悪人の面かなと言う顔をしかめて日和を見ると、悲しそうな顔で見つめられ、
「小十郎は日和を騙すの、悪いことするの」
そう言いながら私の目を見つめてくるので顔が熱くなりながら、
「いや、しません、しかし・・・」
「しかしもへったくれもないの、ついていくからね」
そう言って今晩泊まるところはどこだの、決まってないなら探してあげるなど言うと、さっさと旅籠を見つけてしまい兄と妹と記帳し、名前は中根日和と名乗ると、いつの間にか部屋に一緒に泊まることになってしまいました。
「日和殿、一緒に寝るのはまずいのではありませんか。」
「確かにそうね、襲うのは三年待ってそうすれば十五才ですからね小十郎、それに殿入らないいいですよ。」
そう一方的に言われてしまい、ようやく寝ましたが少女とはいえ隣で寝てるのに緊張して寝ることが出来ずに悶々と過ごした。
結局朝方にうとうとしてようやく寝始めたところで、元気よく日和に起こされてしまう。
「小十郎兄はいつまで寝てるの、今日はなにするの。」
私は眠い目をこすりながら、
「朝食べたら、待ち合わせをしているのでそこで話し合いを行い、特になければ船で津に帰える予定です。」
「そっか、私はつまんないけど又昨日の悪いやつがいたら困るからここで待ってるから早く帰ってきてね。」
そう言われて、ぐうの音も出ない状態で本多殿との待ち合わせに向かった。
少し早めに約束の場所へ到着したつもりが、本多殿と酒井殿と思われる武士が待っており、昨日の座敷と同じところに上がると団子とお茶を頼んだ。
「はじめてお目にかかります。松平元康が家老、酒井忠次ともうします。」
「家老の酒井殿ですね、私は上総介信長の弟、織田信照ともうします。お忙しいところをありがとうございます。」
そう丁寧に挨拶をすると忠次は直ぐに本題へとはいる。
「早速ですが、織田家と松平家との同盟は結べるでしょうか。」
「それについては問題ありません、美濃の攻略をするのに後ろを松平家に任せられれば十分な盟友となりましょうし、そして兄上は元康殿を知っており気に入っておられるので後はそちらの家臣が納得するかでしょうが、そのため義父の水野を動かし松平家に働きかけてもいいと思います。」
そう言うとほっとした顔の忠次は、
「ご配慮ありがとうございます。すぐには無理でしょうが来年までには根回しをして再来年あたりには盟約を結べるようにします。」
「こちらもそれなりに準備をしながらお待ちしております。」
「それと正信からお聞きしましたが角屋のお話は期待してよろしいでしょうか。」
「はい、任せてください。私の母方の実家である津の爺に低金利でお金が貸せるようにお願いしてきます。それと伊勢屋にも資金をお願いしますので、復興を早急にお願いします。」
「大変ありがたいお言葉、主君である家康も喜ぶと思います。それでは私は評定がありますれば失礼致します。」
「今度会えるときは盟友として」
そう伝うと酒井殿はお城に向かい急いで出ていった。
正信はきちっとして座ると、
「信照殿何から何までありがとうございます。一日も早く家臣一同家康様と頑張っていきたいと思います。」
「いえいえ、松平家家臣の皆さんが頑張っておられるのを手伝うだけですから、気にせずしっかりと復興をお願いします。」
「ありがとうございます、それでは」
「正信殿、何か自分や家族に困ったことがあれば岩倉の私を訪ねてください、微力ながらお手伝いさせていただきます」
たしか一揆がありそれで出奔してしまったと言う事を覚えていたのでその事で困ったことがあればと話しておくと、
「色々と配慮ありがとうございます」
お互いそこで別れ旅籠へ戻って見ると日和はしっかりと部屋で待っており、思った以上に時間がかかった私にほっぺたをふくらませ、
「もう遅いんだから、待ちくたびれてしまいました。何時でも津へ行けます。」
そうあらためて言われ自分でもひきつっているのがわかる顔で、
「実家に帰った方がいいと思うんだけどな、知らないところへいくのは大変だよ。私の所は男所帯だし」
そう言うと顔を手のひらで隠して泣き始めてしまい、
「実家には楽しいこともありません、小十郎兄と一緒に行けるならどこへでも行きます、何度も言わせないでください。」
そう言われどこの家も同じなんだなと思う暇もなく女の子を泣かしてしまった。妹のお犬を泣かせて兄上にこっぴどく怒られた事を思いだしあわてた私は、
「わかりました。泣かないでください一緒にいきましょう。昼すぎですが急ぎ津へ戻りましょう。」
そう言うと日和は笑顔になり、涙のあとがないうそ泣きとわかって私はその場でへたりこんでしまう。日和から急かされ港へ出ると、待機していた中根の船に乗り込みました。
向かい風なので船は行きに比べかなり遅く、翌日昼過ぎに津へようやく到着する。中根の店に戻り爺に経過の報告を行うと、爺は強引に同席している日和をちらりとみて、
「それで小十郎殿はどうされるのですか。」
そう言われいきなり城へつれていくわけにもいかないので日和を見ないようにして
「どうするも、しばらく中根であずかってほしいのだけれども」
そう言うと少しほっとした顔をした爺が、
「わかりましたしばらくあずかりましょう。」
そう言ってくれたのであらためて日和に顔を向け、
「日和はここに住むことになる。私の祖父で回船問屋中根屋の主人です。」
そう言うと素直に、
「お色々と世話になります。中根日和でございます。」
そう言ってのけ私は慌てたが爺は嬉しそうに中根と言う日和に、
「あはは、かわいいお嬢さんではないですか、何かあれば気にせず色々と言いなさい。」
日和は最高の笑顔で
「はい、小十郎兄さまの家嬉しいな。」
そう言って私を混乱させてくれる。気を取り直し、
「私は尾張に用事があるから今日のうちに出発します。角屋については岡崎にいる松平家の家老酒井殿に話はつけております。爺にはかなりの迷惑をかけますがよろしくお願いします。」
「小十郎殿、中根の保有している資金はかなりありますればいかが致しますか。」
「それについても、半分は松平家にかしつけることになると思う。おいおい酒井殿からお話があると思います。では日和、爺の言うことを良く聞いて手助けを頼む」
そう言いながら立ち上がると、
「お早いお帰りをお待ちしてます」
そう言われてしまい額から汗が吹き出して来てあわてて部屋を出ると準備してくれた馬にのり清洲に戻っていった。