開戦
エクスと殺し屋の間に現れたウルは、怒りに任せた攻撃を仕掛けようとしていたエクスを止め、殺し屋の方を睨む。
「止めないでよ! ウルさん」
「俺が止めなきゃ、お前危なかったって」
「僕が殺してたってことですか!!」
「そうだって」
「そいつはリームとソアを殺したんだよ!? どうして殺しちゃ駄目なんだよ!?」
「正しい殺しなんてないって。どんな理由であっても」
「やられっぱなしじゃないかよ!!」
「頭を冷やせって。そもそも生きてるって。リームもソアも」
「えっ!?」
エクスがウルに言われて振り返ると、すっかり傷が癒えたリームとソアがいた。何が起きているのか解らないエクスは、ウルに目で訴える。
「ここに来たのは俺だけじゃないって」
リームとソアの横に立っている茶髪の少女。ウルは少女と目配せだけで意思疏通する。腋を締めて構える。黒髪を赤髪に変え、赤い炎を纏った。
「貴様、核師だったのか」
「お前もだろうって? 俺の第六感って」
「フッ。元帥命令だかなんだか知らんが、子供を使わなければならないほどの人手不足なのか?」
「言った筈って。俺だけじゃないって」
「それはこちらの台詞だ。研究所を仲間が包囲している。つまり、貴様等に出口はない」
「……やはり殺し屋だったのだね? なかなかに邪魔立てをしてくれたよ」
コツコツと足音を響かせながら向かってくる男性。セラテシムンの軍服を身に纏って現れたのはライド大尉だった。
「軍人だと!?」
「カムール研究所は軍の管理下にある。軍人が来て驚かれる筋合いはないがね。殺し屋が屯している方が驚きだがね」
「貴様一人で外のを片付けたのか!?」
「流石に無茶を言わないでくれ。私は無謀者ではない」
ライドの後からやって来たのは、金髪を後ろで纏めた女性と、仮面を着けた女性。仮面を着けた女性の軍服は赤い。その赤い軍服を見た瞬間、殺し屋の顔が強張る。
「まさか……まさか!?」
「どうもどうもにょん。君が殺し屋のリーダーにょん?」
「その語り口……テレサ元帥だな!」
「そうにょん」
「こんなところに元帥自ら来るとは! 余程の人手不足か?」
「元帥が現場に来ちゃいけないにょん? 君の仲間から話は聞いたにょん。誰が君達に依頼をしたかはどうでもいいにょん。元帥殺しで名を轟かせたかったのが本音って聞いたにょん」
「その通りだ。そして、その野望は潰えていない!」
研究所内に響く足音。外から中へと駆けてくる音。口元を隠した殺し屋達が集まってきた。
「まだ仲間がいたのかね!?」
「切り札は取っておくものだ! 百人はいるぞ」
「数の暴力かね。殺し屋というのは本当に手段を選ばんな」
「殺しに卑怯なんてない。これも戦略だ。……処せ!」
リーダーの命令で一斉に掛かる殺し屋達。短剣にクナイ、銃を構えて襲ってきた。
「大尉、こいつらを頼むって。俺はリーダーを倒すって!」
「いいだろう。やり過ぎては駄目だぞ?」
ウルとライドの口元が緩んだ。それは強者の余裕から来るものだろうか。