ドッキリ
ロンドの朝は早い。ロンドのホテルに泊まった人も早起きになってしまう。リームも早起きをしてしまう。というより、あまり寝れなかったのだ。昨日、ソアに言われた一言が何度も何度も脳裏に浮かぶ。
《エクスと戯れるチャンスじゃぞ?》
「戯れる……って」
リームは二度遭遇している。にょんちゃんがエクスに覆い被さっているところ、ソアとエクスが抱き合っているところ。遭遇する度にムカムカしたりイライラしたり。どうしてかは分からないが、どうしようもなく嫌な気持ちになった。にょんちゃんとソアの素性を知った今なら我慢出来るのかもしれない。
「何やってるんだろう、私」
隣の部屋に泊まるエクスを起こすため、扉をノックする。応答がなくドアノブを動かす。扉の鍵は開いていた。非常に不用心だと思うものの、リームはちょっと嬉しかった。
「……きゅうちゃんやソアのように……」
ベッドで寝ているエクスの頬に触れると、思った以上に柔らかくてびっくりする。お腹を出して寝ているエクスに笑ってしまうが、そーっと撫でてみたりする。
(ヤバい! これはヤバい! エクスってこんなだったっけ!?)
心臓が高鳴る。呼吸が荒くなる。身体が熱くなる。エクスが起きないよう慎重に触っていく。髪から耳、腕から指へ。バレたら只では済まないと思いつつも止められない。
(ヤバい! これはヤバい! 私も充分にヤバい!!)
エクスの掌を見つめていたと思いきや、意を決したように自分の身体へと近付けていく。
(私、何やってるの!? なんで胸触らせようとしてるの!?)
エクスの掌が胸に触れた瞬間、身体に電流が流れたような衝撃が走った。顔も耳も赤くなり、一気に全身から力が抜けていく。
「……うぅ~」
朦朧とする意識の中、エクスの身体に倒れ込む。そのまま二度寝をしてしまう。ミイラ取りがミイラになったみたいに。
※ ※ ※
(……あれ……身体が……)
いつものように目を覚ますエクス。でも何故だか身体が重い。と、視線を身体へと移す。目を何度もパチクリさせて驚く。無理もないだろう。リームが重なって寝ているのだから。
「な、なんで!?」
寝起きの頭をフル回転させる。そして、〝起こしに来たリームが寝惚けて寝てしまった〟と納得することにした。
「おーい、リーム」
肩を揺らして起こす。目を開けたリームと視線が合う。エクスが『おはよう』と言うと、リームは『キャー!』と返事をした。
「エ、エクス!?」
「叫びたいのは僕の方だよ。起こしに来てくれたのは嬉しいけど、僕に被さって寝るのは困るよ」
「ごめんね!」
「いや、なんていうか……嫌じゃないよ?」
「え?」
「何でもないよ。ほら、身支度しなくていいのかよ?」
「あっ! うん、してくるね!」
リームはタッタッタと自分の部屋に戻っていく。エクスはベッドに座ると、リームの体温で温かくなったシャツを触る。
「……反則だよ」