表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/40

笑顔のシチュー

 ロイズから三時間掛けてノランに到着した。ガイドブックを確認しながら歩き出すリーム。その後を付いていくエクス。歩く道が静かなことに驚くリームだが、後ろを付いていくエクスは顔色を変えない。腕を組ながら辺りをキョロキョロしてもだ。無反応というよりも無関心という感じだ。


「随分と静かだよね、エクス」


「そう?」


「意外と無口?」


「何にもない所だからな。喋る切っ掛けがない。家とか畑とか田んぼとかに興味ない」


「こういうのも旅の醍醐味! もっと進めば変わるから!」


 それから更に歩くと、レストランが見えてきた。『あれだ!』と言って駆け出すリーム。エクスも釣られて駆け出す。レストランの前に立つだけでシチューの匂いが分かる。それだけ注文されているということだろう。


「いらっしゃいませ! 何名様でしょうか?」


「二人なんですけど空いてますか?」


「ちょうど空いたところなのでご案内出来ますよ!」


「よかった~。待たずに座れるなんてラッキーね」


「それには同感だよ。行列なんて嫌だ」


 テーブルに案内され座る。メニューを渡され見るものの、頼むものは決めている為、直ぐに返す。リームがシチューを二人分注文すると、ピッチャーからグラスに水を注いでエクスに渡す。見事な流れに感心するエクス。


「ありがとう、リーム」


「水を注いだだけでお礼?」


「感謝することは大事なんだよ。自分がされて嬉しかったら感謝する。その気持ちを言葉にする。今の僕、おかしかった?」


「ううん! おかしくないから! 感謝されて嬉しい」


「安心したよ。嫌な気分にしたのかと思った」


 リームの言葉を聞いて安心するエクス。水を一口飲んで店内を見る。パスタやハンバーグを頼んでいるお客もいるが、やはり人気はシチューである。パンを一緒に食べている。


「今思ったんだけど、牛乳平気?」


「冷たい方が好きだけど。シチューは好物の一つだよ」


「それなら安心。心置きなくシチューを堪能出来るね!」


 五分程で来たシチュー。パンを手で一口大に千切ってシチューに浸すと、冷ましながら口に運ぶ。浸して軟らかくなったパンを噛むと、パンの香りと共に広がるシチューの味。


「美味しいね~!」


「正直侮ってたよ。うん、三時間の価値はある」


「気に入ってくれたようでよかった」


「評判通りでよかったな」


「本当だね!」


 ニコニコしながらシチューを食べるリーム。本当に嬉しそうに食べているのが分かる。


(たまにはアリかもな……こういう食事も)


 リームの笑顔を見て嬉しくなるエクス。食事の新たな楽しみを発見したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ