殺しの目
ロンド司令部が有名なロンドだが、セラテシムン首都だけあって衣食住が充実している。ロンドデパートは、ロイズデパートの二倍の大きさを誇り、街のあちらこちらにあるホテルも豪華である。国内外からの観光者が集まるため、バスやタクシー等の公共交通機関も充実している。
「リイムからロンドまで来たけどどうしたい?」
「ロンドは地元だし特別感ないね。首都だから人通りも多いし、大体の施設も混んでるでしょ」
「きゅうちゃんとソアは?」
「きゅうちゃんもリームクンと同意見だきゅう」
「取り敢えずホテルの部屋を取るんじゃ。部屋がなくなってしまうのじゃ」
「それもそうだな。それじゃ……あそこに行ってみよう」
「部屋取りは任せるのじゃ。妾はちょいとフラつく」
「分かったよ。気を付けなよ?」
「エクスに心配されるとは幸せじゃ。それだけで無事が約束されたようなものじゃ」
三人に手を振って歩き出すソア。街中の人混みに紛れて消えていく。ソアの後ろ姿を見送ったエクスとリームはホテルに向かおうとするが、きゅうちゃんはソアが消えた方向を見つめて立ったまま。
「二人はホテルに行ってきゅう。きゅうちゃんは空気を吸ってくるきゅう」
「分かったよ。きゅうちゃんなら心配は要らないよな」
「きゅうちゃんも心配してきゅう」
「あはは! 気を付けてよ」
「ありがとうきゅう!」
きゅうちゃんも人混みの中へと消えていく。騒がしい人混みの中を、仮面を着けて静かに。
※ ※ ※
「ターゲットが動き出した」
「隙を突いて処す。ヘマすんじゃない」
「やり方は問わない。こっちの証拠は残すな」
「それはこっちの台詞だ」
ビルの屋上から地上を見ている二人組。その二人組に迫る一人の少女。黒髪に褐色の少女。
「油断は禁物じゃ。まだ確証はないんじゃから。それに只者ではない。ターゲットでなくても、じゃ」
「漸く合流か」
「ソア」
二人組の視界に映るのはソアであった。目付きは鋭い。まるで殺しの目をしていた。




