遭遇
ウルは、カムール研究所に足を踏み入れる。薄暗い空間が広がっており、埃も溜まっていて不衛生である。この研究所は現在使われていない。以前は極秘に人体実験が行われていたが、軍によって封鎖されて以降、基本的に封鎖されている。
「臭いもキツいって!」
鼻を詰まんで進んでいくと、円卓が置かれた部屋に辿り着く。少し前まで一部の人間が極秘に集まって会議をしていた名残である。部屋の明かりをつけると、生々しい血痕が床に残っているのが分かる。
「……この血痕は……」
「誰だ! 子供の来るところじゃない!」
「……そっちこそ誰だって。こんなところに居るだなんてって」
「貴様が知る必要はない! 大人しく去れ!」
「それは出来ないって。不審な奴等が出入りしてるって情報で来たって」
「意地でも去らないつもりならば……処す」
短剣を二本持って構えウルに襲い掛かってくる。たった数歩の動きだけで只者ではないと判断したウルは核を発動させる。
「赤い髪に!? 核師か!」
「俺はウル。変身の核師だって!」
「わざわざ敵に名を語る愚か者め!」
短剣をウル目掛けて投げ飛ばしてきたかと思えば、即座に背後に回って突いてくる。その身軽さは常軌を逸しており、壁や天井に足を付けて走れる程だ。
「お前も核師かって!」
「違う! 殺し屋だ!」
「殺し屋? ますます怪しいって!」
攻められるよりも先に攻めていく。炎を纏い殴る蹴るで追い詰めていく。壁際まで追い詰めたところで攻撃を止めた。
「何故止める?」
「俺はお前を殺す気はないって。その代わり、知っていることを話してもらうって」
殺意はないことを示すために変身を解く。ウルの強さを認めたからか、口元を覆っていた布を剥いで素顔を見せてきた。
「レイラだ」
「女の子だったのって!?」
「自分の素性を明かすことは死を意味する。だが貴様に殺意はないようだ。……この身体を好きにしろ」
「俺にそんな趣味はないって。それにもう、心に決めている相手がいるからって。話をしてくれればいいって」
「器が大きいのだな」
「十二歳に大きいも小さいもあるって?」
「フッ。とんだ曲者のようだ」
「ん?」
レイラの言葉に首を傾げる。英雄と言われるウルも、まだまだ子供ということだろう。




