戦闘の差
余裕の表情のウル。リバルナ盗賊団の頭を目の前にしても物怖じしていない。自分の後ろにいるエクスとリームをチラ見して話し掛ける。
「大丈夫って?」
「は、はい!」
ウルを目の当たりにしただけでなく、話し掛けてもらえたことに感動するエクス。さっきまでの緊張感はどこへやら。
「無視してんじゃねえ!」
頭は、倒れていたソアを人質に脅しを掛ける。ソアを人質にされ慌てる二人に対し、ウルは眉一つピクリともさせない。
「で?」
「いいか! ヘタなことしてみろ? このガキの命はないぞ!」
「どのみち殺すつもりだろって。さっさと降参しろって」
「誰がするか!」
「にょんちゃんをサシで呼びつけたって知った時は、ちょっとだけ見直したんだけどって。セラテシムンにある司令部に爆弾が本当に仕掛けられていた時も。駄目なことだけど」
「仕掛けられていた、だと?」
「もう全て片付けた。爆発しないって」
「セラテシムンの、どの司令部に仕掛けているか知らせてないのにか!?」
「俺の核とにょんちゃんの核があれば楽勝だって。まあ、二人だけじゃないけど」
「クッ!」
「にょんちゃん残念がってたって。『正々堂々と挑んできたと思ってたのに残念にょん』って。にょんちゃんにまで幻覚を使うだなんて。二人きりで会えるよう、仲間を騙す役割をライド大尉に頼んだりしてたのに」
「そんなの知るか! 言う通りにしなければ爆発させていたのは確かだがな。だが、その爆弾は既に取り除かれていた。端からオイラを信じてなかったわけだ」
「最優先は人命だって。元帥として当然のことをしたまでだって。それに、にょんちゃんは言う通りにした。お前が司令部の爆弾を爆発させることはなかったってことだ。自分で決めた約束を自分で破ったお前には、にょんちゃんを責める資格はないし、殺しをしていい資格なんて誰にもないって!」
一瞬で頭に詰め寄ると、人質になっているソアを救出した。エクスとリームにソアを預けたウルは、頭を見つめて戦闘態勢に入る。
「オイラに勝つつもりか? ククク」
「何がおかしいって」
「オイラの幻覚の真骨頂を見せてやるよ!」
ウルを見つめる頭の口元が緩む。ウルはピクリとも動かない。
「ハハハ! 相手に幻覚を見せて、幻の海に溺れさせる! 刃物に突き刺されたり、銃に撃たれたり。精神を崩壊させる最強の能力だ!」
「「ウルさん!?」」
「ハハハ! ……」
「……それだけ笑えば充分だって」
「ハ!? ……な、なんだと!?」
「言っただろう? 俺には幻覚は効かないって」
「何故だ!」
「瞳術には効かないってこった」
「瞳術だと!? 貴様の核は瞳術か!」
「いや? 俺の核は変身だって。この瞳術は貰いもんだって」
「瞳術!! あの時のガキも瞳術使いだった!! つくづくオイラの邪魔をする奴等だ!!」
コートを脱ぎ捨てた頭の背中に付けられている機械。機械のスイッチを押した頭は、瞬く間に空に上がっていく。
「ファロンごと消し飛びやがれ!」
背中の機械から銃を取り出すと、その銃をウルに向ける。機械と銃は線で繋がっており、背中の機械から太陽光を取り込んで銃にエネルギーを送っていく。
「あんな物騒なもんどっから? どいつもこいつも、ブッぱなせばいいと思ってって」
地上から上空を見上げるウルに緊張感はない。腰に手を当てて面倒がっているくらいだ。
「ウルさん、流石にヤバいんじゃ?」
「心配要らないって。直ぐに終わらせるから」
エクスの心配を横目にウルは姿を消した。気付いた時には、既に頭の機械と銃を破壊していた。