英雄到着
トイレに行ったきり戻ってこないきゅうちゃんが心配になり捜す三人。お店を見たり路地を見たりしたが見当たらない。
そんな三人に迫る一人の男。コートを羽織り、鋭い目付きをしている。
「手軽そうなのから殺ってやる」
包丁を売っているお店から包丁を一本強奪すると、大声で叫びながら包丁を振り回していく。一気に周囲はパニックになり、男から逃げるように離れていく。
「お前からだ! ウハハ!」
「きゃっ!」
逃げるのが遅れたリームが捕まってしまう。包丁をリームの首元に突き付けながら、男は大声で名乗った。
「オイラは、リバルナ盗賊団の頭! オイラに歯向かえば殺す! 絶対に近付くんじゃないぞ!」
包丁を地面に落とすと、人目を避けるため路地裏へ。後退りするリームを壁際まで追い込んだ頭の目が見開いた。
「ひとしきり遊んでからでもいいだろう。ククク」
「来るんじゃない!」
「無駄なこと」
ガクガク身体を震わすリームを嘲笑う頭。もう駄目だと目を瞑ったリームだが、頭が近付いてくる様子はない。恐る恐る目を開けたリームに映ったのは、エクスの後ろ姿だった。
「エクス!?」
「だーれも怖がって助けに行かないからな。黙って見殺しにされてたまるかよ」
「馬鹿なガキだ……二人共な」
「……バレたか。面倒な奴じゃ」
リームと頭に割って入るエクスと、頭の背後で構えていたソア。他に駆け付けた者はいない。
「リバルナ盗賊団の恐ろしさ、思い知れ!」
「!?」
一瞬で間合いを詰められたソアは、首を掴まれたまま持ち上げられる。苦しみで足をバタつかせているのを面白がられ睨み付ける。笑みを浮かべていた頭の顔が怒りに変わり、ソアを放り投げてしまう。
「「ソア!?」」
「……うっ……」
「所詮はガキ。そこで大人しくしていれば、後で遊んでやろう」
再びエクスとリームの方を向いて近付いていく。頭の表情は怒りに満ちている。そんな頭と対峙してもリームを守ろうと必死になるエクス。
「ガキがオイラに歯向かうなんざ生意気だ。あの屈辱を忘れてなるものか!」
「エクス逃げて! 私なんかいいから!」
「嫌だ! 友達を見殺しなんか出来ないよ!」
「度胸だけは認めてやろう!」
迫り来る頭の殺気。エクスはリームを守る盾に徹し、リームは祈るようにエクスに手を置いた。高鳴る心臓。頭の腕が伸びてきた。
「……到着って」
頭とエクスの間に割って入ってきた少年。どこからともなく一瞬で現れると、頭を挨拶代わりに殴った。
「ぐはっ!?」
「間一髪って。にょんちゃんの方も幻覚とは。爆弾は本物だったけどって」
「……貴様は!?」
「お前の企みは終わりだって! 俺には幻覚は効かないって!」
「「ウルさん!!」」
黒髪の少年ウルの到着。現場の空気が一気に変わった。




