殺気
ロイズデパートの前にいる頭に迫る軍人。ゆっくりとゆっくりと近付いていく。万が一に備えて銃を構えながら。そうして背後に近付くと、身体を取り押さえようと飛び掛かるが、頭の身体に触れることすら出来ない。
「どういうこと!?」
「まさか……核師!?」
「ククク。残念だったな軍人共」
そのまま消えていく頭。目の前で起きたことをキリナに伝える。報告を聞いたキリナは驚いたものの、現場の軍人に待機を命じたのだった。
「待機。また現れてもどうしようもないのに」
「きっと考えがあるんだろう、キリナ少尉には」
※ ※ ※
「ライド大尉。ロイズデパートの前にいたリバルナ盗賊団の頭ですが、忽然と姿を消したらしく」
「そうか」
「……失礼ですが大尉、何かご存知なのでは?」
「何故そう思うのかね?」
「驚きがありませんので」
「まったく。君は抜け目ないね」
「話してはくれませんか?」
「君になら構わんだろう。実は、数日前に元帥宛に手紙が届いたんだ。リバルナ盗賊団の頭から」
「手紙ですか?」
「元帥とサシで会いたいという内容で、一人で来なかった場合は、司令部に仕掛けた爆弾を爆発するとのことらしい」
「爆弾!?」
「万が一のこともあるからね。頭の言う通りにすることに決めた元帥は、一部の人間に協力を頼んだ」
「それが大尉ですか?」
「ああ。わざと軍に嘘の情報を与え撹乱させるようにと言われたよ。ロイズデパートの件もそうだ。君には悪いと思ったのだがね」
「嘘? 確かに頭はいましたと……」
「嘘だ。頭は消えたのではない……最初からいなかったんだ」
「どういうことですか」
「リバルナ盗賊団の頭は核師になった。普通の人間ならば対応出来ない能力だ」
「なんなのです?」
「幻覚だ」
※ ※ ※
リイムのホテルの前。コートを羽織った頭の前に現れたのは、仮面を着けたきゅうちゃん。頭はきゅうちゃんを見ても反応しない。
「言う通りにしたきゅう」
「誰だ。ガキには用はない」
「ガキじゃないきゅうよ? きゅうちゃんだきゅう」
「きゅうちゃんだと? 知らねえよ」
「もう! 抜け出してくるの大変だったきゅう!」
「だから知らねえよ!」
ブンッと腕を振るわれるきゅうちゃんだが、その腕はきゅうちゃんの身体をすり抜けた。
「やっぱり騙したきゅうね? 一人で来てあげたのに」
「……まさか……貴様!?」
驚きながら消えていく頭。きゅうちゃんは、やれやれと髪を掻きながら空を見上げる。
「読み通りだったきゅう」
※ ※ ※
「ケッ! さーて、どいつから殺ろうか」
ファロンで目を輝かせる頭の姿があった。