目的
二人は列車に揺られていた。シチューが美味しいというレストランに行きたいリームの要望だ。ロイズから列車で三時間の街にある為、食べに行くにも一苦労である。
「そんなに旨いの?」
「美味しいって凄く言われてるからね。必ず当たりかは分からないけど、こういう機会でもないと行けないから」
「三時間も掛けて不味かったら立ち直れるかな」
「今からマイナスに考えてどうするの。何事もプラスに考えないとね!」
「さっきまで落ち込んでた奴の言葉とは思えないよ」
「過ぎたことは気にしない主義だから。今はシチューだけを考える!」
「それもどうかと思うけど」
なんとなく窓を開けてみるエクス。列車に揺られながらの風も気持ちがいいと感じている。茶髪が風で乱れるもお構い無しだ。
「エクスはないの? 旅の目的とか」
「セラテシムンを知るいい機会だとは思うよ。だけど僕自身に目的はないかな」
「本当にないの? こういう時だからこそって感じのさ!」
「強いて言えば一つだけ」
「何々?」
「会ってみたい人がいるんだよ」
「もしかして初恋の相手? 遠くに引っ越して離ればなれになっちゃったとか」
「違うよ。憧れてるというか……目標にしてるというか……」
「焦らさないで教えて!」
「……ウルって人だよ」
「ウル……ああ! 一年前、セラテシムン中を巻き込んだ戦いで、ロイズ司令部の人達に協力した人だよね!」
「うん。軍の人達やテレサ元帥とも知り合いだなんて凄いよ! 僕達と同じ子供なのに」
「今も精進の儀の最中なんだよね~。ということは、運が良ければ会えちゃうかもね!」
「だといいけど」
「ウルさんに会うのがエクスの目的に決定だね!」
「それでいいのかな?」
「そうに決まってる! 立派な目的! 頑張ろうね!」
「リームが張り切ってどうするんだよ」
「一つでも目的があった方が燃えるじゃない」
「そうなの?」
「私は燃えてきたね!」
エクスよりも燃え上がるリーム。予め買っておいた弁当に手を伸ばして食べ始めた。気合いを入れる為に食べていると言われ、思わず笑ってしまうエクス。何故エクスが笑っているのか疑問に思いつつ、美味しそうに弁当を食べながら景色を楽しむリーム。風で揺れるピンクの髪が花のようだ。
(どういう人なのかな? しっかりとしているんだろうな。頭がよくて、凄く強くて優しくて。もし会えたら何を訊こうかな? 考えるだけでワクワクするよ!)
憧れのウルを想像するエクスの表情は笑顔になっている。そんなエクスを見たリームは、なんとなく嬉しく思うのだった。