孤独な頭
ロイズ司令部から車で二十分のところにある、ロイズデパート。以前ここは戦場になったことがある。金品を強奪しようと押し入ったリバルナ盗賊団と、一人の少年による戦いが起きた。見事に少年が戦いを制し、リバルナ盗賊団の頭は捕まった。しかし、セラテシムンの先住民の居住地を占拠した盗賊団から居住地を取り戻す為、盗賊団の頭を解放することを条件に取引をし、居住地を取り戻すことが出来た。
「ロイズデパート!」
リバルナ盗賊団の頭は解放された後、隣国の軍人を仲間に加えて活動を再開したものの、隣国の軍人の本来の目的を知らされてなく、セラテシムン軍と隣国軍の争いが起きた時には孤立無援になった。争いが終わった後、リイムにて目撃されたのが先日のこと。
「今度こそ!」
ロイズデパートの前に立つ男。リバルナ盗賊団の頭だった男。独りでも尚、リバルナ盗賊団を自称するあたり、プライドが高いのが分かる。
「オイラの恐ろしさを思い知らせてやる!」
※ ※ ※
一方、ロイズ司令部に目撃情報が入っていた。写真を見ているライドは溜め息を吐いている。頬杖をついて面倒そうにしているライドの態度に溜め息を吐くキリナ。
「軽んじてはいけませんよ。何を仕出かすか分かりません」
「軽んじてはいないし、舐めてもいないさ。仲間を失い、隣国に利用されても折れない心は評価してもいいくらいだ。だがね、どうしてロイズデパートなのかね? 懲りていないのかね」
「盗賊の心なんて解りません。盗めなかったのが許せないのかもしれませんし、子供に負けたのが悔しかったのかもしれません」
「とにかく捕らえよう。見逃すことはできん」
「はい。それと、テレサ元帥になのですが……連絡が付かないのです」
「心配は無用だろう。きっとどこかを散歩しているに違いない」
「そうだといいですが」
ライドに一礼してキリナは去る。椅子に凭れながら外を見るライドの目は笑っていた。何かを知っているかのように。
「やれやれ。敵を欺くにはまず味方からとは言うが、なかなかに苦しいものがあるよ、元帥」
※ ※ ※
「そろそろきゅう」
「きゅうちゃん?」
「エクスクン。ちょっとトイレに行ってくるきゅう!」
「きゅうちゃん!?」
エクス達の元を足早に去っていくきゅうちゃん。仮面の下の目付きが変わった。