仮面のからかい
リリッシュを後にした四人は、鍛冶屋が集まる街ファロンへと来ていた。きゅうちゃんの、『丈夫な仮面が欲しいきゅう!』という一言で来たのだが、行く店行く店、そもそも仮面を取り扱ってなどなく、きゅうちゃんは肩を落としていた。顔は隠れているものの、その態度で一目瞭然である。
「きゅうちゃん、気をしっかりしてよ!」
「エクスクン、それは無理な相談だきゅう」
「今のじゃ不満なの?」
「もっとお洒落な仮面を着けたいきゅう」
「素顔で歩こうよ。そうそう気付かないと思うよ?」
「きゅうちゃんにとって仮面は洋服きゅう。素顔で歩くということは、きゅうちゃんに裸で歩けと言っているのと同じきゅう! エクスクン、まさか……きゅうちゃんをそんな目で!?」
『キャーッきゅう!』と恥ずかしがるきゅうちゃんに慌てるエクス。側で聞いていたリームとソアも『キャーッ!』と恥ずかしがっている。その女子達の反応に呆れるしかない。
(なんだよもう! 仲良いじゃないかよ!)
「……とまあ、悪ふざけは終わりきゅう。仮面を買えなかったのは残念きゅうが、ここは前向きになるきゅう」
「悪ふざけだったのかよ!?」
「えへへ。エクスクンをからかいたくなったきゅう」
「僕をどうしたいんだよ」
「うーん。きゅうちゃんもエクスクンを狙っちゃおうかなあきゅう」
「はあ!?」
いきなりの宣言に困惑するエクス。きゅうちゃんの宣言に、リームとソアが過剰に反応する。リームに対しては余裕のソアが動揺している。
「嘘じゃろ!?」
「エクスクンは誰のものでもないきゅう。だから、きゅうちゃんが狙ってもいいきゅう」
「きゅうも参戦するとなれば大変じゃ! 嬢とは格が違うのじゃ!」
「ちょっと! 私、別に参戦なんかしてないから!」
「弱腰になったのかの?」
「そうじゃないから!」
「よーし。きゅうちゃんもアプローチするきゅう!」
「三人で勝手に盛り上がるなよ! 狙われる僕の身にもなってくれよ!?」
乙女の戦いの標的にされ困惑する。そして視線が痛い。端から見ればハーレム同然だろう。
「貴公」
「エクスクン」
「私は違うからね!?」
「……なんなんだ……一体」
※ ※ ※
「リバルナ盗賊団、再始動だ」
ロイズ司令部の前で佇む男。その瞳は燃えたぎっていた。