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甘い災難

 チェックアウトを済ませた四人は、次の行き先をリリッシュに決めて歩いていた。


「歩きづらいんだけど!?」


 エクスは、リームとソアに腕を掴まれ挟まれた状態に困っていた。『もっと密着するぞ?』とソアが言えば、『それなら私も!』とリームが張り合う。


「ははは! エクスクン、モテモテだきゅう」


「きゅうちゃん! 笑ってないで助けてよ!」


「きゅうちゃんが出る幕じゃないきゅう」


「そんなああ」


 リイムから歩いてきた間に、どれだけの男子の視線をあびたことか。擦れ違う度に舌打ちをされたり、小石を蹴飛ばされたり。端から見れば、二人の女の子から言い寄られている男の子なので仕方のないことだが。


「三人共、リリッシュが見えてきたきゅうよ!」


「着くまでにだいぶ疲れたよ」


「それも旅の醍醐味きゅう」


※ ※ ※


 リリッシュ名所のドーナツ屋。『あの子達も食べた』と、でかでかと書かれた宣伝文句が目立つ。


「美味しいね! プレーンに外れなし!」


「うん、確かに旨い。チョコだけど」


「妾はイチゴじゃ。プレーンなんかじゃ満足しないのじゃ」


「プレーンね!」


「イチゴじゃ!」


「プレーンッ!」


「イチゴッ!」


 ドーナツを食べながら張り合う。どうしてそこまで張り合うのか理解できないエクスだが、静かに食べるよりはマシだとも思っていた。


「レモンも美味しいきゅうよ?」


 きゅうちゃんは、仮面を浮かせて食べている。意地でも素顔を晒さない姿勢にエクスは感心する。事情を知った以上、指摘をするつもりはない。


「で、なんでリリッシュに来たのじゃ?」


「ウルさん達が来たって噂の靴屋があるんだよ」


「靴を買いに来たの?」


「折角ならと思ってな」


「靴を買ったのはメイルクンだきゅう。聞いたことがあるきゅう」


「知り合いなのかの?」


「よーく知ってるきゅう! だって……」


「「きゅうちゃん!」」


「ん? どうしたきゅう? エクスクン、リームクン」


 仮面越しで分からないが、恐らく首を傾げているだろうきゅうちゃんにリームが耳打ちすると、納得したきゅうちゃんは、『きゅうちゃんは、きゅうちゃんだきゅう!』と誤魔化した。


「ま、妾にはなんだっていいんじゃ。こうして貴公と歩ければ!」


「ソ、ソア!?」


 エクスの腕に自分の腕を絡ませてくるソア。わざわざリームを見て挑発している。挑発されて悔しくなったリームは、エクスの手をギュッと握った。


「手なら、エクスだって握り返せるもん」


「ほう、考えたのじゃな?」


(だからなんで張り合うんだよ!?)


 手をリームに、腕をソアに防がれて困り顔。ドーナツよりも甘い状況に、周りの視線が痛いエクスである。

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