仮面の一喝
エクスとリーム、仮面の少女の三人は、リイムに向かう列車に乗っていた。エクスとリームが並んで座り、二人に向かう形で少女が座る。列車に乗ってからというもの、仮面を被ったままの少女。どうにか話をしようと話題を振るリームなのだが、少女は適当な相槌しかしない。
(参った! 話が全然弾まない! 女子同士盛り上がれると思ったのに~)
「ちょっと訊いていいか? どうして仮面を着けてるの?」
「気になるきゅう?」
「気にするなって方が無理だよ。さっきは外してくれたのに」
「理由は色々あるきゅう。この世の中、勘が鋭い人もいるきゅう」
「誰かから逃げてる、とか?」
「むしろ逆きゅう。追ってるんだきゅう」
「追ってる?」
「知りたいきゅう?」
「いや、そこまでの興味はないよ」
「ま、君達は知らない方がいいきゅう。巻き込みたくないし大変きゅう」
「大変、か」
(怪しさが増した)
「ねえねえ! 名前を教えてほしいんだけど。私はリーム!」
「きゅうちゃんは、きゅうちゃんだきゅう!」
「「きゅうちゃん!?」」
「うん? 二人共、どうしたきゅう?」
「なっ、何でもないから!?」
「きゅうちゃん……。僕はエクスだよ」
((絶対に偽名だ!))
「宜しくきゅう! エクスクン、リームクン」
自己紹介で凄く疲れてしまった為、エクスは車内販売でジュースを買う。フォインで並んだ時よりも疲れた気がする。
ジュースを飲んで一息吐いていると、急に車内が騒がしくなる。最初は酔っぱらいが騒いでいるだけかと気にしなかったが、次第に騒ぎがエスカレートしていく。
「俺様の言うことが聞けないってことか! この国軍大佐の言うことが!」
「申し訳ありませんが、車内での喫煙は禁止されていますので、ご遠慮願います」
「ああ!? こちとら煙草が命なんだ! その煙草を吸うなだと! 誰のお陰で平和だと思っていやがる!」
「規則ですので」
「軍人に背くってのか。背けばどうなるか分かっているよな?」
車内販売の女性の胸を鷲掴みにする大佐。女性は必死に抵抗するが、大佐の力は強い。国軍大佐と言うだけある。
「やめてください!!」
「煙草で気を紛らすことが出来ないならば、お前の身体で紛らすだけだ! 大佐命令だ!」
「や……めて」
「誰か一人でも妙な動きをしてみろ! 公務妨害で潰す!」
その大佐の一言で他の乗客は動けなくなる。軍人の強さを知っている分、下手な抵抗は無駄だと判断していた。
「許せない! 軍人だからってあんなこと!」
「落ち着きなよ、リーム。僕達じゃ太刀打ち出来ない」
「けど!?」
「そうだきゅう。子供は大人しくしてるきゅう」
ゆっくりと立ち上がるきゅうちゃん。妙に落ち着いており、仮面も相まって凄みを感じる。腕を後ろに組んで大佐に近付く。
「何だガキ! ガキだからって容赦しないぞ!」
「酷いきゅうなー酷いきゅうなー! 女性に乱暴は駄目きゅうよ?」
「ああ! ガキだからって容赦しないと言っただろ!」
大佐は銃をきゅうちゃんに突き付ける。それでも冷静なきゅうちゃん。突き付けられた銃を掴んで抵抗する。
「馬鹿なガキだ! 大人にガキが勝てるわけないだろ!」
「……弱い奴ほどよく吠えるきゅう。直ぐに手が出る、力で解決しようとするきゅう」
きゅうちゃんに突き付けられた銃が消失した。あまりにも突然の出来事に、大佐のさっきまでの威勢の良さは潜める。
「あ……ああ!?」
「大佐が偉そうに。身の程を知りなさい! ……きゅうよ?」
きゅうちゃんは、『終わったきゅう!』と言いながら女性を気遣う。そんなきゅうちゃんに乗客から拍手が送られた。




