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鐘の音以上の感動

 ノランから歩くこと三十分。フォインに着いた二人が見たのは、鐘を鳴らす為にズラーッと並ぶ人達の姿。何人並んでいるのか数える気も起きない程である。


「げっ!?」


「凄い人の数だね。今の待ち時間はどのくらいかな?」


「えっ!?」


「何を驚いてるの? 並ばないと鳴らせないから」


「僕、並ぶの嫌なんだよ」


「レストランの時にそんなこと言ってたね。けどしょうがないの。レストランに並ばずに入れたのは幸運だったからね!」


「本当に並ぶのか!?」


「ほ・ん・と・う! 私の背中を押してくれたのはエクスなんだから! こうして話している間にも先に並ばれちゃう!」


 エクスの手を握って駆け出すリーム。必死なリームと嫌々なエクスの足並みが揃うわけもなくグダグダになる。それでも自分の手を離そうとしないリームに、エクスは渋々折れることを決めて駆け出した。エクスに引っ張られるとは思ってもみなかったリームは驚いている。


「早く並びたいんだろう?」


「う、うん!」


※ ※ ※


「そろそろだ。ふわぁ~、長かった」


「ありがとう! エクス」


「お、おう!?」


 満面の笑みでお礼を言うリームに照れてしまう。こんなに喜んでくれるのなら、並ぶのも悪くないと思うエクス。遂に二人が並ぶ番になった。


「二人で縄を持って鳴らすの!」


「並んでいる間に散々聞いたな、鐘」


「「せーの!」」


 力一杯に鐘を鳴らす二人。並んでいる時は感じなかった感覚を感じる。耳で聞いている筈なのに、何故か身体の中まで響く鐘の音に驚いた。


「凄かったね! なんだか感動しちゃった!」


「まあ、な」


「エクスは退屈だったよね?」


「なんで?」


「鐘を鳴らすだけだったから。男の子は興味ないもんね」


「並んでいる間は退屈だったけど、鐘を鳴らしたことは後悔してないよ。感動してないだけだよ」


「そうだよね!? でもありがとう! 付き合ってくれて」


「僕に感謝するのは早いよ。恋人が無事に出来たら言ってよ」


「それはそれ、これはこれ! 『感謝することは大事なんだよ。自分がされて嬉しかったら感謝する。その気持ちを言葉にする』、でしょう?」


 またもや満面の笑みを見せるリーム。照れているのを誤魔化す為に歩き出す。


「鐘の音に感動はしてないよ。僕が感動したのは……」


「何か言った?」


「……何でもないよ」


 リームを見て笑みを浮かべるエクス。リームと鐘を鳴らして、リームの笑顔を見れたことに感動したことを胸に秘めたまま。

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