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――理論で殴れば大体勝てる―― 数理魔術師アルヴィスの旅  作者: Richard Roe
第二章 金貸し業に復帰したはいいものの、大物マフィアたちに目を付けられてしまい対立することになった数理魔術師
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4.予想通り敵襲が訪れたので、罠に嵌めて一網打尽にする……つもりが、どうにも当初の予定と若干狂ったお話。

「おう兄ちゃん、ワシゃこう見えてもパン屋をずっと作ってる職人でな。最近気がかりなことっていったらよ、小麦がよ――」


「まあ、若いのねえ。ちょっとおばさんに若さを分けて欲しいわぁ。お話といえばね、この前うちに来た客の話なんだけど――」


「僕ぁ、ずっと絵描きをやっとりましてな。この辺の風景もよく描くもんです。で、こいつは秘密なんですがね――」


「おーう坊主! 覚えてるか? ダグラスだ。今日はちょっとよさげな店を見つけたから、教えてやろうと思ってよ――」


 連日のことである。

 患者はひっきりなしに訪れ、アルはこの街の情報を、これでもかというばかりに集めることに成功していた。


 中には、洒落にならない話も混じっていたりする。

 例えば賭けのイカサマのやり方や、裏帳簿の存在(一般に店先で「かー! まけてやるよ!」とかやってくれる店は裏帳簿をつけて、税金を節税してる等)、土木屋との談合の話や、通行税のちょろまかしかた等だ。


 だが、いずれもアルは喜んで聞くことにした。

 どれもこれもが、この街に来てあまり経たないアルたちにとって貴重なお話なのだ。

 聞き漏らすという選択肢は存在しない。


(診療代をただにするっていうだけなのに、意外と皆、面白い情報をくれるもんだなあ)


 アルは、これらの話を情報屋に売り払ったらどうなるかを脳裏で考えた。

 恐らくは、無料で診察した分は簡単に元を取ってしまうだろう。

 ここまでは期待してなかったのだが――とアルは、思わぬ収穫に頬を綻ばせる。

 が、アルはこれらをそのまま素直に売り渡すつもりもなかった。


 どうせなら、高くなるように料理して、である。


(最初は、診療所だなんて三ヶ月でやめようと思ってたけど、もうちょっと様子を見るべきか……?)


 アルの考えでは、情報をくれたら無料で診察、だなんてアイデアは、最初の一、二ヶ月ですぐに陰りが出て、旨味もどんどんなくなっていくものだと思っていた。

 が、しかし、開院して一週間たった今でも客の勢いは衰えず、むしろ増している気さえする。


 これはひょっとすると、三ヶ月後も四ヶ月後も、情報が聞き出せるのかもしれない。

 そんなことを考えながら、アルは診察のほうも抜かりなく行っていた。




 ◆ ◆ ◆




 そんなある日のこと。


「ラナ。そういえば最近全く魂の欠片を吸ってないけど、大丈夫か?」


「ううん、私は平気。アルこそ、百年前の力を取り戻せてないんだから無理は禁物よ」


「ラナだって、百年前の力を取り戻せてないじゃないか」


 そろそろ診療所を閉めて、晩御飯と今日の分のポーション調合などをする時間である。


 受付をしてくれるルッカとリュータは「じゃあね、また明日」「きゅきゅい」ととっくに帰っており、今このアスタ医院には二人しかいない。


 さて、後片付けをしなくては――と考えつつ、カルテを纏めて、診療所の掃除に取りかかる。


 そのタイミングでのことであった。


「――! 敵襲か」


「……みたいね」


 尋常ならない殺気と不穏な気配を嗅ぎ付けて、アルとラナは身構えた。

(診療所の外に、強力な敵がいる)とアルは察知し、すぐさま小型探査機デバイスを飛ばして、外を探知する。

 外の敵は、知覚拡張アプリ【six sensor】によれば、三〇人は下らない。となればまずは、こちらと相手の戦力差を測ることが急務。

 そう考えての行動だったが。


「――――!?」


 果たして、すぐに小型探査機デバイスを破壊されてしまった。

 気付いたということか。

 この、透明のマナマテリアルでできた探査機デバイスに勘付いてしまえる、ということか。

 それは即ち、アルたちでも油断ならないほどの実力者が、向こうに待ち構えているということである。


 刹那、アルは「向こうに悟られた」とラナに伝えた。

 悟られた。

 即ち、アルとラナが外の敵に気付いていることを悟られたということ。

 悠長にしている時間はなかった。


 同時に、診療所の入口のトラップの数を増やす。

 トラップデバイスが今のところの命綱である。


(来るならこい。最悪こっちには、ここを放棄して逃げるという選択肢もある)


 アルは来たるべき敵の襲来にそなえ、魔法陣を多量に展開しておいた。

 ラナもそのまま、"声の貝殻"をいくつか取り出して、すぐに投げつけられるようにしている。


 しばらくの沈黙が続く。

 向こうが突撃を躊躇っているのだろうか。(もしも俺ならば、ばれたと分かった途端に、相手の体勢を整えないために突撃を敢行するが――)と自分に置き換えて相手の手を読もうとしたとき、動きが訪れた。


 診療所の入口が吹き飛ばされたのだ。


「――でえええーいっ! (かた)ーっ!! 痛っ、くそっ、ふざけんなーっ!!」


 女の絶叫。放物線を描いて宙を舞う扉。

 アルが扉に施した硬化(セルロースナノファイバ合成樹脂の塗布、留め具金属の錬金強化)を嘲笑うような光景。


 瞬間、女はこのアスタ医院の中に飛び込もうと画策し――ゴム状弾性マナマテリアルによってバンジーのごとく引き戻された扉に、ばしんっ、と横っ面を張り倒されて「うぶっ!?」と外にぶっ飛ばされていた。


 端的に言って間抜けだった。

 可哀想なことに、「痛っ! あ゛、がっ、ぐぅ……う、ぅう、ぶ」とおおよそ女の子らしくない呻き方で苦しんでいる。

 扉越しにも分かる悶絶の声。


(もしかして、もろに鼻に入ったか?)


 などとちょっとだけ関係ないことに思考が逸れるが、先ずは留め具の修復をせねばなるまい。

 形状記憶マナマテリアルを添加してるので、熱を加えてから嵌め直す。

 僅かに一秒のことであった。


「――む゛ぶっ!?」


 同時に、どす、と扉にぶつかる音。

 多分例の女である。肩からぶつかって顔から激突したような声がした。


 恐らく、一度突破できたから次は簡単にタックルで侵入できると思っていたに違いない。

 先に留め具を修理してしまったアルの、機転の勝利であった。


(というかこの女すごく間抜けなのでは)


 ざわめく外。「お嬢!」「無事ですか!」「ええいなんと姑息な!」「鼻血が出ておられます!」など何か周りもあたふたしている。


 アルとラナとしては拍子抜けなことこの上ない。

 扉を突破してもらわないと、戦えないのだ。

 というより、入口に仕掛けたトラップに早く引っ掛かって欲しい。


「ゆ゛、許さん゛っ、あ、アルヴィス、アスタ……っ!」


 怒りを帯びた鼻声。どこかで聞いた覚えがあったので周波数領域で解析にかけると、類型の声が複数見つかった。

 扉越しなので精度が悪い。

 もう少し近くで――できれば鼻血による鼻声をなくして、声を聞かないと同定できなさそうである。


「……アル。何か、その、拍子抜けしちゃうね」


「油断はするなよ。無色透明の小型探査機デバイスに気付いて、それを破壊できるような手合いがいるんだ」


「あの女の子?」


「とは限らない。部下が飛び抜けて優秀なのかもしれない」


 ラナと短くやり取りしつつ、先程は急すぎて着替える暇もなかった装備を、お互いに整える。

 準備は万端。後は戦うのみ。


 そうやって、アルが短剣を握りしめたそのタイミングでのことであった。


「――突貫!」


 鋭い声と同時に、再び扉が吹き飛ぶ。

 今度はその女も軽やかに侵入し、唸りをあげて戻ってくる扉を「はぁっ!」と軽く蹴飛ばしていなしている。


 ならば――と、足元のトラップデバイスを一斉発火。

 スタングレネード魔術。スタン魔術。拘束魔術。

 数多のデバイスが一斉に発動し――そのことごとくが一瞬で回避されてしまった。


(!)


 速い、と思う間もなく女は室内を駆けた。

 韋駄天の速さ、とアルが目を剥くや否や――その女はすっ転んでいた。


(え、こいつ、ワイヤーに引っ掛かった)


 効果は絶大だが、稚拙なためすぐに見抜かれるワイヤートラップ。それに彼女はまんまと引っ掛かっている。


 とりあえず好機――とばかりに雷魔術を叩き込もうとして、「!」と瞬間的に悟られ回避される。


(速い! 何だこいつ!)


 常識を逸脱する速さに、アルは警戒心を強める。

 身体強化か、と相手の女の強さを看破しつつ、アルは素早く応戦した。


 空に散る斬戟。

 短剣と短剣の衝突。


 かつてのルーシェルとの戦いを彷彿とさせるような、肌のひりつくような応酬。

 手が狂えば死ぬ――そんな速すぎる戦いが、今ここに繰り広げられている。


(ルーシェルとの違いは、斬戟が軽すぎる)


 あれは、ごっそり体を持っていくような剣閃だった。円弧を描いて迫る、下手な防御を許さない高速の処刑器。


 対して今の短剣は、大きく異なる。

 針で刺すような――しかし致命傷を与える隙を窺うような、超高速の早業。


(両手短剣の分、ルーシェルよりは僅かに速いが、遥かに非力――)とアルは少し余裕を取り戻した。


 乱れ交う攻防は、絶え間ない派手な音を撒き散らした。

 何十合の剣が飛び交って火の粉を飛ばす。

 女は飛び下がって、ついに――またワイヤーに引っ掛かってよろめく。


「うわ、わっ、や」と慌てる彼女の両手の短剣に、(今だ!)とばかりに強烈な一撃を与える。

 宙に舞う短剣二つ。

 武器を失った彼女を蹴飛ばし、そのままスタン魔術を打ち込む。


 が、しかし。

「!」と例のごとくまた即座に気付いた彼女が、身を捩らせてスタン魔術を避けた。


(何だこいつ、反応が速い!)とアルは考えたが、南無三、それならとスタン魔術を連射。

 二発までは回避されたが、三発からはついに限界だった。

「あ゛、がっ、ひぁっ!」と変な声を上げて、ようやくその女は倒されたのであった。


 妙にてこずらせやがって――とアルは思いつつ、その女をマナマテリアルで拘束した。


(後はラナだ)


 この女は成り行きでアルが担当することになったが、となるとラナは、一人で三〇人余りを担当していることになる。


 ラナは、入口に立っていた。

(何で、そんな危険な場所にいるんだ!)と一瞬アルの脳が冷えたが、それはどうでもいい。


「ラナ!」


 短く声を上げ、素早く駆け寄り状況を確認する。

 ラナは「? アル?」ときょとんとしている――無事のようだ。


 ば、と彼女を庇うように前に立って短剣を身構える。

 何としても彼女は守らないといけない。

 そう考えたアルが、瞬間、目にした光景は、ちょっと予想外のものであった。


 ――敵が全員おしなべて倒れていた。


(……吸魂か)


 アルは事態を悟った。ちょっと呆れを含めてラナに視線を飛ばすと、「えへへ、ごちそうさま」と可愛く笑っている彼女がいた。


 彼女のようなバンシー妖精の一部――特にラナは、生き物の魂を食べることができる。


 ラナウン・シーは吸血鬼と木の妖精の間に生まれた妖精。それゆえ千年もの間、孤独を噛みしめ生きる必要があった。


 それはともかくとして――ラナの悪癖の一つに、生き物の魂をつまみ食いしてしまうことがあげられた。

 全てを食べるとその生き物は死んでしまう。

 なので、ラナ曰く"節度を守って"食べているそうであったが――ご覧の有り様である。


 三〇人余りが路上に横たえている光景は、少し異常であった。


「大丈夫、衰弱してるだけ。殺してないよ」


「……他人の魂の器(レベル)を食べるなんて、ラナは残酷だよな」


「ふふ、アルだって魂喰らい(アストラル・ドレイン)はできるんでしょ?」


「出来るけど、それは誰にもばれないという確証がないと実行しない。――だって、魂の器を吸収できるなんて、そんなのあまりにもあれだろ?」


「うん、絶対目を付けられちゃうよね」


 くすくす笑いながら、「だから、いつもはアルの魔力で我慢してるの」と言いつつ、抱きつくラナ。

 少し身が火照っているのか、肌が熱く感じる。

 きっと、他人の魂を吸いとったことによって、今気分が高揚しているのだろう――とアルは結論付けた。


「――さて、この三〇人の連中たちは、拘束して路上に放置しておくか」


「? いいの? 人質に使って交渉はしないの?」


「それは一人で十分だな。あのお嬢って呼ばれてた子で」


「……そっか。分かった、じゃあ放り出しておくね」


「俺も手伝うよ」


 都合、三〇人ほどをマナマテリアルにより拘束し、そのまま診療所の邪魔にならないところに放り捨てる。

 命を取らないだけ感謝して欲しいところであった。


「ねえアル、キスしていい?」


「こらこら、それは帰ってからな」


「アルの分の魂、お裾分けするの。さっき食べたから、アルにも、ね?」


 道中、可愛らしくそんなことをいうラナに(キスぐらい今してもいいかも)なんてことを考えるアルだったが、それはやめておくことにした。

 診療所にはまだ一人、あの女が残されているはずだ。拘束魔術をかけたとはいえ、油断は好ましくないであろう。


 早く帰るべきだ――と考えて診療所の扉を開ける。


 瞬間。


「――殺す! アルヴィス・アスタ!!」


 頭から突進してくる何か。

 アルは咄嗟にラナを庇って、背中から攻撃を受けた。


(馬鹿な、拘束魔術で魔法を禁じ、手も足も両方を固く縛ったはずなのに!)


 動けるはずがない、と高をくくっていた。

 その代償が、背中に刺さる角の一撃である。

 激しい痛みが走った。が、筋繊維にもろに穴を空けられたとはいえ、まだ体は動く。


「――っ!」


 後ろ蹴りを繰り出して、その影を診療所内に突き飛ばす。

「ぎゃっ」という声と共に、壁に叩きつけられる音。

 アルの蹴り技は見事に成功した。


 同時に背中から血が吹き出したが、アルは冷静であった。

 診療所の内部に他者の気配、魔術の気配がないことを確認し、安全を確認してから扉を閉める。


「あ、アルヴィス、こ、殺す……!」


 例の女は、鼻から蹴られたらしく、またもや鼻血を出している。が、気骨だけは十分なようで、まだまだこちらを射殺さんばかりに睨み付けていた。

 まるで復讐してやる、とばかりの恐ろしい表情だ。

 まあ確かに、スネイク一味にはたくさん恨まれるようなことをしているな――と思ったアルは、すぐに気づいてしまった。


(あ、この女、知っているぞ)


 ということに。


 暗かった上に高速で戦闘していたため、顔がわからなかったが、落ち着いてみればこれは、迷宮で出会った迷賊の一人だ。


 かつて出会った、ホブゴブリン種族のゴブリナ。ラナの『魂の叫び』によって最も悶え苦しんだ者。そして――。


「お前、あの時の失禁女か」


 くわっ、と彼女の顔が変化した。

 かと思うと、急に「う、うぅ……っ」とぼろぼろ涙を流し始めた。


 よほど悔しかったらしい。

 というか、最も踏み込まれたくない部分を踏みにじってしまったというべきか。

 アルは流石にほんの少しだけ、己の迂闊な発言を反省した。


 が、しかし。

 後ろの契約者は、アルの怪我を微片も許しはしなかった。


「――小便に飽き足らず鼻血まで垂らすか、下女」


「……!」


 怨気衝天、凍寒極窮。

 凍てつくようで、荒れ狂うような重圧がその場を支配する。

 それは、千年の怨嗟を声に乗せ、目を赤光らせて低く唸っていた。


「……ぁ、……ぅ……」


 女のか細い声は、そのまま、……ぉぉぉぉおおおお――という重低の唸りにかき消される。

 千年妖精ではない。千年妖精の呪いの心が呼んだ、常久(とこしえ)の闇の何者か(・・・)のおどろおどろしい呻きだ。


 妄幻悪夢のごとく、相見(あいまみ)える者の命を啜り喰らう、無慈悲の災厄の声。

 如臨深淵、慷慨憤激。

 怒りが呪いそのものであれば、このホブゴブリンは既に死んでいるだろう。


「痴れ者め、無様に死に果てるがいい。千年妖精の名を以て命ず、ただ()くと――」


「やめろラナ」


「――――っ」


 咄嗟にスペル・キャンセラーが働き、千年妖精の呪いは霧散する。

 瞬間、ラナの瞳は、何で、というように揺れていた。

 アルはそれに鋭い目をもって答えた。


「この子は、交渉カードだ。食うにしても美味い食い方がある」


「……アル、でも、背中、怪我が」


「ラナ、怒るよ」


「……私も、怒ってる」


「なら、おあいこさんだ。いいね」


 そのまま、気の遠くなりそうなほど張り詰めた重苦しい空気が続く。

 千年妖精ラナが渦巻く呪いであれば、魔術師アルはさながら峻烈な息吹。

 それこそ小さな生き物であれば否応がなく命を失うような、苛烈な魔力の奔流が暴れ狂う。

 二者の睨み合いは、しばらく危うい均衡を保ち――そして最初に微笑んだのは、アルの方である。


「ほら、ラナ、泣きそうな顔をしちゃだめだ。ね、いい子にするんだ」


「……うん」


 結局、ラナはしぶしぶといった様子で、アルの言葉通りに殺意と呪いを解いたのであった。

 伴って、呼吸さえ奪うほどの濃密な瘴気が、緩やかに取り払われていく。


(……あー、しんどかった……。もう二度と、千年妖精と呪力勝負なんかするかってんだ……)


 契約者のアルとて、千年妖精の怨嗟の呪いの前では、呼吸を奪われるような苦しみを受ける。そう喜んで何度も手合わせしたくはないものである。

 もしこれが非契約者であれは――と思うと、ぞっとしてやまない。

 呪いとは、ある種では精神の死だ。千年妖精の本気をもって、死と魂の(つい)の瘴気を撒き散らされた暁には、人が狂い死んでもおかしくはない――。


(そういえば、非契約者、誰かいたような気が)


 ふとアルの視界に、誰かがちらっと映る。

 そこにいるのは、心臓を押さえて苦しむ亜妖精のホブゴブリン。亜妖精ということも相まってか、周囲の瘴気に喘いで死に掛けてさえいた。


「あ」


 二人の声が重なったと同時に、そのホブゴブリンは気を失って、頭から地面になだれ込んだ。

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