状況説明
――眩しい光が収まったところで目を開けると、そこは暗くてじめっとした
窓もない部屋の一室だった。
「・・・っ!」
辺りを見渡し、誰もいないことを確認した。
足元には先程強く光っていたあの魔法陣がある。
またなにが起こってもおかしくない。
そう思い、しゃがんだまますぐにでも魔術が打てるように準備する。
カツッと足音がし、そちらを睨むように見つめる。
そこから出てきたのは、白いローブを纏った白髪のおじいさんだった。
彼は私を見つめるとすぐにローブの裾を掴み、こちらに礼をした。
「・・・偉大な魔術師様、どうか突然お呼び立てしたことをお許しください」
見たところ、こちらに害を与える様子はないが、警戒するに越したことはないだろう。
まずは様子見だ。
私は沈黙を貫く。敵に余計な情報を与える可能性が少しでもあるなら私は口を開かない。
昔から兄達にそう教えられてきたのだ。
「・・・突然のことで混乱なさっているとは思いますが、
魔術師様は梅月華様のお姉さまである、梅月冷様で間違いありませんでしょうか。」
思わず目を見開いたのは仕方ないと許してもらえるだろうか。
「・・・華をご存じですか。」
「おぉ!やはり!!私はやっと!!やっと・・・」
おじいさんが泣いている。
というか泣き崩れている。
「・・・泣いている所申し訳ないのですが、状況を説明して頂けますか」
「す、すみませんでした。」
ぐすっと鼻をすすっておじいさんは話し出した。
「・・・あれは一年前の事です。この世界には魔物が蔓延っていました。
魔王が誕生したことで、悪の力が膨大になってしまったせいです。
その魔王を退治すべく各国の精鋭である勇者を派遣しましたが、歯が立たず・・・
仕方がなく他の世界から魔術師を召喚することにしたのです。」
・・・なにそのよくある無責任な異世界召喚。
ていうかこの世界のことなんだから他の世界の魔術師に頼るなよ!!
しかも一年前ってまさか・・・
「各国一名ずつ召喚したのですが、何の因果かこの魔術師は兄弟(妹)だということが判明しました。
それが冷さんの御兄弟(妹)です。」
ですよねー!!!!!
そうなりますよねー!!!
・・・おっと、取り乱しました、すみません。
「そして、魔王は三か月程前に退治され、世界に平和は戻ったのですが、
各国の王族様が召喚した魔術師を大層気に入りまして・・・
元の世界に返さずに記憶を奪い、各国の戦力へと引き込んでいるようなのです。」
「・・・は!?」
「このままだと冷様の御兄弟(妹)を使った大戦争が起きかねないのです。
既に各地で魔術の乱戦が起こっていると耳にしました。
そこで、冷様には御兄弟(妹)の記憶を取り戻して戦争を止めて頂けないかとお呼びした次第であります・・・」
もう話が飛びすぎてどうしよう状態なんだけど・・・
とりあえず、このおじいさんが嘘をついているようには見えない。
ということはこれは本当なんだろう。
「・・・私以外にもうちの者を止める程の実力者はいるのではないでしょうか。
わざわざ新たに私を召喚するメリットはないように感じるのですが。」
「いえ、私共の中には召喚した魔術師様を止められる程の実力者はおりません。
どのお方も大変お強く、私共では足元にも及びませんでした。」
・・・これも本当なのだろう。
だとしたら、だ。
それほど実力がない者に記憶操作をかけられる程度には気が緩んでいたか
実力不足だった、ということになるだろう。
どちらにしても、こちらに非がないわけではない。
警戒していた態度を改め、立ち上がっておじいさんにお辞儀をする。
「・・・どうやら、我が兄弟(妹)が大変ご迷惑をかけているようで。
申し訳ありません。こればっかりは私の力不足ですね。」
驚いたようにおじいさんは私を見つめた。
「と、とんでもございません!!」
「いえ、実力者がいないとおっしゃっておりましたが、
その実力が無い方に記憶操作されているのですから、こちらの者に隙があったのでしょう。
大変申し訳ありませんでした。」
おじいさんはぽかーんといった効果音が似合う顔をし、
改まった顔でこちらを見た。
「・・・それでは協力して頂けると・・・?」
「えぇ。私、梅月冷は愚かな兄弟(妹)たちの回収に協力致します。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。」
とにかく決まった。
そもそも人に迷惑をかけている時点で、私若干イライラしていたので
覚悟しておいて下さいね、お兄様、そして弟妹たちよ。
――ここから、この梅月冷の逆襲撃が始まる――
一度、完結済みとさせて頂きます。
これから彼女の復讐劇は始まりますが、もう少し書き馴れてから続きを書こうかなと思っております。
しばらくお待ちいただければ、と思います。




