92.言い伝え
ここ数週間投稿しなくてすみません
今週からいつも通りに投稿していくので
よろしくおねがいします
「世界樹というのは特定の姿を持たないのです」
爺さんは案内しながら世界樹について教えてくれる。
「特定の姿を持たない?……世界樹ってのはスライムか何かなのか?」
「いえ、そういう訳ではないのです」
「……どういうこと?」
「世界樹は見る人によって見え方が違うのです。例えば私には柳のようなもので見えていますが他の人にはそう見えないのです」
「へぇ、不思議なものなんだね」
「世界樹は心の写し鏡とも呼ばれることがあります。世界樹の形はその人の心を表しているのです。それだけでなくその時の気持ちや気分によっても姿が変わってくるのですよ」
時々ある設定だな。
楽しみだ。兵士の言葉からしてかなりの神聖さを醸し出す姿らしいからな。
「それと世界樹にはあまり知られていない言い伝えがあるのです」
「隠匿されてきた話、みたいなものか?」
「いえ、別に隠されてきたわけではないのです。ただかなり昔の事でして今では知っているのが教会のごく一部の人間だけでなのです」
「どういう内容なんだ?」
「確か、創造主様の御使い様にふさわしい人間が現れたとき、世界樹の試練を課す。というものでした」
「世界樹の試練か。その内容は知っているのか?」
「いえ、そこまでは伝わっていないようで。知っているのはここまでです」
「そうなのか。で、何故そんな話を俺に?それに俺みたいなやつにそんなことを言ってもいいのか?」
「ええ、隠さなければいけない話というわけではないので。それとこの話を貴方にした理由なのですが、勘でしょうか。なぜか貴方にはこの話をしておいた方がよいと思いまして。どこか感じる雰囲気が只人ではない神々しさがあるというものもありますが」
この爺さんはなかなか鋭いみたいだな。
俺は種族がなくなって部外者とか言う存在になったからな。人じゃない。どっちかというとロベリアとアビスのような神よりの存在なのだろう。
「もしかしたらあなたが創造主様の御使い様に選ばれるかもしれませんね」
「それは面倒くさそうだ」
俺の言葉に苦笑を浮かべる爺さん。
聖職者を前にして言うようなことじゃないからな。
「世界樹はもうすぐですよ」
廊下を抜けた先、そこにあったのはかなり広い広場だった。直径100mはありそうな円形の広場。
地面は芝生で覆われぽつぽつと人がいる。
その人々は全員広場の中央をボーっと見つめている。
「あれは何をしているんだ?」
「世界樹を見ているのですよ」
「世界樹?」
そんなもの俺の目には映っていない。
「はい、あそこにあるのですよ。世界樹が」
「あそこに行けば見えるのか」
「はい、ある一定の距離まで近づくと目の前に世界樹が現れるのです。そうなるとあのように中央を見つめ立ち止まってしまうのです」
そういえば今立ち止まっている奴らは全員同じような距離にいる。
あのラインから見えるようになるのだろう。
「ここからは布施をすることで入場することができます」
「わかった。これでいいか?」
「はい、丁度いただきます」
人数分の布施を払い広場に足を進める。
「なんだか、すごく、奇麗な空気」
「だね。すっごく気持ちがいいよ」
「そうじゃな。普通の空気とは違う、創造主の力を感じるのじゃ」
確かに、広場に足を踏み入れた途端空気が変わっていた。
「世界樹とやらが創造主と繋がっておるのかもしれんな」
「あぁ、中央に近づくほど力が濃くなってる。世界樹が力を発しているのだろう」
ゆっくり中央に近づくほど漂う力が濃くなっていっている。
世界樹まであと十数メートル。
「どんなものが見えるのか楽しみだ」




