88.スズの顔合わせ
短いです
スズを伴い教会の扉をくぐる。
「あいつ等とはたった6日の付き合いだがなかなかいい奴らでな」
「クロがそんなこと、言うなんて、珍しい」
「まぁそいつらと出会っていた時はまだ一般人をしていた時だからな。そん時の意識に持ってかれているんだろう」
今の俺でもいい奴らだと思えるぐらい善良な奴らなんだけどな。
元の場所までに戻ってきた俺は周囲を見渡しアハドたちを探す。
講堂に入った瞬間中にいた人から蔑むような視線が集まる。スズの容姿を見たからだろう。今のスズは真っ白な髪と紅い瞳を隠していない。
昔のスズならその視線に怯え俯きこの場から逃げていただろう。しかし今のスズは堂々と前を向き俺の横に並んでいる。周囲の視線をものともしていない。
「お、いたいた。アハド、紹介する。この子が俺の今の仲間で彼女のスズランだ」
「スズランです」
ペコっとお辞儀するスズを見て硬直するアハドたち。
「って、彼女!?彼女出来てたのっ!?」
「初めに聞くのはそっちかよリリー」
今のスズは髪の色も白く眼も紅いままだ。だから初めにそこを突っ込んでくると思っていたが、まさか彼女のほうに突っ込んでくるとは予想外だな。
「い、いや。そっちも気になるが、まず……その子って……」
「あぁ、禁忌とか言われている獣人だ」
「あ、あぁ、やっぱりか」
ふぅむ、やっぱりこの世界のスズの容姿は悪イメージが強いのか。
「クロ、その子は大丈夫なんだな?」
「……なにをもって大丈夫なのかは知らんが、スズは俺の仲間だ」
俺が決めて俺が愛したスズだ。もしスズに手を出すなら、容赦しないぞ。と、言外の意味を込めてそういう。
アハドはその意味を感じ取ったのだろう。ため息を吐き苦笑を浮かべる。
「みんな、この獣人の子は大丈夫だ。なんというか……兎に角大丈夫なんだ」
アハドはそう講堂に集まる人に言う。
「ほ、本当に大丈夫なのかアハドさん……?そいつ、禁忌だよな」
「あぁ、俺の信用できる友人の仲間だ。だから大丈夫だ」
「そうか。あんたがそういうなら信じるよ」
「私たちも信じるよ。アハドさんには命を救ってもらった恩があるしね」
「あぁ、その子を信用することはできないけど……アハドさんなら信用できるさ」
アハドはここの人たちに信頼されているようだな。
「いい人、だね」
「だろ」
「ね、ねぇスズランさん?」
「スズでいい。さんもつけなくて、いい」
「そうかな?じゃ、じゃぁスズ。ボクはリリース。皆にはリリーって呼ばれてるからリリーて呼んで」
「ん、わかった」
「それでね、あの、ユ、クロと付き合ってるって、言ってたけど……ホント?」
「ん、ホント」
「あぁ………ホントなんだ。本当に、付き合ってるんだ。あは、あはは……あは」
あはは、と乾いた笑みを浮かべながら虚ろな視線を宙に彷徨わせるリリー。
「もしかして、クロの事、好き?」
「え、あっ、いや……」
「隠さなくて、いい。別に怒ったり、しないし」
「ん、ん~………………はぃ」
「ふふっ、クロは魅力的、だから、仕方ないよ」
「そ、そうだよね!」
そのまま俺のことについて盛り上がるスズとリリー。仲良くなるのはいいんだけど、できればその話は俺がいないところでしてほしいな。




