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86.久しい彼奴

 少女の案内に従いながら瓦礫の町をぴょんぴょん飛び跳ねる。

 早めに生存者を見つけたかったため少女を抱え移動することにしたのだ。初めは怖がっていたが慣れたらしく今はニコニコしながら道の案内をしてくれている。意外と大物になるかもしれないなこの子。


 少女に負担がかからない様に考慮しながら移動しているためそこまでスピードが出せない。だからその間にこの子の事情を聴くことにした。


 何故まだ小学4、5年生程度の年齢だと思う少女がこんな物騒な野外を一人で歩いていたのか。

 少女、ミリの話によるとつい好奇心で外の様子を見に来ていたらしい。そしてあの足の無い腐人に見つかってしまい俺が来るまで逃げ回っていたようだ。


「好奇心旺盛だなぁ。外が危ないのは知っていただろう?」


「うん……でも気になっちゃって……」


「俺が気がついていなければ死んでいたんだぞ?好奇心に殺されるようなことにならなくてよかったな。でもこれからは気を付けろよ?」


「うん、ありがとうお兄ちゃん」


 そんなことを話しながらミリたちの隠れ家に向かう。ミリとあった場所からかなり離れているようだ。ミリはよくここまで逃げ切れたな。


 色々話し続けていたためかミリの話し方が砕けていた。今までは少し無理をしていたようだな。


 しばらく進むと薄っすらと青く輝く半球があるのが見えた。


「あれ!あれがミリたちのいる場所!」


「あの青い奴は何だ?」


「えーと、確か教会にあった結界ってアハドさん達が言ってた。あ、アハドさんっていうのは私たちを助けてくれた人なんだ」


「アハド……?」


 何か聞いたことがあるようなないような。まぁいいか。

 半球の手前に降り立ちミリを地に下ろす。


「こっち!」


 俺の手を引いて教会の中を目指すミリ。一応警戒しながら半球を通り抜けるが何もなかったな。


「ここで待ってて」


 そういって教会の中に入っていくミリ。

 一応危険人物を入れない様に警戒しているみたいだな。ガバガバだけど。

 ミリが戻ってくるまで教会を眺め暇をつぶす。教会なんて元の世界でもこの世界でもちゃんと見たことがなかったからな。この建物はかなり作りこまれているな。

 

 数分程ボーっと教会を眺めていると協会の扉が開き中からミリが現れる。その後ろに誰かを連れているようだが。


「アハドさん、この人がミリを助けてくれたお兄ちゃん!」


「この人、が………、すまん、どこかで俺と会ったことがないか?」


 出てきたのは剣と盾を装備した20代後半の男だ。そしてその男を見た瞬間、なぜかどこかで会ったことがあるような気がした。男も俺と同じことを思ったらしい。


「確か数か月前に君に似た男の子を見たことが、いや、しかし雰囲気が違うし…………」


「アハド……アハ、ド…………あぁっアハド!」


 そうだ、確か王都からメルドに向かう途中のキャラバンの護衛をしていた男にアハドってやつがいた。そしてそいつがこの目の前にいる男か。


「久しぶりだなアハド。数か月ぶりじゃないか」


「アハド?すまん、君の名前を聞いても?」


「俺はクロ、ってこれじゃわからないか。元の名前は悠二。覚えてるか?」


「ユー、ジ?君があのユージだっていうのか?それにしては雰囲気とか全く違うが……」


「色々あったんだよ。性格が変わってしまう、いや、実際は変わってはいないんだが、まぁお前らからしたら変わってしまうほどの事がな」


 いまだ疑わしそうにこちらを睨むアハド。流石は現役冒険者。しっかりと警戒しているな。


「そうだな。確かお前らとは6日ぐらい一緒に行動していたんだったよな?そん時は王都から出るキャラバンの護衛をしていたよな。それでキャラバンに混ぜてもらった俺と出会った。それから少し戦いのこつ的なことを教えてもらったな。んでアハドが護衛を手伝ってもらった代わりに報酬の一部をくれようとして俺が断ったんだ。それを、確かリリだったか?が欲がないって笑ってたな」


「まさか、本当にユージなのか?」


「あぁ、今は訳あってクロと名乗ってるがな」


 まさかここでアハドたちと出会うとはな。流石にこれは驚いた。


「おま、そんなに変わって全く面影ないじゃねぇか!残ってるとしたらその黒髪と黒目だけだろ!?」


「アハドさんとお兄ちゃんって知り合いなの?」


「あ、あぁ。ちょっと前に依頼で顔見知りになったんだ。そん時はまだ町の近くにいるような雑魚と精一杯戦っていたって言うのに……雰囲気からしてとんでもなく強くなってやがる」


「お、わかるのか」


 アハドはそれなりに上位の冒険者だからな。それぐらいは分かるか。


「目の前に圧倒的な壁が立ちはだかってるみたいだぜ……。まったく、どうすればこんなことになるのやら」


 そう飽きればがらも笑うアハド。


「まぁいい、お前なら大丈夫だろう。それにもしお前が悪者だったとしても、太刀打ちできる奴なんてここにはいない。警戒するだけ無駄だろう。さぁ入れ。ルミナたちも中にいるぞ」


「あぁ」


 俺はミリに手を引かれながら教会の中に入っていった。


皆さん覚えてますか?

覚えていない方は「4.冒険者と登録」を見直せばわかりますよ

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