85.生き残り
先週投稿しなくてすみません
「……こんなの」
「これは酷いのぅ」
「……」
影飛竜に乗って王都にまで来たのだが、すでに王都は瓦礫が積もる廃墟と化していた。堂々と表を腐人が歩き回り至る所に死体が転がっている。建物も外見を保っているものは少なく粗方ボロボロに崩れている。町の中心にあった王城も所々崩れており元の荘厳な城は跡かたもない。
「これじゃ生存者は期待できないだろうな」
「だろうな。主、これからは腐人の殲滅でいいのか?」
「あぁ、見当たる限りの腐人どもを消していく」
「それならば今回は妾らに任せてはくれんかのぅ。妾最近暴れられてないのじゃ。欲求不満じゃ。暴れたいのじゃ」
「どこの戦闘狂だよ。まぁいいか。んじゃ俺は一人で生存者を探してみる。お前らは手あたり次第腐人の殲滅で」
「ん、わかった」
「スズたちのステータスなら問題ないだろうが、何かあれば合図を頼む」
スズたちとは事前の俺を呼ぶ合図を決めてある。それがあればすぐに異変に気付くことができる。
各々武器を構え散って行くスズたちを見送り俺は周囲の気配に集中し町を散策する。
「んー、街がボロボロだからかわからんが案外懐かしいとは思わないな」
それにあの頃は楽しい楽しい異世界旅行にワクワクしてたからな。さらに王都にいたのも数時間だけ。城を出た俺はすぐにキャラバンに混ぜてもらい近くのメルドという町に行ったのだ。
何の感慨もなく町を散策していると少し離れたところに小さな気配を感じた。
「これは、子供だな」
それもまだ9歳ほどの。しかも何かから逃げているようだ。まぁ十中八九腐人だろうがな。しかしなぜか一向に子供を襲おうとしない腐人。あいつらに甚振って喜ぶような知能はないはず。
一気に跳躍し建物を無視してその場に向かう。ぴょんぴょんと跳ねながら気配のある場所を視界に入れる。暗い路地裏を9歳ほどの女の子が走り回っている。その後ろを両足がもげている腐人が追っていた。
その光景を見て先ほどの疑問が解消された。どこぞの誰かと戦い足を奪われたのだろう。そのせいで少女の逃げる足にも追いつけず追いかけっこになっていたのだろう。
跳躍したついでに着地で腐人の頭を踏みつぶしてやる。結構大きな音が鳴り衝撃で転んでしまった少女は目を見張りこちらを凝視してくる。
最近弱い奴の側にいなかったため配慮ができなかったな。
「あー、すまん。大丈夫か?」
声をかけながら一応持っていたポーションを差し出す。
しかし少女はぼうっとしながら涙で潤んだ瞳を向けてくるだけ。
どうしたものか。考えていると周囲の腐人がこちらに集まってくる気配を感じる。先ほどの着地の音にひかれてしまったのだろう。
「仕方ないな……」
「えっ」
動かない少女を抱きかかえその場から跳躍する。
「わぁっ!」
急なことに声を上げ驚く少女。その様子に少し和みながらどこかゆっくり話のできそうな場所を探し、丁度よく原型をとどめる塔を発見する。
「よッと。ここでいいか」
「わ、わっと」
塔に着地した俺は少女を床に下ろす。
「ちょっと足見せてみ」
先ほど俺が考えなしで強く着地してしまったため少女は足を擦りむいてしまっていた。その部分に先ほど取り出したポーションを駆ける。するとすぐに患部が再生しシミの無い肌が現れた。
この世界は本当に便利だよな。怪我をしてもポーション一つで治ってしまうのだから。
「す、すごい……」
まぁこれは結構高価なポーションだからな。効果は抜群だろう。
「それで、君に話を聞きたいんだが」
「え、あ、はいっ。何でも聞いてくださいっ」
「もしかしてももしかしなくても、仲間いるよな?」
「は、はい。いま、みんな隠れていて……」
まぁそうだろうな。流石にこんな場所に少女一人で生き残れるわけないだろうしな。
「そうか。そこに案内してもらってもいいか?俺は生存者を探していてな」
「うん、わかった。でも一度聞いてみないと……」
やっぱそれだけ用心しているのか。
「まぁいいや。一度行ってみてから考えればいい。案内してくれ」
「は、はい!」
次回。凄い懐かしい人たちが登場しますよ?




