77.新たな騒動の影
今回から新章が始まります
今のところまだ新章の名前が決まってないので第六章ということで
決まり次第変更しておきます
戦場から走って帰ってきた俺たちは現在目の前の状況にちょっと思考が停止していた。
「なんで?」
その場にいる誰もが答えを知っていないと分かっているのだが、問わずにはいられなかったのだ。
だって、王都にあの腐敗した奴らがいるなんて。その腐敗した奴らが暴れているなんて。
なんであいつらがいるのかよくわからなかったがとにかく放っておくわけにもいかないので一掃させてもらった。
あの巨人に比べてただ腐敗してちょっと強くなったぐらいの人類が俺達に敵うわけもなく数分で全て塵と化した。
その後王都に残った兵士から事情を聴くことに。
聴取をした兵士が言うに暴れだしたのはクルドに加担していた一派らしい。
そういえば戦場で暴れだしたのもクルドと繋がっていた奴だったような。
人族軍のほうで暴れだした奴は協会の人間だけで、それが何か関係するのかもしれない。
まぁもう全員死んでしまったので詳しいことも調べられなくなってしまったが。
てか魔国の王都でこれだと王国の方はそれ以上にやばそうだな。
こっちはあらかじめ大体のクルドはを拘束できていたからまだ被害は少なかった。
でも王都にはまだ教会の連中がのさばっているはずだ。
王国のあちこちであの腐ったやつらが暴れるんだろう?
大変だなぁ。
そんなこんなでアナたちが帰ってくるまで俺たちはだらだらと過ごさせてもらった。
それから二日後、ようやくアナたちが帰ってきた。
「ただいま帰りました、姫様」
「おかえり、アナ」
「姫様、こちら人族軍の総司令官をしていたデニス・ヴィルソンです」
「貴女が、魔王か」
「あぁ、私が今代の魔王エマ・S・ハイアットだ。貴殿はアナの話を聞いてくれたらしいな」
「あの状況ではあれしか方法がなかったからな。それに俺自身の目で見た結果、そこのアナは信じるに値する人間だ。上の連中よりよっぽど信用できる」
さっぱりした男だ。こういうところが信用できる。ボリボリ。少々適当な場面もあるが、ガリボリ。逆に表裏の無い自分の性格を露わにしているのだ。そういうところも信用できる証拠だ。ガリボリ。
「それで聞いておきたいんだが……そこの、さっきから煎餅を食っている奴らは、もしかしてあれか?」
「ん?」
ガリボリ。もしかして俺らのことだろうか。
「その黒いボロボロのローブ。それに特徴的な白髪の狐人に漆黒の全身鎧。確実にあの巨人と戦ったよくわからん連中だよな?」
「彼らは、その……なんといっていいのだろうか。どうしようクロ殿?」
「協力者じゃないか?」
「ん~……協力者だと対等すぎるのではないだろうか?」
「別にそれでいいんじゃないのか?」
「いや、クロ殿と対等というのはちょっと……ありえないだろう」
「そうか?まぁ別にどうでもいいだろう」
「いや、できれば関係は明確にしてくれないか。俺の目で見てもあんたが図り切れない。正直言って俺はあんたが怖いね。あんな化け物を一瞬で消し飛ばすとか」
まぁそうなるよな。表面上は落ち着いてはいるが内心恐怖で埋め尽くされているのだろう。瞳の底がわずかに揺れている。怯える者がする目だ。
「安心しろ。俺たちと敵対しない限り手は出さない。まぁもし敵対するっていうなら……覚悟しろよ?一瞬でこの世とおさらばさせてやるから」
「全く安心できないが、なんとなくあんたのことがよくわかったよ」
あれだな、異常者っていう奴だな。と小声で呟いているが聞こえてるからな?
「その、クロ殿、でいいのか?」
「クロで構わないぞ」
「だったらクロと呼ばせてもらう。クロは魔国に所属しているということでいいのか?」
「いや、所属しているわけではない。今回魔人族の手助けをしたのはただそういう気分だっただけだ」
「気分って」
仕方ないだろ。そういう気分だったのだから。
「それより、あーデニスって呼んでもいいか?」
「あぁ、構わない」
「言い忘れてたが、多分今頃王国やばいことになってるぞ?」
「は?」
「今回の戦争で現れたあの腐ったやつらだが、こちらの王都でもその腐ったやつらが現れてた」
「腐ったやつら、腐人のことか……って!?まて、それはどういうことだ?」
「あの巨人が叫んだとき、こちらでも同じくその腐人?が現れたようだ。ここで現れたのなら、そっちの王都でも現れていると思うぞ。多分協会の連中は枷も何もつけてないんだろう?こっちは戦争前に片づけていたからそこまで被害も出なかったが、そっちはどうなっているだろうな?」
「…………いますぐ戻ろう」
「そうか」
まぁ俺には関係ないか。まだ王国に戻る気はないからな。
まぁ心変わりするような何かがあれば、向かうかもしれないが。
今のところ向かう気はないな。
「魔王、向こうでの騒動を片付け次第使者を送る」
「了解した。こちらも戦後処理が済み次第、そちらに援軍を向かわせようか?」
「いいのか?」
「これから共生関係になる相手を助けることを渋るわけがない」
「ありがたい。ではこれで」
そういってデニスは部屋を出ていく。
さて、ここでのやることはもうないし、次はどこに行こうかな。