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イジメられていた最強ですが何か?  作者: 千弥 瀧
第5章 人魔戦争編
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70.諦めない

 クロのもとから離れた私たちはものの数十秒で巨人のもとにたどり着いた。

 今の私たちのステータスだったら軽く走るだけで数キロを数十秒で踏破できるようになってしまった。

 順調に人外へと近づいていけていることに嬉しく思う。まだクロには遠く及ばないけどいつかはクロの隣に並んで見せる。


 そのためにまずはあの腐った巨人をどうにかできるようにならねば。

 私の糧になってもらうよ。


「ゼロが盾、私が攻撃、ミサキが後衛」


「わ、私は何をすればいいのだ……?」


「そう、だね。エマは遊撃」


 エマは役割に縛られない方がよく動ける。だからエマには自分が攻撃したいときにして守りたいときに守る。

 それに私たちが合わせる。


「戦いの余波で両軍から被害を出さないようにしないといけないから、ちょっと面倒くさいね」


「まずはミサキの魔法で両軍を避難にさせるように誘導してみてはどうだ?」


「それが、いい」


 この中で一番魔法が使えるのはミサキだ。私たちも使えないことはないが、両軍に被害を出さない様に細かな制御をするのはミサキにしかできない。


「じゃぁ行くよ………『業火の渦』」


「ガァァッァァアアアアアッッ!!」


 ミサキが一言、そうつぶやくと一瞬にして巨人が地から昇る炎の渦に飲み込まれる。

 巨人を飲み込む炎の渦は途轍もない熱量を放ち500m近く離れた私たちの皮膚をじりじりと焼く。


 十分離れた私達にもこれだけの熱量を当てるのだ。もっと近い人族軍や魔人族軍はさらに酷いことになっているだろう。

 これなら避難させる目的も達成できるだろう。


「ん、みんな逃げてる」


「これで十分戦えるな」


「う、流石ミサキ殿。魔法の威力が桁違いだ」


「それにしても堅いねあの巨人。私の魔法、自分で言うのもなんだけどかなり強力だったと思うんだけど」


 確かに。皮膚が少しドロドロになって更に気持ち悪さに磨きがかかっているけど、あまりダメージはなさそう。


「じゃ、我から行くぞ」


「ん、あとに続く」


「頑張ってー。私はちょくちょくサポート入れるから」


「わ、私も私なりに頑張ってみる」


「ん」


 黒い残像を残しながら駆けるゼロの後ろを疾る。

 500m程度ならば刹那の時に駆けることができる。


 そして駆ける勢いに任せて巨人を斬りつける。

 私の獲物は短剣だが、今の上がったステータスならば振り抜く衝撃だけで深い傷をつけることができる。


 それは今まで人族軍や魔人族軍がつけてきた傷の何倍も深いダメージを負わせることができた。

 まぁそれでも巨人にとっては浅い傷。


(これじゃダメ。もっと、もっと強く速く)


 私が攻撃する間も巨人が岩を投げつけたり、殴り掛かってきたりするが、そのすべてをゼロが捌いてくれる。だから私は気にせず攻撃に集中する。


 時々飛んでくるミサキの魔法も私の動きを阻害することなく、絶妙なタイミングで支援してくれる。巨人の荒々しい動きに地面が割れ、態勢を崩しそうになれば風を圧縮した足場を作り、ゼロの守りを抜いた巨人の攻撃を受け流し、少しずつ巨人にダメージも与えている。


 流石ミサキ。クロの幼馴染は伊達じゃない。

 魔法の制御が並外れている。

 私じゃこうはいかない。というかこの世界の誰も勝てないのではないだろうか。


 エマも凄い。私が攻撃するときは距離を取り、ゼロが巨人の攻撃を防いだ隙にダメージを与え、ミサキが放つ魔法に合わせ自分の攻撃力を上げている。


 あんな自由な戦い方は私じゃできない。全てを掌握して戦うその様はまさに魔王。


 私たちの戦いを遠くから眺める両軍から唖然とした雰囲気が伝わってくる。特に人族軍の一部から。

 あれは勇者たちだろう。ミサキのもとの仲間。その中に一際強い歪んだ感情を感じる。


 今は無視だ。

 ゆっくりとではあるが巨人の動きが繊細になってきている。早く重く繊細な動きになり始めた巨人に引き離されそうになる。

 攻撃が通じなくなりだす。ゼロの守りを抜いて、ミサキの魔法を強引に跳ねのけ、私に攻撃を当て始める。

 私自身は打たれずらくなく、巨人の一撃にかなりのダメージを受けてしまう。


 このままいけばすぐに私たちは相手にされなくなるだろう。巨人の攻撃をモロに喰らい、戦えなくなった私たちの代わりにクロが出てきてあっという間にあの腐った巨人を倒してくれるだろう。


 いつものように。

 今までと同じように。

 これまでと同じように。


 私は、私たちはまたクロにすべてを任せて、助けてもらう。


 初めて出会ったとき、街で私は救われた。クロが白髪を影で覆って、私を救ってくれた。

 ミーシャやジンと一緒に冒険者をしていた時、クロに私たちは救われた。出会って間もない私たちを、戦えるようにしてくれた。サイクロプスに遭遇して、殺されそうになった時、クロが助けてくれた。

 滅びの領域で封印されていたロベリアがクロに助けられた。負の感情に支配されていたロベリアをクロが助けてくれた。

 魔物の群れに押しつぶされそうになっていたヒモトの町をクロが一人で助けてくれた。

 クルド一派に殺されそうになっていたエマたちをクロが救ってくれた。クルドを殺した理由はエマたちにはないけど、結果的には同じことだ。

 アブートでも母娘をクロが救っていた。組織を潰すことでさらに多くの魔人族を救っていた。

 今回も魔人族を救い結果的には人族軍も救っている。


 ずっとずっと、皆クロに救ってもらっているのだ。

 クロはみんなを救っている。まぁ救っているなんて自覚していないのかもしれないけど、救っていることには変わりはない。

 クロはみんなを救う。じゃぁクロを救うのは誰?

 今までクロを救ってあげた人はいるの?

 私の知る限りじゃ誰もいない。


 クロはずっと独りぼっちだ。

 誰もクロの孤独感を救って上げれていない。

 だったらクロはずっと孤独なままなの?


 そんなの嫌だ!

 このままじゃずっとクロは独りぼっちだ。


 誰かが人外の域に達して、クロの隣に並ばなければならない。

 今のところロベリアが一番クロに近い。でも一番は私がいい。

 だからここで諦めるわけにはいかない。


 あの巨人を斃して、人外になる。

 クロの隣に並んで見せる。


 絶対あきらめない!

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