69.参戦
あの巨人のステータスが段々と上がりだしている。
もともとステータスが高すぎて人族軍も魔人族軍も手こずっていたというのに、更に地力の差が開き今や戦場は地獄絵図となっている。
両軍ともにいまだ戦えているものはおらず、立っているだけでも精一杯という感じだ。
「これはもうだめだな」
ステータスの差がすでに連携や数の差で埋められないほど開いている。
「あ、また、一人、飛んで行った」
「どうするのじゃクロ?このままじゃと皆殺しにされるぞ?」
「そ、それは困るっ!は、早くアナたちを助けなくてはっ」
「一人で突っ走っちゃだめだよエマ。行くなら私たちも一緒に」
「そうだな。まだステータス的にはお前らだけでも相手できるだろう」
今のステータスは大体2000弱。
スズたちが力を合わせればまだ戦えなくはない。
「それに、鍛えるのにも、丁度、いい」
「んじゃ行ってこい。倒しきれなかったとしてもどうとでもなるから」
こいつが完全状態になったとしても俺のステータスより断然低い。
本当は俺がちゃっちゃと倒してもいいんだが、こういう場は生かさないと。
スズたちはもう普通に鍛錬しても意味ないからな。
「ん」
「よしっ、がんばろぉ」
「妾はクロと見学じゃな。妾が混ざったらすぐ終わってしまうからのう」
「わ、私も行った方がいいのか?」
「当たり前だろ。エマも行ってこい」
「うぅ……。あんな気持ち悪いのと戦うのか」
まぁ、わからないでもない。肌は変色して所々腐ってて、骨が露出している個所もあるし。
「それにしてもスズと美咲。躊躇いもせずあいつと戦おうとしたな。あんな気持ち悪いの相手に。普通の女の子らしい思考じゃないよな」
美咲は元々躊躇いがないとこがあったが、出会ったころのスズはもうちょっと女の子らしかった。
「なっ、ち、ちがう、のっ!これは……」
「クロ君のためなら火の中水の中戦場の中だよっ」
「ちょっと美咲の愛は重過ぎるぞ」
俺でも少し引くぐらいだ。
まぁ思われて悪い気持ちはしないが。
「我も混ざろう。このまま置いて行かれてはたまらんからな」
「ゼロもがんばれよ。最近追いつかれてきてるからな」
「行って、くる」
そう言ってスズたちは自分の獲物を握って行ってしまう。
さて、あれ相手にどれだけ頑張れるだろうか。
「なぁロベリア」
「なんじゃ?」
「どれくらい持つと思う?」
「そうじゃなぁ。頑張って1時間かのう」
「そんなに持つか?」
「クロはどう思うのじゃ?」
「……30分かなぁ」
「随分と短いな」
まぁスズたちも強くなったからな。強くなった。本当に強くなった。
だが、
「まだまだ人外には程遠いからな」
あれを倒すなら人の内では無理だろう。
人をやめ、化け物と呼ばれ、異常と自他共に認められる。
その域に足せねば、あの巨人には勝てない。
俺にも届かない。
「ではかけてみるか?」
「かけ?何を掛けるんだ?」
「そうじゃなぁ。だったら負けたほうが勝った者の言うことを聞く。でどうじゃ?」
「まぁいいけど。どういう判定で決めるんだ?」
「戦いが終わった時間が近い方の勝ちでいいじゃろ。もし中間の45分であったのならば……」
「両方の願いを少し叶える。でどうだ?」
「おぉ、それでいいじゃろう」
楽しみじゃなぁ。そういうロベリアの隣に腰を下ろし、観戦に徹する。
「どれだけ持つかなぁ」




