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イジメられていた最強ですが何か?  作者: 千弥 瀧
第5章 人魔戦争編
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65.五十嵐汰一

 魔人族。

 俺の中での魔人族とは魔物の上位互換(・・・・・・・)

 少しばかりの知能を持ち力の強い魔物とばかりに思い込んでいたのだが、魔大陸に来て魔人族と対立してようやく俺たちがしようとしていることに気が付いた。

 

 魔人族は、魔物の上位版ではない。少し違う場所もあるが、人間だった。

 俺たちがしようとしていることは、人間同士の戦争だ。


「あ、あれが魔人族なのかよ」


「嘘……。ほとんど人間じゃない」


「俺たち今から彼奴らを殺さなきゃいけないのかよ……」


「人…殺し……」


 ほかの皆も本当の魔人族の姿を知らなかったようだ。皆魔人族を見て今からすることに怯えている。


 今から取りやめることはできないのだろうか。どうにかこの戦争を取りやめられないかを考えるが、やはりなにも思いつかない。


「殺らないと、いけないのかっ」


 この手で、人を……。

 想像するだけで体が震えてくる。吐き気がしてくる。だめだ。聖剣を握ろうとするが、力が入らない。

 

 ブゥゥゥウウウゥゥゥ


 ほら貝の音が響き渡る。


「開戦の、合図だ」


「くそっ、ここまで来たら引き返せねぇぞ!」


「でも、人殺しだよっ!?」


「むり、ムリだよっ」


 っ。皆が取り乱し始めた。このままじゃいけない。


「みんな、落ち着いーー」


 ウラ"ァァァアアアアアッッッ!


「な、何の音だ!?」


「くっ、うるさい!」


 なんなんだよ、この不快音。なにかの、雄叫びか?


 ゴゴゴゴゴッ。


 その雄叫びがやんだと思ったら今度は地鳴りだ。


「いったい何が来るっていうんだ」


「お。おいあれ!」


「あれ?」


 何か発見した奴の視線を追ってみると、丁度魔人軍と自軍の中心が盛り上がっていた。

 自軍からも魔人軍からもどよめきが伝わってくる。

 その地面を盛り上げているやつが段々と姿を現してきた。

 それは巨大な人型で所々腐ったり変色したりと気持ちの悪い見た目をしていた。地面から生えた上半身だけで20mはありそうだ。下半身も含めると40m近くありそうだ。


「なんなんだよあれ」


「あれ、魔人族の仲間か?」


「いや、違うだろ。魔人族もあれ見て驚いてるみたいだし」


 じゃぁ何なんだ。そんな話をしていると腐った巨人が動き出す。巨大な体は下半身が地面に埋まっていることから動けないのだろう。近くの地面を掻きむしり握った土を俺たちに向かって振りかぶる。


「魔法師隊!防御魔法用意!」


「っ、みんなやるぞ!」


「お、おう」


 今回の軍の総指揮官デニスさんの言葉にハッとなり、今自分たちが使える防御魔法を発動する。

 自軍全体を防御魔法が覆うと同時に巨人が投擲した土塊や岩が飛んでくる。ただそれだけの攻撃で防御魔法がきしむ。壊れはしなかったが生身でそれをくらえば重傷は逃れられないだろう。


「正体不明の巨人を敵と認定!作戦変更、魔王軍の前にこいつをどうにかするぞ!」


 どうにかするって、どうやって。


「汰一殿たちは、最初の作戦通り遊撃部隊として攻撃を」


「わ、わかりました」


 とりあえず、奴を倒さなければ。奴は確実にこちらに対して敵対している。あんな化け物と戦うなど避けたいが、しかたない。


「人間同士で戦うよりは、全然マシだ。なぁ!やるぞっ」


「お、おうっ」


「わかったわ!」


 俺たちの戦争での役割は遊撃。ほかに兵隊たちとの連携などできないので勇者内で数人のグループを作り戦場をかき乱す。しかし今回の敵は一体。戦場をかき乱す必要もない。


 さぁ、行くか。


 そう思っているとまたもや巨人が叫びだす。


 ギャエエェェヤァァァ!


「くぅっ」


 今回の叫びは先ほどまでの雄たけびと何か違う。何か、力が乗っているような感じがした。

 ゾワッと鳥肌が立つ。


「な、なんだよ今のは………」


「イギャァァァアアアッッ!」


「くそっ、今度は何だよ!」


 まるで巨人の叫びに呼応するように自軍と魔軍の兵士から叫び声が上がる。


「あれは、協会の魔術師か!?」


「ひっ、あの人たち、目が……」


 なぜか頭を抱え叫びだす協会の魔術師や騎士。その目が段々と真っ黒に染まりだし、体の一部分が変色したり腐敗しだす。まるであの気持ちの悪い巨人のように。


「アガァァァァガガガガギャイヤァァッ」


「い、いや、やめてくれ!なんでだよっ、仲間だろうがぁ」


「な、俺だよっ!やめろって!」


「グガァァアア!」


 その魔術師たちが突然近くの兵隊に襲い掛かる。


「くそっ。どうなってるんだよ!デニスさん、どうするんですか!」


「っ、仕方ない!この緊急時にかまっている余裕はない!即座に切り捨てろっ」


「なっ!」


 当然俺たちに向かって襲い掛かる兵隊たちを捌きながらデニスさんに指示を仰ぐ。

 しかしそれは非情なものだった。


「この人たちを、殺すのか?」


 ついさっきまで生きていた人たちを、斬る。


「無理だっ。人だったものを、斬るなんて……。もしかしたら、助けられるかもしれないのに……」


 人を斬るのは嫌だ。でも斬らねば逆にやられる。斬らなきゃ、いや、だめだっ。だったら、助ける方法は……、どこかに。


 どうすれば………。

 

同時投稿中の無影の魔王

よろしければ見ていってください

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