61.開戦前2
久しぶりのエマの二重人格設定が出ますよ
少ししか出ないけど書いてるだけで癒されるなぁ
ヒモトの南端に存在する港町ミズト。そこに異世界勇者23名と王国兵軍が集っていた。数が数なもので町の壁外にはいくつものテントが張られ野営地として使われている。兵は総数約2万5千人。町の外を埋め尽くすテントを空から見と緑色の絨毯が敷かれているように見えるだろう。それ程の密度と量があるのだ。
普通他国の軍隊が自国の町に大挙して進軍すればそれなりの対応というものがあるのだが、今回はそうも言ってられない件なのだ。
魔人族との戦争。
魔国から一番近い位置に存在するヒモトは他の国より被害が多い。時折やってくる魔人族にいくつもの村や小さな町を潰された。現状はまだ村や小さな町だけで国にとって主要な都市には影響はない、が国の大切な人命が失われているのだ。このまま防御に徹していてもいつか防御力が下がり守りを抜かれてしまうだろう。
攻めようともヒモトには魔国に勝てるような軍事力はない。だから軍事力もあり異世界から勇者を召喚したという王国に任せることにしたのだ。魔国に対応できる国は今は王国だけ。
王国は勇者を召喚する前からも大陸一の大国で魔国と戦える軍事力を持つ王国を凌ぐ軍事力を持つ国はない。よって自動的に魔国と戦うのは王国となる。そんな王国を拒むことなどできるわけもない。自分を助けてくれる奴を拒んで助けてもらえなければ自分が困るだけだからだ。
まぁそういうことで今このミズトは王国の軍隊と勇者来訪で大いに賑わっていた。
「おぉ!勇者の兄ちゃん姉ちゃんじゃねぇか!これ持ってってくれよ、ジィジィ鳥の串焼き。めっちゃうまいから!兄ちゃん達には期待してるからな!」
「あ、ありがとうございます」
勇者五十嵐、神崎、北上はミズトについて町を散策していた。町の中には王国兵と勇者と町の住人で溢れかえって祭り状態だ。
町の皆は勇者に期待しておりこうやって歩くだけで住人から物を貢いでくるのだ。今日だけでジィジィ鳥の串焼きにババ鳥のから揚げ、フライドムッシュというフライドポテトの様なものに、バコナッツルというバナナとココナッツとパイナップルを合わせたような果物ののトロピカルジュース他様々な者をタダでもらっている。
「すごい賑わいようだな」
「そうね。日本のお祭りみたい」
「懐かしいなぁ。あぁ、はしまき食いたくなってきた」
「宗二は昔からはしまき好きだよなぁ」
「あれ美味いじゃん。あ、でもたこ焼きもうまいよなぁ」
「たこ焼き……、そういや美咲も好きだったなぁ……」
「汰一……」
あの時、ヒモトの首都で出会った井鷹悠二。日本にいたころと比べると豹変した彼奴。奴は唐突に現れ美咲を奪っていった。あいつが、あいつが奪った!あいつがぁ……。
「汰一?どうしたの?」
「へっ?何かあったのか?」
「なんか怖い表情してたから……、もしかしてあの時のこと………」
「?あ、あぁ。大丈夫だよ」
「おい!何やってんだよ。これ見てみろよ、はしまきに似てないか!?」
「ふっ、はしゃぎすぎだよ宗二」
正直美咲のことは心配だ。あの井鷹は今までの大人しい井鷹とは全く違っていた。日本では何もしていなかったがここではどうかわからない。もしかしたら彼奴が美咲を襲っているかもしれない。そうだ。あいつが、あいつが美咲を……、俺の美咲を、あいつが、あの野郎が!
「何ぼーっとしてんだ汰一?早く行こうぜ」
「おい、ちょっとぐらい待ってくれよ」
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
魔王城にある応接室。そこにクロ達一行は集まっていた。
もちろんエマの従者でもあるアナも一緒だ。
「ひ、姫様ぁぁああ!ご無事ですか!?ケガなどはしていませんか!?」
「姫?アナ呼び方変なの」
「へ?あ、あぁ。今はロリモードでしたか……」
「ろり?」
「大人びたエマは疲れたといって子エマと変わったぞ」
「まぁ仕方ないだろ。つい数日前までまぁまぁ戦えるだけの魔王だったのだからな」
エマは町の中や眠るときなどでは子エマと入れ替わっていた。やはり入れ替わってる間身体的ではなく精神的な疲労がたまっていくのだろう。だが迷宮の中で子エマと変われるはずもなく常に気を張った状態で数日を過ごしていたのだ。しかもそこは世界最強とも最恐とも呼ばれる大迷宮。いつもとの疲労じゃ桁が違うだろう。ちょっとぐらい休憩させても構わないだろう。
「まぁ、とりあえず。おかえりなさい、エマ」
「ただいまなのアナ!聞いてほしいの!お兄ちゃんたちとのお出かけすごく楽しかったの!眠ってる間にどんどん町が変わって行って、すごく不思議で面白かったの!」
「そ、そうなんだ。良かったねエマ」
「うんっ」
ん~。ここだけ見てると仲の良い姉妹に見えるな。
「さ、エマ。もう今日は遅いし。お休みしましょうね」
「え~、もっとお兄ちゃんたちと遊びたいの!」
「エマ、今日大人しく寝れば明日いっぱい遊んでやるから。ゆっくり休め」
「ホント?明日一緒に遊んでくれるの?」
「あぁ」
「いっぱいいっぱい遊んでくれるの?」
「遊んでやるさ」
クロがそう言うと子エマは元気よく「うんっ」と返事してアナを引っ張っていった。部屋を出ていくとき入口の近くにいたクロとすれ違いざまに「寝かしつけてきますので少々お待ちを」と呟いていったので部屋でスズたちと雑談しながら待つことにした。
~十数分後~
エマを寝かしつけてきたアナが応接室へと戻ってきた。
「では今回の経緯をお話しいたします」




