59.勇者たち
短いけど
章初めだから許してください!
遅れたし短かったしですが読んでいってくれると嬉しいです
王国首都中心にある巨大な建物、王城の食堂に17、18歳ほどの23人の男女がそれぞれグループを作って雑談していた。召喚された勇者たちだ。その雰囲気はあまりよくない。
「なぁ、戦争になるって聞いたけど……本当なのかよ?」
「しらねぇよ」
「私たち戦わないといけないのかな……?」
「どうなるのぉ……」
その各々のグループが話す内容はだいたい一致している。それは人と魔人族の戦争について。巷では人魔戦争と呼ばれている。
魔人族の進行が激しく衝突するのはそう遠くないという話を昨日イウランから聞いているのだ。この世界に来た時から魔族と戦争になるという話を聞いていたのだが、この時になるまでは他人事のように捉えていたため勇者たちは戦争をするという覚悟ができていないのだ。
「魔人族ってどんな奴らなんだ?」
「魔物みたいなのかな?」
今までやってきたことと言えば騎士団と協力して魔物退治ぐらいだ。魔人族についての勉強など考えたこともない。故に魔人族のことを知らない。外見が異なるだけでほとんど人間と同じだということも。これから自分たちが人殺しを強要されるということを。
突然この世界に連れてこられ魔王を殺してくれと頼まれあれよあれよとしている間に、持ったことも使ったこともない武器を使わせられ戦闘を経験させられ魔物殺しをさせられ。そのせいで勇者たちはこの世界をゲームのように感じていた。そうでもなければ召喚されるまで普通の高校生だった奴らがそう簡単に生き物を殺せるはずがないのだ。まぁクロは別だが。あれを普通の高校生と呼ぶにはクロの過去は異常なのだ。
「あーあ。俺らどうなっちまうんだろうな?」
「五十嵐の奴も遠征から帰ってきてからなんか怖いし」
「聞いた?五十嵐君や薫ちゃんたち遠征先で井鷹の奴にあったんだって」
「聞いた聞いた。美咲ちゃんが帰ってこなかったのは井鷹の奴が無理矢理連れて行ったって聞いた」
「は?なんだよそれ!」
ギリッ。
その集団から外れた食堂の隅。そこに居座る三人の男。その一人から鈍い歯軋りの音が響く。
「く、倉山……」
「い、井鷹がぁ?山城さんを連れて行った、だぁ?……クソガァ」
「お、落ち着けよ」
(落ち着けだぁ?ふざけんなっ!あの屑、いつか舐めたことできない様にボコボコにしてやる!)
倉山進藤。地球にいたころにクロをイジメていたリーダー格。この世界でも同じように自分が上位だと思っている倉山だが……、彼は知らない。イジメていた奴がこの世界にやってきて最強になったことを。
彼の最後が近づいてきていることを。
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「クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソガアッ!
絶対殺してやる……!!殺してやるぞ、井鷹ぁぁぁああ”あ”!!」
暗い部屋の中。醜い憎悪を滾らせる一人の男。狂喜に染まったその瞳が闇の中でただ光る。




