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52.迷宮第120層

遅れてすみません

 ついに相手も本気になってくれたようだ。手加減している相手と殺しあっても楽しくないもんなぁ。


 相手の懐に一気に踏み込む。大気が割れるような破裂音と共に急に押し出された空気が暴風となって偽物に襲い掛かる。まぁ偽物にはそんなもの効いていないが。


「ふっっ!」


 相手の溝内に掌底を打ち込む。しかし左手で逸らされる。そのまま右手で殴り掛かってくる。かなり早いがその格好はどこか不格好。

 俺の体になれていないのだろう。これじゃないかもな(・・・・・・・・・)


「やっ、はっ、りゃっ」


 偽物が連続で攻撃を仕掛けてくる。しかし一つも掠ることはない。偽物が殴ってきたのを避けカウンターを放つ。


「うっ」


 俺のカウンターを無理な体制で受けたせいで脚を縺らせ尻餅をつく。


「……」


 俺はそれを冷めた目で見る。


 こけた偽物の顔を蹴り上げる。


「ぐっ」


 尻餅をついた状態では素早く動くこともできない。ぎりぎり腕で防げたようだが衝撃を受け流せずうめき声をあげながら吹き飛ぶ。


「かはっ!」


 壁にぶつかり肺の中にあった空気がすべて出てしまったのだろう。四つん這いになり咽吐く様にに空気を求めていたその後頭部に踵落としを食らわせる。


「ーーーーーーっ!!!」


 顔面から地面に叩きつけられ声にならない悲鳴を上げながら、地面をのたうち回る。鼻血が飛び散りあたりが鮮血に染まるが、気にせずのたうち回る偽物の腹を踏みつけ動きを止める。


「うぐっ」


 腹を強く踏みつけられたせいで内臓が破裂したのか。偽物の口から大量の血が噴き出てくる。俺の体に偽物が噴き出した血が付いた。


「汚ねぇ」


 顔を蹴りつけ足を握って壁に向けて振り投げる。投げられているというのに偽物は抵抗らしい抵抗をせずうめき声をあげるだけ。

 偽物は壁を突き破りさらに奥へ飛んでいく。壁の奥に驚愕の表情を浮かべる二人のエマがいるが気にせず飛んで行った偽物を追いかける。


 偽物はさらにもう一つの壁を突き抜けた先で横たわっていた。今度はゼロの部屋だったようだ。まぁこれも気にしない。とにかく敵を求める。


 その敵たりえるかもしれない偽物は依然横たわるまま。イラっとして腹を蹴りつける。うっ、っとうめき声をあげ偽物は瞬時に逃げる。まだ動けるか。


 逃げる偽物の背中にドロップキックをすると派手にこける。すぐ起き上がり偽物を見つめる俺を見てひぃっ、っと悲鳴を上げまた背を見せ逃げる。イラっとした。人の顔見て悲鳴とか失礼だよな?だから逃げようとする偽物の襟をつかみ顔面に一発くらわせる。それでもまだ怯えの色が見える目を見てさらに殴る。


「イガぁっ、や、やべでぇっ」


 何なんだこいつは?殺し合ってるのにやめるわけないだろ。さっさと殺しに来いよ。俺はまた偽物を冷めた目で見る。やっぱり違うのか(・・・・・・・・)


「殺しに来いよっ。お前なら俺を殺すことができるだろ!?早くかかってこいや!」


「む、ムリだぁっ」


 そんな弱音を上げる偽物の顔を殴る。偽物は悲鳴を上げるだけ。

 腹をける殴る、顔を殴る蹴る叩きつける、腕を折る、指を引き抜く、足を折る、鼻をつぶす、膝を粉々にする。どんなに偽物を痛めつけても悲鳴を上げるだけ。最後には悲鳴すらも上げなくなったけど。


 目の前には偽物だったもののなれの果て。やはりこれは違った(・・・・・・)。こんな仮初の力を持つ奴じゃ殺し合える敵になりえなかった。初めからわかっていた。でも俺を殺せる力を持つ偽物を見つけてテンションが上がってしまった。これじゃだめだ。もっと強い相手が、俺を殺すことができるような。そんな相手が。


 また探さなきゃ。


「はぁ。つまらん」


 俺はそうつぶやき後ろでこちらを見る二人と二人の偽物のほうに振り向く。

 ゼロは鎧だから表情は見えないがあきれたような、エマはこっちを見ないようにぎゅっと目を閉じ耳をふさぎしゃがみこんでいた。その二人の偽物はこちらを悪魔でも見るようなまなざしで見てくる。イラっとした。だからボコった。これも違うな(・・・・・・)


「ゼロ、エマ。ほかの三人を探しに行くか」


「全く、主は怖いな」


 ゼロはそう笑っていった。俺はいまだしゃがみ込むエマを抱えて次の部屋を目指す。


 次はもっと強いやつがいいなぁ。

クロの狂気

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