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39.アブート騒動5

(なんなんだなんなんだ!あいつはなんなんだ!まだガキの魔人族だろ⁉︎なんで俺たちがゴミのようにやられてるんだ!)


頭は困惑していた。ただの10歳前後の少女に自分たちが蹂躙されていることに。


「ハハハッ。いい表情だ。もっと喚け」


そう言うのは少女から少し離れたとこに立っている男。なんでも少女の親を買うお金を出すと言っていた身元不明の男。その男は今とても楽しそうに笑っていた。


悪魔のように口と目を歪め嗤っている男。


(あ、悪魔なんて甘優しいもんじゃねぇ。魔王だ。俺たちは魔王に手を出しちまったんだ!)


「い、嫌だ。まだ死にたくねぇぇ!」


頭は男の恐ろしさに尻餅をつきながら倉庫から逃げ出す。


「か、頭ぁぁぁ!俺たちをおいて行くんすかぁぁぁ!」


「てメェらのことなんか知るかぁ!俺はまだ死にたくねぇ!」


「こんのっ、クソやろぉぉガァァァァア!」


「ハハハハハハハハッ」


頭は部下の怨念のこもった叫び声と男の高笑いを背に逃げ出す。



頭は暗い街の中を走った。あの魔王から逃げるために。


頭の中に流れるあの笑い声と顔。あれを思い出すだけで身が震える。


「嫌だ…。死にたくねぇ……」


頭はその一心でアジトまで走る。



ようやくアジトについた。休憩なしで走り続けたため頭は全身から滝のように汗をかいていた。

アジトの中に入るがなんだか凄く静かに感じる。何時もはバカみたいな笑い声が聞こえたり怒鳴り声が聞こえたり騒がしかったのに。


嫌な予感がしアジトの中を徘徊する。部下の仕事部屋。部下の休憩所。台所。風呂場。庭。自分の仕事部屋。そして私室。


全てを見て回った。なのに誰一人、小さな生き物の気配すら感じない。


静寂。


頭の頬を冷や汗が伝う。


…………ふふっ。


「っ!………今何か聞こえたような…」


………………ふふふっ。


「やっぱりっ。出てこい!どこだぁ!どこに隠れている!」


ささっ。


「っ!」


背後で何か動く気配がしたがそこには何もない。


ささっ。


「くそがぁぁ!この卑怯者!隠れてないで出で来やがれ!」


トンっ


「うりゃぁぁ!」


肩を叩かれ振り向きざまに殴りかかる。だがその拳は空を切る。


ふぅ〜。


「ひっ。クソぉぉぉぉぉ!」


今度は耳に息を吹かれた。また殴りかかるが拳に触れるものはない。


あははっ。


「っ」


ふふっ。


「っ!」


ふぅ〜。


「ひっ」


トンっ。


「いいいっ!」


右側で笑い声が聞こえたら後ろでまた聞こえる。右耳に息を吹きかけられ左肩を叩かれる。


この空間に最低でも二人いるはずなのにその影は何処にもない。


血眼になって周りを見渡していると、


コツッ。

ひた。

ざりっ。

きゅっ。


4つの異なる足音がそれぞれ対角線上に聞こえる。


今頭がいるところは頭の私室だ。少し広いだけで何処にも隠れれるところなどない。

なのに四方から足音が聞こえる。


「あ、ああ、あぁぁぁあああぁ」


頭の言葉は恐怖によって何を言っているのかもすでにわからない。


誰もいないのに足音だけが部屋に響く。


「あぅ、あブブブブ……」


その恐怖に耐えきれず頭は泡を吹いて気絶した。

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