36.アブート騒動1
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「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」
月が登り暗くなった路地裏を見た目10歳ほどの少女が一人、息を荒げながら走っていた。
「お母さんっ。誰かっ、お母さんを助けてっ!」
少女は苦しそうに顔を歪めながらも助けを呼ぶ。
「っぐぅ!」
足が絡まり派手にこけてしまう。少女は涙を貯めつつもまた走り出す。大好きな母親を助けるために。
道の先が少し明るくなる。あれは大通りから漏れてくる光だ。
「人がいるっ。お願い誰か助けぶっ」
少女は大通りに飛び出て大声で助けを呼ぼうとした。だが飛び出した先にいた人にぶつかってしまった。
少女はぶつかってしまった人に目を向ける。そこには普通の人とはかけ離れた雰囲気を放つ黒尽くめの男。身なりに良い格好から貴族なのだろうか。
「ひっ。ごめんなさい!」
怒られる。そう思って縮こまりながら謝る。すると頭に柔らかい感触がする。それはゆっくりと髪をすくように撫でる。とても気持ちが良かった。
顔を上げると黒尽くめの男が頭を撫でていた。鋭く冷たい瞳の奥には何故か温かいものを感じる。ボケっとしながらその男を眺めていると隣に立っていた女の子が口を開く。
「安心してくれ。クロ殿は子供相手に酷いことはしない。それで先ほどの助けて、とはどう言うことなのだ?」
女の子の子供らしからぬ喋り方に少し呆けたがすぐにハッとなる。
「お母さんを、お母さんを助けて!」
「任せろ」
今度は女の子ではなく男の声。たった一言、聞いただけでこの人ならなんとかしてくれる。そう確信できた。
安心したのか少女の意識はそこで途絶えた。
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クロたちはアブートへやってきていた。昼頃についたため早めに宿を取り外食するために街を散策していた。なかなか面白いものがたくさんあり気がつけば夜になっていた。魔道具のおかげか大通りが明るく未だに賑わっている。
そんな時だった。突然少女が路地裏から飛び出してきたのだ。クロにかかればそれを避けることもできたが、そのまま少女が走り続ければちょうど近くをすれ違った馬車に轢かれショッキングな場面になっていた。だからわざとぶつかった。
少女はクロにぶつかる前に助けて、と叫んでいた。何か厄介な事に巻き込まれでもしたのか。少女は必死だった。話を聞けば母親を助けて欲しいそうだ。
クロは少女に「任せろ」と力強く言い聞かせる。すると少女は安心したのか眠ってしまった。
「クロ殿。良かったのか?この子の母親を助けることにして」
「別にそれぐらい構わない。この旅は急いでいるわけでもないからな。それにこんな小さな子が困っているんだ。助けないわけにはいかない」
そんなクロの言葉にエマは微笑みを浮かべる。
「クロは子供、好きだから、見逃せない」
「冷酷なクロの時々見せる優しさというのはグッとくるの!」
「あ!ロベリアもわかっちゃう?そこがすごくギャップっていうかいいんだよね!」
クロは騒ぐ美咲たちを無視し少女を抱きかかえる。
「今日は引き上げるぞ。宿でこの子を休ませたい」
「ありがとうクロ殿」
「何故お前が礼を言う」
「その子は私の国の民なのだ。それを救ってくれるのだから礼を言わねばならないだろう」
そんなことを真面目に言うエマにクロは苦笑を浮かべながら宿に向かってあるきだした。
このアブート騒動は少し続きます……多分
2、3話ぐらいで終わる……かな?いや終わる…と思います
多分、きっと




