3.旅前日
俺達が勇者召喚されてから一ヶ月経った。
あれからこの国についての事を教えてもらい訓練がスタートした。
俺以外の皆は勇者だからどんどん強くなていく。魔法も既に上級魔術師並みになったし剣の腕も今や
近衛騎士とギリギリ闘えるほど強くなっている。まだ訓練だけでレベルは上がってないが成長速度がハンパねぇと近衛騎士団団長が言ってた。
それに比べて俺はまぁ運動神経がいい方だから普通の兵にギリギリってとこ。
あとまだイジメは続いてる、と言うか逆に前より激しくなっている。最近は対人戦で訓練してるから暴力への躊躇いが無くなっきている。
もう1つの問題はあの魔法だ。あの魔法の事を俺的に調べたが説明通りで影を捕まえてちょっとの間相手を拘束する事しかできない。他の無属性魔法について調べたが普通は身体強化しかできないのだが、まれに特殊な魔法を持ってたりする。 例えば体の一部だけを変色する魔法だったり、右手をふにゃふにゃにできる魔法だったりといまいち使い方が分からない。多分俺の魔法も特殊で全然使えない分類に入るのだろう。まだ身体強化が使える方がマシだったよ…。
最近の俺の1日は、朝食を食べたあと昼までこの世界の知識を入れ込み、昼食を食べたあと全員で剣と魔法の訓練をし、終わったあとに倉山達に殴られヒールをかけられ傷を治し、夕食を食べて眠る。
最近はかなり痛みに慣れてきた。あいつらの暴力がどんどんエスカレートして最近じゃ魔法の的になることが多い。クラスメイトのほとんどは俺が殴られていることを知っているがどれほどの事をされてるか知らない。だからあいつらを止めてくれる奴はいない。美咲に話せば止めてくれるだろうがあいつらが逆ギレして俺を殺しかけない。それに男として女に泣きつきたくない。
そんなこんなで今日を乗り越えベッドに沈む。
「まさかナイフで手を刺されるとは…。このままだとやばいな、あいつら暴力に慣れたというか暴力に酔ってやがる。もうすこししたら手足の一本か二本切りおとされたりな…」
俺自身よく精神が持っていると思う。普通のやつならこの時点で狂人と化すだろう。だがまだ狂うわけにはいかない。なぜならもうすこしで自由が手に入るからだ。今順調に俺の雑魚さが王に伝わっているだろう。そしたらあの王のことだ、きっと使えない俺のことを追い出そうとするはずだ。その時に俺から「修行をして強くなりたいので旅に出る許可を下さい!」とでも言えばすぐにでも俺を旅に出させるだろう。
「ふふっ、異世界を自由に旅できるなんて最高じゃないか」
コンコン
俺が異世界の旅を妄想してると誰かが来たようだ。
「?はい誰でしょうか?」
「イタカ殿。国王様がお呼びだ」
王様の執事のルードさんだ。それに王が俺を呼ぶんだってことは多分追い出しの件だろう。俺は王と会うのは初めてだ。
「わかりました。すぐ行きます」
すぐに王と会えるようなすこし綺麗なものに着替え謁見の間に急ぐ。
「何のようだ」
謁見の間の扉には2人の警備がいて俺に用事を聞いてくる。
「国王様が自分をお呼びだと伺い参りました」
「そうか。すこし待て」
警備の1人はそう言い残し謁見の間に入っていく。
言われた通りすこし待つと扉が開き始める。
「来たか。巻き込まれた者。さっさと入れ」
初めて見た王は丸く太っていてテカテカしてる。
「はっ」
謁見の間はバスケットコートが2つぐらいはいりそうな大きさで、天井からはキラキラと光輝くシャンデリアがぶら下がっている。すごく豪勢だ。
「お主を呼んだのはお主のこれからのことで話すことがあるからだ」
「私もそのことについてお話があります」
「ほぅ、言ってみよ」
「はい。私はこれからもこの城で暮らしていいものかと思いまして、考えたのです。このままでは皆の足手まといになったり国王様方に迷惑をかけてしまいます。ですので私は旅に出ようと思います。そのお許しを貰いたいのです」
「旅か」
王はわざわざ自分から出て行くという言葉に楽がでいいと笑っている。
「はい。旅に出て修行をし強くなりたいのです」
はじめに決めていた旅に出る為それっぽい理由を言う。
「あぁ、構わんよ。だが旅に出るのならばいろいろ必要だろう。おい、武器庫に連れて行って武器を見繕ってやれ」
おぉ、武器までくれるのか。まぁ厄介払いができることで浮かれているのだろう。貰える者は貰っていこう。
「有難うございます。国王様」
「なに構わんさ。明日には旅の準備が済むようにしといてやる。今日はもう戻って良いぞ」
「はっ」
やったねゆうちゃん。この城から出れるぞ!
その日は武器と旅衣装と持っていく物を決めて明日に備えてベッドにつく。まぁわくわくして全然眠れなかったけどね。