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23.ロベリア

先ほどと同じように小さな拳が迫っている。だが、先ほどとは違う点がある。

先ほどまでは目でギリギリ追える速度だったのがとてもゆっくりに見えるのだ。


まぁそんな攻撃に当たるはずもなく歩いてスズの元に戻る。

歩いて、と言っても邪神の拳を上回る速度といえばその速さがわかるだろう。


「クロ!」


「なんだ?」


スズの隣に着くとスズに呼ばれたので返事をする。すると奇妙な声が帰ってきた。


「ふぁえっ⁉︎」


「なんだよその声、可愛いな」


「え?ク、ロ?なんで?さっきまで、あそこに、いたのに?え、なんで?」


相当混乱しているらしい。

ここでスズの混乱が解けるまで待ってもいいんだが相手が待ってくれないらしい。


「クケ?キキャキャクキャ。コロス!」


又もや邪神が飛びかかってきてその拳がクロの顔を狙う。が、その拳が顔に当たることはなかった。


「ケケ?キィィィィイ!コロシタイ!」


力を込めるもその拳がクロに触れることはない。何故、邪神は動けないのか。それはクロの足元から伸びる黒い紐のようなもののせいだった。


その黒い紐の正体は影。クロが影魔法をモデルに新たに作った(・・・・・・)クロの新たな力だ。クロがユニットからパーソンに変わった事でユニットだった頃持っていた力が使えなくなってしまった。だからチートを使った(自分で作った)


その力は殆ど影魔法と同じだ。影を操り物理化させる。違うところは影魔法の時は魔法で制限されていたとこが無制限になっただけ。それだけでもものすごく強くなっている。


その影によって捕らわれた邪神は腕どころか指一本動かすことができない。


クロは捕縛した邪神の額に人差し指を近づける。


「長い間あの水晶の中で悪意を当て続けるとか、酷いことするもんだ」


邪神の額からは赤黒く濃い紫色のもやのようなものが漏れ出てきた。その靄は段々と勢いを増し最終的にはダムの放水時の様な溢れ方をする。


靄が漏れていくたびに邪神は叫ぶ。多分身体中に激痛が走っているのだろう。


『ギギャァァァアァァァァァァ!イ"ガァア"アアア"グア"ッ!』


『「ああぁぁぁ!」ゴロズウゥゥゥゥ』


いままで人とは思えない声だったものから段々と人の理性が見え始めた。


「いあぁぁぁ!『ニグイニグイゴロズゥゥゥ!』やぁぁぁ!」


邪神の瞳の色は今まで青色と赤黒い色だったのが、透き通る様な碧と夕日の様に輝く紅い色に変わり始めた。


その頃になると靄のようなものは勢いを失い最後に大きく吐き出され止まった。

邪神はそれと同時に瞼を閉じ気絶した。クロはそれを受け止めながら靄の処理を始める。


「なんて濃く膨大な悪意だよ。こんなもん体の中に漏らさず留めるなんて凄いもんだ」


そう言いながら小さな寝息を上げる邪神に視線を落とす。


先ほどまで洞窟内を埋める程あった靄はクロの手元に集まり影によって作られた雫型の入れ物に詰められた。


その雫を懐にしまうと余った右手で邪神の頭を優しく撫でる。今までの苦労を労う(ねぎらう)ように優しいものだった。


が、そんな微笑ましい光景に不満を持つものが1人。


「クロ、他の女に、優しくする」


「え、ちょまてよスズ。こいつは今までずっと1人辛い思いしてたんだよ!だからさ?ちょっとぐらいねぎらってやろうと思ってな?」


「そう……それは本当に、ねぎらう、ため?それとも、その子が、可愛いから?」


「ほんとだって!本当に労うためにやったことだから!それに可愛いなんて思ってないからな!」


本来ならそこでスズの機嫌が少し良くなりハッピーエンド、となるとこだったが思わぬ乱入者によってハッピーエンドとはいかなくなってしまった。


「む、それは女としてはかなり傷つくな」


その乱入者とはスズの機嫌が悪くなる原因の邪神であった。


「な、お前起きたのか?」


「ついさっきな。気付いたら何故か抱きしめられ頭を撫でられてた状態だったが、以外にも心地よくてな。つい言葉をかけるのを忘れてしまっておった。それにしても女の子に対して「可愛くない」は酷いのではないか?」


「いや、それはちょっとしたアレで……いや、まぁ可愛いと思うぞ、うん」


「むむ、クロ、さっき可愛くないって言った。嘘、だったの?」


「いやぁ、アレはあの、えーと」


クロはスズへ説明するための言葉《言い訳》を考えようと全力で高速思考と並列思考を行おうとしたが邪神からの爆弾発言によりそれは叶わなくなった。


「そうかそうか可愛いか。うむ、惚れた相手に可愛いと言われるのはなかなか嬉しいものじゃな」


「は?」


「むむむ!……ライバルが出来た」


(は?惚れ?え、なんで、どこにそんな事になる要因があったの?)


「それはじゃな……」


邪神がクロの心の疑問を聞き答える。


邪神によると、あの空間に悪意とともに閉じ込められたのは数千年前だったと言う。あの水晶は悪意を吸い取る性質があり、その数千年間のうちに溜まった悪意は途轍もない力を持っていたと言う。だからそれを外に逃がさないように自分のうちに留めていたらしい。


邪神とは元々世界が悪意で満ちないために悪意を霧散させる力を持っていたと言う。が、その力を持ってしても水晶が吸い取る勢いに勝てなかったらしい。そのうち体に充満した悪意に体の所有権を取られ悪意を霧散させれず眠っていたらしい。


そして今日、丁度もうそろそろで自我も崩壊しはじめそうになった所へ俺たちが来たと言う。


そして俺が触れた事で水晶が(何故か)壊れ解放されたが、体の所有権は悪意が握っている。止めたいがどうする事もできずただ俺たちが殺されるとこを見守るしかなかったが、結果は違った。逆に手も足も出ず拘束されこれで悪意とともに殺され楽になれると思ったのだが、体の中の悪意を吸い出さてしまった。何を!と思ったが予想以上に体が悪意と深く結びついていたため、激痛が走り気を失ってしまった。


もう終わりだ……と、諦めていたのに起きてみれば世界に何も変わりはなく、逆に心地よい、安心感のある手で優しく撫でられていた。数千年も生き物と会っておらずひそめ続けた人恋しさが溢れ出す。


早く起きてお礼を言いたいが起きてしまえばこの心地よい時間がなくなってしまうのではないかと思い目を瞑ったままだったが何やら女と話しているではないか。それも恋人の様な甘い甘すぎる内容だ。


それを聞いているとこの撫でてくれている人間が他の女の事を愛している事がわかり何故かモヤモヤとした感じがして、心臓をキュっと締め付けられる様な感覚がする。


そして惜しいもののその話をやめさせたく起きて乱入したのだ。その話の最中に撫でてくれた人間を見れば黒髪黒眼とこの世界では珍しいが普通の顔つきだ。なのに何故か惹かれてしまう。そこで自分がこの人間の事を好きなのだと気付いたらしい。


「つまり、死にそうな自分を助けて不安要素も消してくれてなおかつ優しく撫でられてコロッといっちゃった、という事?」


いつになく流暢に喋るスズ。


「そうゆう事じゃ、まぁそれだけ聞くと軽い愛に聞こえるかもしれんが妾は本気でこの男を愛しているのじゃ!」


そう言って邪神がクロの左腕に抱きつく。


「ちょっと待て邪神!」


「ロベリアじゃ」


「は?」


「妾の名前はロベリアじゃ。我も教えたのじゃからお主の名前も教えておくれ」


「あぁ、俺はクロだ…じゃなくて離れろ!」


「むぅぅ、私、もっ!」


そう言ってスズが逆の右腕に抱きつく。

スズは俺に抱きついたままロベリアに言う。


「ロベリア、正妻は、わたし」


「って、いうとこはそこかよ⁉︎」


「おぉ、信じてくれるかスズよ!」


「あなたから、感じるクロへの、愛は、本物。それに、クロの1番は私だけ。愛を、言い訳に、寄生しようとする、奴は許さない。本気なら、問題ない。どうせ、何人いようと、クロは私を、1番愛してくれる」


「そうか…1番は無理でもクロが愛してくれるのなら何ら問題ないな」


「ちょっと待て!俺を置いて俺の話を進めるなぁ!」


クロの叫びは虚しく誰も聞く事はなく、スズとロベリアのガールズトークは続くのだった。

新しいヒロイン登場です

そしてロベリアはロリババです

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