97.創造主と
今回は主人公回です
「ふむぅ……」
一体何が起きているのやら。
世界樹を拝もうと近づくといつの間にかこの全方位真っ白な世界に飛ばされていた。
強制転移の類か。
しかも俺に気付かれずに、俺を転移させるような代物だ。
俺を転移させた犯人はなんとなくわかる。
「創造主、だろうなぁ」
俺、自分でもいうのもなんだがこの世界で俺をどうこうできる奴などいないと言えるほどに強くなっているはずだ。
神であるロベリアやアビス、偽神なんかも圧倒できる力がある。
そんな俺を気づかれずに転移の術を発動させるとか、考えうる限り創造主しかいない。
「大せいかーい!」
「……創造主は子供だったのか」
「見た目はね!中身は何千何億と生きる化け物だよ」
「そりゃ凄い」
内心冷や汗を垂らしながらその存在を見る。白い世界を見つめていた俺の目の前に違和感なく現れた一人の子供。
小学生と中学生の丁度間ぐらいの見た目をしたそれは、ロベリアやアビス、果ては世界をも創造した創造主だ。
恐ろしい力だ。
目の前の存在からは本当に子どもにしか見えない。
創造主の力を完璧に操れる証拠だろう。
膨大な力は隠すだけで相当な難易度となるのだから。
俺でも今の自分の力を完璧に隠すのは無理だ。
あの教会の爺さんのような一般人にも感じ取られてしまうのだから。
それに比べこの子供からは本当に力を感じない。
感じれたとしてもそれは見た目通り、子供の力だ。
その場にいて違和感を持たせない。
こんな真っ白な世界に見た目普通の子供がいるというのに、俺は違和感を抱けていなかった。
先ほど現れたときもそうだ。
「ふふ、伊達に創造主をしてないからね。でもそんな僕を驚かせるような力を君は持っている。そんな君も大概だよね」
「力の底が見えないあんたに言われても実感がわかないんだけどな」
「感じてみる?僕の力」
ゾクゾクゾクッ。
ほんの一瞬、創造主が力の隠ぺいを緩めたのだろう。
漏れ出た力に背筋が凍る。
力の片鱗を感じただけで無意識に体が戦闘態勢をとる。
「や、べぇな……」
「ハハッ、言っとくけど君もかなり近づいているんだよ?この僕に」
「いやいや、まだ全然だろ……」
正直、この創造主と戦っても勝率は2割を切るだろう。
その2割もどうにか命を賭して、手足の2、3本犠牲にして勝てるのではないかという感じだが。
「それで?なんとなく理解できるが俺を呼んだ理由を聞いてもいいか?」
「孤独、というものはさ。全てを作った僕の心でも蝕むものなんだ」
それはよくわかる。俺も何度も味わってきたもの。
興味本位で強くなってしまった俺を待っていたのは並び立つ者のいない強者の孤独。
手に入れた力を使うこともできず命を賭して戦うスリルも味わえず。
俺のような異常者を受け入れてくれない法に縛られた世界での孤独
誰も理解してくれないために、自身の在り方を変えるしかなかった辛さ。
本来の自分を曝け出せない苦しさ。
「僕はさ、今日までずっと待っていたんだ。君のような、僕に並び立てるような存在を。僕を超え、僕の命を脅かせる存在を」
創造主は今までの神生を思い出すかのように遠い目をする。
まだ18年しか生きてない俺なんかには到底想像できないような永い時を1人で生きてきたのだろう。
「やっとだ、やっと、この時が来た……」
創造主が俯き、体をくつくつと震わせる。
その体から夥しい、俺を恐れさせる程の力があふれ出ている。
まだ全力ではないだろう。
しかし、それは俺の力を圧倒する。
創造主のように、俺の体も震えだす。
恐ろしさからくるものではない。
武者震い。
今の俺の全力を発揮できる、そのことに体が喜び今か今かと待ち望む。
「今の君はまだ僕には届いていない。でも、もう待てない。待てないよ……」
興奮したように顔を赤らめ満面の笑みを浮かべる。
「俺も、待てそうにないなぁ」
「フフッ」
「くハハッ」
創造主と二人、白い世界で笑いながらジリジリと距離を取り戦闘態勢をとる。
「さぁ、行くよ!」
命を賭した戦いに飢えた俺たちは、白い世界で激しくぶつかり合った。
『イジメですか?』ももうすぐ終わりを迎えます
そこで4月の上旬辺りから新作を投稿し始めようと思っています
それについての詳しいことは活動報告のほうに載せておきますのでみてってください